第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午前101~105】

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次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aさん(80歳、男性)は、妻(80歳)と2人暮らし。血管性認知症でパーキンソニズムがみられる。認知症高齢者の日常生活自立度判定基準ランクⅡb、要介護2。普段は妻がAさんの身の回りの世話をしているが、妻が入院したため短期入所療養介護のサービスを受けることになった。入所時のAさんは歩行開始困難、加速歩行、すくみ足などの歩行障害がみられた。Aさんは「最近、家の中でつまずくことが多くなりました」と入所中の施設の看護師に話した。

101 入所初日の夜、Aさんはトイレに行った後、入所者Bさんの部屋に入ったという夜勤者からの申し送りがあった。
 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.Aさんの部屋の前にAさんが認識しやすい目印を掲示する。
2.夜間は2時間ごとにAさんを起こしてトイレに誘導する。
3.夜間は尿器を使用することをAさんに勧める。
4.AさんとBさんの部屋を入れ替える。

解答1

解説

本症例のポイント

・入所初日の夜
・夜勤者「Aさんはトイレに行った後、入所者Bさんの部屋に入った」
→Aさんは血管性認知症である。脳血管型認知症とは、脳細胞の死滅によって起こる認知症であり、その部位や範囲によって症状は様々である。他の症状として、巣症状(失語、失行、失認など脳の局所性病変によって起こる機能障害)や階段状に認知障害が進行することが特徴である。

1.〇 正しい。Aさんの部屋の前に、Aさんが認識しやすい目印を掲示する。なぜなら、普段と異なる場所で混乱しないようにするため。初日の夜の部屋の間違いは、①血管性認知症や②環境変化を契機としたせん妄の可能性が考えられる。せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
2.× 夜間は、2時間ごとにAさんを起こしてトイレに誘導する必要はない。なぜなら、排尿が失敗している状態でもなく、また2時間ごとは熟睡を妨げることにつながるため。夜間のトイレ誘導を行う場合は、事前に排尿日誌などを用いて本人の排尿パターンを把握したうえで、誘導する時間を慎重に決定する。
3.× 夜間は、尿器の使用することをAさんに勧める必要はない。なぜなら、Aさんは自力歩行でトイレに行くことができているため。尿器とは、ベッドに横になったままもしくは座った状態で排泄する際に使用するものである。 尿意・便意を感じていても、ベッドから起き上がることやトイレで排泄するこが困難な場合に用いられる。
4.× AさんとBさんの部屋を入れ替える必要はない。なぜなら、さらにAさんの混乱を招く恐れがあるため。

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

 

 

 

 

 

次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aさん(80歳、男性)は、妻(80歳)と2人暮らし。血管性認知症でパーキンソニズムがみられる。認知症高齢者の日常生活自立度判定基準ランクⅡb、要介護2。普段は妻がAさんの身の回りの世話をしているが、妻が入院したため短期入所療養介護のサービスを受けることになった。入所時のAさんは歩行開始困難、加速歩行、すくみ足などの歩行障害がみられた。Aさんは「最近、家の中でつまずくことが多くなりました」と入所中の施設の看護師に話した。

102 Aさんは「もっと歩けるようになりたい。妻の負担にならずに生活できるようになりたい」と話している。
 退所後にAさんが利用する介護給付におけるサービスで最も適切なのはどれか。

1.訪問介護
2.療養通所介護
3.通所リハビリテーション
4.認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)

解答3

解説

本症例のポイント

Aさん「もっと歩けるようになりたい。妻の負担にならずに生活できるようになりたい」と。
→Aさんは身体機能・活動の向上を望んでいる。その要望にあうサービスの選択が求められる。

1.× 訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)などが利用者の自宅を訪問して身体介護や調理、洗濯、掃除などの生活援助を行うサービスである。
2.× 療養通所介護とは、難病等の重度要介護者がん末期の者であって、サービス提供に当たり看護師による観察が必要な利用者を対象とする地域密着型サービスである。入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話や機能訓練を行うことで、利用者の社会的孤立感の解消や心身の機能の維持、利用者の家族の身体的・精神的負担の軽減を図る(※参考:「療養通所介護」厚生労働省HPより)。
3.〇 正しい。通所リハビリテーションが、退所後にAさんが利用する介護給付におけるサービスで優先度が高い。通所リハビリテーション(デイケア)は、利用者が老人保健施設・病院・診療所などに通い、日常生活上の支援や、生活機能訓練を受け、可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるようにするものである。理学療法士、作業療法士などによる機能訓練などが行われている。理学療法士とは、医師の指示のもとに治療体操や運動・マッサージ・電気刺激・温熱などの物理的手段を用いて、運動機能の回復を目的とした治療法・物理療法(理学療法)を行う専門職である。一方、作業療法士とは、医師の指示のもとに手工芸・芸術・遊びやスポーツ・日常動作などを行うことにより、障害者の身体運動機能や精神心理機能の改善を目指す治療(作業療法)を行う専門職である。
4.× 認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)よりAさんの要望に応えられる選択肢が他にある。認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)とは、介護保険制度における地域密着型サービスである。認知症である者に対し、共同生活をする住居で、入浴・排泄・食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うものである。1つの共同生活住居に5~9人の少人数の利用者が、介護スタッフとともに共同生活を送る。24時間の専門的援助体制のもと、料理や買い物などの家事に参加する。

