第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午後86~90】

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86 Aさん(55歳、男性、会社員)は30年の喫煙歴がある。会社の健康診断で高血圧を指摘されて生活習慣の改善を勧められたが「週末にスポーツジムで運動するようになったけれど、仕事が忙しくてこれ以上生活を変える自信はありません」と述べた。
 Aさんの自己効力感を高める支援はどれか。2つ選べ。

 1.Aさんの運動への取り組みを評価する。
 2.Aさんの職場の上司に配置転換を依頼する。
 3.Aさんが取り組めそうな目標を一緒に設定する。
 4.Aさんが生活習慣を改善する気持ちになるまで待つ。
 5.Aさんが脳血管疾患になる危険性が高いことを説明する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(55歳、男性、会社員、30年の喫煙歴)
・会社の健康診断で高血圧を指摘されて生活習慣の改善を勧められた
・「週末にスポーツジムで運動するようになったけれど、仕事が忙しくてこれ以上生活を変える自信はありません」と。
→自己効力感(セルフエフィカシー)とは、自分が行動しようと思っていること、変えようと思っている生活習慣などに対し、うまく達成できるという自信や確信のこと、自己効力感の理論はライフスタイル改善のプログラムに活用される。自己効力感を高める要因として、①成功体験、②代理的体験、③言語的説得、④生理的・情緒的状態(情緒的高揚)が挙げられる。

①成功体験:例えば禁煙できた日をカレンダーに一日ずつ×を書いていき、「1週間禁煙できた」と自信をつけること。
②代理的体験:同じような状況にある他者が目標を達成している様子から「自分にもできそうだ」と思うこと。
③言語的説得:自分自身や周囲の人からの言語的な賞賛や励ましのこと。
④生理的・情緒的状態(情緒的高揚):行動の変化を促すような情報に触れ気づきを得ることで行動変容への関心をもつこと。例えば、タバコを吸わなくなってから「イライラしにくくなったきがするな」と気づきをえることで、行動がさらに変わっていくことである。

 1.〇 正しい。Aさんの運動への取り組みを評価する。なぜなら、自己効力感を高める①成功体験に該当するため。
 2.× Aさんの職場の上司に配置転換を依頼する優先度は低い。なぜなら、配置転換したからといって、必ずしも仕事に余裕ができるとは限らないため。むしろ、配置転換したほうが、新たに仕事を覚えなくてはならないことが増える。また、自己効力感との関連性も薄い。
 3.〇 正しい。Aさんが取り組めそうな目標を一緒に設定する。なぜなら、自己効力感を高める③言語的説得に該当するため。
 4.× Aさんが生活習慣を改善する気持ちになるまで待つ優先度は低い。なぜなら、本症例は、「仕事が忙しくてこれ以上生活を変える自信はありません」とすでにある程度、生活習慣の改善に努める気持ちに至っていると考えられるため。
 5.× Aさんが脳血管疾患になる危険性が高いことを説明する優先度は低い。なぜなら、言語的説得は、不安を煽るものではなく、賞賛や励ましのことであるため。

変化ステージ理論とは?

変化ステージ理論(行動変容ステージモデル)とは、人の健康行動の変容や維持について示された理論である。1980年代前半に禁煙の研究から導かれたモデルであり、いろいろな健康(食事や運動、筋炎)に関する行動について幅広く研究と実践が進められた。行動変容ステージモデルでは、人が行動(生活習慣)を変える場合は、「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えられている。

無関心期:行動変容を考えていない時期であるため支援策として、知識・情報の提供、問題点の指摘があげられる。
関心期:行動変容を考えているが実行していない時期であるため、動機づけが大切である。
準備期:すぐ始める意思がある時期もしくは独自の方法でも何かしら行っている時期であるため行動案の提示・目標設定などの計画支援を行う。
実行期:望ましい行動を起こした時期であるため、行動実践の意欲強化と報酬づけ環境調整していく。
維持期:6か月以上行動を継続している時期であるため、維持のためのサポートを継続する。

