第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午前61~65】

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61 妊娠37週の妊婦の胎児心拍数陣痛図の所見で正常なのはどれか。

1.胎児心拍数基線が110〜160bpmである。
2.胎児心拍数基線細変動を認めない。
3.一過性頻脈を認めない。
4.一過性徐脈を認める。

解答1

解説

胎児心拍数陣痛図とは?

胎児心拍数陣痛図とは、分娩監視装置による胎児心拍数と陣痛の連続記録であり、子宮収縮に対する胎児の心拍数変化により胎児の状態を推測するものである。胎児心拍数パターンをみるときは、①心拍数(基線の高さ)、②心拍数の細かい変動(基線細変動)、③胎動や子宮収縮に対する心拍数の変化(一過性変動)の3点についてチェックする。

1.〇 正しい。胎児心拍数基線が110〜160bpmである。胎児心拍数基線とは、10分間の区間の平均心拍数である。正常値は110〜160bpmとされ、160bpm以上になると頻脈、110bpm以下の場合は徐脈と判断される。
2.× 正常胎児は、胎児心拍数基線細変動を認める。胎児心拍数基線細変動とは、胎児心拍数基線の細かい変動で、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動で、振幅、周波数とも規則性がないものを指す。基線細変動の減少・消失していた場合、異常所見である。
3.× 正常胎児は、一過性頻脈を認める。一過性頻脈とは、胎児が体を動かすとき(胎動があるとき)、一時的に心拍数が多くなることをいい、一定範囲で出るのが正常である。一過性の胎児心拍数変動で、多くは子宮収縮、胎動などに関連して出現する。心拍数が開始からピークまで30秒未満の急速な増加で開始から頂点までが15bpm以上、元に戻るまでの持続が15秒以上2分未満のものをいう。
4.× 正常胎児は、一過性徐脈を認めない。分娩が進行していない状況では,一過性徐脈がないことと、胎児が元気である条件となる。なお、分娩が進行し、児頭圧迫により子宮収縮と連動して早発一過性徐脈が認められるのは、生理的反応である。早発一過性徐脈とは、子宮収縮にともなって心拍数の減少の開始から最下点まで30秒以上の経過でゆるやかに下降し、子宮収縮の消退にともなってゆるやかに元に戻る徐脈のことをいう。一過性徐脈の最下点が子宮収縮の最強点と概ね一致しているものをいう。

胎児心拍数陣痛図の基準値

胎児心拍数基線は、10分間の区間の平均心拍数で5の倍数で表現する。基線は一過性変動部分や基線細変動増加の部分は除外し、2分間以上持続している部分で判断する。胎児心拍数基線細変動は、胎児心拍数基線が判読可能な部分で判読する。基線細変動は、胎児心拍数基線の細かい変動で、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動で、振幅、周波数とも規則性がないものを指す。

①胎児心拍数基線
・頻脈:160bpm以上
・正常脈:110bpm~160bpm
・徐脈:110bpm未満

②胎児心拍数基線細変動
・細変動消失:肉眼的に認められない
・細変動減少:5bpm以下
・細変動中等度:6~25bpm
・細変動増加:26bpm以上

 

 

 

 

 

62 子宮復古状態を観察する手順で正しいのはどれか。

1.観察は排尿前に行う。
2.褥婦にはFowler(ファウラー)位をとってもらう。
3.褥婦の膝を伸展させて子宮底の高さを測定する。
4.子宮底長は恥骨結合下縁から測定する。

解答3

解説

子宮復古状態とは?

子宮復古とは、妊娠・分娩によって生じたこれらの変化が、分娩後、徐々に妊娠前の状態に戻ることである。子宮復古状態は、腹壁上から触知する子宮の位置や硬さ、子宮底長、悪露の色と量、後陣痛の強さの訴えなどから判断できる。特に、直接子宮の状態を観察できる触診、子宮底長の情報は重要である。

