第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前91~95】

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次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。

91 人体の前面と背面を図に示す。
 Aさんの人工肛門が造設される位置はどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(60歳、男性、会社員、直腸癌
腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行う。
→直腸癌の手術は、2種類に分けられる。①括約筋温存手術(肛門を温存する場合)、②腹会陰式直腸切断術(肛門括約筋を残せない場合)である。肛門および肛門括約筋を含めて直腸をすべて切除する方法で、永久的な人工肛門を造設する。

1.× ①は、横行結腸ストーマを造設する位置である。横行結腸ストーマの適応として、直腸がんの括約筋温存手術(肛門を温存する場合)である。横行結腸のストーマは、泥状便から軟便が排泄されるため、下行結腸やS状結腸ストーマと比較すると、漏れや皮膚トラブルが発生しやすい。
2.× ②は、回腸ストーマを造設する位置である。回腸ストーマの適応として、選択肢1同様に、直腸がんの括約筋温存手術(肛門を温存する場合)である。
3.〇 正しい。が、Aさんの人工肛門が造設される位置である。Aさんは、腹会陰式直腸切断術(肛門括約筋を残せない場合)である。肛門および肛門括約筋を含めて直腸をすべて切除する方法で、永久的な人工肛門を造設する。S状結腸ストーマ(直腸ストーマ)が増設される。
4.× ④においては、ストーマを増設する位置ではない

 

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。

92 Aさんの手術は予定通り終了した。術後1日、会陰部から挿入されたドレーンからは、淡血性の排液が10mL/時で流出していた。バイタルサインが安定していることを確認した後、Fowler<ファウラー>位にして15分が経過したところで、Aさんからナースコールがあった。看護師が訪室すると「おしりが濡れているような気がする」と言う。確認すると、会陰部のガーゼに淡血性の浸出液を認めた。
 Aさんへの対応で最も優先度が高いのはどれか。

1.Fowler<ファウラー>位から仰臥位にする。
2.ドレーンの屈曲を確認する。
3.排液バッグを交換する。
4.会陰部を消毒する。

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(60歳、男性、会社員、直腸癌)
・腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術:予定通り終了。
・術後1日:「淡血性の排液」10mL/時で流出。
・バイタルサイン:安定。
ファウラー位15分経過:「おしりが濡れているような気がする」と。
・会陰部のガーゼに淡血性の浸出液あり。
→Aさんは、ドレーンが何らかの理由で閉塞し、他の部位から浸出液が漏れ出てしまっていることが考えられる。ドレーンの屈曲や閉塞が起きてしまうと、排液がドレナージできないことで体内に貯留し膿瘍化リスクが高まる。またドレーン刺入部からの排液漏れや、再度ドレーンを入れ直す必要性が生じる。したがって、まずは、ドレーンを閉塞させる原因である「ドレーンの屈曲」を確認することが望ましい。

1.× ファウラー位から仰臥位にする優先度が低い。なぜなら、ファウラー位がドレーンを閉塞させる原因と断定するには情報が足りないため。もちろんファウラー位がドレーンを閉塞させる原因の一つではあるものの、まずは視認にての確認を行う。ちなみに、ファウラー位とは、45~60度の頭位挙上である。頭蓋内圧をコントロールするにあたり、30度挙上が勧められている。
2.〇 正しい。ドレーンの屈曲を確認する。Aさんは、ドレーンが何らかの理由で閉塞し、他の部位から浸出液が漏れ出てしまっていることが考えられる。ドレーンの屈曲や閉塞が起きてしまうと、排液がドレナージできないことで体内に貯留し膿瘍化リスクが高まる。またドレーン刺入部からの排液漏れや、再度ドレーンを入れ直す必要性が生じる。したがって、まずは、ドレーンを閉塞させる原因である「ドレーンの屈曲」を確認することが望ましい。
3.× 排液バッグを交換する優先度は低い。なぜなら、Aさんの「会陰部のガーゼに淡血性の浸出液がある」ことへの直接的な解決になっていないため。
4.× 会陰部を消毒する優先度は低い。なぜなら、Aさんの「会陰部のガーゼに淡血性の浸出液がある」ことへの直接的な解決になっていないため。

 

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。

93 術後10日、Aさんは退院日が決まり、「落ち着いたら仕事に復帰します。1人暮らしなので、自分で人工肛門を管理しないといけないですね」と述べた。
 Aさんの退院に際し、人工肛門の管理に関する看護師の指導で正しいのはどれか。

1.「面板は1日2回交換してください」
2.「装具の交換は滅菌手袋を使用してください」
3.「面板除去部の皮膚はお湯で洗浄してください」
4.「定期的に人工肛門の大きさを確認してください」

解答4

解説

1.× 面板(フランジ)は、「1日2回の交換」ではなくタイプによって異なる(多くても1日1回の交換で良い)。一般的なタイプの面板は、4日に1回交換である。面板とは、ストーマ周囲の皮膚に粘着する皮膚保護剤の着いた部分をいう。パウチとは、面板に接着し、ストーマからの排泄を受ける袋である。
2.× 装具の交換は、滅菌手袋を使用する必要はない。なぜなら、ストーマ装具の内部は便に露出している環境であるため。ちなみに、滅菌手袋は主に手術用で、非滅菌手袋は主に検査・検診用や多用途に用いられる。
3.× 面板除去部の皮膚は、「お湯」ではなく「泡立てた石鹸」で洗浄する。なぜなら、面板除去部には排泄物などの汚れが付着するため。
4.〇 正しい。「定期的に人工肛門の大きさを確認してください」と指導する。なぜなら、ストーマからの出血や縫合部の離開、陥没などが起こることも考えられるため。ストーマサイズは「縦×横×高さ」の長さで決定される。ストーマ造設直後は、病棟の看護師や皮膚・排泄ケア認定看護師の方達に測定をしてもらえるが、退院後は患者自身で測定する。ストーマサイズを測定するには、ノギス各メーカーの商品装具の中に付属している紙のゲージを使用する。一般的に手術直後のストーマサイズは不安定で、時間が経過すると少しずつ小さくなっていく。

