第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午後56~60】

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56 高齢者に経口薬の薬効が強く現れる理由はどれか。

1.骨密度の低下
2.胃酸分泌の減少
3.消化管運動の低下
4.血清アルブミンの減少

解答4

解説

高齢者の薬効

加齢に伴い、肝臓で薬を分解する能力や、薬を腎臓から身体の外へ排出する能力が低下する。また、高齢者は身体の中の水分の割合が少なくなり脂肪が多くなるため、脂肪にとける薬が身体の中にたまりやすくなる。その結果、薬効が強く出て、副作用が現れることがよくある。

1.× 骨密度の低下は、骨粗鬆症に関係する。粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい。
2.× 胃酸分泌の減少は、薬効の遅延に寄与する。なぜなら、胃酸の低下は、免疫力の低下ビタミンの吸収能力の低下に関係するため。
3.× 消化管運動の低下(蠕動運動の低下)は、薬効の遅延に寄与する。なぜなら、薬剤の吸収が減弱し、薬剤の血中濃度は低くなるため。
4.〇 正しい。血清アルブミンの減少が、高齢者に経口薬の薬効が強く現れる要因の一つである。なぜなら、結合していない状態の薬物が増加するため。血中タンパクと薬物の結合率は分布と表現される。そもそも薬物は、血中タンパク(主にアルブミン)と結合(抱合)することで、薬物の貯蔵や代謝を受ける。また、薬物は血中タンパクと結合せず、遊離している場合に薬効を発揮している。

 

 

 

 

 

57 新生児や乳児が胎児期に母体から受け取った抗体は次のどれか。

1.IgA
2.IgD
3.IgG
4.IgM

解答3

解説

1.× IgAは、新生児ではほとんど産生されていないが、母乳中には母親由来のIgAが豊富に含まれている。母乳とともに摂取されたIgAは、消化管からの微生物侵入の防御に役立っている。
2.× IgDは、扁桃腺および上気道にある抗体を産生する形質細胞から放出され、呼吸器系の免疫に作用していると考えられている。 IgAやIgGと比較しても微量しか存在していない免疫グロブリンである。
3.〇 正しい。IgGは、新生児や乳児が胎児期に母体から受け取った抗体である。IgGは、分子量が最も小さい抗体であるため、唯一、胎盤を通過する免疫グロブリンである。IgGは、血中で最も多く存在する抗体である。
4.× IgMは、新生児由来であり、児に感染が起きたときに産生される免疫グロブリンである。しかし、感染防御力は低い。出生直後の新生児の血中IgMが高値の場合は、胎内または分娩時の感染が示唆される。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

58 第二次性徴で正しいのはどれか。

1.女児は乳房の発育から始まる。
2.発現は男児が女児よりも早い。
3.初経の開始後に、第二次発育急進が起こる。
4.精通は11歳の男児のほとんどに認められる。

解答1

解説

第二次性徴とは

二次性徴とは、性ホルモンの分泌が促進されることにより、性器および身体に現れる変化である。第二次性徴に関わるホルモンは、男性の場合はアンドロゲン、女性の場合はエストロゲンとプロゲステロンである。アンドロゲンは精巣から、エストロゲンとプロゲステロンは卵巣から分泌される。

平均的に見ると男児の場合は、10歳前後に始まり約5年間続く。 体の成長には決まった順番があり、①睾丸の発達→②陰毛の発生→③精通→④声変わり→⑤体型の変化という順番をたどる。女児の場合は、8歳前後から始まり①乳房発育→②陰毛発生→③初経という順に進行することが一般的である。その評価にはTanner分類が用いられている。

1.〇 正しい。女児は「乳房の発育」から始まる。女児の場合は、①乳房発育→②陰毛発生→③初経という順に進行することが一般的である。
2.× 逆である。発現は女児男児よりも早い。平均的に見ると女児の場合は、8歳前後から始まる。一方、男児の場合は、10歳前後に始まる。
3.× 一概に必ず初経の開始後に、「第二次発育急進が起こる」とはいえない。むしろ、初経の開始「後」ではなく開始前に、第二次発育急進が起こっていることが多い。第二次発育急進とは、思春期の身長や体重など、急速に成長が加速する時期ので、男子は10歳前後~17歳前後まで、女子は8歳前後~17歳前後までをいう。ちなみに、一般的に初経は、だいたい10歳~14歳までである。
4.× 精通が男児のほとんどに認められる年齢は、「11歳」ではなく「15歳」といわれている。平均的には12歳頃に起き、早い子では9歳、遅い子でも15歳くらいまでには起きる。

