第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午後106~110】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初産婦)は妊娠39週3日で陣痛発来し、4時に入院した。その後、陣痛が増強して順調な分娩進行と診断されて、11時45分の診察で子宮口が8cm開大となった。看護師が12時に昼食を配膳にいくとAさんは額に汗をかいて、側臥位で「陣痛がつらくて何も飲んだり食べたりしたくありません」と言っている。陣痛発作時は強い産痛と努責感を訴え、目を硬く閉じて呼吸を止めて全身に力を入れている。

106 Aさんへの看護で最も適切なのはどれか。

1.坐位になるよう勧める。
2.シャワー浴を勧める。
3.食事摂取を促す。
4.呼吸法を促す。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(30歳、初産婦、順調な分娩進行)
・妊娠39週3日:陣痛発来、4時入院。
・11時45分:子宮口が8cm開大
・12時:発汗し側臥位で「陣痛がつらくて何も飲んだり食べたりしたくありません」と。
・陣痛発作時:強い産痛と努責感を訴え、目を硬く閉じて呼吸を止めて全身に力を入れている
→本症例は、強くいきんでいる(努責)のは時期尚早と考えられる。努責は分娩第2期以降が望ましい。早いタイミングで努責(いきみ)を行うと産道に傷がついたり赤ちゃんの頭に無理がかかったりする。分娩第1期は呼吸法や肛門圧迫で努責(いきみ)を逃す。Aさんの子宮口は、「8cm開大」であり全開大(約10cm)していないことから、分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大まで)と考えられる。陣痛時にいきみを生じていることから体位を変えていきみを逃しつつお産が進むようにして経過を観察する。

1.× 坐位になるよう勧める必要はない。なぜなら、安楽な体位は本人によって異なるため。ある報告によると、分娩第1期は、自由な姿勢で過ごしても、仰臥位で過ごしてもどちらでもよいとされた。分娩第1期は、体位を変えていきみを逃しつつお産が進むようにして経過を観察する。
2.× あえてシャワー浴を勧める必要はない。なぜなら、Aさんは「強い産痛努責感を訴え、目を硬く閉じて呼吸を止めて全身に力を入れている」状態であるため。順調な分娩進行中で破水前であれば、シャワー浴は可能であるが、現在のAさんの状況を考慮すると優先度は低い。ただしシャワー浴は、身体を温め循環を促し、リラックスされ分娩進行を促す効果が期待できる。
3.× 食事摂取を促す必要はない。なぜなら、Aさんは「強い産痛努責感を訴え、目を硬く閉じて呼吸を止めて全身に力を入れている」状態であるため。現在のAさんの状況を考慮すると優先度は低い。ただし食事摂取(エネルギー摂取・水分摂取)は、子宮筋の収縮運動である陣痛を促し、分娩中の代謝を補う効果が期待できる。
4.〇 正しい。呼吸法を促すのは、Aさんへの看護で最も適切である。本症例は、強くいきんでいる(努責)のは時期尚早と考えられる。努責は分娩第2期以降が望ましい。早いタイミングで努責(いきみ)を行うと産道に傷がついたり赤ちゃんの頭に無理がかかったりする。分娩第1期は呼吸法や肛門圧迫で努責(いきみ)を逃す。Aさんの子宮口は、「8cm開大」であり全開大(約10cm)していないことから、分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大まで)と考えられる。陣痛時にいきみを生じていることから体位を変えていきみを逃しつつお産が進むようにして経過を観察する。①いきみたくなるまで、フーフー呼吸(3秒かけて鼻から吸い、3秒かけて口から吐く)を行い、②いきみたくなったら、フーウン呼吸(3秒かけて口から吐き、息を吐ききったら「ウン」と同時に力を抜く)を行う。

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初産婦)は妊娠39週3日で陣痛発来し、4時に入院した。その後、陣痛が増強して順調な分娩進行と診断されて、11時45分の診察で子宮口が8cm開大となった。看護師が12時に昼食を配膳にいくとAさんは額に汗をかいて、側臥位で「陣痛がつらくて何も飲んだり食べたりしたくありません」と言っている。陣痛発作時は強い産痛と努責感を訴え、目を硬く閉じて呼吸を止めて全身に力を入れている。

