第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午後56~60】

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問題56 乳歯について正しいのはどれか。

1.永久歯より石灰化度が高い。
2.生後8か月に生えそろう。
3.胎児期に石灰化が始まる。
4.本数は永久歯と同じである。

解答

解説

乳歯とは?

乳歯とは、生後6~8か月頃から下顎の中切歯が生え始め、2~3歳頃に20本すべて生えそろう歯のことをいう。生える順番として、正中線から外側に向けて切歯(前歯)2本、犬歯(八重歯)1本、臼歯(奥歯)2本が並び、右上、右下、左上、左下にそれぞれ同様に生える。6歳頃から12歳頃にかけて、乳歯から永久歯に生え変わり、永久歯になると親知らずも含め32本となる。

1.× 永久歯より石灰化度が「高い」のではなく低い。なぜなら、乳歯は永久歯と比較すると、エナメル質や象牙質の厚みが薄いため。したがって、う蝕(齲蝕・うしょく)になりやすい。ちなみに、う蝕とは、いわゆる虫歯のことで、口腔内の細菌が糖質から作った酸によって、歯質が脱灰されて起こる歯の実質欠損である。
2.× 生後8か月に「生えそろう」のではなく生え始める。生えそろうのは、2~3歳ころである。
3.〇 正しい。胎児期(受精から出生までの間)に石灰化が始まる。歯は最初から硬い組織ではなく、石灰化というカルシウム塩の沈着によって硬い歯になっていく。本格的に表面が硬くなる乳歯の石灰化は、妊娠4~6か月頃に始まり、歯冠という歯の頭の部分は、生後1か月~1年の間に完成する。ちなみに、永久歯では、第一大臼歯が一番早く、生まれる時に石灰化を開始する。
4.× 本数は永久歯と「同じではない」。乳歯は、通常20本である。一方、永久歯は親知らず含め32本である。

 

 

 

 

 

問題57 子どもの平行遊びで正しいのはどれか。

1.3歳ころまでの主要な遊びである。
2.他の子どもが遊ぶ様子を見て楽しむ。
3.リーダーの存在や役割の分担がある。
4.他の子どもとおもちゃの貸し借りを行う。

解答

解説

平行遊びとは?

平行遊びとは、同じ場所で他児と同じような行動をしているが、お互いには関係なくばらばらに遊ぶことである。

1.〇 正しい。3歳ころまでの主要な遊びである。他にも、3歳頃の遊びとして、傍観遊びがあげられる。傍観遊びとは、他の子供の遊びを見て過ごし、声をかけることはあっても遊びには入らない遊びのことである。これによって遊び方を理解し、まねて遊ぶようになる。
2.× 他の子どもが遊ぶ様子を見て楽しむのは、傍観遊びである。
3.× リーダーの存在や役割の分担があるのは、協同遊びである。協同遊びとは、幼児期後期(3~6歳)に見られ、スポーツや共同作成などである。
4.× 他の子どもとおもちゃの貸し借りを行うのは、連合遊びである。連合遊びとは、幼児期後期(3~6歳)に見られ、他児と一緒に遊ぶが、遊びの役割がはっきりせず役割分担がなされていないが、連帯感が見られるものをいう。

 

 

 

 

 

問題58 母体保護法に規定されているのはどれか。

1.産後の休業
2.妊娠中の女性の危険有害業務の就業制限
3.妊娠したことを理由とした不利益な取扱いの禁止
4.経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある場合の人工妊娠中絶

解答

解説

母体保護法とは?

母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。

1~2.× 産後の休業/妊娠中の女性の危険有害業務の就業制限は、労働基準法(第64~65条)に規定されている。妊産婦(妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性をいう)に対する産前産後の休業や請求した場合、変型労働時間制を適用しないこと、時間外労働・休日労働をさせてはならないこと、深夜業をさせてはならないことが定められている(※参考:「労働基準法」e-GOV法令検索様)。ちなみに、労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。
3.× 妊娠したことを理由とした不利益な取扱いの禁止は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)に規定されている。(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない(※引用:「男女雇用機会均等法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、男女雇用機会均等法とは、1972年に施行された男女の雇用の均等及び待遇の確保等を目標とする日本の法律で、主に職場における性別による差別を禁止し、男女とも平等に扱うことを定められている。所管官庁は、厚生労働省である。
4.〇 正しい。経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある場合の人工妊娠中絶は、母体保護法(14条)に規定されている。(医師の認定による人工妊娠中絶)第十四条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの。二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫かんいんされて妊娠したもの(※引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)

