第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午後81~85】

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81 第2〜第4腰髄の障害の有無を把握するために確認するのはどれか。

1.輻輳反射
2.腹壁反射
3.膝蓋腱反射
4.Trousseau〈トルソー〉徴候
5.Blumberg〈ブルンベルグ〉徴候

解答

解説
1.× 輻輳反射とは、瞳孔反射の一つで、近くの物を見る時に両眼が内転(輻輳運動)し、あわせて瞳孔が収縮する反射のことをいう。【求心路】視神経、【遠心路】動眼神経である。患者の正面、約50cmのところに示指を立てて見つめてもらい、その指を15cmくらいまで近づけると両方の目が寄り目になる(左右の目がそれぞれ内転する)反射のことであり、動眼神経の障害を検査する(※読み:ふくそうはんしゃ)。

2.× 腹壁反射とは、検者を背臥位にして両膝を軽く屈曲し膝を立て、腹筋を弛緩させる。先の鈍い針で肋骨縁①にそって上から下に向けてこする。また、腹壁を上②、中③、下④の3つに分けて、腹壁皮膚を外側より内側に向けてこすり、刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性である。陽性の場合、錐体外路系の障害により消失する。【判定】刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性である。
中枢】①肋骨縁:Th5、6、②臍と肋骨縁間:Th6~9、③臍:Th9~11、④臍より下:Th11~L1

3.〇 正しい。膝蓋腱反射は、第2〜第4腰髄の障害の有無を把握するために確認する。
・膝蓋腱反射とは、単シナプス反射で大腿四頭筋の筋紡錘による伸張反射である。膝蓋腱反射の【中枢】L2~L4(大腿神経)、【検査法】背臥位検査:患者を背臥位にし両膝を軽く屈曲し立てる。検者は前腕をその膝の下に入れて下肢を支える。または、一側の下肢を膝立て位にして、その膝の上に他側の膝を乗せる。膝蓋腱部を触知してその腱部を叩打する。【判定】膝関節の伸展が起これば反射出現(+)

4.× Trousseau〈トルソー〉徴候は、低カルシウム血症の患者にみられる徴候である。上腕をマンシェットで圧迫して血流を遮断すると、手の攣縮(助産師の手)が出現する。

5.× Blumberg〈ブルンベルグ〉徴候とは、圧痛のある部位をできるだけ深く圧迫し、急に手を離すと鋭い痛みを感じる反跳痛のことである。炎症が波及した腹膜が急速に元の場所へ戻ると痛覚がより刺激されるために生じるもので、炎症が虫垂壁を超えて壁側腹膜に及んでいるサインである。腹膜に炎症があることを示し、腹膜炎を呈する疾患(消化管穿孔・急性虫垂炎など)で出現する。

 

 

 

 

 

82 門脈系の血管はどれか。2つ選べ。

1.肝静脈
2.脾静脈
3.食道静脈
4.内腸骨静脈
5.下腸間膜静脈

解答2・5

解説

門脈とは?

門脈は、だいたいの消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ機能血管である。胃、腸、膵臓、脾臓、胆嚢の毛細管から静脈血を集める。

1.× 肝静脈は、肝臓で代謝された血液を肝臓から直接下大静脈へと運び、全身循環に戻す血管である。

2.5.〇 正しい。脾静脈/下腸間膜静脈は、門脈系の血管である。
脾静脈/左胃静脈/空回腸静脈/上腸間膜静脈/下腸間膜静脈は、門脈に流入する。

3.× 食道静脈は、食道にある静脈である。

4.× 内腸骨静脈は、骨盤内の臓器(膀胱、直腸下部、生殖器など)からの血液を集め、総腸骨静脈を経て下大静脈へと合流し、全身循環に戻る血管である。

 

 

 

 

 

