第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午後16~20】

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16 胃癌のウィルヒョウ〈Virchow〉転移が生じる部位はどれか。

1.肺
2.肝臓
3.ダグラス窩
4.左鎖骨上窩

解答

解説

Virchow(ウィルヒョウ)転移とは?

ウィルヒョウ転移とは、消化器癌などが、左鎖骨上窩リンパ節に転移することである。胃癌が代表である。左鎖骨上窩リンパ節は、リンパ管が大静脈に合流する静脈角の近くのリンパ節であり、そこに転移があることは、癌がかなり進行した状態である。

1~2.× 肺/肝臓は、胃癌のウィルヒョウ転移が生じる部位とはいえない。なぜなら、ウィルヒョウ転移とは、消化器癌などが、左鎖骨上窩リンパ節に転移することであるため。

3.× ダグラス窩は、胃癌のウィルヒョウ転移が生じる部位とはいえない
・ダグラス窩とは、直腸子宮窩ともいい、直腸と子宮を上から覆っている腹膜が臓器の間のすき間に入りこんでできる深いくぼみのことである。

4.〇 正しい。左鎖骨上窩は、胃癌のウィルヒョウ〈Virchow〉転移が生じる部位である。
・ウィルヒョウ転移とは、消化器癌などが、左鎖骨上窩リンパ節に転移することである。胃癌が代表である。左鎖骨上窩リンパ節は、リンパ管が大静脈に合流する静脈角の近くのリンパ節であり、そこに転移があることは、癌がかなり進行した状態である。ちなみに、リンパ行性転移で卵巣への転移は、グルーケンベルグ腫瘍という。

(図引用:「女性器の解剖と整理」医学出版様より)

 

 

 

 

 

17 インスリン療法で正しいのはどれか。

1.毎回同じ部位に注射する。
2.有害事象は低血糖である。
3.就寝前は超速効型製剤を使用する。
4.2型糖尿病の治療法として必須である。

解答

解説
1.× 毎回、「同じ」ではなく違う部位に注射する。なぜなら、同じ部位に繰り返し注射すると硬結がおこることがあるため。また、Aさんは目が見えにくいため、面積が広く大きい所の方が良い。ちなみに、一般的に注射部位は、上腕、腹部、殿部、大腿部など、脂肪組織がある部位に駐車できる。毎回約2cmずつずらしながら注射すると、硬結も予防できる。
・硬結とは、注射部位の皮膚が硬くなることである。

2.〇 正しい。有害事象は低血糖である。なぜなら、インスリンは血糖値を下げるホルモンであるため。
・低血糖症状とは、血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現した症状をさす。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

3.× 「就寝前」ではなく食事前は、超速効型製剤を使用する。なぜなら、超速効型製剤は、食直前や食後に注射し、食後の急激な血糖上昇を抑える目的で使用されるため。作用時間が短く、数時間で効果が切れてしまうため、就寝前に使用すると、夜間の低血糖を引き起こすリスクが高まる。
・就寝前には、夜間を通じて血糖値を安定させる持効型や中間型インスリン製剤が用いられる。

4.× 2型糖尿病の治療法として、「必須とは言えない」。なぜなら、2型糖尿病の治療は、まず食事療法と運動療法が基本となるため。さらに、血糖コントロールが不十分な場合には、経口血糖降下薬が導入され、経口薬でもコントロールが難しい場合や、膵臓の機能が著しく低下している場合、あるいは病状が進行している場合に、インスリン療法が追加または開始される。

グルカゴンとは?

膵臓のランゲルハンス島からは、①インスリン、②グルカゴン、③ソマトスタチンが分泌される。
①インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。

②グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖上昇、②脂肪分解の作用がある。

③ソマトスタチンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるδ細胞から分泌されるホルモンの一種で、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンの分泌抑制の作用がある。

 

 

 

 

 

18 看護過程で適切なのはどれか。

1.医師の指示に基づいて看護問題の優先順位を決定する。
2.実施、評価の2段階で構成される。
3.潜在する問題は取り上げない。
4.評価可能な目標を設定する。

解答

解説

MEMO

看護過程は、根拠を持った看護を実践するための思考過程である。根拠を持つためには、科学的根拠に基づいて情報の分析を行う必要がある。看護における問題解決過程とは、看護過程の流れ(①対象の全体像の把握(アセスメント)→②看護診断→③目標設定→④計画→⑤実施→⑥評価)を指す。

