第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午後106~110】

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次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)は妊娠39週4日に3,200gの男児を経腟分娩で出産した。分娩時に会陰切開縫合術を受けた。児のApgar<アプガー>スコアは1分後9点、5分後10点であった。分娩時の出血量200mL、分娩所要時間12時間30分であった。分娩室から病室に帰室する前に尿意を自覚したためトイレまで歩行し、排尿があった。

106 帰室時に看護師がAさんに行う説明で適切なのはどれか。

1.「排泄後は会陰部を消毒しましょう」
2.「会陰縫合部が痛くなったら温めましょう」
3.「6時間おきにトイレに行って排尿しましょう」
4.「悪露に血の塊が混じったら看護師に知らせてください」

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦)
・妊娠39週4日:経腟分娩で出産(3,200g、男児)。
・分娩時:会陰切開縫合術を受けた。
・アプガースコア:1分後9点、5分後10点。
・分娩時の出血量200mL、分娩所要時間12時間30分。
・帰室前:尿意を自覚、排尿があり。
→Aさんも児も現時点では良好な経過をたどっている。産後に急変する可能性も考えられるため、異常所見に対してAさん自身でも看護師も観察する必要がある。

(※図引用:「これからの正しい創傷治療―湿潤療法の取り組み―」安藤 善郎)

1.× 排泄後の会陰部といえ消毒する必要はない。近年、創傷治療は「創面を消毒し、ガーゼをあてて乾燥させる」従来の方法から、「創面を消毒しない,乾燥させない」方法へと変化している。
2.× 会陰縫合部の痛みに対し、「温める」のではなく冷やすほうが良い。なぜなら、会陰縫合部の痛みは手術による炎症症状が原因と考えられるため。ちなみに、炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。
3.× 排尿の促しは、「6時間おき」ではなく4時間おきに行う。なぜなら、産後は膀胱の感覚が鈍くなることがあるため。
4.〇 正しい。「悪露に血の塊が混じったら看護師に知らせてください」と伝える。なぜなら、悪露に血の塊が混じった場合(凝血塊)、異常であるため。胎盤や卵膜の残存が疑われる。ちなみに、分娩直後の悪露の色調は赤色・鮮血性で、においは血液に近い。

(※図引用:「ナース専科」より)

 

 

 

 

 

次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)は妊娠39週4日に3,200gの男児を経腟分娩で出産した。分娩時に会陰切開縫合術を受けた。児のApgar<アプガー>スコアは1分後9点、5分後10点であった。分娩時の出血量200mL、分娩所要時間12時間30分であった。分娩室から病室に帰室する前に尿意を自覚したためトイレまで歩行し、排尿があった。

107 産褥2日、Aさんは、体温37.2℃、脈拍76/分、血圧112/80mmHg、子宮底を臍下2横指に硬く触れ、悪露は赤褐色で少量。会陰縫合部の発赤なし、腫脹なし。下肢の浮腫は認めない。乳房緊満があり、左右の乳頭に2本ずつ乳管が開通しており、初乳がにじむ程度に分泌している。Aさんは、看護師に会陰縫合部が痛くて歩きにくいと話している。
 Aさんのアセスメントで適切なのはどれか。

1.会陰縫合部の感染を起こしている。
2.乳房の変化は産褥日数相当である。
3.深部静脈血栓症の疑いがある。
4.子宮復古が遅れている。

解答2

解説

本症例のポイント

・産褥2日:体温37.2℃、脈拍76/分、血圧112/80mmHg、子宮底:臍下2横指に硬く触れ、悪露:赤褐色、少量
会陰縫合部:発赤なし、腫脹なし
・下肢の浮腫:認めない。
・乳房緊満があり、左右の乳頭に2本ずつ乳管が開通しており、初乳がにじむ程度に分泌している。
・Aさん「会陰縫合部が痛くて歩きにくい」と。

(※図引用:「母乳・授乳の進め方」甲府市HPより)

