第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午後66~70】

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66 Aさん(73歳、女性、要介護1)は1人で暮らしている。室内の家具や手すりなどの、左右にあるものにうまくつかまりながら、バランスをとって移動している。Aさんは「腕の力も足の力も落ちてきた。両手を使って体を支えるものがないと屋外の移動は不安だが、足の筋力が落ちないように近所の散歩を始めたい」と訪問看護師に相談があった。Aさんの住居の廊下や玄関に段差はなく、住居周辺には坂や段差のない舗装された歩道がある。福祉用具を図に示す。
 訪問看護師がAさんに勧める福祉用具で適切なのはどれか。


1.三点杖
2.松葉杖
3.自走用標準型車椅子
4.車輪付きの歩行器〈歩行車〉

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(73歳、女性、要介護1、1人暮らし)
・バランスをとって伝えながら移動:室内の家具や手すりなど
・Aさん「腕の力も足の力も落ちてきた。両手を使って体を支えるものがないと屋外の移動は不安だが、足の筋力が落ちないように近所の散歩を始めたい」と。
・住居の廊下や玄関に段差はない。
・住居周辺には坂や段差のない舗装された歩道がある。
→本症例に適した歩行補助具の選択をしよう。

1.× 三点杖より優先度が高いものが他にある。なぜなら、本症例は、両手を使って体を支えるものがないと不安とのことであるため。ちなみに、三点杖とは、T杖先が3本に分岐している杖のことをいう。
2.× 松葉杖は適応外である。なぜなら、松葉杖の適応は、体重をかけないようにすること(免荷)であるため。
3.× 自走用標準型車椅子は適応外である。なぜなら、本症例の希望として、「足の筋力が落ちないように近所の散歩を始めたい」と言っているため。車椅子だと下肢筋力の低下を助長しかねない。
4.〇 正しい。車輪付きの歩行器〈歩行車〉は、Aさんに勧める福祉用具である。なぜなら、①両手で体を支えられる、②近所の散歩も可能、③住居、住居周辺に段差などないことため。また、歩行車だと散歩中、疲労がたまった時、腰かけとして休める機能もある。

松葉杖とは?

2本の松葉杖で身体を支えることができるため、体重をかけないようにする事が目的である。松葉杖のそれぞれの下端を靴の脇約5cm、つま先の前方15cmのところに突き、上端が腋窩から指2~3本分(約5cm)下にくるように松葉杖の長さを調整する。ハンドグリップは肘が20°~30曲がる位置に来るよう調節する。

【松葉杖の適応】
・片方の下肢骨折
・対麻痺障害などの立位保持が困難な場合
・荷重負荷制限
・上腕の筋力が十分であること

【免荷】
1/2~1/3部分免荷:両松葉杖
2/3~3/4部分免荷:片松葉杖
3/4部分荷重以上:T字杖

 

 

 

 

 

67 Aさん(78歳、女性、要支援1)は1人で暮らしており、認知機能や嚥下機能の低下はない。訪問看護師は、内科と整形外科から朝2種類、夕3種類の合計5種類の内服薬が処方されていることを確認し、夕方に飲む薬だけが減っていることに気付いた。
 訪問看護師のAさんへの対応で最も適切なのはどれか。

 1.どの薬を何時に内服しているのかを聞く。
 2.服薬用のゼリーを用いて内服することを勧める。
 3.1日に5種類の薬を内服する必要があることを説明する。
 4.介護予防訪問介護を利用して服薬の介助を依頼することを勧める。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(78歳、女性、要支援1、1人暮らし)
・認知機能や嚥下機能:低下なし
・内科と整形外科から朝2種類、夕3種類の合計5種類の内服薬が処方。
夕方に飲む薬だけが減っている
→本症例は、認知機能の低下がないにもかかわらず、夕方に飲む薬だけが減っている。その原因や理由を考えていく必要がある。

