第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午後116~120】

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次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 午前9時頃、震度5強の地震が発生した。二次救急医療機関の救命救急病棟に勤務する看護師は、自身の身の安全を確保し、揺れが収まると病院の災害発生時のマニュアルに沿って行動を開始した。病棟には人工呼吸器を使用中の患者が1人、輸液ポンプを使用中の患者が3人、酸素療法中の患者3人が入院している。

116 発災から3時間後、地震後に発生した火災現場付近から救出されたA君(6歳)と母親のBさん(32歳)の2人が搬送されてきた。A君は避難時に転倒し、左肘関節付近の腫脹と疼痛を訴えていた。バイタルサインに異常はない。Bさんは避難する際にA君が煙に巻き込まれそうになるところをかばい、髪の一部と鼻毛の一部が焦げていた。右頰部に2cm×2cm、右上肢に5cm×10cmの紅斑と水疱を認める熱傷を負っていた。バイタルサインに異常はないが、熱傷部位の疼痛訴えていた。
 トリアージの結果、看護師の初期対応として優先されるのはどれか。

1.A君の既往歴の聴取
2.A君への鎮痛薬の準備
3.Bさんの気道確保の準備
4.Bさんの熱傷部位の冷却

解答3

解説

本症例のポイント

・発災から3時間後:A君(6歳)と母親のBさん(32歳)が搬送。
・A君:転倒、左肘関節付近の腫脹と疼痛(バイタルサイン異常なし)
・Bさん:A君が煙に巻き込まれそうになるところをかばい、髪の一部と鼻毛の一部が焦げていた
・右頰部に2cm×2cm、右上肢に5cm×10cmの紅斑と水疱を認める熱傷
・バイタルサインに異常はないが、熱傷部位の疼痛訴えていた。
→看護師の行動の優先順位は、生命に関与する重要かつ緊急性が高いものが優先される。2人ともバイタルサインには異常がないが、今後増悪する可能性があるのは、気道熱傷が疑われるBさんである。気道熱傷とは、火災や爆発事故により高温の煙、水蒸気、有毒ガスを吸入することによって生じる呼吸器系の障害の総称である。進行性に喉に浮腫が生じ、気道閉塞まで発展する危険性も考えられる。

1~2.× A君の既往歴の聴取/A君への鎮痛薬の準備より優先度が高いものが他にある。なぜなら、A君の生命の危険性は、Bさんと比較すると低いと考えられるため。
3.〇 正しい。Bさんの気道確保の準備は、トリアージの結果、看護師の初期対応として優先される看護師の行動の優先順位は、生命に関与する重要かつ緊急性が高いものが優先される。2人ともバイタルサインには異常がないが、今後増悪する可能性があるのは、気道熱傷が疑われるBさんである。気道熱傷とは、火災や爆発事故により高温の煙、水蒸気、有毒ガスを吸入することによって生じる呼吸器系の障害の総称である。進行性に喉に浮腫が生じ、気道閉塞まで発展する危険性も考えられる。
4.× Bさんの熱傷部位の冷却より優先度が高いものが他にある。なぜなら、熱傷部位の冷却の有無で、生命の予後が著明に良くなるとはいえないため。また、全身状態・生命に安全確保が担保されてから、熱傷部位の冷却を実施すればよい。

(※引用:医師会の災害時医療救護体制「トリアージの区分」)

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

 

 

 

 

 

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 午前9時頃、震度5強の地震が発生した。二次救急医療機関の救命救急病棟に勤務する看護師は、自身の身の安全を確保し、揺れが収まると病院の災害発生時のマニュアルに沿って行動を開始した。病棟には人工呼吸器を使用中の患者が1人、輸液ポンプを使用中の患者が3人、酸素療法中の患者3人が入院している。

117 A君とBさんはともに入院して治療が始まった。発災から10日後、A君、Bさんの治療経過は良好で合併症もなくバイタルサインは安定していた。Bさんから看護師に「Aは好きなお菓子を食べず、私のそばからずっと離れず甘えてきます。昨夜はおねしょをしていたようで、びっくりしました。どうしたらよいのかわかりません」と相談があった。
 看護師の対応として適切なのはどれか。