1.× 会陰縫合部の感染を起こしている所見はない。なぜなら、感染を起こしている場合、体温上昇(37.5℃以上)、疼痛、腫脹、発赤などの炎症症状がみられるため。本症例は、設問文に「会陰縫合部:発赤なし、腫脹なし」と記載されている。
2.〇 正しい。乳房の変化は産褥日数相当である。なぜなら、乳汁生成1期に該当し、初乳が見られているため。本症例は、設問文に「乳房緊満があり、左右の乳頭に2本ずつ乳管が開通しており、初乳がにじむ程度に分泌している」と記載されている。
3.× 深部静脈血栓症の疑いがある所見はない。深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。本症例は、設問文に「下肢の浮腫は認めず」、他の症状の記載もないため可能性は低い。
4.× 子宮復古が遅れている所見はない。なぜなら、一般的に産後1~2日は、①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)であるため。本症例は、設問文に「子宮底:臍下2横指に硬く触れ、悪露:赤褐色、少量」と記載され、正常範囲から逸脱していない。ちなみに、子宮復古とは、妊娠・分娩によって生じたこれらの変化が、分娩後、徐々に妊娠前の状態に戻ることである。子宮復古状態は、腹壁上から触知する子宮の位置や硬さ、子宮底長、悪露の色と量、後陣痛の強さの訴えなどから判断できる。特に、直接子宮の状態を観察できる触診、子宮底長の情報は重要である。

産褥期の子宮底長、悪露の変化

・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)

 

 

 

 

 

次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)は妊娠39週4日に3,200gの男児を経腟分娩で出産した。分娩時に会陰切開縫合術を受けた。児のApgar<アプガー>スコアは1分後9点、5分後10点であった。分娩時の出血量200mL、分娩所要時間12時間30分であった。分娩室から病室に帰室する前に尿意を自覚したためトイレまで歩行し、排尿があった。

108 産褥4日、看護師はAさんに退院指導をすることにした。Aさんの児の経過は順調である。
 Aさんと児が受けられるサービスとして、看護師が退院指導時に説明するのはどれか。

1.養育支援訪問
2.育成医療の給付
3.養育医療の給付
4.乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)

解答4

解説
1.× 養育支援訪問は、適応外である。対象者は、①若年の妊婦及び妊婦健康診査未受診や望まない妊娠等の妊娠期からの継続的な支援を特に必要とする家庭。②出産後間もない時期(おおむね1年程度)の養育者が、育児ストレス、産後うつ状態、育児ノイローゼ等の問題によって、子育てに対して強い不安や孤立感等を抱える家庭。③食事、衣服、生活環境等について、不適切な養育状態にある家庭など、虐待のおそれやそのリスクを抱え、特に支援が必要と認められる家庭。④児童養護施設等の退所又は里親委託の終了により、児童が復帰した後の家庭である。ちなみに、養育支援訪問事業の対象者の選定は、乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)の実施結果や母子保健事業、妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必要とする家庭に係る保健医療の連携体制に基づく情報提供及び関係機関からの連絡・通告等により把握され、養育支援が特に必要であって、本事業による支援が必要と認められる家庭の児童及びその養育者とする。(※一部引用:「養育支援訪問事業ガイドライン」厚生労働省HPより)
2.× 育成医療の給付は、適応外である。育成医療(自立支援医療)とは、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に基づき、身体に障害のある児童又はそのまま放置すると将来障害を残すと認められる疾患がある児童(18歳未満)で、確実な治療効果が期待できる方が指定医療機関において医療を受ける場合に給付が受けられる制度である。
3.× 養育医療の給付は、適応外である。養育医療とは、入院治療を必要とする対象者に該当する乳児(出生時体重が2000g以下だった乳児、低体温、強い黄疸などの症状を示す乳児)に対して、健やかに成長できるよう、その養育に必要な医療を給付するものである。 指定医療機関において、診察・医学的処置・治療等の給付が受けられる。
4.〇 正しい。乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)が、Aさんと児が受けられるサービスである。乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)とは、生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し、子育てに関する相談や情報提供等を行う。また親子の心身の状況や養育環境等の把握や助言を行い、支援が必要な家庭に対しては適切なサービス提供につなげることを目的としている。

 

 

 

 

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、男性、会社員)は妻(32歳、主婦)と子ども(2歳)と3人暮らし。5年前にうつ病と診断された。半年前に営業部門に異動し、帰宅後も深夜まで仕事をする日が続いていた。「仕事のことが気になってしまい、焦りと不安ばかりが増して眠れない。会社に行くのが苦しい、入院させてもらえないか」と訴えがあり、休養と薬物の調整を目的として精神科病院に入院となった。入院後、Aさんから「実は薬を飲むのが嫌で、途中から飲むのをやめていたんです。薬を飲みたくないのですが、どうしたらよいでしょうか」と看護師に相談があった。

109 看護師のAさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.薬を飲みたくない理由を尋ねる。
2.薬を飲むことを約束してもらう。
3.自己判断で薬をやめたことへの反省を促す。
4.薬の管理はAさんの妻にしてもらうよう勧める。