(参考:「行動変容ステージモデル」厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより)

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87 成人の糖尿病患者に対するペン型インスリン自己注射の指導で正しいのはどれか。2つ選べ。

 1.「ブドウ糖を携帯してください」
 2.「注射部位は毎回変えてください」
 3.「注射をした後は注射部位をよくもんでください」
 4.「針は皮膚に対して30度の角度で刺してください」
 5.「未使用のインスリンは冷凍庫で保管してください」

解答

解説

インスリン製剤とは?

インスリン製剤とは、膵臓から分泌される血糖降下作用を持つペプチドであるインスリンを製剤化したものである。つまり、インスリンそのものを外から補う目的として服用する。「単位(U)」で表す。
【注意点】
①未使用の製剤は2~8℃ で冷蔵保存する必要がある。開封後は室温で保管し、4~8週間程度が使用期限となる。
②インスリン製剤はホルモン剤なので皮下注射で投与する。
③皮下注射は同一部位に繰り返すと硬結などを起こす。

 1.〇 正しい。「ブドウ糖を携帯してください」と指導する。なぜなら、インスリン製剤の主な副作用が低血糖であるため。低血糖の場合、飴や角砂糖などを捕食してもらう。
 2.〇 正しい。「注射部位は毎回変えてください」と指導する。毎回約2cmずつずらしながら行うとよい。なぜなら、インスリン注射は同じ所に連続して打つと、皮膚の硬結(インスリンボール)につながるため。硬結部位からではインスリン吸収が低下してしまうため、インスリン注射は毎回違う部位に行うことが大切である。
 3.× インスリンの注射をした後は、針を刺した場所をよくもむ必要はない。むしろ、もむことは推奨されていない。なぜなら、インスリンは、注射後にもんだり温めたりすると、急速に吸収されて低血糖を引き起こすことがあるため。注射後はもまないように指導する。
 4.× 針は皮膚に対して、「30度」ではなく90度の角度で刺す。なぜなら、ペン型インスリンの場合は、針が32G程度で短いため。したがって、30度の場合、そもそも注射することが難しく、場合によっては針が折れて危険である。
 5.× 未使用のインスリンの保管は、「冷凍庫」ではなく常温でよい。インスリンは、常温で持ち運ぶことができる。ただし、変性する可能性があるため、30℃以上の高温や凍結は避けるように注意する。夏に自動車を使用する場合は、保冷剤パック、保冷剤、タオルなどで工夫して持ち運ぶ必要がある。

低血糖症状

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

 

 

 

 

 

88 高齢者の基本的日常生活動作〈BADL〉で評価する内容はどれか。2つ選べ。

 1.整容
 2.意思疎通
 3.階段昇降
 4.金銭管理
 5.服薬管理

解答

解説

手段的日常生活動作(IADL)とは?

手段的日常生活動作(IADL)とは、日常生活上の、より高度で複雑な動作のこと(買い物、洗濯、掃除、金銭管理、服薬管理など)である。
ADLは、①BADL(基本的日常生活動作)と、②IADL(手段的日常生活動作)に大別される。
①BADL:食事、排泄、入浴、整容など基本的な欲求を満たす身の回りの動作。
②IADL:買い物、洗濯、電話、服薬管理などの道具を用いる複雑な動作。

