第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午後11~15】

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11 大腸で吸収されるのはどれか。

1.脂質
2.水分
3.糖質
4.蛋白質

解答2

解説

1.3〜4.× 脂質(脂肪酸)/糖質(ブドウ糖)/蛋白質(アミノ酸)は、小腸で吸収される。脂質は、胆汁(肝臓から分泌される)に含まれる胆汁酸塩とレシチンによって乳化され、膵リパーゼにより分解される。糖質は、唾液、膵液、腸液に含まれる酵素によって分解される。蛋白質は、胃液、膵液、腸液に含まれる酵素によって分解される。小腸の粘膜層からは消化酵素が分泌され、アミノ酸、ブドウ糖、グリセリド、脂肪酸などの最終的な分解物に消化する。そして、この食物と消化液のまざったものを、収縮と弛緩を繰り返し、移動させながら吸収する。
2.〇 正しい。水分は、大腸で吸収される。ただし、小腸で80~90%が吸収され、残りの10~20%が大腸で吸収される。他にも大腸ではミネラルを吸収し、便を作る働きをしている。ちなみに、大腸の長さは1.5メートルほどで、①盲腸、②結腸、③直腸に分けられる。

 

 

 

 

 

12 三叉神経の機能はどれか。

1.視覚
2.眼球の運動
3.顔面の知覚
4.表情筋の運動

解答3

解説

MEMO

三叉神経は、主に咀嚼筋の咀嚼運動と顔面の皮膚感覚を司る。運動神経と感覚神経を含む。咀嚼筋とは、下顎骨の運動(主に咀嚼運動)に関わる筋肉の総称である。咀嚼筋は一般的に、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4種類が挙げられる。咀嚼筋は、主にⅤ:三叉神経支配である。

1.× 視覚は、視神経の機能である。視覚の伝導路は、視神経→視交叉→視索→外側膝状体→視放線→後頭葉(視覚野)である。
2.× 眼球の運動は、動眼神経(内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋)、滑車神経(上斜筋)、外転神経(外側直筋)の機能である。
3.〇 正しい。顔面の知覚は、三叉神経の機能である。三叉神経は、主に咀嚼筋の咀嚼運動と顔面の皮膚感覚を司る。
4.× 表情筋の運動は、顔面神経の機能である。他にも、涙腺や口蓋腺などの分泌作用制御の副交感神経、および味覚を司る感覚神経を含む混合神経である。したがって、顔面神経の障害により、顔面表情筋の障害、角膜反射低下、聴覚過敏、味覚低下(舌前2/3)、涙分泌低下、唾液分泌低下などが起こる。

眼球運動の筋と支配神経

【眼球運動:筋】
外側:外直筋
内側:内直筋
外上方:外直筋+上直筋
内上方:内直筋+下斜筋
外下方:外直筋+下直筋
内下方:内直筋+上斜筋

【支配神経】
①動眼神経:内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋
②滑車神経:上斜筋
③外転神経:外側直筋

 

 

 

 

13 脂肪分解酵素はどれか。

1.ペプシン
2.リパーゼ
3.マルターゼ
4.ラクターゼ

解答2

解説

1.× ペプシンは、胃液に含まれる蛋白質を基質として分解する酵素である。ペプシンは、胃底腺の主細胞の分泌物に由来するタンパク分解酵素である。胃主細胞から分泌されたペプシノーゲンは、壁細胞が分泌する塩酸によりペプシンとなる。
2.〇 正しい。リパーゼは、脂肪分解酵素である。主に膵液に含まれる。
3.× マルターゼは、マルトースをグルコースに分解する酵素である。つまり糖を分解する。膵液・腸液に含まれる。
4.× ラクターゼは、ラクトースをグルコースとガラクトースに分解する酵素である。つまり糖を分解する。腸液に含まれる。

 

 

 

 

 

14 尿ケトン体が陽性になる疾患はどれか。

1.肝硬変
2.糖尿病
3.尿路感染症
4.ネフローゼ症候群

解答2

解説

尿ケトンとは?