83 Aさん(35歳、女性)は1年前に子宮体癌のために単純子宮全摘出術と両側卵巣摘出術を受け、その後、ホルモン補充療法は受けずに健康に過ごしている。
 Aさんの血液中で術前よりも濃度が上昇しているホルモンはどれか。2つ選べ。

1.テストステロン
2.プロゲステロン
3.エストラジオール
4.黄体形成ホルモン〈LH〉
5.卵胞刺激ホルモン〈FSH〉

解答4・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、女性)
・1年前:子宮体癌のために単純子宮全摘出術両側卵巣摘出術後。
・ホルモン補充療法は受けずに健康に過ごしている。
→子宮と卵巣の働きをしっかりおさえておこう。

1.× テストステロンは、卵巣摘出によりわずかに減少する可能性が高い。なぜなら、女性でも副腎や卵巣から少量分泌されるため。
・テストステロンとは、男子の第二次性徴に最も関与するホルモンである。アンドロゲン(雄性ホルモン、男性ホルモン)とは、ステロイドの一種で、生体内で働いているステロイドホルモンのひとつである。アンドロゲンにはテストステロンとジヒドロテストステロン (dihydrotestosterone;DHT)があり、精巣の分化、機能、組織形成、さらに内性器・外性器の形成に重要な役割を果たす。

2.× プロゲステロンは、卵巣摘出によりわずかに減少する可能性が高い。なぜなら、主に排卵後の卵巣の黄体から分泌されるため。
・プロゲステロンとは、黄体ホルモンともいい、基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすい状態にする作用を持つ。性周期が規則的で健常な成人女性において、着床が起こる時期に血中濃度が最も高くなるホルモンである。着床が起こる時期とは、月経の黄体期である。黄体期は、排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期である。

3.× エストラジオールは、卵巣摘出によりわずかに減少する可能性が高い。なぜなら、エストラジオールは、卵巣から分泌されるため。
・エストラジオールとは、エストロゲンの一種で、母体の肝臓と胎盤、胎児の副腎を経て生成されるため、その血中濃度は胎児の生命状態の指標として用いられる。エストロゲンの中で最も強い卵胞ホルモン作用を持つ物質で、女性の二次性徴に働き、卵巣機能調節、卵胞発育、子宮内膜増殖などの作用を示す。

4.〇 正しい。黄体形成ホルモン〈LH〉は、術前よりも濃度が上昇しているホルモンである。なぜなら、両側卵巣を摘出すると、卵巣からのエストロゲンの分泌がなくなり、ネガティブフィードバック機構が働かなくなるため。エストロゲンが低下すると、脳は「エストロゲンが足りない」と判断し、下垂体から黄体形成ホルモンの分泌を亢進させようとする。
・黄体形成ホルモンとは、下垂体前葉から分泌され、卵巣に影響し排卵を起こす上で重要な役割を担う。また、思春期に増加し、精巣においてテストステロン、卵巣においてエストロゲンの分泌を増加させる。

5.〇 正しい。卵胞刺激ホルモン〈FSH〉は、血液中で術前よりも濃度が上昇しているホルモンである。なぜなら、両側卵巣を摘出すると、卵巣からのエストロゲンの分泌がなくなり、ネガティブフィードバック機構が働かなくなるため。エストロゲンが低下すると、脳は「エストロゲンが足りない」と判断し、下垂体から黄体形成ホルモンの分泌を亢進させようとする。
・卵胞刺激ホルモンとは、卵胞期に増加する。卵胞刺激ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌される。卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンを性腺刺激ホルモンと呼ぶ。卵胞刺激ホルモンは、卵巣の卵胞の成熟を促進し、エストロゲンの分泌を刺激する。

ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック

【ネガティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンが低下する → ネガティブフィードバック
②エストロゲンレベルが低下したらゴナドトロピンが上昇する → ネガティブフィードバック

【ポジティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンも上昇する → ポジブフィードバック
※ポジブフィードバックは一定条件が整わないと発現しません。ヒトではストラジオールが 200 pg/ml 以上に達し、それが 48 時間以上持続した時のみ発現します。間脳や下垂体でどのような現象が起きているかは考慮する必要がありません。

(※図・一部引用:「ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック」より)

 

 

 

 

 

84 後天性の大動脈弁狭窄症について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.二尖弁が多い。
2.弁尖の石灰化による。
3.左室壁は徐々に薄くなる。
4.収縮期に心雑音を聴取する。
5.心筋の酸素消費量は減少する。

解答2・4

解説

(※図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

大動脈弁狭窄症とは?

