第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午前106~110】

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次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(33歳、初産婦、会社員)は夫と2人で暮らしている。 妊娠28週5日、夕方から下腹部に生理痛のような痛みを感じ、少量の性器出血があったため来院した。来院時、子宮口2cm開大、未破水、8分おきに20秒持続する子宮収縮があり、切迫早産と診断された。子宮収縮抑制薬 (リトドリン塩酸塩)の点滴静脈内注射と安静による治療が開始された。

問題106 点滴を開始して30分後に看護師が訪室すると、 Aさんは Fowler〈ファウラー〉位で休んでいた。
 このときのAさんの状態で看護師が注意して観察すべき項目はどれか。

1.経皮的動脈血酸素飽和度
2.血圧
3.呼吸数
4.脈拍

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(33歳、初産婦、会社員、切迫早産
・2人で暮らし(夫)
・妊娠28週5日:下腹部に生理痛のような痛み、少量の性器出血。
・来院時:子宮口2cm開大、未破水、8分おきに20秒持続する子宮収縮があり。
・治療開始:子宮収縮抑制薬 (リトドリン塩酸塩)の点滴静脈内注射。
・点滴開始30分後: ファウラー位で休息中。
→切迫早産とは、子宮収縮が規則的かつ頻回に起こることにより子宮口が開き、早産となる危険性が高い状態である。頸管長が妊娠28週未満で30mm未満は切迫早産と診断とされる場合が多い。破水が先に起きたり、同時に起きたりすることもある。切迫早産の主な症状は、下腹部の張り、生理痛のような下腹部や腰の痛みである。このような症状がある場合には、まず横になって安静に促す。

1.× 経皮的動脈血酸素飽和度より優先度が高いものが他にある。経皮的動脈血酸素飽和度とは、動脈血のヘモグロビンに何%の酸素が結合しているか判断するための値である。肺炎や呼吸器疾患で低下がみられることが多い。
2.× 血圧より優先度が高いものが他にある。低血圧の基準として、収縮期血圧100mmHg以下、拡張期血圧60mmHg以下があげられる。原因として心疾患や糖尿病、パーキンソン病などの自律神経障害が考えらえる。
3.× 呼吸数より優先度が高いものが他にある。副作用の一つに、動悸があるため、呼吸数の観察も必要である。ただし、最も気を付けるべき観察項目が他にある。
4.〇 正しい。脈拍は、注意して観察すべき項目である。塩酸リトドリンの作用機序として、β受容体刺激剤の中でも強いβ2選択性により、細胞内c-AMPを上昇させ、子宮収縮抑制効果を示す。つまり、交感神経に作用するため、薬効が最も反映しやすい脈拍を観察すべきである。

MEMO

塩酸リトドリンは子宮収縮抑制薬(子宮鎮痙薬とも)である。臨床応用としては、切迫早産や切迫流産の際に子宮収縮(陣痛)を抑制するのに用いられる。投与中に過度の心拍数増加(頻脈)があらわれた場合には、減量するなど適切な処置を行うことが求められる。主な副作用として、動悸、振戦(手足の震え)、吐き気、発疹などが報告されている。胎児には、頻脈、不整脈があらわれる。作用機序として、β受容体刺激剤の中でも強いβ2選択性により、細胞内c-AMPを上昇させ、子宮収縮抑制効果を示す。

【禁忌】
・強度の子宮出血、子癇、前期破水例のうち子宮内感染を合併する症例、常位胎盤早期はく離、子宮内胎児死亡、その他妊娠の継続が危険と判断される者
・重篤な甲状腺機能亢進症
・重篤な高血圧症
・重篤な心疾患
・重篤な糖尿病
・重篤な肺高血圧症
・妊娠16週未満の妊婦
・本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者

 

 

 

 

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(33歳、初産婦、会社員)は夫と2人で暮らしている。 妊娠28週5日、夕方から下腹部に生理痛のような痛みを感じ、少量の性器出血があったため来院した。来院時、子宮口2cm開大、未破水、8分おきに20秒持続する子宮収縮があり、切迫早産と診断された。子宮収縮抑制薬 (リトドリン塩酸塩)の点滴静脈内注射と安静による治療が開始された。