 1.〇 正しい。どの薬を何時に内服しているのかを聞く。なぜなら、本症例は、認知機能の低下がないにもかかわらず、夕方に飲む薬だけが減っているため。合計5種類の内服薬が処方されていることから、薬の勘違いや混乱があるかもしれない。しっかり話を聞いて、必要に応じてお薬手帳を見ながら、解決策を考えていこう。
 2.× 服薬用のゼリーを用いて内服することを勧める必要はない。なぜなら、本症例の嚥下機能は低下がみられていないため。服薬用のゼリーは、薬をゼリーで包み込んで服用し、のどにつまらず、むせずに、つるんと服薬できる。誤嚥予防のため嚥下機能障害がみられる場合に用いられる。
 3.× 1日に5種類の薬を内服する必要があることを説明する優先度は低い。なぜなら、薬の服用には、服用するタイミングも重要であるため。処方された薬を1日で飲み切ればよいというわけではない。飲み忘れた場合、どのように対応するか医師と相談するべきである。
 4.× 介護予防訪問介護を利用して服薬の介助を依頼することを勧める優先度は低い。なぜなら、本症例は一人暮らしができており、認知機能や嚥下機能の低下はみられないため。介護予防訪問介護とは、要支援1、要支援2に認定された方を対象に、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者宅を訪問し、本人が自分で行うのが困難な入浴、排せつ、食事等の介護や、調理、洗濯、掃除等の家事を行う介護サービスである。

 

 

 

 

 

68 介護保険の介護給付で利用できる居宅サービスはどれか。

 1.訪問入浴介護
 2.介護予防居宅療養管理指導
 3.看護小規模多機能型居宅介護
 4.定期巡回・随時対応型訪問介護看護

解答

解説

(※画像引用:「保険給付」日本電子健康保険組合様HPより)http://www.jeol-kenpo.com/02kaigo/kaigo_03.html

介護保険とは?

介護保険とは、平成12年4月から開始された介護を必要とする方に費用を給付し、適切なサービスを受けられるようにサポートする保険制度である。40歳以上の人は、介護保険の被保険者となり、①65歳以上の人(第1号被保険者)と、②40~64歳までの医療保険に加入している人(第2号被保険者)になる。

介護保険の主な給付には、①介護給付と、②予防給付がある。介護給付は、要介護1~5に認定された場合に介護サービスの利用額負担として行われ、予防給付は、要支援1~2に認定された場合に介護予防サービスの利用額負担として行われる。

 1.〇 正しい。訪問入浴介護は、介護保険の介護給付で利用できる居宅サービスである。居宅サービスとは、自宅で生活する人を対象とした介護保険の介護サービス全般のことをいう。利用者は要介護2以下が7割を占めているというデータもあり、その割合は年々増加傾向となっている。【居宅サービスの種類】訪問看護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定支援入居者生活介護、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、住宅改修費支給である。
 2.× 介護予防居宅療養管理指導は、介護保険の予防給付である。介護予防居宅療養管理指導とは、在宅で療養していて、通院が困難な利用者へ医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などが家庭を訪問し療養上の管理や指導、助言等を行うサービスである。ちなみに、予防給付とは、支援が必要と認められた介護保険の被保険者に対して給付されるもので、介護予防サービスなどが利用できる。
 3~4.× 看護小規模多機能型居宅介護/定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、地域密着型サービスである。

地域密着型サービスとは?

地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れた地域でサービスを受けられるようにするものである。原則として、その市町村の被保険者しか利用できない。今後増加が見込まれる認知症高齢者や中重度の要介護高齢者等が、出来る限り住み慣れた地域で生活が継続できるように、市町村指定の事業者が地域住民に提供するサービスである。

【地域密着型サービス9種類】
①定期巡回・随時対応型訪問介護看護
②夜間対応型訪問介護
③認知症対応型通所介護
④小規模多機能居宅介護
⑤看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
⑥認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
⑦地域密着型特定施設入居者生活介護
⑧地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
⑨地域密着型通所介護

 

 

 

 

 

69 Aさん(65歳、男性)はうっ血性心不全の急性増悪で入院し、治療を受けて自宅に退院した。退院後は月1回の外来通院、週1回の訪問看護で生活指導を受け、血圧、体重、労作時の自覚症状について日誌に記録することになった。初回訪問時、Aさんは訪問看護師に「庭で野菜を作るのが趣味です。野菜作りの作業をしていると夢中になって時間を忘れてしまいます」と話した。
 訪問看護師のAさんへの助言で適切なのはどれか。

