第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午後26~30】

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26 血漿中の重炭酸イオン濃度が基準値よりも高くなるのはどれか。

1.過換気
2.腎不全
3.重篤な1型糖尿病
4.慢性的な換気障害

解答

解説

呼吸性アルカローシスとは?

呼吸性アルカローシスとは、換気が亢進(過換気症候群や過呼吸)することが原因で、CO2排出が亢進するとpHは上昇して生じる。主な症状として、ふらつき、錯乱、筋痙攣、失神などが起こる。

1.× 過換気によって、血漿中の重炭酸イオン濃度は低下する。なぜなら、過換気により呼吸が増加することで、二酸化炭素が過剰に排出されるため。二酸化炭素が低下すると、血液中の水素イオンが減少し、pHが上昇(アルカローシス)ため。これを代償するために、腎臓が重炭酸イオン(HCO₃⁻)を排出した結果、血漿重炭酸イオン濃度は減少する。
・過換気とは、呼吸が速く深くなることで、体内の二酸化炭素(CO2)が過剰に排出される状態を指す。

2.× 腎不全によって、血漿中の重炭酸イオン濃度は低下する(代謝性アシドーシス)。
・急性腎不全とは、何らかの原因によって腎臓の機能が急激に(1日以内から数週間のうちに)低下し、その結果、体液の量を一定に維持できなくなった状態である。症状としては、尿量の減少あるいは無尿、血尿、褐色調の尿、吐き気、食欲不振、全身倦怠感、意欲減退、痙攣などが起こる。
・代謝性アルカローシスは、嘔吐などで起こる。嘔吐により胃液(酸性)が失われ、HCO3−が高値となるのが特徴である。一方、代謝性アシドーシスとは、HCO₃⁻(重炭酸イオン)が低下している状態である。重炭酸イオンを含んだ膵液や胆汁の喪失、腎臓での再吸収障害、体内の酸性物質が過剰になり、その中和のための消費増大によって起こる。代償として、CO₂を排出する呼吸代償(呼吸性アルカローシス)が起こる。

3.× 重篤な1型糖尿病によって、血漿中の重炭酸イオン濃度は低下する(糖尿病性ケトアシドーシス)。1型糖尿病でインスリンが極端に不足すると、体がエネルギー源として脂肪を分解し、その過程でケトン体という酸性物質が大量に生成される。この状態を糖尿病性ケトアシドーシスと呼ぶ。体内に酸が過剰に蓄積されると、血液のpHを維持するために、重炭酸イオンがこれらの酸を緩衝するために消費される。結果として、血漿中の重炭酸イオン濃度は低下する。

4.〇 正しい。慢性的な換気障害は、血漿中の重炭酸イオン濃度が基準値よりも高くなる。なぜなら、慢性的な換気障害(例:慢性閉塞性肺疾患<COPD>など)がある場合、肺からの二酸化炭素(CO2)の排出が不十分になるため。これにより、体内にCO2​が蓄積し、血液のCO2分圧(PaCO2)が上昇し、呼吸性アシドーシス(血液が酸性に傾く状態)が起こる。この状態が慢性的に続くと、腎臓がこの酸性の状態を補正しようと働く。腎臓は、酸の排泄を促進し、同時に重炭酸イオン(HCO3−)の再吸収を増加させたり、新たに重炭酸イオンを生成したりすることで、血液のpHを正常に近づけようとする。この腎臓による代償作用の結果として、血漿中の重炭酸イオン濃度は基準値よりも高くなる。

酸塩基平衡とは?

【酸塩基平衡】
血液(体液)のpH:7.40 ± 0.05
→pH7.30:酸性に傾いている状態
→pH7.50:アルカリ性に傾いている状態
アシドーシス(酸性):pHが低下している状態。
アルカローシス(アルカリ性):pHが上昇している状態。

 

 

 

 

 

27 A君(15歳、男子)は、蒸し暑い夏の午後に行われたサッカーの試合に出ていた。A君は試合中に大量の汗をかいて、気分が悪くなったので多量の水道水を飲み、日陰で休んでいたが、突然、意識消失して倒れた。このときのA君の細胞外液のナトリウムイオン濃度と水分量の正常時に対する割合を図に示す。
 このときのA君の体液の状態で正しいのはどれか。

1.細胞内液は減少している。
2.血漿浸透圧は上昇している。
3.循環血液量は減少している。
4.ヘマトクリットは低下している。

解答

解説

本症例のポイント

・A君(15歳、男子)
・試合中に大量の汗をかいて、気分が悪くなった。
・多量の水道水を飲み、日陰で休んでいたが、突然、意識消失して倒れた。
・ナトリウムイオン濃度と水分量の割合を図:汗によってナトリウムが失われた状態
→本症例は、低ナトリウム血症型の脱水症が疑われる。なぜなら、汗によってナトリウムが失われた状態で水のみを補給したため、血液が薄まり、体液のバランスが崩れたことが考えらえるため。