107 Aさんは16時15分、3.300gの男児を経膣分娩で出産した。Apgar〈アプガー〉スコアは1分後9点。胎盤娩出直後から凝血の混じった暗赤色の性器出血が持続している。この時点での出血量は600mL。臍高で柔らかい子宮底を触れた。脈拍90/分、血圧116/76mmHg。意識は清明。Aさんは「赤ちゃんの元気な泣き声を聞いて安心しました」と言っている。
 このときの看護師のAさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.子宮底の輪状マッサージを行う。
2.膀胱留置カテーテルを挿入する。
3.水分摂取を促す。
4.全身清拭を行う。

解答1

解説

本症例のポイント

・16時15分:3.300gの男児(経膣分娩で出産)
・アプガースコア:1分後9点
胎盤娩出直後から凝血の混じった暗赤色の性器出血が持続出血量:600mL
・臍高で柔らかい子宮底を触れた。
・脈拍90/分、血圧116/76mmHg。意識清明。
・Aさん「赤ちゃんの元気な泣き声を聞いて安心しました」と。
→本症例は、胎盤娩出直後から凝血の混じった暗赤色の性器出血が持続出血量:600mL)していることから、「弛緩出血」が疑われる。弛緩出血とは、児と胎盤の娩出後、本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血が続く状態である。原因は、多胎妊娠や巨大児による子宮の過伸展、子宮収縮剤の長時間投与、長引く分娩による母胎の疲労、子宮奇形などの体質によるもの、子宮内の凝血塊の遺残、全身麻酔などが挙げられる。弛緩出血が起きたときには、子宮収縮を促すためオキシトシンなどの子宮収縮剤の投与や、子宮マッサージが行われる。子宮底部の輪状マッサージとは、子宮筋を刺激して、子宮収縮を促進させるマッサージである。 排尿・排便を定期的に促し、膀胱・直腸充満からの圧迫による子宮収縮不全を防止する。早期離床を促し、悪露の貯留による子宮収縮不全を防止する。

1.〇 正しい。子宮底の輪状マッサージを行うのは、看護師のAさんへの対応で最も適切である。なぜなら、本症例は、胎盤娩出直後から凝血の混じった暗赤色の性器出血が持続出血量:600mL)していることから、「弛緩出血」が疑われるため。弛緩出血とは、児と胎盤の娩出後、本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血が続く状態である。原因は、多胎妊娠や巨大児による子宮の過伸展、子宮収縮剤の長時間投与、長引く分娩による母胎の疲労、子宮奇形などの体質によるもの、子宮内の凝血塊の遺残、全身麻酔などが挙げられる。弛緩出血が起きたときには、子宮収縮を促すためオキシトシンなどの子宮収縮剤の投与や、子宮マッサージが行われる。子宮底部の輪状マッサージとは、子宮筋を刺激して、子宮収縮を促進させるマッサージである。 排尿・排便を定期的に促し、膀胱・直腸充満からの圧迫による子宮収縮不全を防止する。早期離床を促し、悪露の貯留による子宮収縮不全を防止する。
2.× 膀胱留置カテーテルを挿入する優先度は低い。なぜなら、設問文に排尿の状態が分かる記載がないため。分娩後は排尿を促し尿意の確認などを行うべきであるため。膀胱留置カテーテルの適応として、①尿閉(膀胱内に貯留している尿を排泄できない状態)、②緊急帝王切開術時、③分娩第4期に多量出血を認めた場合には、膀胱留置カテーテルを留置する。分娩進行中は下降した児頭による尿道・膀胱の圧迫により、尿意があっても自己にて排尿できない場合や、膀胱神経麻痺が起こり自己にて排尿を行うことができない場合、産婦が痛みで移動できず自然排尿を行えない場合がある。まずは排尿を促し、それでも排尿がなかった場合は主治医と相談する。
3~4.× 水分摂取を促す/全身清拭を行う優先度は低い。なぜなら、Aさんは「弛緩出血」が疑われそれに対する処置が優先されるため。ただし、一般的な分娩においては、消耗した体力・発汗による水分を回復するためエネルギー・水分補給を勧め、尿意がなくても3~4時間ごとに排尿を試みて、自然排尿がない場合に導尿を行う。分娩時の膀胱過伸展などで一過性の尿閉をきたすことがある。

