第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午後96~100】

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次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(55歳、男性、会社員)。激しい胸痛で救急搬送され、心筋梗塞と診断された。冠動脈バイパス術〈CABG〉を受け、ICUに入室した。
手術中の輸液量2,700mL、輸血量400mL、出血量280mL、尿量200mLであった。手術から6時間が経過し、人工呼吸器が装着され、心囊ドレーンと、胸腔ドレーンが留置中である。
 身体所見:体温37.1℃、脈拍63/分、血圧126/62mmHg、末梢冷感はなし。肺野全体に湿性ラ音を聴取、漿液性の気道分泌物を認める。
 検査所見:吸入酸素濃度40%、動脈血酸素分圧〈PaO2〉95Torr、動脈血炭酸ガス分圧〈PaCO2〉36Torr、中心静脈圧12cmH2O、心エコー検査では左室駆出率〈LVEF〉45%、心囊液の貯留なし。胸部エックス線写真では両肺野の広範に透過性の低下を認める。

96 術後3日、心臓リハビリテーションが開始された。Aさんは「傷の痛みはありますが、血管をつないだから安心ですね。落ちついたら、家族と温泉に行きたいです」と看護師に話した。
 Aさんの生活指導で適切なのはどれか。

1.「肩までお湯に入りましょう」
2.「お湯の温度は43℃以上にしましょう」
3.「食後1時間以上経過してから入浴しましょう」
4.「心筋梗塞による心不全があるので入浴は控えましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(55歳、男性、会社員、心筋梗塞)。
・激しい胸痛で救急搬送:冠動脈バイパス術〈CABG〉を受けた。
肺水腫を合併。
・術後3日:心臓リハビリテーションが開始された。
・Aさんは「傷の痛みはありますが、血管をつないだから安心ですね。落ちついたら、家族と温泉に行きたいです」と看護師に話した。
→Aさんの既往と冠動脈バイパス術を踏まえ、日常生活指導を実施しよう。

1.× 「肩までお湯に入りましょう」と伝える必要はない。なぜなら、肩まで深くお湯に浸かる「全身浴」は、水圧により心臓に大きな負担をかけるため。「半身浴」を推奨する。

2.× 「お湯の温度は43℃以上にしましょう」と伝える必要はない。なぜなら、43℃以上の熱いお湯は、血管を急激に拡張させ、血圧の低下や心拍数の上昇を引き起こす可能性があるため。したがって、心臓に負担がかかり、めまいや失神、不整脈の誘発などのリスクが高まる。心臓病患者の入浴に推奨されるお湯の温度は、通常38~40℃程度のぬるめに設定される。

3.〇 正しい。「食後1時間以上経過してから入浴しましょう」と生活指導する。なぜなら、食事後は消化のために胃腸への血流が増加しているため。この状態で入浴すると、皮膚の血管も拡張し、心臓への負担が増大する可能性がある。

4.× 「心筋梗塞による心不全があるので入浴は控えましょう」と伝える必要はない。なぜなら、適切な環境での入浴は可能であるため。むしろ、入浴により清潔を保つことは精神的・身体的健康に寄与する。

 

 

 

 

 

次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
 Aさん(57歳、男性)は、芳香族アミンを扱う化学工場に39年勤務している。
 現病歴:ここ数か月で次第に尿の色が濃くなった。いきまないと排尿できなくなり、泌尿器科を受診し、採血および尿検査を受けた。
 既往歴:特記すべき点なし。
 生活歴:喫煙40本/日を36年間、焼酎120mLの飲酒をほぼ毎日、20年間続けている。
 身体所見:顔面、四肢に浮腫なし、黒色便なし、血便なし。
 検査所見:赤血球308万/μL、Hb9.9g/dL、血清アルブミン4.2g/dL、血清総ビリルビン0.2mg/dL、血糖102mg/dL、ヘモグロビンA1c〈HbA1c〉5.4%。

97 Aさんの尿所見で予測されるのはどれか。

1.蛋白尿
2.尿糖陽性
3.肉眼的血尿
4.ビリルビン尿

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(57歳、男性)
芳香族アミンを扱う化学工場:39年勤務。
・現病歴:ここ数か月で次第に尿の色が濃くなった。
いきまないと排尿困難
・既往歴:特記すべき点なし。
・生活歴:喫煙40本/日を36年間、焼酎120mLの飲酒をほぼ毎日、20年間続けている。
・身体所見:顔面、四肢に浮腫なし、黒色便なし、血便なし。
・検査所見:赤血球308万/μL、Hb9.9g/dL、血清アルブミン4.2g/dL血清総ビリルビン0.2mg/dL血糖102mg/dLHbA1c:5.4%
→上記評価から、正確に読み取れるようになろう。

