第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午前61~65】

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問題61 排卵のある正常な月経周期で正しいのはどれか。

1.黄体は形成後1週間で萎縮する。
2.エストロゲンの作用で子宮内膜が分泌期になる。
3.発育した卵胞の顆粒膜細胞からプロゲステロンが分泌される。
4.エストロゲンのポジティブフィードバックによって黄体形成ホルモンの分泌が増加する。

解答

解説

(※画像引用:日本医師会様HPより)

月経周期

・卵胞期:1回の月経周期が始まると脳の底の方にある下垂体というところから、卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期。
・増殖期:女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期。卵胞期と増殖期とはだいたい同じ時期。
・黄体期:排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期。
・分泌期:子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期。

1.× 黄体は形成後、「1週間」ではなく2週間で萎縮する。妊娠が成立しない場合、黄体は萎縮し、次の月経周期へ移行する。
2.× 子宮内膜が分泌期になるのは、「女性ホルモン(エストロゲン)」ではなく黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用である。ちなみに、卵胞期で、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期である。エストロゲンの作用で子宮内膜は増殖期になる。
3.× 発育した卵胞の顆粒膜細胞から、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」ではなく女性ホルモン(エストロゲン)が分泌される。黄体ホルモン(プロゲステロン)は、排卵した後の卵胞(黄体)が分泌される。
4.〇 正しい。エストロゲンのポジティブフィードバックによって黄体形成ホルモンの分泌が増加する。エストロゲン(女性ホルモン)が一定の濃度を超えるとポジティブフィードバックが起こる。機序として、①血中のエストロゲン濃度が上昇→②ポジティブフィードバックが働く→③下垂体前葉から黄体形成ホルモンの急激な放出が起こる→④排卵する。ポジティブフィードバックとは、何かが増加したことにより、対象も増加することである。

排卵期とは?

約1ヵ月に1回卵巣から卵管へ卵子が放出されることを「排卵」という。 月経周期が一般的な28日周期の女性の場合、次の月経開始予定日から約14日前に起こる。 (※月経周期によって異なる。)排卵期は、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの血中濃度が急激に上昇して始まる。黄体形成ホルモンは卵子の放出(排卵)を促すが、排卵は通常、両ホルモンの急激な増加が始まってから16~32時間後に起こる。この時期にはエストロゲンの血中濃度は低下し、プロゲステロンの血中濃度が上昇し始める。

ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック

【ネガティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンが低下する → ネガティブフィードバック
②エストロゲンレベルが低下したらゴナドトロピンが上昇する → ネガティブフィードバック

【ポジティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンも上昇する → ポジブフィードバック
※ポジブフィードバックは一定条件が整わないと発現しません。ヒトではストラジオールが 200 pg/ml 以上に達し、それが 48 時間以上持続した時のみ発現します。間脳や下垂体でどのような現象が起きているかは考慮する必要がありません。

(※図・一部引用:「ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック」より)

 

 

 

 

 

問題62 不妊症について正しいのはどれか。

1.約6割は原因不明である。
2.検査に基礎体温測定がある。
3.治療の1つに不妊手術がある。
4.女性の年齢は治療効果に影響しない。

解答

解説

不妊症とは?

不妊症とは、避妊せず性行為を続けているのにもかかわらず、約1年妊娠しないことである。原因はさまざまである。病気によって排卵のはたらきや、卵管・子宮・精巣など妊娠に関わる臓器が病気によって悪くなっていることなどが関係しているといわれている。時に原因が分からないこともある。

1.× 原因不明である割合は、「約6割」ではなく約1割である。原因の割合として、女性側約4割、男性側約2.5割、男女とも約2.5割である。ただし、各所で様々に研究し、調査中に妊娠した場合もあり、一概にはいえない。
2.〇 正しい。検査に基礎体温測定がある。なぜなら、基礎体温を毎日記録すると、体温を表わす線の変化によって、排卵日と妊娠しやすい時期がわかるため。基礎体温測定をだいたい3~6ヵ月ほど続けていると、その人の個人的なパターンが浮き彫りになって見えていき、内分泌・排卵因子への対応にもなる。また、タイミング法とは、最も妊娠しやすいタイミングに性交渉を行う方法がある。基礎体温や超音波検査、尿中黄体形成ホルモン検査などを参考にしながら排卵日を予測し、効果的な性交渉のタイミングをアドバイスする。もっとも自然な妊娠に近く、お二人にとって負担の少ない不妊治療のファーストチョイスである。
3.× 不妊手術は、「不妊」ではなくの妊娠を防ぐ(女性特有の病気を防ぐ)治療の一つである。不妊手術とは、生殖能力を喪失させる目的で行われる手術である。精子または卵子が通過する管をふさげば、生殖能力は失われる。卵巣そのものを取り除くため、卵巣腫瘍や卵胞嚢腫などのような卵巣におきる疾患を予防することができる。
4.× 女性の年齢は治療効果に「影響しない」のではなく影響する。なぜなら、年齢が上がるにつれて、卵子の質や量が低下するため。

 

 

 

 

 

問題63 正常な分娩経過はどれか。

1.骨盤入口部に児頭が進入する際、児の頭部が胸壁に近づく。
2.骨盤出口部に達した時点で、児頭の矢状縫合は母体の骨盤の横径に一致する。
3.児頭娩出後、胎児は肩の長軸が骨盤出口部の横径に一致するよう回旋する。
4.児頭が発露したころに胎盤が剥離する。