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 A君(8歳、男児、小学3年生)は、父親(40歳、会社員)と母親(38歳、主婦)との3人暮らし。多飲と夜尿を主訴に小児科を受診した。尿糖4+のため、1型糖尿病の疑いで病院に紹介され、精密検査を目的に入院した。A君は身長123cm、体重27.5kg(1か月前の体重は29.5kg)。入院時のバイタルサインは、体温36.9℃、脈拍100/分、血圧98/42mmHg。随時血糖300mg/dL、HbA1c 9.3%、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)抗体陽性。尿糖4+、尿ケトン体3+。血液ガス分析pH 7.02であった。

103 入院時に確認する症状はどれか。2つ選べ。

1.咳嗽
2.腹痛
3.浮腫
4.発疹
5.意識レベル

解答2・5

解説

本症例のポイント

・A君(8歳、男児、小学3年生)
・3人暮らし:父親(40歳、会社員)、母親(38歳、主婦)
・主訴:多飲夜尿
・尿糖4+、1型糖尿病の疑い
・身長123cm、体重27.5kg(1か月前の体重は29.5kg)。
・体温36.9℃、脈拍100/分、血圧98/42mmHg。随時血糖300mg/dL、HbA1c 9.3%、GAD:抗体陽性。
尿糖4+尿ケトン体3+血液ガス分析pH 7.02
→1型糖尿病とは、原因が自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる糖尿病である。小児~思春期の発症が多く、肥満とは関係ないのが特徴である。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。

1.× 咳嗽は、1型糖尿病の症状として当てはまらない。ちなみに、咳嗽とは、気管や喉の粘膜から刺激を受け、胸や肺を使って空気を吐き出す反射的な行動で、つまり咳のことである。咳嗽は、喉や気管の炎症、感染、アレルギー、肺疾患、煙草の使用などの原因で引き起こされる
2.5.〇 正しい。腹痛/意識レベルは、入院時に確認する症状である。本症例の所見(尿ケトン体3+、血液ガス分析pH7.02)から、A君は糖尿病ケトアシドーシスを発症している。本症例は、「尿糖4+、尿ケトン体3+、血液ガス分析pH 7.02」であることから、糖尿病性ケトアシドーシスが疑われる。糖尿病性ケトアシドーシスは、糖尿病患者において起こる代謝異常の症状の総称である。これは、インスリンの欠乏や抵抗により、身体は脂質を燃焼してエネルギーを生み出す代わりに、脂肪酸を代謝産物のケトン体に変えるようになる。これによって、血中に過剰なケトン体が溜まり、酸性バランスが崩れる。糖尿病性ケトアシドーシスは、糖尿病が長期にわたって不適切に管理される場合によく見られ、重篤な代謝異常を引き起こす。症状には、嘔吐、下痢、渇き、呼吸困難、疲労、(特に小児で)腹痛がみられる。また、インスリン不足による脂質分解が亢進しており、ケトアシドーシスとなっていることが考えられ、意識障害を起こす可能性が高い。
3.× 浮腫は、1型糖尿病の症状として当てはまらない。むしろ、本症例の主訴として多飲夜尿、体重減少が現れていることから、脱水の可能性が高い。
4.発疹は、1型糖尿病の症状として当てはまらない。発疹とは、肌に発現する赤い斑点や丘疹、水疱などの皮膚の異常状態を指す。さまざまな原因によって引き起こされ、感染症、アレルギー、免疫系の異常、薬剤反応、慢性の皮膚疾患などが考えられる。

 

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 A君(8歳、男児、小学3年生)は、父親(40歳、会社員)と母親(38歳、主婦)との3人暮らし。多飲と夜尿を主訴に小児科を受診した。尿糖4+のため、1型糖尿病の疑いで病院に紹介され、精密検査を目的に入院した。A君は身長123cm、体重27.5kg(1か月前の体重は29.5kg)。入院時のバイタルサインは、体温36.9℃、脈拍100/分、血圧98/42mmHg。随時血糖300mg/dL、HbA1c 9.3%、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)抗体陽性。尿糖4+、尿ケトン体3+。血液ガス分析pH 7.02であった。