 1.3.〇 正しい。整容/階段昇降は、高齢者の基本的日常生活動作〈BADL〉で評価する内容である。FIMの評価項目は、運動項目(13項目)と認知項目(5項目)の計18項目を7段階で採点する。【運動項目】セルフケア(食事、整容、清拭、更衣:上・下、トイレ動作)、移乗(ベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗、浴槽・シャワー移乗)、排泄コントロール(排尿管理、排便管理)、移動(歩行・車椅子、階段)、【認知項目】コミュニケーション(理解、表出)、社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)で評価する。
 2.4~5.× 意思疎通/金銭管理/服薬管理は、手段的日常生活動〈IADL〉で評価する内容である。手段的日常生活動作(IADL:Instrumental Activities of Daily Living)とは、日常生活動作(ADL)のなかでも、道具を使う、段取りを考えて行うなど、複雑で判断力を要する身体活動のことである。ちなみに、コミュニケーション(理解、表出)は、基本的日常生活動作〈BADL〉で評価する内容である。コミュニケーションとは、情報や気持ち、感情を相手と交換する作業である。自分の意思を相手に伝達し、相手の意思を受け取り理解し合う「意思疎通」は、コミュニケーション能力を向上させるスキルとして意味を持つ。

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【5問】手段的日常生活動作についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

89 インシデントレポートについて適切なのはどれか。2つ選べ。

 1.法令で書式が統一されている。
 2.責任追及のためには使用されない。
 3.インシデントの発生から1か月後に提出する。
 4.分析結果は他職種を含めて組織全体で共有する。
 5.医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例の報告は不要である。

解答

解説

インシデントレポートとは?

インシデントレポートとは、医療現場で事故に繋がりかねないような、ヒヤリとしたり、はっとした出来事に関する報告書のことをいう。作成の目的は、事例を分析して類似するインシデントの再発や医療事故・医療過誤の発生を未然に防止することである。インシデントを直訳すると「出来事・事件・異変」である。一方、その行為によって患者に傷害や不利益を与えてしまった事象を、アクシデントという。なお、インシデントの本来の意味は、偶発的や付随的と解釈される。

【目的】
①事実の確認
②原因の究明
③組織全体で事例を共有・分析し、問題点を抽出する。
④将来の医療事故(アクシデント)の予防、再発の防止。

 1.× 法令で書式が統一「されていない」。病院や施設によって書式(プリント)があることが多い。
 2.〇 正しい。責任追及のためには使用されない。なぜなら、インシデントレポートの目的は、①事実の確認、②原因の究明、③組織全体で事例を共有・分析し、問題点を抽出する、④将来の医療事故(アクシデント)の予防、再発の防止などがあげられる。ちなみに、責任追及とは、責任をとるべき本人を明確にすることである。
 3.× インシデントの発生から、「1か月後」ではなく発生した段階でできるだけ早く提出する。なぜなら、1か月後だと再び同じ事故が1か月以内に起こる可能性があるため。
 4.〇 正しい。分析結果は他職種を含めて組織全体で共有する。なぜなら、他職種を含めて組織全体で共有することで、多職種からの視点や意見、同じインシデントの予防へとつながるため。
 5.× 医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例の報告は、「不要」ではなく必要である。なぜなら、実際に患者に被害を及ぼすことがなかったケースでも、インシデントレポートとして報告することで、今後起こりうる重大なインシデントを予防できる可能性が高くなるため。

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【8問】医療安全に関連する方法についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

90 20滴で1mLの輸液セットを用いて500mLの輸液を3時間30分かけて実施する場合の1分間の滴下数を求めよ。
 ただし、小数点以下の数値が得られた場合は、小数点以下第1位を四捨五入すること。
 解答:①②滴
          ①0~9
            ②0~9

解答48(滴)

解説

ポイント

・20滴で1mLの輸液セット
・500mLの輸液
・3時間30分(=210分)かけて実施する。

500mLの輸液を3時間30分(=210分)かけて実施する。

①まずは、1分間あたりの投与量を求める。
【1分間あたりの投与量】
500(mL) ÷210(分)=2.38(mL)

②つぎに、1分間あたりの滴下数を求める。
・1mLは20滴の輸液セットを用いるため・・・。
【1分間あたりの滴下数】
2.38(mL) × 20(滴) = 47.6(滴)

③47.6(滴)の少数点以下第1位を四捨五入すると、48となる。

よって、①4、②8となる。

 

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