1.「お母さんがしっかりしましょう」
2.「A君が1人になる時間をつくりましょう」
3.「A君に水分を控えるよう声をかけましょう」
4.「A君が甘えてきたら抱きしめてあげましょう」

解答4

解説

本症例のポイント

・A君とBさんはともに入院して治療が始まった。
・発災10日後:A君、Bさんの治療経過は良好。
・合併症もなくバイタルサインは安定。
・Bさんから「Aは好きなお菓子を食べず、私のそばからずっと離れず甘えてきます。昨夜はおねしょをしていたようで、びっくりしました。どうしたらよいのかわかりません」と。
→被災後の子どもに見られる心と体の状態として、無気力、暗闇への恐れ、夜尿(おねしょ)、悪夢、甘え、わがままといった、いわゆる赤ちゃん返り(退行現象)などが見られる。思春期になれば、様々な体の不調、ひきこもり、反抗的態度が見られることもある。対応として、基本的には、子ども達のこのような問題を、やさしく、しっかりと、受け止める必要がある。

1.× お母さんがしっかりしていたとしても、被災後の子どもには誰でも生じる可能性がある。今までできていた事までできなくても、しかりつけるのは逆効果である。
2.× あえて、A君が「1人になる時間」を作る必要はない。「安心感」を与えられるように、子どもたちに寄り添う。
3.× A君に水分を控える必要はない。なぜなら、A君のおねしょは水分過多が原因ではないため。
4.〇 正しい。「A君が甘えてきたら抱きしめてあげましょう」と伝える。対応として、基本的には、子ども達のこのような問題を、やさしく、しっかりと、受け止める必要がある。

 

 

 

 

次の文を読み118、119の問いに答えよ。
 A君(男児)は3歳の誕生日を迎えた。生後8か月のときに鶏卵の摂取でアナフィラキシーを起こしたため、かかりつけ医を受診した。それ以降、現在までA君は鶏卵の摂取を禁止するよう説明されている。鶏卵以外の食物は摂取して問題がない。今回、A君は保育所の入所にあたり、かかりつけ医からアレルギー外来のあるB病院を紹介され受診した。3歳児健康診査が今後予定されている。A君は身長95cm(50パーセンタイル)、体重15kg(75パーセンタイル)、自分の名前と年齢を答えることができる。階段を1人で昇ることができるが、スキップはできない。排泄はオムツにしている。

118 A君の発育と発達のアセスメントで正しいのはどれか。

1.肥満である。
2.言語発達に遅れがある。
3.排泄の自立に遅れがある。
4.運動発達は年齢相応である。

解答4

解説

本症例のポイント

・A君(男児、3歳
体重15kg(75パーセンタイル)
自分の名前と年齢を答えることができる
階段を1人で昇ることができるが、スキップはできない
排泄はオムツにしている

1.× 肥満とはいえない。なぜなら、A君のカウプ指数は16.6であるため。カウプ指数とは、生後3か月から5歳までの乳幼児に対して、肥満や、やせなど発育の程度を表す指数である。 成人で使用されるBMIと同じ計算法であるが判定基準が異なる。 カウプ指数の正常値はおおよそ15~19とされており、それ以上を肥満、以下をやせと判定する。体重(g)÷【身長(cm)の二乗】× 10
2.× 言語発達に遅れがあるとはいえない。なぜなら、自分の名前と年齢を答えることができるのは、2歳半~3歳であるため。
3.× 排泄の自立に遅れがあるとはいえない。なぜなら、おむつはずしの年齢は、個人差あり特に決まっていないため。 しかし、一般的に2〜3歳頃におむつをはずせるように練習を始めることが多く、数か月ほどかけておむつがはずれる。
4.〇 正しい。運動発達は年齢相応である。階段を1人で昇ることは、1歳半ごろから獲得できるが、スキップは4歳半以降で獲得できる。

