第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午前26~30】

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26 神経筋接合部にあるイオンチャネル型受容体にアセチルコリンが結合すると、あるイオンが筋細胞内に流入する。
 このイオンはどれか。

1.塩化物イオン
2.カリウムイオン
3.カルシウムイオン
4.ナトリウムイオン

解答

解説

神経筋接合部とは?

神経筋接合部とは、神経の末端が骨格筋組織と交わる部分である。筋肉を収縮させる信号は、神経伝達物質であるアセチルコリンなどの化学物質によって発せられ、この物質が神経の末端(運動神経終板)から筋肉に送られる。

アセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合すると、アセチルコリン受容体のナトリウムチャンネル(イオンチャネル)が開き、ナトリウムイオン(Na+)が細胞内に流れ込み、脱分極を起こし、細胞内の電位がプラス側に傾く。これを興奮性シナプス後電位が発生する、あるいは、終板電位が発生するともいう。

1.× 塩化物イオンチャネルは、主に神経細胞の抑制性シナプス後電位に関与する。細胞内への流入(または流出)によって膜電位を過分極させ、活動電位の発生を抑制する働きをする。

2.× カリウムイオンは、活動電位の再分極に関与する。ナトリウムイオンの流入後、電位依存性カリウムチャネルが開いてカリウムイオンが細胞外へ流出し、膜電位が元の静止電位に戻る。
【活動電位一覧】
Na+:活動電位発生時の急速な脱分極。
Ca2+:脱分極の維持(プラトー)に関わる。
K+:再分極の際に関わる。

3.× カルシウムイオンは、生体内の主要な陽イオンの1つで、血液の細胞外液中におけるその濃度は約1%である。骨石灰化や、心臓および骨格筋系の収縮、神経筋伝達、ホルモン分泌や血液凝固における一連の反応に寄与する。

4.〇 正しい。ナトリウムイオンが、神経筋接合部にあるイオンチャネル型受容体にアセチルコリンが結合した際に、筋細胞内に流入する主要なイオンである。
・アセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合すると、アセチルコリン受容体のナトリウムチャンネル(イオンチャネル)が開き、ナトリウムイオン(Na+)が細胞内に流れ込み、脱分極を起こし、細胞内の電位がプラス側に傾く。これを興奮性シナプス後電位が発生する、あるいは、終板電位が発生するともいう。

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

 

 

 

 

 

27 規則的な日常生活を送っている成人で、血中濃度が1日のうち起床時に最も高くなるのはどれか。

1.アドレナリン
2.コルチゾール
3.成長ホルモン
4.メラトニン

解答

解説
1.× アドレナリンは、起床時に最も高くなるわけではない。なぜなら、アドレナリンの血中濃度は、起床時よりもストレスや運動、興奮時に最も高くなるため。
・アドレナリンとは、腎臓の上にある副腎というところの中の髄質から分泌されるホルモンである。【対象】血圧低下心肺蘇生、アナフィラキシーショック、【作用】血圧上昇作用や心拍数増加作用、【副作用】過量投与で血圧の過剰な上昇、動悸など。

2.〇 正しい。コルチゾールは、起床時に最も高くなる。なぜなら、コルチゾールの分泌は、日内変動を持ち、早朝から起床にかけて急激に上昇するため。
・コルチゾールとは、副腎皮質から分泌されるホルモンで、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

3.× 成長ホルモンは、起床時に最も高くなるわけではない。なぜなら、成長ホルモンの血中濃度は、起床時よりも睡眠中(特に深い睡眠時)や運動後に最も高くなるため。
・成長ホルモンとは、下垂体前葉から合成・分泌されるホルモンで、成長促進作用や代謝作用などの作用がある。

4.× メラトニンは、起床時に最も高くなるわけではない。むしろ、メラトニンの血中濃度は、起床時よりも夜間(暗い環境)に最も高くなる。
・メラトニンとは、夜間に脳の松果体から分泌されるホルモンで、体内時計による夜間の身体の休息を促す働きを持つ。メラトニン分泌量が低下するため睡眠障害が起こりやすくなる。

 

 

 

 

 

28 胸管について正しいのはどれか。

1.集めたリンパを左鎖骨下動脈に注ぐ。
2.右側の頸リンパ本幹と合流する。
3.毛細リンパ管網である。
4.乳び槽から始まる。

解答

解説

胸管とは?

