第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午後116~120】

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次の文を読み115~117の問いに答えよ。
 Aさん(14歳、男子、特別支援学校の中学生)はDuchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィーで両親、弟(7歳)と2階建ての家に4人で暮らしている。呼吸障害が進行したため非侵襲的陽圧換気療法を導入する目的で入院した。Aさんの呼吸状態は安定し、両親に対するバッグバルブマスクによる用手換気の指導が終了したため、自宅に退院し訪問看護を毎日利用して療養生活を続けることになった。両親は「日常の呼吸管理について退院後に対応できるか心配です」と病棟の看護師に話した。

116 退院後1週。Aさんの父親から「最近、大雨や落雷、地震による被災の報道が多くて、Aは人工呼吸器を付けているし、弟もまだ小さいので不安です。災害に備え何をすればよいでしょうか」と訪問看護師に相談があった。
 訪問看護師がAさんの父親に説明する内容で優先度が高いのはどれか。

 1.非常用電源の選び方
 2.福祉避難所への移動手段
 3.足踏み式吸引器の使用方法
 4.ハザードマップの確認方法

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(14歳、男子、特別支援学校の中学生、デュシェンヌ型筋ジストロフィー
・4人暮らし:両親、弟(7歳)と2階建ての家。
・呼吸障害が進行したため非侵襲的陽圧換気療法を導入する目的で入院。
・呼吸状態は安定、両親に対するバッグバルブマスクによる用手換気の指導が終了した。
・自宅に退院し訪問看護を毎日利用して療養生活を続けることになった。
・退院後1週:父親「最近、大雨や落雷、地震による被災の報道が多くて、Aは人工呼吸器を付けているし、弟もまだ小さいので不安です。災害に備え何をすればよいでしょうか」と。
→本症例の父親から災害への不安が聞かれる。在宅人工呼吸器管理を要する患者の災害時の優先事項を抑えておこう。

 1.〇 正しい。非常用電源の選び方をAさんの父親に説明する内容で優先度が高い。なぜなら、真っ先に生命に直結する事柄であるため。災害時は、停電する可能性がある。その際に、外部バッテリーや発電機などの予備電源を用意することが重要である。ちなみに、在宅で療養している人工呼吸器使用患者が長期停電時にも人工呼吸器を稼働できるように、国は患者に貸し出せる簡易自家発電装置などの整備費の一部を支援している。
 2.× 福祉避難所への移動手段より優先度が高いものが他にある。なぜなら、すぐに生命にかかわることとはいえないため。ちなみに、福祉避難所とは、避難所生活において、何らかの特別な配慮を必要とする要配慮者(具体的には、高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、病弱者など)のための施設である。老人福祉施設や養護学校などを利用するが、不足する場合は公的な宿泊施設などに福祉避難所として機能するための物資・器材、人材を整備し活用する。
 3.× 足踏み式吸引器の使用方法より優先度が高いものが他にある。なぜなら、すぐに生命にかかわることとはいえないため。足踏み式吸引器とは、電源不要で小型軽量なため、緊急時や屋外用として携帯できる吸引器である。痰の吸引に用いられる。
 4.× ハザードマップの確認方法より優先度が高いものが他にある。なぜなら、すぐに生命にかかわることとはいえないため。ハザードマップとは、自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したものである。

ポイント

【在宅人工呼吸器管理を要する難病患者の災害時の個別支援計画の優先事項】
①患者の身体状態および安全確保
②医療機器管理の継続的な提供
したがって、ライフライン、通信手段、避難所、避難経路などの被害状況によって対応は異なるため臨機応変に対応する必要がある。発災時の状況、患者本人や家族・介護者の状況、自宅の損壊状況、医療機器や医薬品の状況などから判断して、避難するか自宅に待機するかを決定する。自宅待機を想定した非常用電源の確保や医療機器などの準備、定期点検を含めて計画する。

 

 

 

 

 