(※図:日本版デンバー式発達スクリーニング検査 )

 

 

 

 

 

次の文を読み118、119の問いに答えよ。
 A君(男児)は3歳の誕生日を迎えた。生後8か月のときに鶏卵の摂取でアナフィラキシーを起こしたため、かかりつけ医を受診した。それ以降、現在までA君は鶏卵の摂取を禁止するよう説明されている。鶏卵以外の食物は摂取して問題がない。今回、A君は保育所の入所にあたり、かかりつけ医からアレルギー外来のあるB病院を紹介され受診した。3歳児健康診査が今後予定されている。A君は身長95cm(50パーセンタイル)、体重15kg(75パーセンタイル)、自分の名前と年齢を答えることができる。階段を1人で昇ることができるが、スキップはできない。排泄はオムツにしている。

119 B病院の医師から母親に、アドレナリン自己注射薬を処方のうえ鶏卵の摂取制限を継続することと、近日中に鶏卵を用いた食物経口負荷試験を計画することが説明された。母親から看護師に「Aの保育所での生活や将来のことが心配です」と訴えがあった。
 看護師の母親への説明で適切なのはどれか。

1.「成長とともに卵を食べられるようになる子どもは多いです」
2.「保育所でアレルギー疾患用生活管理指導表を作成します」
3.「保育所でのアドレナリン自己注射薬は保護者が投与します」
4.「給食の際は別室に移動して食べさせましょう」

解答1

解説

本症例のポイント

アドレナリン自己注射薬を処方。
・鶏卵の摂取制限を継続すること。
・鶏卵を用いた食物経口負荷試験を計画すること。
・母親から「Aの保育所での生活や将来のことが心配です」と。
→食物経口負荷試験とは、アレルギーが確定しているか疑われている食品を単回または複数回に分割して摂取させ、症状の有無を確認する検査で、①原因食物の確定診断、②安全に摂取できる量の決定または耐性獲得の診断のために行う。

1.〇 正しい。「成長とともに卵を食べられるようになる子どもは多いです」と説明する。なぜなら、子どものころの食物アレルギーは、多く(小学生までに約7割)が成長・発達に伴い徐々に原因食物が食べられるようになるため。また、本症例は、食物経口負荷試験を計画しており、実施すればさらに卵を食べれる確率が上がる可能性が高い。
2.× アレルギー疾患用生活管理指導表を作成するのは、「保育所」ではなく医師である。アレルギー疾患用生活管理指導表とは、個々の児童生徒についてのアレルギー疾患に関する情報を、 主治医が記載し、保護者を通じて、学校が把握するものである。作成の目的は、アレルギーを持つ子供たちが安心して保育所生活を送るためである。
3.× 保育所でのアドレナリン自己注射薬は、「保護者」だけでなく保育所の職員も投与に参加する。なぜなら、常に保育所に保護者が付きっきりにはなれないため。保育所とは、保育を必要とする乳幼児を預かり、保育する施設である。緊急時には、保育所の職員が注射することも想定される。
4.× 給食の際は、別室に移動する必要はない。なぜなら、食事は周囲の人とのコミュニケーションをはかれ、成長に多いに貢献するものであるため。ただし、誤食を防ぐため、食器の色を変えるなど工夫すると予防につながる。

 

 

 

 

次の文を読み120の問いに答えよ。
 Aちゃん(6か月、女児)は両親と3人暮らし。母親と小児科外来に来院した。母親は「Aは昨日高さ30cmのソファから転落して泣いていました。今朝になっても痛いのか右手を動かさないので受診しました」と看護師に話した。看護師が身体計測のためAちゃんの服を脱がせると、顔面、頭部と体幹に最近できた紫斑と、生じてから時間が経った紫斑が複数あった。さらに、両足に多数の円形の熱傷痕があった。Aちゃんは身長66.5cm(50パーセンタイル)、体重6.0kg(3パーセンタイル未満)であった。母親は看護師に「Aは毎晩夜泣きをするし、夫もAにはイライラさせられています」と話した。看護師は虐待の可能性があると考えて対応することとし、母子分離を図ることとなった。

