第109回(R8) 助産師国家試験 解説【午後16~20】

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16 産褥3日のAさん(39歳、経産婦)に退院後の生活指導をしていた助産師は、面会に来た第1子(3歳、女児)の服装の汚れとシャツの襟元から背中の内出血斑に気付き、虐待を疑った。
 助産師が情報を提供する先として適切なのはどれか。

1.Aさんの居住地の産後ケアセンター
2.第1子のかかりつけの医療機関
3.Aさんの居住地の市町村
4.第1子が通う保育所

解答

解説

ポイント

・Aさん(39歳、経産婦、産褥3日
・退院後の生活指導をしていた助産師:面会に来た第1子(3歳、女児)の服装の汚れとシャツの襟元から背中の内出血斑に気付き、虐待を疑った
→児童虐待には4つの種類がある。①身体的虐待、②性的虐待、③保護の怠慢・拒否(ネグレクト)、④心理的虐待である。どの種類に当てはまるかということよりも、子どもに対する養育者の不適切な対応は虐待ととらえ早期に対応することが必要である。まずは、子ども(被害者を含む)の状況を速やかに把握し、安全の確保が最優先となる。

1.× Aさんの居住地の産後ケアセンターより優先されるものが他にある。なぜなら、産後ケアセンターは、産後の母子支援を行う施設であるため。産婦の心身のケア、授乳支援、育児相談、休養支援などを行う。
・産後ケアセンターとは、出産後の母親と赤ちゃんが、助産師などから心身のケアや育児支援を受けられる、住んでいる市区町村の産後ケア施設である。授乳や沐浴の相談、母親の休養、育児不安への助言などを行う。宿泊型・日帰り型・訪問型があり、病院や助産所が市区町村から委託を受けて実施する場合もある。原則として、産後1年未満の母子が対象である。

2.× 第1子のかかりつけの医療機関より優先されるものが他にある。なぜなら、今回のケースでは虐待を疑っているため。
・医療機関とは、病気やけがの診察、検査、治療、予防、リハビリテーションなどを行う施設である。医師や看護師などの医療従事者が勤務し、病院や診療所(クリニック)、助産所などが含まれる。

3.〇 正しい。Aさんの居住地の市町村が最も優先して助産師が情報を提供する先である。なぜなら、児童虐待(服装の汚れと背中の内出血斑:身体的虐待やネグレクト)を受けたと思われる児童を発見した者は、市町村や児童相談所などに速やかに通告する義務があるため。
・児童虐待防止法6条には「(児童虐待に係る通告)児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」と記載されている(※引用:「児童虐待防止法」e-GOV法令検索様HPより)。

4.× 第1子が通う保育所より優先されるものが他にある。なぜなら、保育所は、子どもの日常(普段の様子、欠席状況、衣服や清潔状態、食事状況、保護者との関係など)を把握する機関ではあるため。
・保育所とは、保護者が働いているなどの何らかの理由によって保育を必要とする乳幼児を預かり、保育することを目的とする通所の施設のことである。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①助言指導 
②児童の一時保護
③児童福祉施設等への入所措置
④児童の安全確保
⑤里親に関する業務
⑥養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

 

17 ルテイン囊胞について正しいのはどれか。

1.自然消失することが多い。
2.内容液に脂肪成分を含む。
3.産道通過障害の原因となる。
4.診断のためにMRI検査が行われる。

解答

解説

ルテイン囊胞とは?

ルテイン囊胞とは、妊娠中に増加するヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の刺激により、卵巣が両側性・多房性に腫大する良性の機能性囊胞である。胞状奇胎や多胎妊娠などで生じやすい。妊娠終了後にヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が低下すると自然に縮小・消失することが多く、通常は超音波検査で経過を観察する。内容液に脂肪は含まず、MRI検査も診断に必須ではない。

1.〇 正しい。自然消失することが多い。なぜなら、ルテイン囊胞は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)刺激による機能性囊胞であり、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)値が低下・正常化すると退縮しやすいため。
・ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human chorionic gonadotropin)とは、妊娠中にのみ測定可能量が著しく産生されるホルモンであり、妊娠の早期発見や自然流産や子宮外妊娠といった妊娠初期によくみられる異常妊娠の診断と管理のために使用される。主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしている。また、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用がある。絨毛性腫瘍の他に、子宮、卵巣、肺、消化管、膀胱の悪性腫瘍においても異所性発現している例もある。

2.× 内容液に脂肪成分を含むのは、「成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)」である。一方、ルテイン囊胞は、hCG刺激による機能性囊胞であり、内容は黄体化した卵胞に液体が貯留したものである。
・成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)は、卵子のもととなる胚細胞から生じる、卵巣の良性腫瘍である。内部に皮膚、毛髪、脂肪、歯や骨などの成熟した組織を含む。多くは無症状だが、大きくなると腹痛や卵巣捻転を起こすことがある。