 

(※画像引用:ナース専科様HPより)

 

 

 

 

 

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初産婦)は妊娠39週3日で陣痛発来し、4時に入院した。その後、陣痛が増強して順調な分娩進行と診断されて、11時45分の診察で子宮口が8cm開大となった。看護師が12時に昼食を配膳にいくとAさんは額に汗をかいて、側臥位で「陣痛がつらくて何も飲んだり食べたりしたくありません」と言っている。陣痛発作時は強い産痛と努責感を訴え、目を硬く閉じて呼吸を止めて全身に力を入れている。

108 Aさんの分娩経過は以下のとおりであった。
    2時00分 陣痛周期10分
    4時00分 入院
    15時00分 分娩室入室
    15時30分 子宮口全開大
    16時00分 自然破水
    16時15分 児娩出
    16時30分 胎盤娩出

Aさんの分娩所要時間はどれか。

1.12時間30分
2.14時間15分
3.14時間30分
4.16時間30分

解答3

解説

本症例のポイント

・2時00分:陣痛周期10分
・16時30分 胎盤娩出
→分娩時間は、陣痛発来(陣痛周期が10分間隔)から胎盤娩出までの時間である。陣痛とは、子宮の収縮が規則的に1時間に6回以上(間隔が 10 分以内)になったときである。つまり、分娩所要時間は、分娩第1期から第3期までの合計時間となる。

本症例の場合、①2時00分:陣痛周期10分から②16時30分:胎盤娩出までであるため、選択肢3.14時間30分となる。

陣痛周期

陣痛周期が10分以内、または1時間に6回以上の頻度で認める場合、陣痛発来(分娩開始)とする。
分娩第1期:分娩開始から子宮口全開大まで。
分娩第2期:子宮口全開大から児娩出まで。
分娩第3期:児娩出から胎盤娩出まで。

【初産と経産の一般的な分娩時間】
初産婦は第1期が10~12時間、第2期が1.5~2時間、第3期が15~30分。
経産婦は第1期が4~6時間、第2期が30分~1時間、第3期が10~20分である。

 

 

 

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、男性)は、仕事上のストレスを抱えていた際に知人から誘われ、覚せい剤を常用するようになり逮捕された。保釈後、薬物依存症の治療を受けることができる精神科病院に入院し、治療プログラムに参加することになった。

109 入院時のAさんへの看護師の対応として適切なのはどれか。

1.二度と使用しないと約束させる。
2.回復が期待できる病気であることを伝える。
3.使用をやめられなかったことに対する反省を促す。
4.自分で薬物を断ち切る強い意志を持つように伝える。

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、男性)
・仕事上のストレスを抱えていた。
・知人から誘われ、覚せい剤を常用し逮捕。
・保釈後:薬物依存症の治療開始。
→薬物依存症とは、①薬物をくりかえし使いたい、②使っていないと不快になるため使い続ける、③やめようと思ってもやめられないという状態で、日常生活に支障が出て、薬物を手に入れるためになりふりかまわなくなる。薬物依存を含む依存症は、脳の病気と言われており、依存から脱却するのは容易ではない。依存症で有効な集団(精神)療法、認知行動療法、内観療法などが行われ、周りのサポートが重要である。周りの人は、①叱責や処罰は逆効果になったり、②一人で抱え込まないよう支援していく必要がある。