1.× 細胞内液は、「減少」ではなく増加している。なぜなら、水道水を多量に飲んだことで、浸透圧が下がり、水が細胞外から細胞内へ移行したため。

2.× 血漿浸透圧は、「上昇」ではなく低下している。なぜなら、汗でNa⁺が失われ、水だけを補給したため。したがって、Na⁺濃度が薄まり、血漿浸透圧は低下している。

3.〇 正しい。循環血液量は、減少している。なぜなら、大量の汗によってナトリウムや水分が失われた後、水道水(電解質を含まない)を多量に摂取しているため。したがって、水だけを摂取したため血液中のNa⁺濃度がさらに低下し、浸透圧が下がって細胞外から細胞内へ水が移動した結果、循環血液量(細胞外液量)が減少した。この結果、血漿の浸透圧が低下し、水が細胞内へ移動して、細胞外液(=循環血液量を含む)が減少する。
・本症例の図を見ても分かるように、意識消失時のNa⁺濃度は正常時より低下し、水分量はそれよりもやや高く保たれている。これは水分が細胞外に一時的に増えたあと、Na⁺濃度の低下により水が細胞内へ移行したことを示唆しており、血液の量(=循環血液量)は減少していることが分かる。

4.× ヘマトクリットは、「低下」ではなく上昇(もしくは変化なし:評価困難)している。
・ヘマトクリットとは、血液中に含まれる赤血球の割合を示す値である。一般にパーセントで表され、血液全体のうちどれだけが赤血球かを表す。脱水や貧血の判断に使われ、脱水では血液中の水分が減るため、ヘマトクリット値が上昇し、貧血では低下する。(ただし、今回は、循環血液量の減少が主因であるため、変化していない可能性が高い。)

 

 

 

 

 

28 ヘリコバクター・ピロリ感染症で正しいのはどれか。

1.尿素呼気検査は診断に有用である。
2.除菌後の判定は除菌終了後の翌日に行う。
3.ヘリコバクター・ピロリ〈Helicobacter pylori〉は胃の粘膜下層に生息する。
4.ヘリコバクター・ピロリ〈Helicobacter pylori〉は尿素を作り出して胃酸から身を守る。

解答

解説
1.〇 正しい。尿素呼気検査は、診断に有用である
・尿素呼気検査とは、診断薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断する、簡単に行える精度の高い診断法である。ピロリ菌は、胃内で尿素を分解し、二酸化炭素を生成するため、標識された尿素を摂取した後の呼気中の二酸化炭素を測定することで感染の有無を判定できる。非侵襲的で簡便な検査法である。

2.× 除菌後の判定は、除菌終了後の「翌日」ではなく十分な期間(通常は4週以降)に行う。なぜなら、薬の影響が完全になくなり、胃の状態が落ち着いてから正確な検査結果を得るため。早すぎると、菌がまだ残っているにもかかわらず陰性と判定されてしまう可能性がある。

3.× ヘリコバクター・ピロリは、胃の「粘膜下層」ではなく粘液層に生息する。なぜなら、胃の強力な胃酸から身を守るため。胃の表面を覆っている「粘液層」の中に潜り込んで生息している。

4.× ヘリコバクター・ピロリは、尿素を「作り出して」ではなく分解して胃酸から身を守る。粘液層にて尿素を分解してアンモニアを作り出し、胃酸を中和することで、自分にとって快適な弱アルカリ性の環境を作り出して生存している。

ヘリコバクター・ピロリ菌とは?

ヘリコバクター・ピロリ菌は、慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃癌などに関与している菌である。ヘリコバクター・ピロリ菌は、井戸水などにより経口感染するヒトなどの胃に生息するらせん型のグラム陰性微好気性細菌である。単にピロリ菌と呼ばれることもある。アンモニアを遊離し、局所をアルカリ化することによって胃粘膜の障害をきたす病原菌である。胃炎や胃潰瘍の発生に関与する。

 

 

 

 

 

29 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律〈高齢者虐待防止法〉で保護された高齢者が入所する社会福祉施設はどれか。

1.軽費老人ホーム
2.有料老人ホーム
3.特別養護老人ホーム
4.サービス付き高齢者向け住宅

解答

解説

高齢者虐待防止法とは?

