第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前36~40】

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36 集団指導が望ましいのはどれか。

1.胃全摘出術後の患者への退院指導
2.1型糖尿病の学童を対象とした療養指導
3.子宮頸癌の術後の神経因性膀胱の患者への間欠的自己導尿の指導
4.ヒト免疫不全ウイルス<HIV>感染者への生活指導

解答2

解説

1.× 胃全摘出術後の患者への退院指導は、個別指導が望ましい。なぜなら、退院後の生活はヒトそれぞれ異なるため。つまり、退院指導は個別性が高い。
2.〇 正しい。1型糖尿病の学童を対象とした療養指導は、集団指導が望ましい。なぜなら、1型糖尿病に対する療養指導(医療的処置)は、基本的に決まりきっているものであるため。療養指導とは、医療スタッフとともに患者さんの自己管理(療養)を指導することである。1型糖尿病とは、原因が自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる糖尿病である。小児~思春期の発症が多く、肥満とは関係ないのが特徴である。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。
3.× 子宮頸癌の術後の神経因性膀胱の患者への間欠的自己導尿の指導は、個別指導が望ましい。なぜなら、陰部についての説明や場合によっては実施になるため。陰部洗浄(トイレ介助)と同様、プライバシーが確保された空間で行われるべきである。ちなみに、神経因性膀胱とは、排尿に関与する神経の障害によって膀胱機能に異常が生じた病態である。間欠自己導尿とは、何らかの原因によって自分で尿を出せなくなった場合に、一定時間ごとに尿道から膀胱にカテーテルを入れて、膀胱内に溜まった尿を排泄する方法である。
4.× ヒト免疫不全ウイルス<HIV>感染者への生活指導は、個別指導が望ましい。なぜなら、選択肢①同様、退院指導は、ヒトそれぞれ異なるため。つまり、生活指導は個別性が高い。ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することでエイズの発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。主な感染経路は、①性的接触、②血液感染、③母子感染である。

個人情報保護法とは?

個人情報保護法とは、個人情報の保護に関する法律の略称である。個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とした個人情報の取扱いに関連する日本の法律である。定義(第2条)には、「この法律において『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう」とされている。

個人情報保護に関するコンプライアンスプログラムの要求事項では、センシティブ情報の具体的項目に関して、以下の5項目を挙げている。①思想及び信条に関する事項、②政治的権利の行使に関する事項、③労働者の団体交渉に関する事項、④医療、性に関する事項、⑤犯罪の経歴、人種、民族、社会的身分、門地並びに出生地及び本籍地など社会的差別の原因となる事項である。

 

 

 

 

 

37 上肢のフィジカルアセスメントの立位での実施場面の写真を下に示す。
 手のひらを上にして、肩の高さで水平に前方に両腕を伸ばしてもらった。その後、閉眼してもらうと、左腕が回内しながら下がっていった。
 アセスメントの結果で正しいのはどれか。

1.位置覚の異常
2.錐体路の障害
3.小脳機能の異常
4.関節可動域の障害

解答2

解説

バレー徴候とは?

バレー徴候とは、脳血管障害などによって起こる。上位運動ニューロン障害による片側性の軽い運動麻痺を評価するための方法である。上肢の筋力が低下する(麻痺がある)と、両腕を水平に維持することが困難となるため、麻痺側がゆっくりと回内しながら下降してくる。

1.× 位置覚の異常は、後索・内側毛帯路の障害で起こる。振動覚、位置覚の経路は、「後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野」となる。検査項目としては、①受動運動覚、②親指さがし試験などがある。
2.〇 正しい。錐体路の障害がアセスメントの結果である。写真は、バレー徴候陽性を示す。錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。
3.× 小脳機能の異常による症状として、①小脳性失調(測定障害)、②断綴性発語などがみられる。断綴性発語とは、小脳性失調でみられる緩徐・不規則・努力的・爆発的にしゃべるのが特徴的な発語障害である。測定障害は指鼻試験、鼻指鼻試験、足指手指試験、指耳試験、踵膝試験などで評価する。
4.× 関節可動域の障害は、拘縮や強直、筋収縮、脱臼偏位、関節内遊離体など様々である。バレー徴候陽性のような「不全麻痺」ではなく、重度麻痺や完全麻痺に起こりやすい。

 

 

 

 

38 臥床患者の体位変換とボディメカニクスの原則との組合せで正しいのはどれか。

1.仰臥位から側臥位:トルクの原理
2.仰臥位から長座位:摩擦力
3.ベッドの片側への水平移動:力のモーメント
4.ベッドの頭部への水平移動:てこの第1種の原理

解答1

解説

ボディメカニクス

ボディメカニクスとは、「body=身体」と「mechanics=機械学」の造語で、人間が動作するときに骨や筋肉、関節が相互にどのように作用するかといった力学的関係を活用したものである。介護を行うときには、介護者の負担の軽減のためにも身につけておきたい。

①重心の高さは、低い方が安定する。
②支持基底面の広さは、広い方が安定する。
③摩擦抵抗の有無は、有った方が踏ん張りが効き安定する。
④支持基底面と重心の距離は、短い方が足腰への負担は少ない。