次の文を読み115~117の問いに答えよ。
 Aさん(14歳、男子、特別支援学校の中学生)はDuchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィーで両親、弟(7歳)と2階建ての家に4人で暮らしている。呼吸障害が進行したため非侵襲的陽圧換気療法を導入する目的で入院した。Aさんの呼吸状態は安定し、両親に対するバッグバルブマスクによる用手換気の指導が終了したため、自宅に退院し訪問看護を毎日利用して療養生活を続けることになった。両親は「日常の呼吸管理について退院後に対応できるか心配です」と病棟の看護師に話した。

117 退院後6か月。Aさんは人工呼吸器を装着して特別支援学校に通学することにも慣れてきた。Aさんの母親から「弟がインフルエンザと診断された。弟は2階の子ども部屋、Aは1階のリビングで過ごしている。家族全員がインフルエンザの予防接種を受けた。Aにインフルエンザがうつらないか心配」と訪問看護師に連絡があった。
 訪問看護師の対応で適切なのはどれか。

 1.Aさんが特別支援学校を2週間休むことを勧める。
 2.Aさんが感染予防の目的で入院することを医師に相談する。
 3.Aさんは予防接種を受けているのでうつらないと説明する。
 4.ケアを父母で分担し、弟の担当は弟以外と接触しないことを提案する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(14歳、男子、特別支援学校の中学生、デュシェンヌ型筋ジストロフィー
・4人暮らし:両親、弟(7歳)と2階建ての家
・退院後6か月:人工呼吸器を装着して特別支援学校に通学することにも慣れてきた。
・母親「弟がインフルエンザと診断された。弟は2階の子ども部屋、Aは1階のリビングで過ごしている。家族全員がインフルエンザの予防接種を受けた。Aにインフルエンザがうつらないか心配」と。
→どのようにすれば、予防接種を受けたとはいえ、重症化しやすいAさんが少しでも安全に生活できるか考得る必要がある。

 1.× Aさんが特別支援学校を2週間休むことを勧める優先度は低い。なぜなら、今回は、家族(弟)がインフルエンザと診断されているため。特別支援学校を休んだからといって、インフルエンザの予防になりえない。また、特別支援学校の出席は、看護師ではなく担当の先生に聞くとよい。ちなみに、特別支援学校とは、障害者等が「幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準じた教育を受けること」と「学習上または生活上の困難を克服し自立が図られること」を目的とした日本の学校である。
 2.× Aさんが感染予防の目的で入院することを医師に相談する必要はない。なぜなら、母親もAさんも入院希望は聞かれていないため。また、一般的な入院の主な目的は、病気やけがの治療や検査などを行うためである。感染予防の目的で入院は行えない。
 3.× Aさんは予防接種を受けているのでうつらないと説明する必要はない。なぜなら、予防接種を受けていてもインフルエンザに罹患するため。インフルエンザワクチンは、感染後に発症する可能性を低減させる効果と、発症した場合の重症化防止に有効と報告されている(※引用:「令和5年度インフルエンザQ&A」厚生労働省様HPより)
 4.〇 正しい。ケアを父母で分担し、弟の担当は弟以外と接触しないことを提案する。なぜなら、分担することで、両親が媒介とならずインフルエンザの予防へとつながるため。インフルエンザは、飛沫感染・接触感染である。

インフルエンザとは?

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスへの感染を原因に発症する。A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38度以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。

 

 

 

 

 

次の文を読み118~120の問いに答えよ。
 Aさん(72歳、男性)は、妻と2人暮らしで子どもはいない。定年後は2人で旅行するのが趣味であった。Aさんは、1か月前から残尿感や夜間頻尿が気になり病院を受診した結果、前立腺癌と診断され根治的前立腺摘出手術を受けた。退院後は、手術後の補助療法として、外来で放射線の外照射療法を行うことになっている。

118 放射線外来の看護師が行うAさんへの説明で正しいのはどれか。

 1.「入浴直後に照射部位の観察をしましょう」
 2.「照射後は照射部位に冷湿布を貼りましょう」
 3.「照射部位の皮膚は乾燥させておきましょう」
 4.「照射部位は強くこすらないようにしましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(72歳、男性、前立腺癌:根治的前立腺摘出手術後
・妻と2人暮らし:子どもいない。
・定年後の趣味:2人で旅行する。
・1か月前:残尿感や夜間頻尿が気になる。
・退院後:手術後の補助療法として、外来で放射線の外照射療法を行う。
→放射線治療の副作用(有害事象)と対策について覚えておこう。

