第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午後101~105】

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次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aちゃん(5歳、男児)は、2日前に39℃に発熱して両側の耳下腺部の痛みを訴えた。昨日から同部位の腫脹がみられ、頭痛を訴えている。夜間に嘔吐が4回あり、発熱と頭痛が持続したため、本日父親に連れられて来院し、髄膜炎の疑いで個室に入院した。通っている幼稚園には、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)罹患児が数名いる。
 既往歴:特記すべきことはない。
 予防接種歴:年齢相応の定期接種はすべて済んでいる。おたふくかぜワクチンは未接種である。
 家族歴:両親は流行性耳下腺炎罹患の既往がある。妹のBちゃん(3歳)は、年齢相応の定期予防接種は済んでいるが、おたふくかぜワクチンは未接種である。また、流行性耳下腺炎罹患の既往はない。
 身体所見:体温39.2 ℃、項部硬直あり。両側耳下腺部の腫脹と圧痛あり。胸部聴診で異常なし。腹部は平坦で軟、圧痛なし。Kernig(ケルニッヒ)徴候あり。
 検査所見:白血球8,760/μL。血清アミラーゼ834 U/L (基準44〜132)、CRP 0.1mg/dL。

101 検査の結果、Aちゃんはムンプス髄膜炎と診断された。父親から看護師に「先ほど主治医の先生から、面会やAの入院中の生活に制限があると聞きました。詳しく教えてください」と質問があった。
 看護師の説明で適切なのはどれか。

1.「親の面会は可能です」
2.「Bちゃんの面会は可能です」
3.「Aちゃんはプレイルームで遊べます」
4.「Aちゃんは病室内でガウンを着てもらいます」

解答1

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(5歳、男児、ムンプス髄膜炎
・予防接種歴:定期接種はすべて済み(おたふくかぜワクチンは未接種
・両親:流行性耳下腺炎罹患の既往がある
・妹のBちゃん(3歳):おたふくかぜワクチンは未接種、流行性耳下腺炎罹患の既往はない。
・父親から「先ほど主治医の先生から、面会やAの入院中の生活に制限があると聞きました。詳しく教えてください」と。
→ムンプス髄膜炎とは、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の原因であるムンプスウイルスによって引き起こされる髄膜炎を指す。 流行性耳下腺炎を発症すると耳下腺の腫れのほか、ときに髄膜炎や難聴、精巣炎などの合併症を引き起こすことがある。流行性耳下腺炎の感染経路は、主に①飛沫感染、②接触感染である。感染力のある期間は、発症3日前~発症後4日までである。

1.〇 正しい。「親の面会は可能です」と伝える。なぜなら、両親は流行性耳下腺炎罹患の既往があるため。すでに免疫を獲得していると考えられる。
2.× Bちゃんの面会はできない。なぜなら、妹のBちゃん(3歳)のおたふくかぜワクチンは未接種、流行性耳下腺炎罹患の既往はないため。つまり、免疫を持っていないためAちゃんから感染する可能性がある。
3.× Aちゃんはプレイルームで遊べない。なぜなら、流行性耳下腺炎の感染の拡大が懸念されるため。流行性耳下腺炎の感染経路は、主に①飛沫感染、②接触感染である。また、感染力のある期間は、発症3日前~発症後4日までである。
4.× 「Aちゃん」は病室内でガウンを着る必要はない。ガウンなどの個人防護具は、「Aちゃん」ではなく、患児に接する医療従事者などが着るべきである。患児が必要不可欠時に移動をする場合には、サージカルマスクの着用と、十分な手洗いをして感染予防をする。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aちゃん(5歳、男児)は、2日前に39℃に発熱して両側の耳下腺部の痛みを訴えた。昨日から同部位の腫脹がみられ、頭痛を訴えている。夜間に嘔吐が4回あり、発熱と頭痛が持続したため、本日父親に連れられて来院し、髄膜炎の疑いで個室に入院した。通っている幼稚園には、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)罹患児が数名いる。
 既往歴:特記すべきことはない。
 予防接種歴:年齢相応の定期接種はすべて済んでいる。おたふくかぜワクチンは未接種である。
 家族歴:両親は流行性耳下腺炎罹患の既往がある。妹のBちゃん(3歳)は、年齢相応の定期予防接種は済んでいるが、おたふくかぜワクチンは未接種である。また、流行性耳下腺炎罹患の既往はない。
 身体所見:体温39.2 ℃、項部硬直あり。両側耳下腺部の腫脹と圧痛あり。胸部聴診で異常なし。腹部は平坦で軟、圧痛なし。Kernig(ケルニッヒ)徴候あり。
 検査所見:白血球8,760/μL。血清アミラーゼ834 U/L (基準44〜132)、CRP 0.1mg/dL。