胸管とは、最大のリンパ管である。下半身と左上半身のリンパを集める全長35~40cmのリンパ管である。胸管は鎖骨下静脈に接続し、リンパ液を血液中に戻す。 またリンパ液は、組織中の異物(細菌など)、がん細胞、死んだ細胞や損傷した細胞などを廃棄するためにリンパ管やリンパ器官に運ぶ役割も担っている。

1.× 集めたリンパを「左鎖骨下動脈」ではなく左鎖骨下静脈に注ぐ。

2.× 右側の「頸リンパ本幹」ではなく左鎖骨下静脈と合流する。胸管は、左静脈角に流入する。胸管は左鎖骨下静脈と左内頸静脈の合流点である。右リンパ本幹は右鎖骨下静脈右内頸静脈の合流点である右静脈角に流入する。

3.× 毛細リンパ管網「ではない」。胸管とは、最大のリンパ管である。
・毛細リンパ管網とは、全身の組織内に網の目のように分布し、組織液をリンパ液として回収する最も細いリンパ管である。

4.〇 正しい。乳び槽から始まる。乳び槽とは、胸管の起始部で、腸リンパ本幹と腰リンパ本幹(左右腰リンパ本幹)が合流してできる。

 

 

 

 

 

29 嚥下反射に伴って起こるのはどれか。

1.甲状腺の上下の動き
2.肝臓の上下の動き
3.声門の開放
4.舌根の沈下

解答

解説

(※図引用:「illustAC様」)

嚥下反射とは?

嚥下反射とは、食べ物を口に入れてから嚥下するまでの咽頭期の段階で起こる反射のことである。

1.〇 正しい。甲状腺の上下の動きは、嚥下反射に伴って起こる。なぜなら、食べ物や飲み物を飲み込む際(嚥下反射)、喉頭全体が挙上するため。甲状腺は、喉頭の前下方に位置しており、喉頭の動きに合わせて甲状腺も一緒に上へ引き上げられる。そして、嚥下が完了後、喉頭とともに元の位置に戻る。したがって、結果として甲状腺は上下に動いていることとなる。

2.× 肝臓の上下の動きは起こらない。なぜなら、肝臓は横隔膜の下、腹腔内に位置する臓器であるため。主に呼吸運動(横隔膜の動き)によってわずかに上下に動くことはあるが、嚥下という上部消化管の動きとは直接関連していない。

3.× 声門の開放は起こらない。むしろ、嚥下反射に伴って、声門は閉鎖される。なぜなら、誤嚥を防止するため。
・声門とは、声帯のすき間をいい、普通に呼吸をしているときは筋肉が弛緩状態で、声門は開放している。発声時は、筋肉が縮んで声門が閉じ、そこへ肺からの空気が無理に押しだそうとするため、声帯が振動して声門の開閉状態を繰り返す。その結果、声の音源となる空気の断続的な流れが発生する。

4.× 舌根の沈下は起こらない。むしろ、嚥下反射に伴って、舌根は挙上する。舌根が挙上することで、飲食物を咽頭の奥(食道方向)へ押し込み、同時に喉頭蓋を倒して気管の入り口を塞ぐのを助ける。
・舌根の沈下とは、舌の基部が後下方に落ちることで、気道閉塞症状である低酸素発作、哺乳障害、吸気性喘鳴 などの症状を認める病態である。嚥下とは無関係である。

嚥下の過程

①先行期・・・飲食物の形や量、質などを認識する。
②準備期・・・口への取り込み。飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする。
③口腔期・・・飲食物を口腔から咽頭に送り込む。
④咽頭期・・・飲食物を咽頭から食道に送り込む。
⑤食道期・・・飲食物を食道から胃に送り込む。

 

 

 

 

 

30 胎生3週の発生過程にある胚子の横断面を図に示す。
 A から分化するのはどれか。

1.気管
2.食道
3.脊髄
4.大動脈

解答

解説

各胚葉に由来する器官

外胚葉:神経(脳・脊髄)・表皮(毛・爪)・感覚器(視・聴覚)
中胚葉:骨格(軟骨)・筋・循環器系(心臓・血管・リンパ)・泌尿生殖器(腎臓・精巣・子宮・卵巣)
内胚葉:消化器(胃・腸)・呼吸器(気管・肺)・尿路系(膀胱・尿道)

1~2.× 気管/食道は、内胚葉から分化する。

3.〇 正しい。脊髄は、A (外胚葉)から分化する。Aは、神経管であり、脳や脊髄へ発達する。

4.× 大動脈は、中胚葉から分化する。

 

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