問題107 切迫早産の症状がなくなり、 Aさんは妊娠35週0日で退院した。妊娠36週0日に妊婦健康診査のために来院した。ノンストレステストを実施中に、「気分が悪い」とナースコールがあり看護師が訪れると、Aさんは仰臥位になっていた。
 Aさんへの対応で看護師が最初に行うのはどれか。

1.医師に報告する。
2.血圧測定を行う。
3.左側臥位にする。
4.酸素吸入を行う。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(33歳、初産婦、会社員、切迫早産
・2人で暮らし(夫)
・切迫早産の症状なし(妊娠35週0日で退院)
・妊娠36週0日:妊婦健康診査。
・ノンストレステスト実施中:「気分が悪い」と仰臥位に。
→本症例は、「気分が悪い」と仰臥位であったことから、仰臥位低血圧症候群が疑われる。仰臥位低血圧症候群とは、妊娠末期の妊婦が仰臥位になった際、子宮が脊柱の右側を上行する下大静脈を圧迫することにより右心房への静脈還流量が減少、心拍出量が減少し低血圧となることである。多くの場合、妊娠末期の妊婦が帝王切開の準備のため腰椎麻酔をおこなった後に生じやすい。

→ノンストレステスト(non-stress test:NST)とは、一般的に妊娠34週以降において、分娩監視装置を用いて子宮収縮や胎児心拍、胎動の状態で調べ、胎児の健康状態を判定するものである。陣痛(子宮収縮)などのストレスがない状態で妊婦に行う検査である。胎児は、20~40分ごとに睡眠と覚醒を繰り返すため通常40~60分間計測を行う。一過性頻脈とは、胎児が体を動かすとき(胎動があるとき)、一時的に心拍数が多くなることをいい、一定範囲で出るのが正常である。妊娠中、20分間のノンストレステスト< NST >をしている間に、心拍数15bpm以上15秒以上の一過性頻脈が2回以上あれば、胎児の状態は「良好な状態:well-being」と判断される。

1~2.× 医師に報告する/血圧測定を行うより優先度が高いものが他にある。なぜなら、本症例は仰臥位低血圧症候群が疑われ、左側臥位へ体位変換することで、速やかに症状が回復すると考えられるため。
3.〇 正しい。左側臥位にする。なぜなら、仰臥位低血圧症候群への対応のため。仰臥位低血圧症候群とは、妊娠末期の妊婦や下腹部腹腔内腫瘤の患者が仰臥位になった際、妊娠子宮や腫瘤が脊柱の右側を上行する下大静脈を圧迫し、それにより右心房への静脈還流量が減少するため、心拍出量が減少し低血圧となるものである。多くの場合、妊娠末期の妊婦が帝王切開の準備のため腰椎麻酔をおこなった後に生じやすい。突然にショックとなり、頻脈、悪心・嘔吐、冷汗、顔面蒼白などの症状を呈する。対応としては、患者を仰臥位から左側臥位にし、右心系に血液が戻ってくるようにすることで、症状は速やかに回復する。(※参考:「仰臥位低血圧症候群」日本救急医学会HPより)
4.× 酸素吸入を行う必要はない。酸素吸入の目的として、低酸素血症の改善である。適用基準は、動脈血酸素分圧が、55mmHg以下(酸素飽和度が88%以下)があげられる。

 

 

 

 

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(33歳、初産婦、会社員)は夫と2人で暮らしている。 妊娠28週5日、夕方から下腹部に生理痛のような痛みを感じ、少量の性器出血があったため来院した。来院時、子宮口2cm開大、未破水、8分おきに20秒持続する子宮収縮があり、切迫早産と診断された。子宮収縮抑制薬 (リトドリン塩酸塩)の点滴静脈内注射と安静による治療が開始された。

問題108 Aさんは妊娠36週5日、8時に分娩が開始した。16時30分に子宮口全開大、16時35分に自然破水、18時30分に男児を出産した。分娩時出血量は350mL、児のApgar〈アプガー〉スコアは1分後8点、5分後9点であった。
 Aさんの分娩のアセスメントで適切なのはどれか。