 

 

 

 

 

59 学童期の肥満で正しいのはどれか。

1.Kaup<カウプ>指数で評価する。
2.症候性の肥満がほとんどを占める。
3.食事では蛋白質の摂取制限を行う。
4.成人期の生活習慣病のリスク因子である。

解答4

解説
1.× Kaup<カウプ>指数で評価するのは、「学童期の肥満」ではなく「乳幼児の発育状態の程度を表す指標」である。体重(g)/身長(cm)2 × 10は、カウプ指数の計算式である。標準値は、15~19である。ちなみに、学童期以降の肥満の程度は、「ローレル指数」で評価する。計算式は、体重(kg) ÷ 身長(cm)3 × 104であり、標準値は115~145である。
2.× ほとんどを占めるのは、「症候性の肥満」ではなく単純性の肥満である。肥満は、小児の5~10%と比較的高率にみられ、①症候性肥満と②単純性肥満がある。①症候性肥満は、何らかの疾患の症状(内分泌異常や遺伝性疾患など)としてみられる肥満である。 一方、②単純性肥満は、原因となる疾患がないものをいう。多くの肥満が単純性肥満である。
3.× 食事では、蛋白質の摂取制限を行うことはあまりしない。なぜなら、学童期以降の急な体重増加は、気持ちを癒すために食べていることも考えられるため。肥満小児の食事指導は、保護者や周囲の大人が協力して、根気よく正しい食生活を身につけてもらうことが大切である。子どもの食事内容は、大人のダイエットと違い強いエネルギー制限は行わず、生活習慣の改善や日常の身体活動量を増やしながら食事のバランスを改善していく(※参考「肥満小児への食事指導」著:太田 百合子)。
4.〇 正しい。成人期の生活習慣病のリスク因子である。生活習慣病とは、「食習慣、運動習慣、休養の取り方、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進展に関与する疾患群」と定義されている。生活習慣病の背景因子として、①遺伝性因子、②環境因子、③生活習慣因子が考えらえているが、「生活習慣因子」は生活習慣病の積極的予防に最も重要な要素とされている。

 

 

 

 

60 生後11か月の男児。ある日の朝、自宅でボタン型電池を飲み込んだ疑いがあり、その日の午前中に外来を受診した。胸部エックス線撮影によって、ボタン型電池が食道下部にあることが確認された。
 行われる処置で適切なのはどれか。

1.背部の叩打
2.緩下薬の使用
3.催吐薬の使用
4.緊急摘出術の実施

解答4

解説

本症例のポイント

・男児(生後11か月)
ボタン型電池を飲み込んだ疑い
・胸部エックス線撮影:ボタン型電池が食道下部にある。
→ボタン電池は、誤飲時に食道にとどまり、放電の影響によって短時間(僅か1時間)でも潰瘍ができて穴が開いてしまうなどの重篤な症状を生じることがあり、場合によっては死に至るなど大変危険である。他にも医療品、タバコ、洗濯用パック型液体洗剤などの誤飲に注意する必要がある。

1.× 背部の叩打(背部叩打法)は、気道の異物除去の際に適応となる。本症例は、胸部エックス線撮影により、ボタン型電池が食道下部にあることが確認されているため適応とはならない。
2~3.× 緩下薬の使用/催吐薬の使用する必要はない。なぜなら、緩下薬/催吐薬の薬効まで時間がかかり、状態が悪化する可能性があるため。直ちに取り除く処置が必要である。
4.〇 正しい。緊急摘出術の実施を行う。ボタン電池は、誤飲時に食道にとどまり、放電の影響によって短時間(僅か1時間)でも潰瘍ができて穴が開いてしまうなどの重篤な症状を生じることがあり、場合によっては死に至るなど大変危険である。したがって、ボタン電池誤飲では、食道内滞留例は食道壁潰瘍壊死の危険性から緊急摘出を要する。

 

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