102 Aちゃんは入院の翌日も発熱が続いたが、頭痛は軽減し嘔気は消失したため経口摂取を開始した。入院3日、体温は微熱となり食欲が回復したことから、翌日の退院が決定した。耳下腺は縮小しつつあるが圧痛がある。父親から看護師へ「退院後、何か注意することはありますか」と質問があった。
 父親への看護師の回答で適切なのはどれか。

1.「Aちゃんの精巣の腫れに注意してください」
2.「Aちゃんは退院後1週間は登園できません」
3.「Aちゃんの耳の聴こえ方に注意してください」
4.「AちゃんからBちゃんへの感染予防には明日までのワクチン接種が効果的です」

解答3

解説

本症例のポイント

・入院翌日:頭痛軽減、嘔気消失、経口摂取開始。
・入院3日:体温は微熱、食欲回復。
・翌日:退院が決定
・耳下腺:縮小、圧痛あり。
・父親から「退院後、何か注意することはありますか」と。
→ムンプス髄膜炎とは、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の原因であるムンプスウイルスによって引き起こされる髄膜炎を指す。流行性耳下腺炎を発症すると耳下腺の腫れのほか、ときに髄膜炎や難聴、精巣炎などの合併症を引き起こすことがある。流行性耳下腺炎の感染経路は、主に①飛沫感染、②接触感染である。感染力のある期間は、発症3日前~発症後4日までである。

1.× Aちゃんの精巣の腫れに注意をする必要はない。なぜなら、ムンプスの合併症である精巣炎は、思春期以降の罹患者に多いため。また、現在のAちゃんは体温も微熱であり、回復期に入っているため、今後精巣炎を発症する可能性は低いと考えられる。
2.× Aちゃんの登園は、退院後1週間以内には登園できる可能性が高い。『学校保健安全法施行規則 第19条2項二』において、「(出席停止の期間の基準)流行性耳下腺炎にあつては、耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後五日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで」と記載されている(※一部引用:「学校保健安全法施行規則」e-GOV法令検索様HPより)。Aちゃんは現在、耳下腺が腫脹して4日目であるため、退院後1週間以内には登園できるようになると思われる。
3.〇 正しい。「Aちゃんの耳の聴こえ方に注意してください」と指導する。なぜなら、流行性耳下腺炎を発症すると耳下腺の腫れのほか、ときに髄膜炎や難聴、精巣炎などの合併症を引き起こすことがあるため。多くは回復期に顕在化するため、退院後に難聴が発生していないか注意深く見守る必要がある。ムンプス難聴は、従来は発生率が低いものと認識されていたが、日本耳鼻咽喉科学会による近年の全国調査で、2年間のうちに300例以上発症していることが報告された。ムンプス難聴は片側性が多いものの不可逆性であり、一生涯にわたり後遺症として残るため、ムンプスをワクチン接種により予防することが重要である。
4.× AちゃんからBちゃんへの感染予防に、「明日までのワクチン接種」が効果的とはいえない。なぜなら、ワクチンを接種して抗体ができるまでは、約2週間ほどかかるため。

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aちゃん(7歳、女児、小学1年生)は、3歳ころから夜間就寝中や保育所の昼寝の時に時々いびきがあり、保育所の友達に「Aちゃんがうるさくて眠れない」と言われた。母親が心配してAちゃんを小児科外来に連れて行った。その後、Aちゃんは外来で経過観察されてきたが、今年の4月から7月までの間に、急性扁桃炎を3回起こしていることや、睡眠時無呼吸がみられるようになったことから、8月中に扁桃腺摘出術を受けることになった。