1.× 観察は、「排尿前」ではなく排尿後に行う。排尿後、褥婦には仰臥位、両膝を立てた姿勢で行う。なぜなら、排尿前だと、膀胱が充満していると子宮位が上昇し、子宮底の正しい位置が測定できないため。
2.× 褥婦には、「Fowler(ファウラー)位」ではなく仰臥位をとってもらう。なぜなら、ファウラー位では、重力の影響を受けて腹部臓器などが下垂し、子宮底の正しい位置が測定できないため。褥婦には仰臥位、両膝を立てた姿勢で行う。ちなみに、ファウラー位とは、仰臥位で下肢を水平にしたまま上半身を45度程度上げた半座位のことである。
3.〇 正しい。褥婦の膝を伸展させて子宮底の高さを測定する。恥骨結合上縁を確認し、その部分を基点として巻尺の「0」を合わせる。もう片方の手で子宮底を触診し、両脚を伸ばしてもらった状態で巻尺を合わせ、子宮底長を測定する。
4.× 子宮底長は、「恥骨結合下縁」ではなく恥骨結合上縁から測定する。恥骨結合上縁を確認し、その部分を基点として巻尺の「0」を合わせる。もう片方の手で子宮底を触診し、両脚を伸ばしてもらった状態で巻尺を合わせ、子宮底長を測定する。

子宮復古ケアの手順

①排尿後、褥婦は仰臥位で、両膝を立てる。なぜなら、排尿前だと、膀胱が充満していると子宮位が上昇し、正しい位置が測定できないため。
②手袋をはめ、子宮底を触診し、子宮硬度を確認する。
③柔軟である場合、輪状マッサージを施し、硬度が良好であるか観察する。一緒に外陰部からの流血の有無も観察する。特に分娩直後は頚管裂傷・膣壁裂傷との鑑別をするために流血の持続の有無、出血の色を観察する。
④恥骨結合上縁を確認し、その部分を基点として巻尺の「0」を合わせる。
⑤もう片方の手で子宮底を触診し、両脚を伸ばしてもらった状態で巻尺を合わせ、子宮底長を測定する。
⑥あてていたナプキンの重さを量る(悪露の色・臭気を観察する)

 

 

 

 

63 正常に経過している妊娠36週の妊婦が、次に妊婦健康診査を受診する時期として推奨されるのはどれか。

1.4週後
2.3週後
3.2週後
4.1週後

解答4

解説

妊婦健康診査とは?

妊婦健康診査とは、妊婦さんや赤ちゃんの健康状態を定期的に確認するために行うものである。 そして、医師や助産師などに、妊娠・出産・育児に関する相談をして、妊娠期間中を安心して過ごしていただくことが大切である。病気の有無を調べることだけが妊婦健診ではない。妊娠期間中を心身ともに健康に過ごし、無事に出産を迎えるためには、日常生活や環境、栄養など、いろいろなことに気を配る必要がある。より健やかに過ごすために、妊娠検診を活用する必要がある。検診費用には、公費による補助制度がある。日本では、「母子保健法」により、14回程度の健康診査の回数が勧められており、健康診査の間隔や実施する検査内容について、国が基準を示している。

【妊婦健康診査の望ましい基準】
①妊娠23週まで:4週間に1回
②24週~35週:2週間に1回
③36週~出産まで:1週間に1回

1.× 4週後(4週間に1回)の健康診査は、妊娠初期から23週までの時期に推奨され行われる。
2.× 3週後(3週間に1回)の健康診査は、日本での妊娠時期による健康診査間隔として存在しない
3.× 2週後(2週間に1回)の健康診査は、妊娠24週から妊娠35週までの時期に行われる。
4.〇 正しい。1週後(1週間に1回)は、正常に経過している妊娠36週の妊婦が、次に妊婦健康診査を受診する時期として推奨される。

 

 

 

 

 

64 災害派遣精神医療チーム(DPAT)で正しいのはどれか。

1.厚生労働省が組織する。
2.被災地域の精神科医療機関と連携する。
3.発災1か月後に最初のチームを派遣する。
4.派遣チームの食事は被災自治体が用意する。

解答2

解説

災害派遣精神医療チーム(DPAT)とは?