解答

解説

”児頭の産道通過機転”

第1回旋(屈曲):児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
第2回旋(内回旋):児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。
第3回旋(伸展):児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである。
第4回旋(外回旋):児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。

第1・第3回旋:胎児の姿勢を変化させる回旋(胎勢回旋・横軸回旋)である。
第2・第4回旋:体幹の向きが移動する回旋(胎向回旋・縦軸回旋)である。

1.〇 正しい。骨盤入口部に児頭が進入する際、児の頭部が胸壁に近づく。これは、第1回旋(屈曲)のことをさす。第1回旋とは、児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
2.× 骨盤出口部に達した時点で、児頭の矢状縫合は母体の骨盤の「横径」ではなく前後径に一致する。これは、第2回旋(内回旋)のことを指す。第2回旋とは、児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。ちなみに、児頭の矢状縫合は母体の骨盤の横径に一致するのは、骨盤出口部に達した時点(第1回旋)である。
3.× 児頭娩出後、胎児は肩の長軸が骨盤出口部の「横径」ではなく前後径に一致するよう回旋する。これは、第4回旋(外回旋)のことを指す。第4回旋とは、児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。
4.× 胎盤が剥離するのは、「児頭が発露したころ」ではなく、通常胎児娩出後20〜30分後である。発露とは、陣痛が増強して胎児がさらに下降して児頭は陣痛間欠期でも後退しなくなる状態である。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

 

 

 

 

 

問題64 新生児の呼吸窮迫症候群 〈RDS:respiratory distress syndrome〉で正しいのはどれか。

1.呼吸数が減少する。
2.過期産児に発症しやすい。
3.生後24時間ころから発症する。
4.肺サーファクタントの欠乏が原因で生じる。

解答

解説

呼吸窮迫症候群とは?

呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。症状として、肺胞がしぼみ、呼吸がうまく出来ず、多呼吸の症状が現れる。息を吸うときに肋骨や胸骨の下が陥没するのが特徴(陥没呼吸)。 症状が悪化すると、呻吟、チアノーゼ、嗜眠、不規則呼吸および無呼吸となる。

1.× 呼吸数は、「減少」ではなく増加する。症状として、肺胞がしぼみ、呼吸がうまく出来ず、多呼吸の症状が現れる。息を吸うときに肋骨や胸骨の下が陥没するのが特徴(陥没呼吸)。 症状が悪化すると、呻吟、チアノーゼ、嗜眠、不規則呼吸および無呼吸となる。
2.× 「過期産児」ではなく未熟児(早期産児)に発症しやすい。なぜなら、肺サーファクタントが出生前に十分に生成されていないため。ちなみに、早産児とは37週未満(36週6日まで)、低出生体重児は2,500g未満である。ちなみに、1,500g未満であれば極低出生体重児、1,000g未満であれば超低出生体重児という。42週以上であれば過期産児という。
3.× 「生後24時間ころ」ではなく、生後数時間以内から発症する。なぜなら、ガス交換の障害(肺胞が拡張した状態を保てない)ことで起こるため。
4.〇 正しい。肺サーファクタントの欠乏が原因で生じることは、新生児の呼吸窮迫症候群である。呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。

 

 

 

 

 

問題65 小児期から青年期に発症し、 運動性チック、音声チック及び汚言の乱用を伴うのはどれか。

1.Down〈ダウン〉症候群
2.Tourette〈トゥレット〉障害
3.注意欠如多動性障害 〈ADHD〉
4.Lennox-Gastaut〈レノックスガストー〉症候群

解答

解説
1.× Down症候群とは、染色体異常が原因で知的障害が起こる病気である。常染色体異常疾患の中で最多である。Down症候群になりうる異常核型は、3種に大別される。①標準トリソミー型:21トリソミー(93%)、②転座型(5%)、③モザイク型(2%)である。発症率は、平均1/1000人である。しかし、35歳女性で1/300人、40歳女性1/100人、45歳女性1/30人と、出産年齢が上がるにつれて確率が高くなる。症状として、①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。
2.〇 正しい。Tourette障害は、小児期から青年期に発症し、 運動性チック、音声チック及び汚言の乱用を伴う。Tourette症候群(トゥレット障害)とは、複数の運動チックと音声チックが同時に存在し、1年以上継続する状態を指す。汚言症がみられることがある。汚言症とは、卑猥語や罵倒語(汚言、醜語、糞語、猥言、猥語)を不随意的に発する症状。一方、一過性チック障害は運動性チックおよび(または)音声チックが1日中頻繁に生じ、少なくとも4週間は持続するが、1年以上には至らないものをいう。
3.× 注意欠如多動性障害 〈ADHD〉とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。
4.× Lennox-Gastaut症候群は、3~5歳で発症し、急に四肢が硬くなり脱力発作が起こる。知的障害を伴う。

欠神発作とは?

欠神発作は、①定型欠神と②非定型欠神に分類される。非定型欠神は、脳全体に全般性に現れる棘徐波に一致して意識消失を主体とする発作症状がみられるという点では定型欠神と同じだが、発作の始まりや終わりが定型欠神ほどはっきりしなくて、なんとなく始まり、なんとなく終わるということがほとんどである。脳波上も定型欠神のものより遅い1.5~2.5サイクルの棘徐波が認められる。定型欠神は、脳に障害がない患者さんに多くみられるが、非定型欠神はLennox-Gastaut症候群(レノックス・ガストー症候群)など脳に障害のある患者さんによくみられる発作である。

 

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