103 定期外来の受診時に、手術が決まったことが医師からAちゃんに伝えられた。
 Aちゃんは「なんで手術するの」と涙ぐんでいる。
 扁桃腺摘出術を受けるAちゃんに対する看護師の説明で適切なのはどれか。

1.「寝ているときに息を止めてしまうことがあるからだよ」
2.「のどにいる悪い虫をとるためだよ」
3.「のどにお熱があるからだよ」
4.「いびきが大きいからだよ」

解答1

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(7歳、女児、小学1年生)
・3歳ころ:時々いびきがあり。
・4~7月までの間:急性扁桃炎を3回、睡眠時無呼吸がみられるように。
・8月中:扁桃腺摘出術を受ける予定。
・Aちゃん「なんで手術するの」と涙ぐんでいる。
→睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に無呼吸が繰り返され、睡眠の分断化、睡眠の減少により日中過度の眠気などを伴う病態である。子どもの睡眠時無呼吸症候群は、扁桃腺やアデノイド(鼻から喉へ向かう部分にあるリンパ腺)の肥大だけでなく、あごが小さいことや花粉症・アレルギー性鼻炎での鼻づまりが原因となって起こる。

1.〇 正しい。「寝ているときに息を止めてしまうことがあるからだよ」と伝えるのは、手術が必要な理由が分かりやすく、偽りのない説明である。また、7歳は「息を止めること」=「命に危険なこと」という理解もできる。
2~3.× 「のどにいる悪い虫をとるためだよ」「のどにお熱があるからだよ」と伝える必要ない。なぜなら、「悪い虫」「お熱」という表現は例えでも嘘となるため。
4.× 「いびきが大きいからだよ」と伝える必要ない。なぜなら、「いびきが大きい」からといって、必ずしも手術が必要ではないため。今回のAちゃんのケースでは、睡眠時無呼吸がみられ、扁桃腺摘出術を受ける予定となっている。

 

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aちゃん(7歳、女児、小学1年生)は、3歳ころから夜間就寝中や保育所の昼寝の時に時々いびきがあり、保育所の友達に「Aちゃんがうるさくて眠れない」と言われた。母親が心配してAちゃんを小児科外来に連れて行った。その後、Aちゃんは外来で経過観察されてきたが、今年の4月から7月までの間に、急性扁桃炎を3回起こしていることや、睡眠時無呼吸がみられるようになったことから、8月中に扁桃腺摘出術を受けることになった。

104 手術後1日。Aちゃんはベッド上で、静かにぬり絵をして遊んでいたが、昼食時には黙って涙ぐみ、食事や水分も摂ろうとしない。付き添っている母親は「痛くて食べられないようです」と看護師に言った。Aちゃんのバイタルサインは、体温37.6℃、血圧100/60mmHg。
 看護師がAちゃんの痛みを把握するのに最も適切な方法はどれか。

1.Aちゃんの表情を観察する。
2.母親にAちゃんの痛みの様子を聞く。
3.Aちゃんに痛みの程度を話してもらう。
4.Aちゃんに痛みスケールを使って示してもらう。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(7歳、扁桃腺摘出術後)
・手術後1日
・昼食時:黙って涙ぐみ、食事や水分も摂ろうとしない。
・母親「痛くて食べられないようです」と。
体温37.6℃、血圧100/60mmHg。
→Aちゃんは痛みで黙って涙ぐみ、食事や水分も摂ろうとしない。つまり、話したり口を動かすだけでも痛みが生じていると考えられる。したがって、現在の痛みの評価が必要である。フェイススケールは、3歳以上の子どもに使用可能であり、0~5までの顔の表情を指さしてもらう。顔の表情がいくつか並んでいるなかから、今の痛みの状況を表すのに一番ふさわしいと思うものを選んでもらう小児では有用性が確認されているが、成人では気分が影響しやすいので通常は用いない。