120 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。

1.虐待にあたることを伝える。
2.乳児期に起こりやすい事故について説明する。
3.児童相談所に通告することへの母親の同意を得る。
4.プライバシーを保護できる個室で話を聞くと伝える。
5.母親の代わりに父親がAちゃんに面会できると伝える。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(6か月、女児、3人暮らし)
・母親「Aは昨日高さ30cmのソファから転落して泣いていました。今朝になっても痛いのか右手を動かさないので受診しました」と。
・Aちゃん:顔面、頭部と体幹に最近できた紫斑と、生じてから時間が経った紫斑が複数あった。
・他:両足に多数の円形の熱傷痕あり。
・身長66.5cm(50パーセンタイル)、体重6.0kg(3パーセンタイル未満)。
・母親「Aは毎晩夜泣きをするし、夫もAにはイライラさせられています」と。
虐待と考えて、母子分離を図ることとなった。
→通常、虐待の要因としては①夫婦の不仲や経済的問題や家族の病気、②近隣や親類からの孤立、③手のかかる子、育てにくい子どもであること、④何らかの事情で長く親子別々に生活していたりして子どもに愛着をもてないこと、等が考えられる。親が苦労や不安を感じているようであれば、その気持ちを受けとめることが大事である。受け止めてもらえることで孤立感の解消につながることもある。そのうえで、親に対して肯定的なメッセージを伝え、良好な関係をつくることが大切である。

1.× 虐待にあたることを伝える優先度は低い。なぜなら、母親の発言を一方的に信じていないように感じられてしまうため。現時点では「Aちゃんが高さ30cmのソファから転落して泣いていた」と母親が発言しており、まずは母親とも良好な関係をつくることが大切である。
2.× 乳児期に起こりやすい事故について説明する優先度は低い。なぜなら、母親が「乳児期に起こりやすい事故」について知らない時に対して行うため。また、一方的に母親の知識不足と判断できる材料もなく、またAちゃんの身体状況から虐待と考えているため。
3.× 児童相談所に通告することへの母親の同意を得る必要はない。児童相談所への通告は、「医師、看護師個人」ではなく、児童虐待防止委員会が行っており、生命の危険があるときに限らず、多くの機関の関与が必要と判断したときは通告する。外来で虐待が疑われる子どもを診察した場合、入院を勧める。入院後、院内チームを立ち上げ、早期に院内カンファレンスを実施する。保健所、保健センターおよび子ども家庭支援センターと連絡をとり、健診や予防接種の状況を把握する。
4.〇 正しい。プライバシーを保護できる「個室」で話を聞くと伝える。通常、虐待の要因としては①夫婦の不仲や経済的問題や家族の病気、②近隣や親類からの孤立、③手のかかる子、育てにくい子どもであること、④何らかの事情で長く親子別々に生活していたりして子どもに愛着をもてないこと、等が考えられる。親が苦労や不安を感じているようであれば、その気持ちを受けとめることが大事である。受け止めてもらえることで孤立感の解消につながることもある。そのうえで、親に対して肯定的なメッセージを伝え、良好な関係をつくることが大切である。
5.× 母親の代わりに父親がAちゃんに面会できると伝える優先度は低い。なぜなら、父親も虐待している可能性が考えられるため。母親「Aは毎晩夜泣きをするし、夫もAにはイライラさせられています」と発言していること、両足に多数の円形の熱傷痕あり(根性焼き?)もみられるため。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①助言指導 
②児童の一時保護
③児童福祉施設等への入所措置
④児童の安全確保
⑤里親に関する業務
⑥養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

問題の引用:第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験、第111回看護師国家試験の問題および正答について

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にて誤字・脱字等、ご指摘お待ちしています。よろしくお願いいたします。

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