尿ケトン体とは、体内で脂質が代謝される際に生成される物質で、主に脂肪を燃焼するために使用される。特に、低糖質ダイエットや糖尿病の治療において、尿中に検出されることが多い。ちなみに、健常人の尿中ケトン体(主にアセト酢酸)は2mg/dL以下である。

1.× 肝硬変は、尿ケトン体が陽性とならない。肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。肝機能の低下によりアンモニア代謝能力が低下し、血中のアンモニアが高値となる。
2.〇 正しい。糖尿病は、尿ケトン体が陽性になる。なぜなら、エネルギー源となるブドウ糖を、十分に利用できない糖尿病の患者さんは、代わりに脂肪を燃焼させているため。 この時、燃えかすとしてできるのがケトン体である。そもそも糖尿病は、インスリン作用不足によりグルコースが利用できなくなる疾患である。エネルギーを産生するために脂肪の代謝が亢進し、これにより尿ケトン体が陽性となる。ケトン体が著しく増加するとケトアシドーシスという。ケトアシドーシスとは、脂肪分解亢進によるケトン体の蓄積からアシドーシスが生じ、脱水・意識障害(重症になると昏睡)をきたす。糖尿病では、高度のインスリン作用不足という病態が原因である。
3.× 尿路感染症は、尿ケトン体が陽性とならない。尿路感染症とは、尿道、膀胱、腎臓などの尿路に細菌などが感染し、炎症を引き起こす病気のことである。主に女性に多く見られ、症状としては尿の頻度や痛み、燃焼感、血尿などがある。治療には抗生物質を使用し、治療期間は一般的に約1週間程度である。尿白血球は陽性となる。
4.× ネフローゼ症候群は、尿ケトン体が陽性とならない。ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。血液中のタンパクが減り(低たんぱく血症)、その結果、むくみ(浮腫)が起こる疾患である。尿蛋白は陽性となる。

糖尿病とは?

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

尿路感染症とは?

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」より)

 

 

 

 

15 下痢によって生じやすい電解質異常はどれか。

1.低カリウム血症
2.高カルシウム血症
3.高ナトリウム血症
4.低マグネシウム血症

解答1

解説

電解質異常とは?

電解質異常とは、体内の電解質バランスが崩れることによって引き起こされる病気のことである。電解質とは、体内の液体に存在するイオン(带電粒子)のことで、主なものにナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)などがある。電解質異常は、体液の浸漏や脱水、腎臓や腸の異常、薬剤などによって引き起こされる。症状は異常によって異なる。

1.〇 正しい。低カリウム血症は、下痢によって生じやすい電解質異常である。なぜなら、カリウムは、消化管液に含まれており、下痢によりカリウムが喪失するため。原因として、嘔吐下痢副腎の病気利尿薬の使用で起こる。血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL未満(2.20mmol/L未満)で診断される。
2.× 高カルシウム血症とは、血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか,または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態である。症状は多尿、便秘、筋力低下、錯乱、昏睡がある。副甲状腺機能亢進症やがんの骨転移、ビタミンDの過剰投与などでみられる。
3.× 高ナトリウム血症とは、血清ナトリウム濃度が145mEq/Lを上回る状態である。体内の総ナトリウム量に対して体内総水分量が不足していることを意味し、水分摂取量が水分喪失量よりも少ないことにより引き起こされる。主な症状は口渇である。下痢による水分喪失で高ナトリウム血症になることもあるが、低カリウム血症のほうがよくみられる。
4.× 低マグネシウム血症とは、血清マグネシウム濃度が1.8mg/dL(0.70mmol/L)未満となった状態である。 原因には、マグネシウムの摂取不足および吸収不足や、高カルシウム血症またはフロセミドなどの薬物による排泄増加がある。

ループ利尿薬とは?

ループ利尿薬は、主にヘンレループにおける再吸収を抑える作用(薬剤によってはヘンレループ以外の部位の再吸収も抑える)により尿量を増やし体内の過剰な水分を排泄することで、ナトリウムの排泄を促しむくみを改善する。降圧薬としても用いられ、心不全などに適応となる。他の利尿薬と比較すると、効果持続は短いが、利尿作用が強く、心不全や腎不全を伴う高血圧に有用である。デメリットとして、低カリウム血症や脱水症状の恐れがある。

 

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