1.早期産である。
2.異常出血である。
3.前期破水である。
4.新生児仮死である。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(33歳、初産婦、会社員、切迫早産
妊娠36週5日8時:分娩開始。
・16時30分:子宮口全開大。
・16時35分:自然破水。
・18時30分:男児を出産。
・分娩時出血量:350mL、アプガースコア:1分後8点、5分後9点。
→それぞれの選択肢と設問文の記載から、当てはまるものを選択しよう。各選択肢の定義をしっかり覚えておく。

1.〇 正しい。早期産である。なぜなら、本症例は、妊娠36週5日18時30分に出産であるため。早産とは、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことである。分娩時期の分類として、①流産期とは、妊娠21週6日までの妊娠中絶(分娩)。②早産期とは、妊娠22週0日~36週6日における分娩。③正期産とは、妊娠37週0日~41週6日までの分娩。④過期産とは、42週0日以後の分娩である。
2.× 異常出血とはいえない。分娩時異常出血は、①分娩第1、2期にみられる出血と、②分娩第3期とその直後から2時間までにみられる出血の2種類に大別される。前者は軟産道の裂傷、胎盤の部分的剝離による。後者には軟産道の裂傷、子宮収縮不全、胎盤遺残、血液凝固障害によるものなどがある。500mL以上の出血で異常出血と呼ぶことが多い。本症例の分娩時出血量は350mLであるため、異常出血と断言することはできない。
3.× 前期破水とはいえない。破水は、臍帯脱出や上行感染、胎児機能不全などの原因となり得る。【破水の種類】①前期破水とは、分娩が始まる前の破水のこと、②早期破水とは、分娩開始以降で子宮口全開大前の破水のこと、③適時破水:子宮口全開大に達する頃の破水のことをいう。
4.× 新生児仮死とはいえない。新生児仮死とは、出生時における新生児の呼吸循環不全を主徴とする症候群である。胎児期および分娩中に生じた低酸素血症に起因することが多く、全分娩の2~9%に発生する。誘因となる基礎疾患は多岐(高齢初産、薬物使用、ショックなど)にわたる。新生児仮死は胎児ジストレスに引き続き発症することが多い。本症例の場合、アプガースコア(1分後8点、5分後9点)は、正常範囲である。ちなみに、アプガースコアとは、出生直後の新生児の状態を評価するスコアであり、①皮膚色、②心拍数、③刺激による反射、④筋緊張、⑤呼吸状態の5項目に対し、0~2点のスコアをつける。10~8点は正常、7~4点は軽症仮死、3~0点は重症仮死と判定する。

(※図引用:「アプガースコア」ナース専科様HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(34歳、初産婦)は妊娠39週6日に3,000gの女児を出産した。分娩後の母児の経過は順調である。出生後12時間、看護師がAさんの児の観察を行った。児は活気がありバイタルサインは安定しており、排便が認められた。直接授乳を開始している。出生後の排尿回数は4回、排便回数は3回である。

問題109 便の写真を以下に別に示す。
 このときのAさんの児の便はどれか。

1.A(塊りがあり茶色かかった黄色)
2.B(粘稠性がある黒緑色)
3.C(泥状で濃い黄色)
4.D(泥状で緑色)

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(34歳、初産婦、妊娠39週6日:3,000g女児出産)
・分娩後の母児の経過:順調。
出生後12時間:児は活気あり、バイタルサイン安定、排便あり、直接授乳開始。
・出生後の排尿回数4回、排便回数3回。
→赤ちゃんはおなかの中で羊水を飲み込んでいる。その羊水のウンチは、黒緑色粘り気があるため、胎便という。生後2~4日目ころ、母乳を飲み始めると、黒緑色から少しずつ黄色味のある移行便となる。母乳を十分に飲むようになると、黄色いつぶつぶの黄色顆粒便になり、一日に何度もでるようになる。水様便(顆粒がない)、粘液や血液が混入している便、白色便、黒色便が出た時は受診の必要性が出てくる。