1.× 「医師の指示のみ」ではなく対象者の全体像に基づいて、看護問題の優先順位を決定する。なぜなら、看護問題は、患者が抱える健康上の課題や反応を看護の視点から評価していくものであるため。

2.× 「実施、評価の2段階」ではなく①対象の全体像の把握(アセスメント)→②看護診断→③目標設定→④計画→⑤実施→⑥評価(1段階に戻る)の5段階で構成される。

3.× 潜在する問題も「取り上げる」。なぜなら、退院した後、つまり、将来的に発生する可能性がある「潜在的な問題」も対象とすることで、予防的な介入や重症化を防ぐことができるため。

4.〇 正しい。評価可能な目標を設定する。なぜなら、具体的な行動や数値を目標にすることで、達成できたかどうかを客観的に評価できるものことができるため。

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは?

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは、叙述的経過記録方式の問題志向型記録のことである。

S=主観的データ(自覚症状などの患者の訴え)
O=客観的データ(他覚所見:診察所見・血液検査・検査所見)
A=評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)
P=計画(Aをもとにした今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)

で、経過を記録する。

 

 

 

 

 

19 長期臥床している患者の仰臥位時のポジショニングを図に示す。
 Aの位置にクッションを挿入する目的はどれか。

1.褥瘡の予防
2.尖足の予防
3.腓骨神経麻痺の予防
4.深部静脈血栓症の予防

解答

解説
1.× 褥瘡の予防とはいえない。なぜなら、褥瘡の予防は、骨突出部(仙骨部・踵部など)の圧を分散させるために、体全体の圧抜きが必要である。
・褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚の潰瘍あるいは皮下組織の損傷のことである。背臥位では、後頭骨や肩甲骨、肘頭、仙骨、踵部などの骨の突出している場所に好発する。予防法としては、最も負担がかかりやすい骨突出部を除圧し、面で支持することで一点に圧をかけることなく、圧の分散に努める。褥瘡予防マットやクッションなどを活用する。また、清潔を心がけ、体位変換を行う。

2.〇 正しい。尖足の予防は、Aの位置にクッションを挿入する目的である。なぜなら、長期臥床していると、足関節底屈位の状態になるため。したがって、「尖足」となる。図のように足部の下にクッションを置くことで、足首を自然な背屈位(足を上に向ける角度)に保ち、足関節底屈位(尖足)を防ぐことができる。
・尖足とは、つま先立ちの状態の足で、踵を地面に着けようとしても可動域がなく、歩行時に踵が床に付かない状態である。つまり、足関節の背屈制限がある歩行状態である。具体的疾患は、脳卒中などからくる下腿後面の筋肉の痙縮、小児麻痺でみられる下腿前面の筋肉の麻痺などが原因で起こる。

3.× 腓骨神経麻痺の予防とはいえない。なぜなら、腓骨神経麻痺は、長時間の外側臥位やギプス圧迫などによって腓骨頭部分が圧迫されて発症するため。したがって、腓骨神経麻痺を予防するには、膝外側の圧迫を避けるポジショニングである。

4.× 深部静脈血栓症の予防とはいえない。なぜなら、深部静脈血栓症は下肢の静脈血流の停滞により起こるため。したがって、血流促進が主な対策になる。具体的には、下肢の軽い運動や弾性ストッキングの着用、下肢挙上などが推奨される。

深部静脈血栓症とは?

深部静脈血栓症とは、深部静脈に血の塊(血栓)ができることである。血栓が足の静脈から心臓や肺に向かって流され、肺の血管に詰まった場合、肺塞栓症を引き起こす。

 

 

 

 

 

20 左前腕に持続点滴静脈内注射をしている患者の更衣で適切なのはどれか。

1.左袖から脱ぎ、右袖から着る。
2.左袖から脱ぎ、左袖から着る。
3.右袖から脱ぎ、左袖から着る。
4.右袖から脱ぎ、右袖から着る。

解答

解説

ポイント

左前腕:持続点滴静脈内注射をしている
→左上腕を患側(麻痺側)として考え、日常生活指導を実施する。

左前腕に持続点滴をしている患者=左手がうまく使えない=左片麻痺患者と同様の方法で行う。

脱ぐときは、左前腕に持続点滴ラインがあることから、自由に動く右袖から先に脱ぎ、右腕・服を自由に動かせることで、安全を確保して左腕を脱ぐことできる。また着るときは反対に、先に慎重に袖を通したい左袖から着ることで、自由に右腕は動くため、可動域を補って服を着ることができる。したがって、選択肢3.右袖から脱ぎ、左袖から着る

 

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