1.× 二度と使用しないと約束させる必要はない。なぜなら、依存症は「やめようと思ってもやめられない脳の病気」であるため。約束することで隠れて使用し嘘をついたり、周りを傷つけてしまう恐れもある。周囲がいくら責めても、本人がいくら反省や後悔をしても、また繰り返してしまうのは脳の問題なのである。決して「 根性がない」とか「意志が弱いから」ではない。(※参考:「依存症についてもっと知りたい方へ」厚生労働省HPより)
2.〇 正しい。回復が期待できる病気であることを伝えることは、入院時のAさんへの看護師の対応として適切である。薬物依存を含む依存症は、脳の病気と言われており、依存から脱却するのは容易ではない。しかし、様々な助けを借りながら、薬物を止め続けることで、依存症から回復することは可能である。回復するためには、薬物を「止め続ける」ことが必要である(※参考:「薬物乱用防止対策について」広島県HPより)。
3.× 使用をやめられなかったことに対する反省を促す必要はない。なぜなら、依存症は「やめようと思ってもやめられない脳の病気」であるため。できなかったときの責任追求は、気分の落ち込み自信喪失につながるため、叱責や処罰は逆効果になる。依存症で有効な集団(精神)療法、認知行動療法、内観療法などが行われる。
4.× 自分で薬物を断ち切る強い意志を持つように伝える必要はない。なぜなら、依存症は「やめようと思ってもやめられない脳の病気」であるため。意志だけではどうにもならなかったため、日常生活に支障が出る依存症となっている。周りのサポートが重要である。周りの人は、①叱責や処罰は逆効果になったり、②一人で抱え込まないよう支援していく必要がある。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、男性)は、仕事上のストレスを抱えていた際に知人から誘われ、覚せい剤を常用するようになり逮捕された。保釈後、薬物依存症の治療を受けることができる精神科病院に入院し、治療プログラムに参加することになった。

110 入院2週後、Aさんは病棟生活のルールを守ることができず、それを注意した看護師に対して攻撃的になることがあった。別の看護師がAさんに理由を尋ねると「指図するような話し方をされると、暴力的だった父親を思い出し、冷静でいられなくなる」と話した。
 このときAさんに起こっているのはどれか。

1.転移
2.逆転移
3.躁的防衛
4.反動形成

解答1

解説

本症例のポイント

・入院2週後:病棟生活のルールを守ることができない。
・注意した看護師に対して、攻撃的に。
・Aさん「指図するような話し方をされると、暴力的だった父親を思い出し、冷静でいられなくなる」と。
→Aさんは、昔の父を思い出し看護師に対し攻撃的になっている。転移とは、患者が今までの生活史における重要人物(親、学校の先生)に示してきた感情や態度を治療者に向けることを言い、一方、逆転移とは、治療者が患者に向けることである。

1.〇 正しい。転移がAさんに起こっている。Aさんは、昔の父を思い出し看護師に対し攻撃的になっている。転移とは、過去に両親などの重要な他者との間で生じさせた欲求、感情、葛藤、対人関係パターンなどを別の者に対して向けることである。転移には、①陽性転移と②陰性転移があり、①陽性転移は、信頼、愛情、感謝、尊敬などで、②陰性転移は、不信、恨み、敵意、攻撃性などをいう。陽性・陰性いずれも、解釈・分析することで患者の葛藤を知る手掛かりとなる。
2.× 逆転移とは、治療者が被治療者に対して無意識に自分の感情を向けてしまうことである。医療従事者が自殺未遂者に対して否定的な感情を向ける(陰性逆転移)と いうことがないように留意しなければいけない。
3.× 躁的防衛とは、防衛機制のひとつで、無理に明るいキャラクターを演じることなどで、気を紛らわせたり、悲しい気持ちに蓋をしたりすることをさす。わざと元気よく明るく振る舞い、不安や抑うつ感などの不快な感情を意識しなくするためにとる。
4.× 反動形成とは、防衛機制のひとつで、意識の中に抑圧されている強い感情や衝動が、意識できる側面で正反対の傾向となって行動などにあらわれることをさす。例として、好きな人をいじめてしまうことなどがあげられる。

防衛機制とは?

防衛機制とは、人間の持つ心理メカニズムであり、自分にとって受け入れがたい状況や実現困難な目標に対して、自我を保つために無意識で発動する心理的な機構である。防衛機制には、短期的には精神状態を安定させる作用があるが、長期的にみればかえって精神を不安定にさせてしまうものもある。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)