 

 

 

 

 

問題59 閉経について正しいのはどれか。

1.閉経すると膣の自浄作用が低下する。
2.閉経後はエストロゲン分泌が増加する。
3.日本人の閉経の平均年齢は55歳である。
4.10か月の連続した無月経の確認で診断される。

解答

解説
1.〇 正しい。閉経すると膣の自浄作用が低下する。なぜなら、閉経後に女性ホルモンであるエストロゲンの分泌は低下し、膣粘膜の非薄化や膣分泌液の減少が生じるため。
2.× 閉経後はエストロゲン分泌は、「増加」ではなく低下する。なぜなら、閉経後、エストロゲンの産生元である卵胞が消失するため。ちなみに、エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。
3.× 日本人の閉経の平均年齢は、「55歳」ではなく約50.5歳である。閉経とは、卵巣の活動性が次第に低下し(エストロゲン分泌低下)、ついには月経が永久に停止した状態である。なお、更年期は閉経の前後5年間を指す。
4.× 「10か月」ではなく12か月の連続した無月経の確認で診断される。したがって、1年前をさかのぼって「閉経」とするのが一般的である。

更年期とは?

更年期とは、閉経の5年前から5年後までの約10年、つまり、生殖期から非生殖期への間の移行期のことをさすことが多い。閉経の年齢は人によって異なり、40歳代前半に迎える人もいれば、50歳代後半になっても迎えない人もいる。

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題60 妊娠に伴う母体の生理的変化とその時期の組合せで正しいのはどれか。

1.体温が低下する:妊娠5週ころ
2.乳房が緊満する:妊娠15週ころ
3.つわりが軽減する:妊娠11週ころ
4.循環血液量が最大になる:妊娠32週ころ

解答

解説

妊娠週数

・妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)
・妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)
・妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

1.× 体温が低下するのは、「妊娠5週ころ」ではなく、14週ころからである。妊娠成立後は、プロゲステロンの影響で高温相が持続する。
2.× 乳房が緊満するのは、「妊娠15週ころ」ではなく、6週ころからである。比較的初期から、赤ちゃんへの母乳への準備をし始める。
3.× つわりが軽減するのは、「妊娠11週ころ」ではなく妊娠12週~14週ころからである。つわりに関しては個人差が大きいため、一概にこの時期とはいいきれない。つわりは妊娠8週目~10週目ごろに症状のピークを迎える場合が多いとされている。
4.〇 正しい。循環血液量が最大になるのは、妊娠32週ころである。妊娠により母体では様々な生理的変化が出現する。中でも、循環器系変化は顕著である。循環血液量と心拍出量は妊娠の進行と伴に増加し、妊娠28~32週頃にはピークとなり、非妊娠時の約1.5倍の増加を示す。

妊娠中の生理的機序

心疾患合併の頻度は全分娩の1~3%である。妊娠により母体では様々な生理的変化が出現する。中でも、循環器系変化は顕著である。循環血液量と心拍出量は妊娠の進行と伴に増加し、妊娠28~32週頃にはピークとなり、非妊娠時の約1.5倍の増加を示す。正常妊娠ではこうした増加に対し、末梢血管抵抗が低下し、腎臓や子宮への血流量を増加させている。実際、腎血流量は非妊娠時に比べ30%増加し、子宮血流量は10倍になる。これらの循環変化は母体が順調に胎児を育んで行く上に必須のものであるが、心疾患を合併した妊婦ではしばしば負担となる。また、分娩中は子宮収縮により静脈環流量が増加し、第2期では努責による交感神経興奮により頻脈になり、心拍出量が増加する。したがって、分娩中は心疾患合併妊婦の症状が悪化する危険な時期といえる。分娩後(産褥早期)、子宮は急速に収縮し静脈環流量が増加するが、循環血液量は急には減少しないため、一過性に心負担は増加する。この心拍出量増加は、産後の利尿により循環血液量が減少するまで継続する。産褥期に一過性に浮腫が増悪することがあるが、こうした循環器系変化のためと考えられる。

(※一部引用:「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」(中井章人著,東京医学社)より)

 

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