104 入院後、インスリンの持続点滴静脈内注射が開始された。入院後3日に血糖値が安定し、インスリンの持続点滴静脈内注射が中止された。ペン型注射器によるインスリン療法が開始され、看護師は母親とA君に自己血糖測定とインスリン自己注射について説明した。A君は「自分で注射するなんてできない」と言ってインスリン自己注射の練習が進まない。
 A君への看護師の対応で最も適切なのはどれか。

1.インスリン自己注射の必要性を繰り返し説明する。
2.A君が納得するまで母親にインスリン注射をしてもらう。
3.インスリン自己注射ができるようになったら退院できると話す。
4.インスリン自己注射をしている同年代の糖尿病患児と話す機会を作る。

解答4

解説

本症例のポイント

・ペン型注射器によるインスリン療法が開始。
・A君「自分で注射するなんてできない」と。
・インスリン自己注射の練習が進まない。
→A君が「自分で注射ができない」理由として、①単純に怖いこと、②手順が複雑覚えられないなど考えられる。A君は8歳であるため、習得できれば十分一人でも可能と考えられる。その支援をする。

1.× インスリン自己注射の「必要性」を繰り返し説明するのは効果的ではない。なぜなら、A君が自己注射を行えない理由は、「必要性」ではなく「恐怖心や複雑性」であると考えられるため。
2.× A君が納得するまで母親にインスリン注射をしてもらうのは効果的ではない。なぜなら、母親が注射をしてもA君が自己注射を行えるようになることにはつながらないため。また、学校で自己注射が必要になった時に、一人で打てないと困ってしまうため。
3.× インスリン自己注射ができるようになったら退院できると話すのは効果的ではない。なぜなら、退院の条件は看護師独断が決めることではないため。また、インスリン自己注射ができるようになったが、A君の状態が悪化した場合、もめごとに発展しかねないため、安易な条件提示は行わないほうが望ましい。
4.〇 正しい。インスリン自己注射をしている同年代の糖尿病患児と話す機会を作る。なぜなら、同年代の糖尿病患児が自己注射をしていることを知ることで、自分もできると思える可能性が高いため。

 

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 A君(8歳、男児、小学3年生)は、父親(40歳、会社員)と母親(38歳、主婦)との3人暮らし。多飲と夜尿を主訴に小児科を受診した。尿糖4+のため、1型糖尿病の疑いで病院に紹介され、精密検査を目的に入院した。A君は身長123cm、体重27.5kg(1か月前の体重は29.5kg)。入院時のバイタルサインは、体温36.9℃、脈拍100/分、血圧98/42mmHg。随時血糖300mg/dL、HbA1c 9.3%、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)抗体陽性。尿糖4+、尿ケトン体3+。血液ガス分析pH 7.02であった。

105 A君と母親は、自己血糖測定とインスリン自己注射に関する手技を身につけて退院し、外来通院となった。退院後2か月、A君と母親が定期受診で来院した際、看護師がA君に生活の様子を尋ねたところ「学校では血糖測定もインスリン注射もやっているよ。給食は楽しみで好き嫌いなく食べているよ」と話した。母親は「帰宅時に時々手の震えや空腹感を訴え、血糖を測定すると60mg/dL台のことがあり、自分で補食を選んで食べています。なぜ日によって低血糖になることがあるのでしょうか」と話している。
 看護師がA君の低血糖の原因をアセスメントする際に優先して収集すべき情報はどれか。

1.インスリン自己注射に対するA君の認識
2.学校内でインスリン自己注射を行う場所
3.学校での運動量
4.給食の摂取量

解答3

解説

本症例のポイント

A君「学校では血糖測定もインスリン注射もやっているよ。給食は楽しみで好き嫌いなく食べているよ」と。
・母親「帰宅時に時々手の震えや空腹感を訴え、血糖を測定すると60mg/dL台のことがあり、自分で補食を選んで食べています」と。
→母親は「なぜ日によって低血糖になることがあるのでしょうか?」とA君の低血糖の原因を考えている。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

1.× インスリン自己注射に対するA君の認識より優先されるものが他にある。なぜなら、A君「学校では血糖測定もインスリン注射もやっている」と言っているため。また、インスリン注射が行えていない場合であれば、荷物の変化から母親も気づく可能性が高い。
2.× 学校内でインスリン自己注射を行う場所より優先されるものが他にある。なぜなら、インスリン自己注射を行う場所と低血糖の原因との関係性が少ないため。
3.〇 正しい。学校での運動量は、優先して収集すべき情報である。なぜなら、その日の学校での体育の授業や、遊びによる運動量が影響している可能性が高いため。
4.× 給食の摂取量より優先されるものが他にある。なぜなら、A君「給食は楽しみで好き嫌いなく食べているよ」と言っているため。また、給食は年齢に応じて必要なエネルギー量・栄養素が提供されている。

 

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