 1.× 「入浴直後に照射部位の観察をしましょう」と説明する必要はない。なぜなら、照射部位の観察は、入浴前に行うため。これは、刺激を少なくするため。副作用である皮膚炎の重症化を防ぐために、「保清」、「保湿」、「保護」のスキンケアが大切である。
 2.× 「照射後は照射部位に冷湿布を貼りましょう」と説明する必要はない。なぜなら、照射部位には冷湿布や絆創膏などを貼ると、その刺激が皮膚トラブルへとつながるため。かゆみがあっても掻かないように指導する。
 3.× 「照射部位の皮膚は乾燥させておきましょう」と説明する必要はない。なぜなら、乾燥させると皮膚トラブルへとつながるため。副作用である皮膚炎の重症化を防ぐために、「保清」、「保湿」、「保護」のスキンケアが大切である。
 4.〇 正しい。「照射部位は強くこすらないようにしましょう」と説明する。かゆみが強い場合は、かゆみ止めなどの塗り薬を処方してもらうよう指導する。

 

 

 

 

 

次の文を読み118~120の問いに答えよ。
 Aさん(72歳、男性)は、妻と2人暮らしで子どもはいない。定年後は2人で旅行するのが趣味であった。Aさんは、1か月前から残尿感や夜間頻尿が気になり病院を受診した結果、前立腺癌と診断され根治的前立腺摘出手術を受けた。退院後は、手術後の補助療法として、外来で放射線の外照射療法を行うことになっている。

119 Aさんの放射線療法が開始され初回の照射を終えた。放射線外来の看護師は、終了後にAさんへ声をかけた。Aさんは「ベッドは硬いし、最後まで同じ姿勢でいることがとても苦痛です。大きな音がするで恐怖も感じます」と訴えた。
 このときの看護師の説明で正しいのはどれか。

 1.「次回から照射中は傍に付き添います」
 2.「治療体位をとるための固定具を工夫してみます」
 3.「照射時間を短くできるよう主治医に相談してみます」
 4.「照射中に体位変換ができるよう放射線技師に相談します」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(72歳、男性、前立腺癌:根治的前立腺摘出手術後
・退院後:手術後の補助療法として、外来で放射線の外照射療法を行う。
・放射線療法が開始され初回の照射を終えた。
・Aさん「ベッドは硬いし、最後まで同じ姿勢でいることがとても苦痛です。大きな音がするで恐怖も感じます」と。
→本症例の訴えに対し、どこまで改善できる項目か判断しながら、できるだけ苦痛なく治療を受けてもらえるように支援しよう。

 1.× 「次回から照射中は傍に付き添います」と伝える必要はない。なぜなら、治療にあたって、付き添う看護師が被ばくしてしまうため。また、Aさん「ベッドは硬いし、最後まで同じ姿勢でいること」に対しての対応ができていない。
 2.〇 正しい。「治療体位をとるための固定具を工夫してみます」と説明する。なぜなら、治療体位は治療中とらなくてはいけないが、固定具の工夫は行えるため。固定具にタオルを巻いたり、膝の下にクッションを置いたりと治療体位を負担なく保てるよう支援する。
 3.× 「照射時間を短くできるよう主治医に相談してみます」と伝えることはできない。なぜなら、照射時間は効果が出るよう計画性をもって決まっているため。照射時間が短いと効果が期待できなくなる。また、機械による大きな音の恐怖はどうしても軽減できないものである。ちなみに、初回の照射は、放射線を当てる部位を決めたり、皮膚にマークをつけたり(マーキング)、固定具を作ったりと20~30分程度多くかかる。2回目以降は、部位にもよるが5~10分程度である。
 4.× 「照射中に体位変換ができるよう放射線技師に相談します」と伝えることはできない。なぜなら、体位変換は照射中行えないため。同一肢位で当てなければならない。

 

 

 

 

 