大動脈弁狭窄症とは、心臓の左心室と大動脈を隔てている大動脈弁の動きが悪くなり、全身に血液を送り出しにくくなる状態になる疾患である。近年、原因は加齢や動脈硬化が原因である割合が増えてきている。

・先天性(生まれながら):①二尖弁、②弁の形態異常、③心臓の成長と弁の開口部の関係不良など。
・後天性:①リウマチ熱、②加齢、③動脈硬化など。

1.× 二尖弁が多いのは、先天性の異常である。大動脈弁が通常三尖であるべきところ、生まれつき二尖しかない先天性の異常である。

2.〇 正しい。弁尖の石灰化による。後天性の大動脈弁狭窄症の最も一般的な原因は、加齢に伴う弁尖の変性(硬化や肥厚)と石灰化である。特に高齢者に多く見られ、本来しなやかに開閉すべき弁尖が硬くなり、開口部が狭くなることで血流が妨げられる。

3.× 左室壁は徐々に、「薄く」ではなく肥厚が原因である。なぜなら、大動脈弁狭窄症では、心臓がより強く働くため。

4.〇 正しい。収縮期に心雑音を聴取する。なぜなら、大動脈弁狭窄症では、左心室が収縮して大動脈に血液を送り出す収縮期に、狭くなった弁口を血液が勢いよく通過することで、特徴的な心雑音(駆出性収縮期雑音)が発生するため。この雑音は、心基部(胸骨右縁第2肋間あたり)で最もよく聴取される。

5.× 心筋の酸素消費量は、「減少」ではなく増大する。なぜなら、大動脈弁狭窄症により、左心室は血液を送り出すために過剰な負荷がかかり、左室肥大が生するため。心筋が肥大すると、その分、より多くの酸素を必要とする。

 

 

 

 

 

85 内臓脂肪の蓄積を推定するために用いるのはどれか。2つ選べ。

1.身長
2.体重
3.腹部CT
4.腹囲〈ウエスト周囲長〉
5.血中トリグリセライド値

解答3・4

解説
1~2.× 身長/体重は、BMIを算出することはできるが、内臓脂肪の蓄積を推定することはできない。
・BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。

3.〇 正しい。腹部CTは、内臓脂肪の蓄積を推定するために用いる。
・腹部CTは、腹部の断面画像を撮影し、内臓の周りに蓄積された脂肪(内臓脂肪)と皮膚の下に蓄積された脂肪(皮下脂肪)を明確に区別して定量的に測定することができる。

4.〇 正しい。腹囲〈ウエスト周囲長〉は、内臓脂肪の蓄積を推定するために用いる。なぜなら、腹囲(ウエスト周囲長)は、内臓脂肪の蓄積と高い相関があるため。メタボリックシンドロームの診断基準の一つにも採用されている。

5.× 血中トリグリセライド値(中性脂肪)値は、脂質代謝異常を示唆する指標の一つである。脂質異常症の発症には、過食、運動不足、肥満、喫煙、アルコールの飲みすぎ、ストレスなどが関係しているといわれている。
【脂質異常症の診断基準】
①高LDL(悪玉)コレステロール血症:140mg/dl以上
②低HDL(善玉)コレステロール血症:40mg/dl未満
③中性脂肪(トリグリセライド:TG):150mg/dl以上の高トリグリセライド血症 (高中性脂肪血症)

メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積を基盤とし、動脈硬化の危険因子を複数合併した状態のことである。

【診断基準】
①腹部肥満(ウエストサイズ 男性85cm以上 女性90cm以上) 
②中性脂肪値(HDLコレステロール値 中性脂肪値 150mg/dl以上、HDLコレステロール値 40mg/dl未満のいずれか、または両方)
③血圧(収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上のいずれか、または両方)
④血糖値(空腹時血糖値110mg/dl以上)

 

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