1~2.× Aちゃんの表情を観察する/母親にAちゃんの痛みの様子を聞くだけでは不十分である。なぜなら、表情の観察だけでは、観察者の主観的な評価の割合が大きいため。痛みは主観的なものであり、Aちゃん(7歳)は痛みについて正確に伝えることが難しいと考えられる。
3.× Aちゃんに痛みの程度を話してもらう優先度は低い。なぜなら、Aちゃん(7歳)は、昼食時に黙って涙ぐみ、食事や水分も摂ろうとしないため。つまり、話したり口を動かすだけでも痛みが生じていると考えられる。したがって、Aちゃん(7歳)に話してもらうのは、負担(ストレス)がかかりすぎると考えられる。
4.〇 正しい。Aちゃんに痛みスケールを使って示してもらう。なぜなら、現在Aちゃんは痛みで黙って涙ぐみ、食事や水分も摂ろうとしないため。つまり、話したり口を動かすだけでも痛みが生じていると考えられる。したがって、現在の痛みの評価が必要である。フェイススケールは、3歳以上の子どもに使用可能であり、0~5までの顔の表情を指さしてもらう。顔の表情がいくつか並んでいるなかから、今の痛みの状況を表すのに一番ふさわしいと思うものを選んでもらう小児では有用性が確認されているが、成人では気分が影響しやすいので通常は用いない。

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは?

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは、叙述的経過記録方式の問題志向型記録のことである。

S=主観的データ(自覚症状などの患者の訴え)
O=客観的データ(他覚所見:診察所見・血液検査・検査所見)
A=評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)
P=計画(Aをもとにした今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)

で、経過を記録する。

 

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aちゃん(7歳、女児、小学1年生)は、3歳ころから夜間就寝中や保育所の昼寝の時に時々いびきがあり、保育所の友達に「Aちゃんがうるさくて眠れない」と言われた。母親が心配してAちゃんを小児科外来に連れて行った。その後、Aちゃんは外来で経過観察されてきたが、今年の4月から7月までの間に、急性扁桃炎を3回起こしていることや、睡眠時無呼吸がみられるようになったことから、8月中に扁桃腺摘出術を受けることになった。

105 手術後1日。
 看護師が行うAちゃんの術後出血の観察方法で適切なのはどれか。

1.口を開けて手術創を観察する。
2.唾液の色を観察する。
3.便の色を観察する。
4.脈拍数を測定する。

解答2

解説

扁桃腺摘出術とは?

扁桃腺摘出術とは、喉の後ろから両方の口蓋扁桃を完全に除去する外科的処置である。この手術は主に再発性咽頭感染症閉塞性睡眠時無呼吸の患者を対象におこなわれる。学童期の子どもに多い手術である。扁桃は、咽頭に位置するリンパ組織であり、外界からの病原体などの異物の侵入に対して、活発な防御行動を行っている。成長とともに肥大するが、6~7歳をピークに退縮する。そのようななかで、急性炎症が高度な場合や慢性炎症が持続する場合、肥大により上気道を閉塞し睡眠時無呼吸が生じる場合には、全身麻酔下で摘出術を行う。手術創が開放創であることから、術後1週間は出血に注意が必要である。また、嚥下時、開口時、会話時や啼泣時に疼痛が生じる。

1.× 口を開けて手術創を観察することは、慎重に行うべきか行わない方が良い。なぜなら、現在手術後1日で、Aちゃんに痛みが生じると予測されるため。
2.〇 正しい。唾液の色を観察する。なぜなら、手術創が開放創であることから、術後1週間は出血に注意が必要であるため。唾液に血液が混ざっていないか確認する。
3.× 便の色を観察する優先度は低い。あえて便の色で確認するより、唾液の色で確認するほうが容易かつ迅速であるため。ちなみに、タール便であれば、消化管の出血が考えられる。タール便(黒色軟便)とは、胃潰瘍など上部消化管出血のときに排出される血便の一種である。一般的に食道、胃、十二指腸からの出血は、ヘモグロビンの鉄が胃酸で酸化されるため起こる。
4.× あえて、脈拍数だけを測定する優先度は低い。なぜなら、脈拍数に変化を生じさせる要因には出血以外も考えられるため。

 

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