3.× 産道通過障害の原因「とはなりにくい」。なぜなら、ルテイン囊胞は、多くが妊娠経過やヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)値低下に伴って自然退縮するため。したがって、分娩時に産道を物理的に閉塞する病変として扱われることは少ない。
・産道通過障害とは、胎児が産道を通過するときに、腫瘤や骨盤形態などが障害となる状態である。原因としては、骨盤内に嵌頓した大きな卵巣腫瘍、子宮筋腫、骨盤腫瘍などである。

4.× 診断のためにMRI検査が行われる「わけではない」。なぜなら、ルテイン囊胞の診断は、妊娠・胞状奇胎などの背景、hCG高値、骨盤内超音波検査所見から評価されることが多い。

 

 

 

 

 

18 新生児の疾患スクリーニングについて適切なのはどれか。

1.自動聴性脳幹反応〈AABR〉ではpassまたはreferと判定される。
2.新生児マススクリーニング検査の意義は治療困難な疾患を発見することにある。
3.聴覚スクリーニング法としての耳音響放射〈OAE〉では中枢の異常を発見できる。
4.新生児マススクリーニング対象疾患の中で最も頻度が高いのは先天性副腎過形成症である。

解答

解説
1.〇 正しい。自動聴性脳幹反応〈AABR〉では、passまたはreferと判定される
・pass(パス):検査音に対する反応が確認され、その時点では聴力に大きな問題がないと判定されたことを示す。
・refer(リファー):十分な反応が得られず再検査が必要という意味である。referでも、耳垢・羊水の残留・体動などが原因の場合があり、難聴の確定診断ではない。
・自動聴性脳幹反応とは、耳に小さな音を聞かせ、内耳から聴神経、脳幹までに生じる電気反応を電極で測定する検査である。主に新生児の聴覚スクリーニングに用いられ、難聴の可能性を自動判定する。痛みはなく、眠っている間に行える。

2.× 新生児マススクリーニング検査の意義は、「治療困難な疾患を発見すること」ではなく「早期発見し、治療や生活指導につなげること」にある。例えば、赤ちゃんの先天性代謝異常等の病気をみつけたり、生涯にわたる知的障害などの発生を予防することを目的としている。

3.× 聴覚スクリーニング法としての耳音響放射〈OAE〉では、「中枢の異常の発見」ではなく主に内耳の外有毛細胞機能を評価する検査である。
・耳音響放射検査(Otoacoustic Emission:OAE)とは、外耳道に挿入した音響プローブにより、内耳からの微弱音を検出する内耳有毛細胞機能の他覚的検査である。診断用の専用機器を用いてスクリーニングよりも細かく評価できる。ただし、内耳蝸牛の外有毛細胞の機能を検査するもので、耳垢や羊水の貯留等の影響を受けやすい。

4.× 新生児マススクリーニング対象疾患の中で最も頻度が高いのは、「先天性副腎過形成症」ではなく先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)である。主な原因は、甲状腺の欠損・低形成・位置異常などの形成異常であり、多くは遺伝とは関係なく偶発的に生じる。ほかにホルモン合成障害や、一過性ではヨウ素過剰なども原因となる。

新生児マススクリーニング検査とは?

新生児マススクリーニングとは、赤ちゃんの先天性代謝異常等の病気をみつけるための検査である。先天性代謝異常等は、①先天性代謝異常、②先天性甲状腺機能低下症、③先天性副腎過形成症をあわせてよぶ。

①先天性代謝異常:生まれつき特定の酵素に異常があって起こる病気である。例えば、フェニルケトン尿症は特定のアミノ酸が体の中で正常に代謝されずに蓄積してしまうため、発育や知能の障害が現れる。しかし、新生児期に発見し治療用のミルクなどの食事療法を続ければ健康な生活を送ることができる。
②先天性甲状腺機能低下症:神経の発達や新陳代謝をつかさどる甲状腺ホルモンが正常に分泌されないため心身の発育不良を起こす。早期にホルモン補充などの適切な治療を開始すれば正常に発育する。
③先天性副腎過形成症:副腎からのホルモンが不足して体のなかのカリウムやナトリウムなどのバランスが崩れ、死にいたることもある病気である。早期に発見することで必要なホルモンを補うなどの治療で発症を抑えることができる。

 

 

 

 

 

19 新生児の消化器症状と疾患の説明として正しいのはどれか。

1.中腸軸捻転症は自然軽快することが多い。
2.ミルクアレルギーでは血便が出ることはない。
3.臍ヘルニアは鼠径ヘルニアよりも嵌頓のリスクが高い。
4.胆汁性嘔吐は十二指腸Vater〈ファーター〉乳頭部から肛門側での通過障害によって起こる。

解答

解説
1.× 中腸軸捻転症は自然軽快することが「ほぼない(緊急対応が必要)」。なぜなら、中腸軸捻転症は、腸管血流が障害され、腸管壊死に進行する危険があるため。ねじれにより腸閉塞だけでなく、上腸間膜動脈・静脈の血流障害を起こすことがある。
・中腸軸捻転症とは、胎児期の腸の回転・固定が不十分なため、小腸などが腸間膜の血管を軸にねじれる病気である。胆汁性嘔吐や腹痛を生じ、血流が途絶えると腸管壊死に至るため、緊急手術が必要である。

