第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午後71~75】

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71 Aさん(68歳、男性)は妻(68歳)と2人暮らし。膀胱癌で尿路ストーマを造設している。Aさんはストーマ装具の交換に慣れてきたため、妻と日帰りで近くの温泉地を旅行する計画を立てており、外来看護師に助言を求めた。
 外来看護師がAさんに助言する内容で適切なのはどれか。

1.装具の交換に必要な物品一式を2回分持参する。
2.旅行中の水分摂取は1日1,000mL以内に控える。
3.他の入浴客がいなければ装具を外して入浴できる。
4.オストメイト対応のトイレがなければ旅行先を変更する。

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(68歳、男性、膀胱癌で尿路ストーマ
・2人暮らし:妻(68歳)
・Aさんはストーマ装具の交換に慣れてきた。
・妻と日帰りで近くの温泉地を旅行する。
→ストーマとは、自然の排泄経路以外に設けた排泄口である。ストーマには大きく分けて、①消化管ストーマ(人工肛門)と②尿路ストーマ(人工膀胱)があり、人工肛門や人工膀胱保有者を「オストメイト」という。

1.〇 正しい。装具の交換に必要な物品一式を2回分持参する。旅行時には、剥がれることも想定して予備分も持参することが望ましい。
2.× 旅行中の水分摂取は、1日1,000mL以内に控える必要はない。水分摂取量は、一般と変わらず、食事も含めて1500~2000 mL/日が理想である。水分摂取量が少ないと便秘を助長するだけでなく脱水症状を起こすおそれもある。
3.× 他の入浴客がいなければ装具を外して、入浴することはできない。なぜなら、尿路ストーマの場合は、尿がストーマから絶えず流れているため。カテーテルを挿入している場合は、上行感染やカテーテルトラブルを予防する。
4.× オストメイト対応のトイレがなくても、旅行先を変更する必要はない。なぜなら、溜まった尿は一般トイレ(個室)で簡単に破棄できるため。

 

 

 

 

 

72 Aさん(76歳、女性)は1人暮らし。脳血管疾患で右半身麻痺があり、障害高齢者の日常生活自立度判定基準はB-2である。週に2回の訪問看護を利用している。食事の準備と介助および食後の口腔ケアのため訪問介護を利用することになった。訪問介護の担当者は、Aさんのケアについて訪問看護師に助言を求めた。
 訪問看護師が訪問介護の担当者に助言する内容で正しいのはどれか。

1.健側に頸部を回旋させ食事の介助をする。
2.野菜は繊維に対し垂直に切って調理する。
3.歯肉出血がみられたら口腔ケアは中止する。
4.食事中はAさんの好きなテレビ番組を見せる。

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(76歳、女性、1人暮らし、右半身麻痺
・障害高齢者の日常生活自立度判定基準:B-2
・週に2回:訪問看護を利用。
・訪問介護を利用予定:食事の準備介助口腔ケアのため。
→Aさんが訪問介護を利用する目的は、食事の準備介助口腔ケアのためである。したがって、右半身麻痺に対する食事の支援を助言する必要がある。

1.× 「健側(非麻痺側)」ではなく、「患側(麻痺側)」に頸部を回旋させ食事の介助をする。なぜなら、「患側(麻痺側)」に頸部を回旋させることによって、その空間を狭め、健側(非麻痺側)に食塊が通りやすくするため。誤嚥防止に寄与する。これを頸部回旋法という。
2.〇 正しい。野菜は繊維に対し垂直に切って調理する。なぜなら、繊維に対し垂直に切ることによって、繊維が短く噛みやすくなる。
3.× 歯肉出血がみられたら口腔ケアは、中止する必要はない。なぜなら、歯肉出血がみられた場合の口腔ケアを実施する必要があるため。例えば、出血があれば不快感や感染しないように洗い流す必要がある。ちなみに、歯茎からの出血は、多くは歯肉炎や歯周病によるものであることが多い。菌が増殖しないように口腔ケアする必要がある。
4.× 食事中はAさんの好きなテレビ番組を見せる必要はない。なぜなら、食事に集中できず誤嚥のリスクが高まるため。

(※図:認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランク)

 

 

 

 

73 機能別看護方式の説明で正しいのはどれか。

1.勤務帯ごとに各看護師が担当する患者を決めて受け持つ。
2.内容別に分類した看護業務を複数の看護師が分担して実施する。
3.1人の看護師が1人の患者を入院から退院まで継続して受け持つ。
4.患者を複数のグループに分け、各グループを専属の看護師チームが受け持つ。

解答2

解説

機能別看護方式とは?