 1.「室内で安静に過ごしましょう」
 2.「野菜を作るのはやめて他の趣味を見つけましょう」
 3.「作業の後は30分以内に2L以上の水分を補給しましょう」
 4.「日誌の記録をもとに自分で作業量を調整できるようにしましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(65歳、男性、うっ血性心不全
・退院後:月1回の外来通院、週1回の訪問看護で生活指導。
血圧、体重、労作時の自覚症状について日誌に記録。
・初回訪問時:Aさん「庭で野菜を作るのが趣味です。野菜作りの作業をしていると夢中になって時間を忘れてしまいます」と。
→うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が弱まり、充分な量の血液を全身に送れなくなって、血液の滞留(うっ血)が起こしている状態である。 このため、呼吸困難や倦怠感、むくみなどが生じる。BNPが 100pg/mL以上であることが診断基準である。

 1.× 「室内で安静に過ごしましょう」と伝える必要はない。なぜなら、自宅退院しうっ血性心不全の症状も安定していると考えられるため。本症例は、趣味である野菜作りに励んで活動的な生活を送れているため、その活動を維持できるよう支援する。
 2.× 「野菜を作るのはやめて他の趣味を見つけましょう」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は、「野菜作りの作業をしていると夢中になって時間を忘れてしまいます」というほど好きで熱中できる趣味であるため。安全に野菜を作ることができるよう支援する。
 3.× 「作業の後は30分以内に2L以上の水分を補給しましょう」と伝える必要はない。なぜなら、作業の後は30分以内の水分摂取2Lは多すぎるため。健康な成人の1日に必要な水分量は、体重1kgあたり約35mlとされており、たとえば体重50kgの人は1.7L、60kgの人は2.1L、70kgの人は2.4L、80kgの人は2.8Lである。過剰な水分摂取は、血管を流れる血液量の増加につながり、不要な水分の排出が上手くいかなくなり、余計な水分が体内に残ってしまうため、体にむくみが生じる。
 4.〇 正しい。「日誌の記録をもとに自分で作業量を調整できるようにしましょう」とAさんへ助言する。なぜなら、長時間の作業は、心臓に負担がかかりすぎる恐れがあるため。本症例は「野菜作りの作業をしていると夢中になって時間を忘れてしまいます」と言っていることから、作業量の調整が必要である。

 

 

 

 

 

70 Aさん(55歳、虚血性心疾患)は4人部屋に入院している。Aさんは緊急で心臓カテーテル検査を行うことになった。日勤の担当看護師がAさんの検査のために訪室すると、同室の右片麻痺のあるBさん(60歳、脳出血)からトイレに行きたいと声をかけられた。
 このときの看護師の行動で適切なのはどれか。

 1.ナースステーションに戻り、リーダーに相談する。
 2.Aさんに待つよう説明し、Bさんのトイレ介助を行う。
 3.Bさんに待つよう説明し、Aさんを検査室に移送する。
 4.その場から離れずに別の看護師を呼び、Bさんのトイレ介助を依頼する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(55歳、虚血性心疾患、4人部屋に入院)。
緊急で心臓カテーテル検査を行う。
・同室の右片麻痺のあるBさん(60歳、脳出血)「トイレに行きたい」と。
→日勤の担当看護師の優先順位を考えよう。緊急での心臓カテーテル検査とBさんのトイレ希望を同時にこなすのは難しい。

 1.× ナースステーションに戻り、リーダーに相談するより優先度が高いものが他にある。なぜなら、ナースステーションに戻ることで、その病室から離れ、患者から目を離すことになるため。
 2.× Aさんに待つよう説明し、Bさんのトイレ介助を行うより優先度が高いものが他にある。なぜなら、Aさんは緊急での心臓カテーテル検査であるため。生命にかかわり急変の恐れがある。ちなみに、虚血性心疾患(冠動脈疾患)とは、心筋組織に虚血を生じた状態(血流が途絶した状態)である。心筋虚血は、心筋の酸素需要と供給の不均衡によって生じ、冠動脈の血流障害が起こる。ほとんどは冠動脈硬化による。
 3.× Bさんに待つよう説明し、Aさんを検査室に移送するより優先度が高いものが他にある。なぜなら、心臓カテーテル検査は一般的に30分~1時間30分程度要すため。その間、Bさんが待っていることができるのか不明である。
 4.〇 正しい。その場から離れずに別の看護師を呼び、Bさんのトイレ介助を依頼する。なぜなら、緊急での心臓カテーテル検査とBさんのトイレ希望を同時にこなすのは難しいため。日勤の担当看護師がAさんの検査のために訪室しているため、ヘルプの看護師さんにBさんのトイレ介助を依頼するのがスムーズと考えられる。

 

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