2.× ミルクアレルギーでは、血便が出ること「がある」。なぜなら、新生児・乳児消化管アレルギーでは、ミルクや母乳中の食物蛋白に反応して腸管炎症(嘔吐、血便、体重増加不良、下痢など)を起こすため。それにより、血便をきたすことがある。
・ミルクアレルギーとは、牛乳たんぱく質に過敏なアレルギー体質の赤ちゃんに起こる食物アレルギーで、血便などの消化管症状が現れることがある。他の症状としては、嘔吐、下痢、腹部膨満、発疹、体重増加不良などがある。

3.× 臍ヘルニアは、鼠径ヘルニアよりも嵌頓のリスクが高い「わけではない」。なぜなら、乳児の臍ヘルニアは、自然治癒傾向が高く、嵌頓は極めてまれである。一方、鼠径ヘルニアは、嵌頓を起こす危険がある。
・臍ヘルニアとは、いわゆる「でべそ」のことであり、腹筋が未発達な赤ちゃんに多く見られる疾患である。臍ヘルニアは、ほとんどの場合、治療せずとも1歳までに自然に治癒する。
・鼠径ヘルニアとは、鼠径部の脆弱化した筋膜・腿膜の裂隙(すき間)から、壁側腹膜に包まれた腹腔内臓器が脱出したものである。主に2種類に大別される。①外鼠径ヘルニア、②内鼠径ヘルニアである。①外鼠径ヘルニアは、内鼠径輪からもともと存在する通路である鼠径管を通って腸管が脱出するものである。乳幼児期男児や成人男性に多い。②内鼠径ヘルニアは、横筋筋膜の脆弱化により、もともと穴が開いていない筋膜を突き破って腸管が脱出するものである。壮年期以降の男性に多い。症状として、鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感、痛みが発生する。

4.〇 正しい。胆汁性嘔吐は、十二指腸Vater〈ファーター〉乳頭部から肛門側での通過障害によって起こる。なぜなら、胆汁は、ファーター乳頭から十二指腸内へ流入するため。
・ファーター乳頭とは、十二指腸の中間あたりには、胆のうからつながる胆のう管と、すい臓からつながるすい管の開口部のことを指す。初期の場合は、無症状であるが、進行に伴い、進行がんとなると胆道を閉塞するため、採血による肝機能異常や黄疸が起こる。

 

 

(図引用:「肝臓周辺臓器 名称」illustAC様HPより)

胆汁性嘔吐とは?

胆汁性嘔吐とは、胆汁が混じっている嘔吐のことを指す。嘔吐物は苦味があり、黄緑色をしている。十二指腸乳頭部より遠位部腸管の閉塞で起こるとされ、外科的疾患が原因であることが多い。 何らかの原因で腸閉塞が起こっていること示唆している。小腸閉鎖、腸回転異常などが疑われる。

 

 

 

 

 

20 順調に発育している3歳児の社会性を促進するために効果的なのはどれか。

1.家事代行サービスの利用
2.商業施設で開催している個別育児相談
3.児童館で開催している幼児の体操教室への参加
4.ソーシャルネットワーキングサービス〈SNS〉で配信されている動画の視聴

解答

解説

社会性とは?

社会性とは、他者と関わる力、順番を待つ力、相手の気持ちに気づく力、ルールを守る力などを含む。3歳児では、親以外の大人や同年代の子どもと関わる中で、これらが発達していく。

1.× 家事代行サービスの利用より優先されるものが他にある。なぜなら、家事代行サービスは、主に保護者の家事負担を軽減する支援であるため。

2.× 商業施設で開催している個別育児相談より優先されるものが他にある。なぜなら、個別育児相談は、主に保護者の不安や育児上の悩みに対応する場であるため。

3.〇 正しい。児童館で開催している幼児の体操教室への参加が、順調に発育している3歳児の社会性を促進するために効果的である。なぜなら、体操教室では、同年代の子どもと一緒に活動し、社会的経験(順番を待つ、まねをする、ルールを守る、友達と関わるなど)が得られるため。
・3歳頃の遊びとして、①平行遊び、②傍観遊びがあげられる。①平行遊びとは、同じ場所で他児と同じような行動をしているが、お互いには関係なくばらばらに遊ぶことである。②傍観遊びとは、他の子供の遊びを見て過ごし、声をかけることはあっても遊びには入らない遊びのことである。これによって遊び方を理解し、まねて遊ぶようになる。

4.× ソーシャルネットワーキングサービス〈SNS〉で配信されている動画の視聴より優先されるものが他にある。なぜなら、動画視聴は受動的な活動であるため。実際の対人経験(子ども同士のやりとり、順番を待つ、相手に合わせる、感情を調整するなど)が得られにくい。

 

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