機能別看護方式とは、患者に提供される看護業務(与薬や処置など)の係を決めて分業するシステムである。投薬、検温、注射など内容別に分類した看護業務を各看護師に割り当て、複数の看護師が分担して看護を行う。メリットとしては、患者に対して一定の看護水準のケアを提供できるが、デメリットとしては、総合的かつ継続的な看護の提供は難しいことがあげられる。

1.× 勤務帯ごとに各看護師が担当する患者を決めて受け持つことは、「受け持ち方式」である。
2.〇 正しい。内容別に分類した看護業務を複数の看護師が分担して実施することは、「機能別看護方式」である。
3.× 1人の看護師が1人の患者を入院から退院まで継続して受け持つことは、「プライマリナーシングシステム」である。
4.× 患者を複数のグループに分け、各グループを専属の看護師チームが受け持つことは、「チームナーシングシステム」である。

 

 

 

 

 

74 看護におけるクリニカルラダーについて正しいのはどれか。

1.病院に導入が義務付けられている。
2.ワーク・ライフ・バランスを目指すものである。
3.臨床実践に必要な能力が段階的に表現されている。
4.全国の病院で共通のクリニカルラダーが使用されている。

解答3

解説

クリニカルラダーとは?

クリニカルラダーとは、看護部の教育理念に基づき、はしご(ラダー)をのぼるように一段一段キャリアを向上させていく仕組みである。ステップごとに求められる課題が明確であるため、目標を立てながらスキルアップできる。できることが広く深くなっていくにつれ、やりがいも大きくなり、さらなる意欲が生まれる。

1.× 病院に導入が義務付けられているわけではない。日本看護協会では、2014年度から重点事業として標準化を目指した「看護師のクリニカルラダー」の開発に取り組んでいる。
2.× ワーク・ライフ・バランスを目指すものではない。クリニカルラダーとは、看護部の教育理念に基づき、はしご(ラダー)をのぼるように一段一段キャリアを向上させていく仕組みである。
3.〇 正しい。臨床実践に必要な能力が「段階的」に表現されている。ステップごとに求められる課題が明確であるため、目標を立てながらスキルアップできる。できることが広く深くなっていくにつれ、やりがいも大きくなり、さらなる意欲が生まれる。
4.× 「全国の病院で共通」ではなく病院ごとのクリニカルラダーが使用されている。

 

 

 

 

75 災害拠点病院の説明で正しいのはどれか。

1.国が指定する。
2.災害発生時に指定される。
3.広域搬送の体制を備えている。
4.地域災害拠点病院は各都道府県に1か所設置される。

解答3

解説
1.× 「国」ではなく都道府県が指定する。医療救護活動の中核を担う病院で都道府県によって指定される。

2.× 指定されるのは、「災害発生時」ではなく災害発生前である。なぜなら、災害発生時(地震・津波・台風・噴火など)に災害医療を行うためには、事前の準備・計画・訓練などを備えなければならないため。ちなみに、災害拠点病院とは、災害発生時(地震・津波・台風・噴火など)に災害医療を行う医療機関を支援する病院のことである。
3.〇 正しい。広域搬送の体制を備えている。主な特徴として、①24時間緊急対応できること、②被災地域内の傷病者の受け入れ・搬出が可能な体制を持つこと、③DMAT(災害派遣医療チーム)の派遣機能を持つことなどがあげられる。
4.× 各都道府県に1か所設置されるのは、「地域災害医療センター(地域災害拠点病院)」ではなく基幹災害医療センター(基幹災害拠点病院)である。基幹災害医療センター(基幹災害拠点病院)は、各都道府県に原則1か所以上、地域災害医療センター(地域災害拠点病院)は、二次医療圏ごとに原則1カ所以上整備される。

災害拠点病院とは?

災害拠点病院とは、災害発生時(地震・津波・台風・噴火など)に災害医療を行う医療機関を支援する病院のことである。医療救護活動の中核を担う病院で都道府県によって指定される。基幹災害医療センター(基幹災害拠点病院)は、各都道府県に原則1か所以上、地域災害医療センター(地域災害拠点病院)は、二次医療圏ごとに原則1カ所以上整備される。

【主な特徴】
・24時間緊急対応できる。
・被災地域内の傷病者の受け入れ・搬出が可能な体制を持つ。
・DMAT(災害派遣医療チーム)の派遣機能を持つ。
・搬送をヘリコプターなどを使用して行える。
・消防機関(緊急消防援助隊)と連携した医療救護班の派遣体制がある。
・自己完結型で医療チームを派遣できる資器材を備えている。

【DMAT(災害派遣医療チーム)の特徴】
定義:災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム。
医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)から活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームである。
①都道府県の派遣要請に基づく。
②災害の急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性をもつ。
③主な活動は、広域医療搬送、病院支援、地域医療搬送、現場活動などである。

※(参考:「DMATとは」厚生労働省HPより)

 

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