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、男性、会社員、うつ病:5年前)
・3人暮らし:妻(32歳、主婦)、子ども(2歳)
・休養と薬物の調整を目的として精神科病院に入院。
・入院後:「実は薬を飲むのが嫌で、途中から飲むのをやめていたんです。薬を飲みたくないのですが、どうしたらよいでしょうか」と。
→Aさんは薬を自己判断で辞めていたことは本来してはならないことであるが、それを打ち明けて話してくれたことは称賛されるべきことである。まずは、傾聴し受容して安心して話せる環境を作ることが大切である。その後、なぜ薬を飲むのが嫌な理由を尋ねることが望ましい。

1.〇 正しい。薬を飲みたくない理由を尋ねる。なぜなら、「実は薬を飲むのが嫌で、途中から飲むのをやめていた」と薬を飲む嫌な理由が聞けていないため。Aさんは薬を自己判断で辞めていたことは本来してはならないことであるが、それを打ち明けて話してくれたことは称賛されるべきことである。まずは、傾聴し受容して安心して話せる環境を作ることが大切である。
2.× 薬を飲むことを約束してもらう優先度は低い。なぜなら、看護師からの強制・誘導に繋がり、それが負担になりかねないため。うつ病への対応として、無理をしなくてよいことを伝えることが大切である。
3.× 自己判断で薬をやめたことへの反省を促す優先度は低い。なぜなら、さらに自責し、症状を悪化しかねないため。うつ病へのかかりやすい特徴として、几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。さらに自己評価が低いことも挙げられる。
4.× 薬の管理はAさんの妻にしてもらうよう勧めるのは、「うつ病」ではなく認知症への対応であるため。Aさんが薬を飲めないのは、薬の管理ができないと決まったわけではないため、薬を飲みたくない理由を尋ねる必要がある。

うつ病患者に積極的に説明するべき事項

かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。

うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)

【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。

 

 

 

 

 

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、男性、会社員)は妻(32歳、主婦)と子ども(2歳)と3人暮らし。5年前にうつ病と診断された。半年前に営業部門に異動し、帰宅後も深夜まで仕事をする日が続いていた。「仕事のことが気になってしまい、焦りと不安ばかりが増して眠れない。会社に行くのが苦しい、入院させてもらえないか」と訴えがあり、休養と薬物の調整を目的として精神科病院に入院となった。入院後、Aさんから「実は薬を飲むのが嫌で、途中から飲むのをやめていたんです。薬を飲みたくないのですが、どうしたらよいでしょうか」と看護師に相談があった。

110 入院後1か月、面会に来た妻から、「夫の会社から休業給付が出ないかもしれないと言われました。子どもが小さく、生活費もかかるので、入院費用が払えるか心配です」と看護師に相談があった。
 妻の相談に関して、看護師が連携する職種として最も適切なのはどれか。

1.公認心理師
2.作業療法士
3.理学療法士
4.精神保健福祉士

解答4

解説

本症例のポイント

入院後1か月
会社「夫の会社から休業給付が出ないかもしれない」と。
妻「入院費用が払えるか心配です」と。
→妻は主に「入院費」を心配している。入院費の補助や助成の制度があるかもしれない。この場合、制度にも精通し、家族の相談にも応じることができる専門家を選択する。

1.× 公認心理師の優先度は低い。公認心理師とは、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識および技術をもって、助言や指導、援助、分析などを業とする人である。つまり、心の問題を抱えた人に対して、心理学の知識と技術を用いて援助する専門家である。
2.× 作業療法士の優先度は低い。作業療法士とは、医師の指示のもとに手工芸・芸術・遊びやスポーツ・日常動作などを行うことにより、障害者の身体運動機能や精神心理機能の改善を目指す治療(作業療法)を行う専門職である。つまり、食事動作等、日常生活動作の回復が役割である。
3.× 理学療法士の優先度は低い。理学療法士とは、医師の指示のもとに治療体操や運動・マッサージ・電気刺激・温熱などの物理的手段を用いて、運動機能の回復を目的とした治療法・物理療法(理学療法)を行う専門職である。
4.〇 正しい。精神保健福祉士と看護師が連携する。精神保健福祉士とは、『精神保健福祉士法』に基づき、精神障害者に対する相談援助などの社会福祉業務に携わる専門職である。また、その家族に対しても相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な援助を行う。

 

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