次の文を読み118~120の問いに答えよ。
 Aさん(72歳、男性)は、妻と2人暮らしで子どもはいない。定年後は2人で旅行するのが趣味であった。Aさんは、1か月前から残尿感や夜間頻尿が気になり病院を受診した結果、前立腺癌と診断され根治的前立腺摘出手術を受けた。退院後は、手術後の補助療法として、外来で放射線の外照射療法を行うことになっている。

120 Aさんが放射線治療を終了して半年後、腰部と右大腿部の痛みが出現した。倦怠感と食欲不振が続いたため病院を受診し精密検査を受けた。骨転移していることが分かり、Aさんと妻に主治医から余命と治療方針の説明があった。Aさんはその場で「痛みを取り除いてほしい。つらい治療は受けたくない」と訴え、3日後に緩和ケア病棟に入院した。
 入院翌日、受け持ちの看護師Bが、プリセプターである看護師に「今朝、奥さんの顔色が悪くふらついていたので声をかけると『夫の最期を受け入れられない気がして不安です』と打ち明けられました。昨夜も眠らずにAさんに付き添っていたようでした。奥さんにどう対応したらよいのでしょうか」と相談した。
 プリセプターである看護師が看護師Bに助言する内容で適切なのはどれか。

 1.妻がAさんの死を受け入れられるよう妻を励ますこと
 2.妻がAさんへの思いを看護師Bに語る時間をつくること
 3.Aさんの予後について再度主治医から妻へ説明するよう調整すること
 4.妻がAさんの死を受け入れられるまで夜も付き添うよう妻に伝えること

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(72歳、男性、前立腺癌:根治的前立腺摘出手術後
・妻と2人暮らし:子どもいない。
・定年後の趣味:2人で旅行する。
・放射線治療を終了半年後:腰部と右大腿部の痛みが出現(骨転移)。
・Aさんと妻に主治医から余命と治療方針の説明があった。
・Aさん「痛みを取り除いてほしい。つらい治療は受けたくない」と訴えた。
・3日後に緩和ケア病棟:入院。
・入院翌日:受け持ちの看護師Bが、プリセプターである看護師に「今朝、奥さんの顔色が悪くふらついていたので声をかけると『夫の最期を受け入れられない気がして不安です』と打ち明けられました。昨夜も眠らずにAさんに付き添っていたようでした。奥さんにどう対応したらよいのでしょうか」と相談した。
→受け持ちの看護師Bの「奥さんの対応に関して」の相談である。対応として、①気持ちを受け入れる。②共感的な態度を示す。③心理的な負担となるため、激励はしない。④無理をしなくてよいことを伝えることなどが望ましい。

 1.× 妻がAさんの死を受け入れられるよう妻を「励ます」ことの優先度は低い。なぜなら、励ますことが必ずしもAさんの死を受け入れられるとは限らないため。むしろ、昨夜も眠らずにAさんに付き添っている様子から、これ以上の励ましは心理的な負担となる可能性が高い。
 2.〇 正しい。妻がAさんへの思いを看護師Bに語る時間をつくることは、プリセプターである看護師が看護師Bに助言する内容である。なぜなら、気持ちを語る時間は、自分自身を見つめ精神状態を整理することにつながるため。妻は『夫の最期を受け入れられない気がして不安です』と打ち明けてくれている。気持ちを受け入れ、共感的な態度を示すことで、妻の精神的安定を支援できる。
 3.× 「Aさんの予後」について再度主治医から妻へ説明するよう調整することの優先度は低い。なぜなら、妻は、Aさんの予後に関しての説明が分からなかったわけではないため。妻は、『夫の最期を受け入れられない気がして不安です』と打ち明けている。
 4.× 妻がAさんの死を受け入れられるまで夜も付き添うよう妻に伝えることの優先度は低い。なぜなら、夜も付き添うことは身体的にも心理的にも負担となるため。現状、妻の顔色は悪くふらついている。無理をしなくてよいことを伝えることなどが望ましい。

緩和ケアとは?

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に同定し、適切な評価と治療によって、苦痛の予防と緩和を行うことで、QOL(Quality of Life:生活の質) を改善するアプローチである。

 

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