第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前41~45】

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41 術後1日の手術創の正常な治癒過程として正しいのはどれか。

1.創部の浮腫が起こる。
2.肉芽組織が形成される。
3.コラーゲンが成熟し瘢痕組織となる。
4.血管内皮細胞が新しい血管を形成する。

解答1

解説

創傷の治癒過程とは?

①血液凝固期(術後~数時間後):出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する時期である。
炎症期(術直後~3日目ころ):炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期である。
③増殖期(3日目~2週間後):線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される時期である。
④成熟期(2週間~数か月後)(再構築期:リモデリング期):線維芽細胞が減り、線維細胞へと成熟し変化するじきである。コラーゲンの再構築が起き、創部の抗張力が高くなることで創傷が治癒していく。

1.〇 正しい。創部の浮腫が起こるのは、炎症期の特徴である。術後1日の手術創は、炎症期に該当する。炎症期は、術直後~3日目ころで、炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期である。
2.4.× 肉芽組織が形成される/血管内皮細胞が新しい血管を形成するのは、増殖期の特徴である。
3.× コラーゲンが成熟し瘢痕組織となるのは、成熟期の特徴である。

炎症とは?

炎症とは、壊死や刺激・侵襲に対する生体反応のことである。
【炎症の四徴】
①発熱(局所の熱感)
②発赤
③腫脹
④疼痛
+⑤機能障害を加えて、炎症の五徴と呼ぶ場合もある。

 

 

 

 

 

42 平成29年(2017年)の患者調査において医療機関を受診している総患者数が最も多いのはどれか。

1.喘息
2.糖尿病
3.脳血管疾患
4.高血圧性疾患

解答4

解説

患者調査とは?

目的:病院・診療所を利用する患者について、傷病状況の実態を明らかにする。
調査頻度:3年に1回、医療施設静態調査と同時期に実施している。
調査対象:標本調査(全国の病院、一般診療所、歯科診療所から層化無作為により抽出した医療施設の患者)
調査項目:患者の性別、出生年月日、住所、入院・外来の種別、受療の状況等。
調査方法:医療施設の管理者が記入。

(※参考:「患者調査(基幹統計)」厚生労働省HPより)

1.× 喘息の総患者数は、111万7千人(9位)である。
2.× 糖尿病の総患者数は、328万9千人(3位)である。
3.× 脳血管疾患の総患者数は、111万5千人(10位)である。
4.〇 正しい。高血圧性疾患の総患者数は、993万7千人(1位)である。ちなみに、2位は歯肉炎及び歯周疾患である。

※総患者数とは、調査日現在において、継続的に医療を受けている者(調査日には医療施設で受 療していない者を含む。)の数を次の算式により推計したものである。 総患者数=入院患者数+初診外来患者数+(再来外来患者数×平均診療間隔×調整係数(6/7))

(※図引用:「主な傷病の総患者数」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

43 解離性大動脈瘤の破裂直後に出血性ショックとなった患者の症状として正しいのはどれか。

1.黄疸
2.浮腫
3.顔面紅潮
4.呼吸不全

解答4

解説

出血性ショックとは?

出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

【ショックの診断】
・心拍数:100回/分以上
呼吸数:22回/分以上
・低血圧(収縮期血圧90mmHg)、または通常の血圧から30mmHgの低下
・尿量:0.5mL/kg/時
・意識障害が見られる。

1.× 黄疸とは、皮膚や粘膜が胆汁色素(ビリルビン)で黄色に染まることで、胆汁色素の血漿中濃度の上昇により生じる。原因としては、①溶血によるもの、②肝細胞の障害によるもの、③胆汁の流れの障害によるもの、④体質によるもの、などがある。胆汁は肝臓で作られ、胆管を通じて十二指腸に排出されるが、その流れが障害されたときに生じる黄疸のことを閉塞性黄疸と呼ぶ。多くは総胆管結石や腫瘍により、胆管が閉塞することが原因となる。
2.× 浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
3.× 顔面紅潮とは、皮膚内にある毛細血管が拡張して血液がうっ滞するために皮膚が赤くみえている状態である。毛細血管は、自律神経による支配を受けているため、運動や怒り、不安、興奮等で交感神経が刺激されると血管は収縮し顔面紅潮につながる。
4.〇 正しい。呼吸不全は、解離性大動脈瘤の破裂直後に出血性ショックとなった患者の症状である。呼吸不全(頻呼吸)はショックの重要なサインの一つである。血液量の減少により組織への酸素供給が減少すると、酸素を利用した代謝(好気性代謝)ができなくなるため、酸素を使わない代謝(嫌気性代謝)が主となり、代謝産物としての乳酸などが蓄積する。過剰な乳酸により酸性となった血液を中性に戻すため、代償的に呼吸数が増加(頻呼吸)する。

 

 

 

 

 

44 Aさん(60歳、男性)は大動脈弁置換術を受け、ワルファリンの内服を開始することになった。
 Aさんが摂取を避けるべき食品はどれか。

1.海藻
2.牛乳
3.納豆
4.グレープフルーツ

解答3

解説

ワルファリンとは?