 災害時には、災害ストレスの対応に特化した、専門的な研修・訓練を受けた災害派遣精神医療チーム(DPAT:Disaster Psychiatric Assistance Team)が組織される。DPATは、主に精神科医師・看護師・業務調査員などで構成される。先遣隊を構成する医師は、精神保健指定医でなければならない。先遣隊以外の班を構成する医師は、精神保健指定医であることが望ましい。構成員については、現地のニーズに合わせて、児童精神科医・薬剤師・保健師・精神保健福祉士や臨床心理技術者などを含めて適宜構成される。
 DPAT活動3原則として、以下のSSS(スリーエス)が挙げられる。①Self-sufficiency:自己完結型の活動、②Share:積極的な情報共有、③Support:名脇役であれ、である。

1.× 「厚生労働省」ではなく、都道府県および政令指定都市が組織する。
2.〇 正しい。被災地域の精神科医療機関と連携する。そのほか、精神保健医療ニーズの把握、各種関係機関などとのマネジメント、専門性の高い精神科医療の提供、精神保健活動の支援を行う。
3.× 「発災1か月後」ではなく、発災からおおむね48時間以内に最初のチームを派遣する。活動期間は、1週間を標準とし、必要に応じて同じ地域には同一の都道府県が数週間から数か月継続して派遣する。
4.× 派遣チームの食事は、「被災自治体」ではなく、原則として自らが用意する。食事の他にも、移動・通信・宿泊・健康管理・安全管理などは自ら確保し、自立した活動を行う。DPAT活動3原則として、以下のSSS(スリーエス)が挙げられる。①Self-sufficiency:自己完結型の活動、②Share:積極的な情報共有、③Support:名脇役であれ、である。

精神保健指定医とは?

精神保健指定医とは、「精神保健福祉法」に基づいて、精神障害者の措置入院・医療保護入院・行動制限の要否判断などの職務を行う精神科医のことである。原則として、精神科病院では,常勤の指定医を置かなければならない。臨床経験・研修などの要件を満たす医師の申請に基づいて厚生労働大臣が指定する。

 

 

 

 

65 平成16年(2004年)に示された精神保健医療福祉の改革ビジョンの内容で正しいのはどれか。

1.地域生活支援の強化
2.任意入院制度の新設
3.医療保護入院の明確化
4.精神障害者の定義の見直し

解答1

解説

精神保健医療福祉の改革ビジョンとは?

1 精神保健医療福祉改革の基本的考え方
(1)基本方針
①「入院医療中心から地域生活中心へ」というその基本的な方策を推し進めていくため、国民各層の意識の変革や、立ち後れた精神保健医療福祉体系の再編と基盤強化を今後10年間で進める。
②全体的に見れば入院患者全体の動態と同様の動きをしている「受入条件が 整えば退院可能な者(約7万人」については、精神病床の機能分化・地域 )生活支援体制の強化等、立ち後れた精神保健医療福祉体系の再編と基盤強化を全体的に進めることにより、併せて10年後の解消を図る。

具体的な目的は、①国民意識の変革、②精神医療体系の再編、③地域生活支援体系の再編、④精神保健医療福祉施策の基盤強化としている。「こころのバリアフリー宣言」などさまざまな施策が実施されている。その後、平成26(2014)年には改革継続・発展を目的として「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性」が取りまとめられている。

(※参考:「精神保健医療福祉の改革ビジョン(概要)」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。地域生活支援の強化は、平成16年(2004年)に示された精神保健医療福祉の改革ビジョンの内容である。基本方針は、「入院医療中心から地域生活中心へ」というその基本的な方策を推し進めていくため、国民各層の意識の変革や、立ち後れた精神保健医療福祉体系の再編と基盤強化を今後10年間で進める。
2.× 任意入院制度の新設は、昭和63(1988)年の『精神保健法』の改正で明文化された。平成7(1995)年からは『精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)』に改められている。
3.× 医療保護入院の明確化は、『精神保健福祉法』により定められた。
4.× 精神障害者の定義の見直しは、『精神保健福祉法(5条:定義)』において「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」と定められている(※一部引用:「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)とは?

①精神障害者の医療及び保護を行うこと、②障害者総合支援法とともに、精神障害者の社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うこと、③精神疾患の発生の予防や、国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律である。(参考:「精神保健福祉法について」厚生労働省HPより)

 

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