1.× 蛋白尿より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんは、浮腫がないこと、血清アルブミン値が4.2g/dLと正常範囲内であり、腎臓の機能低下は考えにくいため。
・蛋白尿とは、腎機能障害や腎臓からのタンパク漏出を示唆する所見である。

2.× 尿糖陽性より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんの血糖値は102mg/dL、HbA1cは5.4%であり、いずれも正常範囲内であるため。
・尿糖陽性とは、血糖値が高い場合に腎臓の尿細管での糖の再吸収能力を超えてしまい、尿中に糖が排出される状態である。

3.〇 正しい。肉眼的血尿は、Aさんの尿所見で予測される。なぜなら、Aさんは膀胱がんが疑われるため。膀胱がんは、特定の化学物質(芳香族アミンなど)に長期暴露することで発症リスクが高まる。また、尿の色が濃くなったこと、「いきまないと排尿困難」からも尿路閉塞が示唆され、尿路系の異常を示唆されている。
・膀胱がんとは、膀胱に発生するがんのことである。はっきりとした原因は分かっていませんが、たばこを吸うことで膀胱がんにかかる確率が高くなる。症状は、痛みを伴わない血尿である。治療として、手術や放射線治療、薬物療法、膀胱内注入療法などを組み合わせた治療が検討される。

4.× ビリルビン尿より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんの血清総ビリルビン値は0.2mg/dLと正常範囲内(通常0.2〜1.2mg/dL程度)であるため。
・ビリルビン尿とは、肝臓や胆道の病気(肝炎、肝硬変、胆道閉塞など)により、血中の直接ビリルビンが増加し、それが尿中に排泄されることで尿が褐色になる状態である。

 

 

 

 

次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
 Aさん(57歳、男性)は、芳香族アミンを扱う化学工場に39年勤務している。
 現病歴:ここ数か月で次第に尿の色が濃くなった。いきまないと排尿できなくなり、泌尿器科を受診し、採血および尿検査を受けた。
 既往歴:特記すべき点なし。
 生活歴:喫煙40本/日を36年間、焼酎120mLの飲酒をほぼ毎日、20年間続けている。
 身体所見:顔面、四肢に浮腫なし、黒色便なし、血便なし。
 検査所見:赤血球308万/μL、Hb9.9g/dL、血清アルブミン4.2g/dL、血清総ビリルビン0.2mg/dL、血糖102mg/dL、ヘモグロビンA1c〈HbA1c〉5.4%。

98 Aさんは膀胱全摘出術および回腸導管造設術を受けることになった。
 Aさんへの術前の説明で正しいのはどれか。

1.「浴槽のお湯に入ることはできません」
2.「水分の摂り過ぎに注意が必要です」
3.「肛門から尿が出ます」
4.「尿意は感じません」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(57歳、男性)
芳香族アミンを扱う化学工場:39年勤務。
膀胱がんの疑い
膀胱全摘出術および回腸導管造設術を受ける。
→膀胱の機能や、ストーマの日常生活指導をおさえておこう。

1.× 浴槽のお湯に入ることも「できる」。なぜなら、回腸導管造設術を受け、ストーマ(人工肛門や人工膀胱などの排泄口)を造設した場合でも、原則としてストーマ装具を貼付したままであれば浴槽のお湯に入ることは可能であるため。ストーマ装具は防水性があり、剥がれにくいように設計されている。

2.× 水分の摂り過ぎに、特段「注意しなくてよい」。むしろ積極的に水分を摂取することが重要である。なぜなら、回腸導管は、小腸の一部を尿路として利用するため。したがって、通常よりも体内の水分がストーマから排泄されやすい傾向がある。

3.× 「肛門」ではなく小腸の一部(回腸)から尿が出る。なぜなら、回腸導管造設術は、膀胱を全摘出した後、尿を体外に排出するために小腸の一部(回腸)を使って尿路を再建し、お腹の表面にストーマ(人工膀胱)を造設する術式であるため。