1.〇 正しい。仰臥位から側臥位は、トルクの原理を用いる。トルクとは、力学において、ある固定された回転軸を中心にはたらく、回転軸の周りの力のモーメントである。回転軸から作用点までの距離が長いほど、回転時に必要な力は小さくなる。患者の身体を小さくまとめ、膝を立てて、肩と腰を支えて回転させ、体軸回旋運動を誘発する。この方法よって、小さな力で患者を回転(側臥位)させることができる。
2.× 仰臥位から長座位は、「摩擦力」ではなくてこの原理(第3種)を用いる。摩擦とは、固体表面が互いに接しているとき、それらの間に相対運動を妨げる力がはたらく現象をいう。ちなみに、てこの原理とは、力点に力を加え、支点を中心とした回転運動により、作用点に大きな力を加えることができるものである。
3.× ベッドの片側への水平移動は、「力のモーメント」ではなく「作用反作用の法則」や体に近づけたり、大きな筋群を使用して実施する。ベッドの縁に介助者の膝をつけ(作用反作用の法則)、患者の身体との距離をできるだけ自分に近づけ、背筋や大腿四頭筋などの大きな筋群を使用する。ちなみに、力のモーメントとは、力学において、物体に回転を生じさせるような力の性質を表す量である。
4.× ベッドの頭部への水平移動は、「てこの第1種の原理」ではなく「摩擦力」である。患者の上肢を胸部の前で組んで、膝関節を屈曲してもらう。そうすることで、支持基底面積が小さくなり、それに伴い摩擦力も小さくなり介助しやすい。

てこの種類

第1:作用点と力点の間に支点
【利点】比較的安定感がある。
例:シーソー、ハサミ(上腕三頭筋による肘関節伸展)

第2:支点と力点の間に作用点
【利点】小さい力で大きな回転力を生む。
例:栓抜き、ボートのオール(下腿三頭筋による足関節底屈)

第3:支点と作用点の間に力点
【利点】運動の速さに有利だが大きな力が必要。
例:ピンセット、トング(上腕二頭筋による肘関節屈曲)

 

 

 

 

 

39 Aさん(24歳、男性)は急性虫垂炎の術後1日で、ベッド上で仰臥位になり右前腕から点滴静脈内注射が行われている。Aさんは左利きである。
 病室外のトイレまでAさんが移動するための適切な療養環境はどれか。

1.履物はAさんの左手側に置く。
2.ベッド柵はAさんの右手側に設置する。
3.輸液スタンドはAさんの左手側に置く。
4.ベッドは端座位時にAさんの足底が床につく高さにする。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(24歳、男性)
・急性虫垂炎の術後1日。
・ベッド上で仰臥位になり、右前腕から点滴静脈内注射が行われている。
・Aさんは左利きである。

1〜3.× 履物/ベッド柵/輸液スタンドは、Aさんの「左手側」ではなく右手側に置く。なぜなら、起き上がりは右手側となるため。Aさんの右前腕から点滴静脈内注射が行われており、もし左手側に起き上がった場合、点滴静脈内注射のルートがベッドをまたぐため、抜去に繋がりやすい。
4.〇 正しい。ベッドは端座位時にAさんの足底が床につく高さにする。なぜなら、端坐位時に足底が全面設置することでずり落ち防止となり、立ち上がる際に立ち上がりやすいため。

 

 

 

 

40 全介助が必要な臥床患者の口腔ケアで適切なのはどれか。

1.スポンジブラシは水を含ませた後、絞って使用する。
2.頸部を後屈した体位で実施する。
3.終了後は口腔内を乾燥させる。
4.舌苔は強くこすって除去する。

解答1

解説
1.〇 正しい。スポンジブラシは水を含ませた後、絞って使用する。なぜなら、水が原因で誤嚥につながる危険性があるため。
2.× 頸部を「後屈」ではなく前屈した体位で実施する。唾液や汚染物質の咽頭への不意な垂れ込みを防ぐため。ベッド上臥位で実施する場合には、できれば30度程度は頭部挙上のうえ、頭を左右どちらかに向けて、下側にした頬部に唾液が溜まりやすくなるよう工夫する。
3.× 終了後は口腔内を「乾燥」ではなく湿らせる。乾燥によって唾液のもつ自浄作用が失われると、口腔細菌の増殖、歯周病の増悪、舌苔やう蝕(虫歯)の増加、口臭の悪化などが懸念されるため。唾液分泌が少ない患者さんの場合、①マスクの装着、②口腔粘膜への加湿、③保湿剤の使用、④室内の乾燥を避けるなどを行う。
4.× 舌苔は強くこすって除去する必要はない。なぜなら、強くこすることで粘膜や口腔内を傷つけてしまう可能性があるため。また、舌苔だと思っていた白っぽい膜が、実は菌糸型のカンジダである可能性が考えられる。舌カンジダは、口腔用の抗カンジダ薬を使用しないと除去できず、治療対象となるためケアの範囲外である。舌苔とは、舌に付着する白い苔状のものある。食べかすや唾液の成分、お口の中の粘膜が剥がれたもの、さまざまな細菌、白血球、色素などからなっており、口臭や味覚障害などの原因になる汚れとなる。

 

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