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(50歳、男性、会社員)は妻と高校生の息子との3人暮らし。仕事を生きがいに働き続けていた。慢性腎不全のため透析治療が必要になったが、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法<CAPD>を導入することになり入院した。Aさんはこれからの生活がどのようになるのかを看護師に質問した。

94 Aさんに対する説明として正しいのはどれか。

1.「食事療法が必要です」
2.「通院は週に2、3回必要です」
3.「宿泊を伴う旅行はできません」
4.「カテーテル挿入術後の翌日から入浴できます」

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(50歳、男性、会社員)
・3人暮らし:妻、高校生の息子。
・生きがい:仕事
慢性腎不全:透析治療が必要となった。
・本人の希望:連続携行式腹膜灌流法を導入。
→慢性腎不全とは、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。

1.〇 正しい。「食事療法が必要です」と説明する。慢性腎不全に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限などである。
2.× 通院は、「週に2、3回」ではなく、月1回程度である。ちなみに、血液透析は1週間に2~3回の通院をして、3~4時間の治療を受ける必要がある。血液透析は、シャント肢から十分な血流を保ちながら体外循環を行い、体液量や電解質濃度を是正するとともに尿毒素などの血液浄化を行う治療である。治療中、除水量が多いと循環動態に影響を及ぼしたり、血液中の電解質に急激な変化が生じたりすることがある。
3.× 宿泊を伴う旅行も行える。透析液の交換は、6時間~8時間ごと、1日2~4回程度行う必要があるため、透析液などを宿泊先に郵送する必要がある。
4.× カテーテル挿入術後の翌日から入浴できないことが多い。なぜなら、感染や炎症の増悪などの創部の負担が懸念されるため。創部が安定すれば、基本的にシャワー浴となる。

連続携行式腹膜透析とは?

腹膜に囲まれた腹腔内に透析液を注入し、一定時間貯留している間に腹膜を介して血中の不要な老廃物や水分を透析液に移行させた後、その液を体外に取り出して血液を浄化する。透析液の交換はご自身で6時間~8時間ごと、1日2~4回程度行う。月1〜2回程度の通院が必要である。

 

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(50歳、男性、会社員)は妻と高校生の息子との3人暮らし。仕事を生きがいに働き続けていた。慢性腎不全のため透析治療が必要になったが、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法<CAPD>を導入することになり入院した。Aさんはこれからの生活がどのようになるのかを看護師に質問した。

95 Aさんはできるだけ早い職場復帰を望んでおり、入院中はCAPDの操作に熱心に取り組んでいた。退院後、CAPDを1日4回(0時、6時、12時、18時)行うことになった。
 Aさんが会社の昼休みにCAPDを行うために必要な設備はどれか。2つ選べ。

1.透析液を保管する冷蔵庫
2.透析液を温める電子レンジ
3.透析液の交換時に使用する個室
4.CAPDの物品を保管する専用棚
5.透析液の貯留中に使用するベッド

解答3・4

解説

(※図引用:「腹膜透析」イラストやHPより)

連続携行式腹膜透析とは?

腹膜に囲まれた腹腔内に透析液を注入し、一定時間貯留している間に腹膜を介して血中の不要な老廃物や水分を透析液に移行させた後、その液を体外に取り出して血液を浄化する。透析液の交換はご自身で6時間~8時間ごと、1日2~4回程度行う。月1〜2回程度の通院が必要である。

1.× 透析液を保管する冷蔵庫は必要ない。なぜなら、透析液は常温保管であるため。直射日光や湿気を避け、夏は車内など温かくならないようにする。
2.× 透析液を温める電子レンジは必要ない。なぜなら、電子レンジで温めることは透析液の成分に影響を及ぼしてしまうため禁忌であるため。腹膜透析液バッグの外袋は開封せずに外袋ごとビニール袋に入れ、体温より少し高めのお湯(40℃前後)で時間をかけて温める。使い捨てカイロ(湯たんぽ)を使用して温める方法もある。但し、いずれの方法も腹膜透析液の温度が高くなり過ぎると、注液した際に腹膜を傷める可能性がある。電子レンジでの加温は行わず、透析液バッグに穴があく等、破損の可能性がある(※参考:「災害時の弊社腹膜透析用医療機器のご使用について」TERUMO様HPより)。
3.〇 正しい。透析液の交換時に使用する個室は必要な設備である。なぜなら、プライバシーの確保のため。透析液の交換時には、感染防止のためにも腹部をさらけ出して行う必要がある。
4.〇 正しい。CAPDの物品を保管する専用棚は必要な設備である。なぜなら、透析液は常温保管であるため。直射日光や湿気を避け、夏は車内など温かくならないようにする必要がある。
5.× 透析液の貯留中に使用するベッドは必要ない。なぜなら、腰掛け座位で行えるため。

 

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