【対象】血栓を生じる疾患
【作用】抗血栓作用
【副作用】出血傾向

1.× 海藻(ヨウ素)の摂取制限は、放射性ヨウ素を用いた甲状腺の検査前(甲状腺シンチグラフィーなど)である。なぜなら、甲状腺シンチグラフィーなどは、ヨウ素が甲状腺に集まるという特性を利用して行い、正しく検査結果が出ない可能性があるため。
2.× 牛乳(カルシウム)は、ニューキノロン系抗菌薬やテトラサイクリン系抗菌薬など(抗菌作用)の吸収が妨げられ、効果が減弱する。
3.〇 正しい。納豆(ビタミンK)の摂取は、ワルファリンの内服と避けるべきである。なぜなら、納豆(ビタミンK)を摂取すると凝固機能が亢進しワルファリン作用が減弱するため。
4.× グレープフルーツ(天然フラボノイド成分)は、カルシウム拮抗薬の血中濃度を上げる食品である。天然フラボノイド成分は、CYP3A4という酵素の働きが抑えられ、カルシウム(Ca)拮抗薬の分解が遅くなるため、血中濃度が上昇する。つまり、グレープフルーツジュースに含まれる物質には、この代謝酵素を阻害する働きがあるため、同時に飲むと薬の代謝が阻害され、薬が長く体内にとどまり、必要以上に強い効果が出てしまう可能性がある。これにより、血圧が異常に下がってしまう危険性がある。

カルシウム拮抗剤とは?

カルシウム拮抗剤とは、血管の平滑筋にあるカルシウムチャネルの機能を拮抗し、血管拡張作用を示す薬剤のことである。適用症例として主に高血圧、狭心症があげられる。グレープフルーツジュースで服用すると、血中薬物濃度が上昇し副作用を生じることがある。その結果、必要以上の血圧低下や心拍数の増加が起こり、頭痛、顔面紅潮、めまいなどの副作用の発現頻度が増えることが考えられる。

 

 

 

 

45 慢性膵炎患者の食事療法で制限が必要なのはどれか。

1.蛋白質
2.カリウム
3.食物繊維
4.アルコール

解答4

解説

慢性膵炎とは?

慢性膵炎とは、膵臓の正常な細胞が壊れ、膵臓が線維に置き換わる病気である。
【原因】男性では飲酒が最も多く、女性では原因不明の特発性が多くみられる。膵液の通り道である膵管が細くなったり、膵管の中に膵石ができたりして、膵液の流れが悪くなり、痛みが生じると考えられている。
【症状】
・初期(代償期):膵臓の機能は保たれているが、腹痛がある。
・中期(移行期):次第に膵臓の機能が低下。
・末期(非代償期):膵臓の機能は著しく低下、消化不良をともなう下痢や体重減少、糖尿病の発症や悪化が生じる。
【治療】
・生活習慣の改善:禁酒、禁煙を行う。
・腹痛:鎮痛剤や蛋白分解酵素阻害薬を使用。
・手術が適応になることもある。①膵管ドレナージ手術と②膵切除術に分けられる。①膵管ドレナージ手術は、拡張した膵管を切開して腸管とつなぎ、膵液を腸管に流して膵管内の圧を下げる手術である。膵管の拡張がない場合は、膵管の狭窄が最も強い部位の②膵切除術を行う。(※参考:「急性膵炎と慢性膵炎」日本肝胆膵外科学会様HPより)

1~2.× 蛋白質/カリウムの制限が必要な主な病気として、慢性腎不全(CKD)がある。慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。②食事療法として、十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リン・カリウムの制限があげられる。
3.× 食物繊維の制限が必要な主な病気として、吸収不良症候群クローン病潰瘍性大腸炎などがある。なぜなら、食物繊維とは、人の消化酵素によって消化されにくい(胃腸に負担をかける)ため。ただし、カロリーも少なく、肥満防止となる食物繊維の働きは、高血圧高脂血症糖尿病の食事療法に効果がある。
4.〇 正しい。アルコールは、慢性膵炎患者の食事療法で制限する。慢性膵炎とは、膵臓の正常な細胞が壊れ、膵臓が線維に置き換わる病気である。生活習慣の改善(禁酒、禁煙)を行う。

急性膵炎とは?

急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]

(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)

 

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