高齢者虐待防止法とは、高齢者の虐待の防止に関する国の責務、虐待を受けた高齢者の保護措置、養護者の高齢者虐待防止のための支援措置を定めた日本の法律である。

1.× 軽費老人ホームとは、老人福祉法を根拠として、経済的な理由や家庭環境などにより自宅での生活が困難な方が、低額な料金で入居できる施設である。食事提供などのサービスを受けながら、自立した生活を送ることができる。

2.× 有料老人ホームとは、老人福祉法を根拠として、常時1人以上の老人を入所させ、介護等サービスを提供することを目的とした施設で、老人福祉施設でないものである。食事の提供、介護(入浴・排泄など)の提供、洗濯・掃除等の家事の供与、健康管理のうち、いずれかのサービス(複数も可)を提供している施設とされている。

3.〇 正しい。特別養護老人ホームは、高齢者虐待防止法で保護された高齢者が入所する社会福祉施設である。これは9条(通報等を受けた場合の措置)に記載されている。
・『老人福祉法』で、やむを得ない事由による入所措置の対象施設は、特別養護老人ホーム、短期入所生活介護(ショートステイ)、小規模多機能居宅介護、認知症対応型共同生活介護などとされている。

4.× サービス付き高齢者向け住宅(サ高住、サ付き)とは、主に民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅である。国土交通省と厚生労働省が所管する『高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)』を根拠法とする高齢者のための住宅であるため、措置の入所施設と合致しない。

高齢者虐待防止法

(通報等を受けた場合の措置)
第九条 市町村は、第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は高齢者からの養護者による高齢者虐待を受けた旨の届出を受けたときは、速やかに、当該高齢者の安全の確認その他当該通報又は届出に係る事実の確認のための措置を講ずるとともに、第十六条の規定により当該市町村と連携協力する者(以下「高齢者虐待対応協力者」という。)とその対応について協議を行うものとする。
2 市町村又は市町村長は、第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は前項に規定する届出があった場合には、当該通報又は届出に係る高齢者に対する養護者による高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護が図られるよう、養護者による高齢者虐待により生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる高齢者を一時的に保護するため迅速に老人福祉法第二十条の三に規定する老人短期入所施設等に入所させる等、適切に、同法第十条の四第一項若しくは第十一条第一項の規定による措置を講じ、又は、適切に、同法第三十二条の規定により審判の請求をするものとする。
(※一部引用:「高齢者虐待防止法」e-GOV法令検索様HPより)

 

 

 

 

 

30 難病の患者に対する医療等に関する法律〈難病法〉に規定されているのはどれか。

1.市町村が難病相談支援センターを設置する。
2.指定難病の医療費は全額を公費で負担する。
3.令和年4度(2022年度)の指定難病数は56疾病である。
4.特定医療費(指定難病)の支給認定は居住地の都道府県・指定都市が行う。

解答

解説

難病相談・支援センターとは?

難病相談・支援センターとは、『難病法』に基づき、難病の患者の療養生活に関する各般の問題について難病の患者及びその家族その他の関係者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言等を行い、難病の患者の療養生活の質の維持向上を支援することを目的とする施設で、都道府県及び指定都市に設置されている。都道府県及び指令都市が実施主体である。

①電話、面談等により療養生活上、日常生活上の相談や各種公的手続等の相談支援。
②難病の患者等の自主的な活動等に対する支援。
③医療従事者等を講師とした難病の患者等に対する講演会の開催や、保健・医療・福祉サービスの実施機関等の職員に対する各種研修会の実施。
④難病の患者が適切な就労支援サービスが受けられるよう就労支援等関係機関(ハローワーク、障害者職業センター、就業・生活支援センター等)と連携して就労・相談支援を実施。等

(※参考:「都道府県・指定都市難病相談支援センター一覧」難病情報センターHPより)

1.× 「市町村」ではなく「都道府県および指定都市」が難病相談支援センターを設置する。

2.× 指定難病の医療費は、「全額公費」ではなく原則2割は自己負担である。ただし、自己負担割合は、世帯の所得に応じて異なり、上限額が設定されている。

3.× 令和年4度(2022年度)の指定難病数は、「56疾病」ではなく341疾病である。

4.〇 正しい。特定医療費(指定難病)の支給認定は、居住地の都道府県・指定都市が行う
・難病法に基づく特定医療費(指定難病)の支給認定の申請先は、患者が居住する都道府県または指定都市の担当窓口(保健所など)である。これらの自治体が、申請された書類に基づいて審査を行い、医療費助成の対象となるかどうかを認定する。

難病法とは?

難病法とは、難病の患者に対する医療などに関する施策を定め、良質・適切な医療の確保、療養生活の質の維持向上を図ることを目的としている。この目的に沿って定められている8つの基本方針は以下のとおりである。

【難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針】
①医療等の推進の基本的な方向
②医療を提供する体制の確保に関する事項
③医療に関する人材の養成に関する事項
④調査及び研究に関する事項
⑤医療のための医薬品及び医療機器に関する研究開発の推進に関する事項
⑥療養生活の環境整備に関する事項
⑦医療等と福祉サービスに関する施策、就労の支援に関する施策その他の関連する施策との連携に関する事項
⑧その他、医療等の推進に関する重要事項

【難病と指定難病の定義】
・発病の機構が明らかでない。
・治療方法が確立していない。
・希少な疾病である。
・長期の療養を必要する。
【指定難病】
・患者数が一定の人数に達しない。
・客観的な診断基準が確立してない。

(※参考「指定難病の要件について」厚生労働省HPより)

 

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