1.× A(塊りがあり茶色かかった黄色)は、生後2~4日目ころ、母乳を飲み始めると、黒緑色から少しずつ黄色味のある移行便となる。母乳を十分に飲むようになると、黄色いつぶつぶの黄色顆粒便になり、一日に何度もでるようになる。
2.〇 正しい。B(粘稠性がある黒緑色)がこのときのAさんの児の便である。赤ちゃんはおなかの中で羊水を飲み込んでいる。その羊水のウンチは、黒緑色粘り気があるため、胎便という。
3.× C(泥状で濃い黄色)は、母乳を十分に飲むようになると、黄色いつぶつぶの黄色顆粒便になり、一日に何度もでるようになる。
4.× D(泥状で緑色)は、正常であることが多い。黄色っぽくする色のもとは、肝臓から出る胆汁色素のビリルビンあり、うんちがお腹の中に長くとどまっていたりガスが多いと、酸化されて緑色となる。

松井式便色カードとは?

松井式便色カードとは、胆道閉鎖症等の早期発見のための便色カードである。母子保健法施行規則の一部を改正する省令(平成24年:2012年)により、母子健康手帳に掲載することが義務付けられた。正常:4~7である。1~3の場合は、胆道閉鎖症などの可能性があるので、小児科医の受診を勧めている。便の色の確認は、生後2週間、生後1か月、生後1~4か月と数回行うように勧めている。(※参考:「胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 A さん(34歳、初産婦)は妊娠39週6日に3,000gの女児を出産した。分娩後の母児の経過は順調である。出生後12時間、看護師がAさんの児の観察を行った。児は活気がありバイタルサインは安定しており、排便が認められた。直接授乳を開始している。出生後の排尿回数は4回、排便回数は3回である。

問題110 日齢2。Aさんの児の胎外生活への適応は順調に経過している。 哺乳回数は1日8回。Aさんは母乳育児を希望しているが、児に乳頭を吸われると痛いと話しており、左右の乳頭に軽度の発赤が認められる。
 このとき看護師が観察する項目で優先度が高いのはどれか。

1.児の体重減少率
2.乳汁の分泌状態
3.乳房の緊満状態
4.ラッチオンの状態

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(34歳、初産婦、妊娠39週6日:3,000g女児出産)
・分娩後の母児の経過:順調。
・日齢2:児の胎外生活:順調。
・哺乳回数:1日8回。
・希望:母乳育児(児に乳頭を吸われると痛い
・左右の乳頭に軽度の発赤あり
→本症例は、適切な授乳が行えていない可能性が高い。したがって、授乳指導が必要となる。①口が大きく開く、②唇が外向き、③下顎が乳房に触れている、④乳房の上方に比べ下方を深く含んでいるといった深い吸い方ができると乳頭亀裂などのトラブルが少なくなる。

1.× 児の体重減少率より優先度が高いものが他にある。なぜなら、哺乳回数は、1日8回と十分であるため。ただし、吸着に問題がある場合は体重減少を伴うことが多い。
2.× 乳汁の分泌状態より優先度が高いものが他にある。分泌状態が不良の場合は、児の哺乳時間が延長することが多い。設問文からそのような訴えはないため、乳汁の分泌状態の観察すべき優先度は低いと考えられる。
3.× 乳房の緊満状態より優先度が高いものが他にある。母乳は分娩後の2日目から6日目の間に出始め、母乳が分泌され始めると乳房が緊満する。ちなみに、移行乳とは、初乳と成乳の間に出る母乳で、産後5日目頃から2週間ほどの間に出る母乳である。通常、産後72時間以上経っても乳汁分泌が活性化しない場合、乳汁分泌遅延を疑う。
4.〇 正しい。ラッチオンの状態が、観察する項目で優先度が高い。児の下顎が乳房に埋もれこむようにすることで効果的な吸着(ラッチオン)が行えるようになる。①口が大きく開く、②唇が外向き、③下顎が乳房に触れている、④乳房の上方に比べ下方を深く含んでいるといった深い吸い方ができると乳頭亀裂などのトラブルが少なくなる。

生理的体重減少率とは?

正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。

減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷出生時の体重×100」で算出される。

 

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