4.〇 正しい。「尿意は感じません」と説明する。なぜなら、膀胱全摘出術により、尿を貯め、排泄を感知する「膀胱」がなくなるため。回腸導管から排出される尿は、意思とは関係なく常時排出される。

 

 

 

 

次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
 Aさん(57歳、男性)は、芳香族アミンを扱う化学工場に39年勤務している。
 現病歴:ここ数か月で次第に尿の色が濃くなった。いきまないと排尿できなくなり、泌尿器科を受診し、採血および尿検査を受けた。
 既往歴:特記すべき点なし。
 生活歴:喫煙40本/日を36年間、焼酎120mLの飲酒をほぼ毎日、20年間続けている。
 身体所見:顔面、四肢に浮腫なし、黒色便なし、血便なし。
 検査所見:赤血球308万/μL、Hb9.9g/dL、血清アルブミン4.2g/dL、血清総ビリルビン0.2mg/dL、血糖102mg/dL、ヘモグロビンA1c〈HbA1c〉5.4%。

99 Aさんは術後から、これまでにはなかった勃起障害が出現した。Aさんのテストステロン値は13.5pg/mL(50歳代の基準値:4.6〜19.6pg/mL)であった。
 Aさんの勃起不全の原因で考えられるのはどれか。

1.性ホルモン分泌の低下
2.神経損傷
3.糖尿病
4.喫煙

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(57歳、男性)
芳香族アミンを扱う化学工場:39年勤務。
膀胱がんの疑い
膀胱全摘出術および回腸導管造設術を受ける。

・術後:「これまでにはなかった」勃起障害が出現。
・テストステロン値:13.5pg/mL(50歳代の基準値:4.6〜19.6pg/mL)。
→本症例の生活歴もしっかりおさえておこう。
→膀胱全摘出術は、骨盤内の広範囲な手術であり、この手術の際に勃起機能に関わる神経(陰茎海綿体神経など)が損傷を受けるリスクがある。
→陰茎海綿体神経は、陰茎の勃起組織を支配する神経である。勃起時には、動脈を弛緩、勃起組織に血液を流入させ、それと同時に静脈を収縮させることで、血液の逃げ道をなくし、勃起を起こす。

1.× 性ホルモン分泌の低下より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんのテストステロン値は13.5pg/mLであり、50歳代の基準値(4.6〜19.6pg/mL)の範囲内にあるため。
・テストステロンとは、男子の第二次性徴に最も関与するホルモンである。アンドロゲン(雄性ホルモン、男性ホルモン)とは、ステロイドの一種で、生体内で働いているステロイドホルモンのひとつである。アンドロゲンにはテストステロンとジヒドロテストステロン (dihydrotestosterone;DHT)があり、精巣の分化、機能、組織形成、さらに内性器・外性器の形成に重要な役割を果たす。

2.〇 正しい。神経損傷は、Aさんの勃起不全の原因で考えられる。なぜなら、膀胱全摘出術は、骨盤内の広範囲な手術であり、この手術の際に勃起機能に関わる神経陰茎海綿体神経など)が損傷を受けるリスクがあるため。
・Aさん「術後から、これまでにはなかった勃起障害が出現した」とあるため、手術が直接的な原因である可能性が高い。

3.× 糖尿病より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんの血糖値は102mg/dLHbA1cは5.4%であり、これらは正常範囲内である。
【糖尿病の診断基準】
・HbA1c:6.5%以上
・随時血糖値:200mg/dL以上
・空腹時血糖値:126mg/dL以上
・75g経口ブドウ糖負荷試験で2時間後血糖値:200mg/dL以上

4.× 喫煙より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんの喫煙は、40本/日を36年間しているが、勃起不全が「術後から、これまでにはなかった」と明記されているため。したがって、手術操作による影響が示唆される。

 

 

 

 

 

次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aさん(80歳、女性)は、アパートの1階に1人で暮らしている。半年前に軽度のAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症と診断され、抗認知症薬の内服治療を開始した。要支援2の認定を受けている。
 Aさんが屋内でぐったりしているのを訪問した近所の人が発見し、救急搬送された。来院時のバイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数20/分、脈拍92/分、血圧130/82mmHgで、皮膚に軽度の発汗がみられた。頭痛や吐き気はなかった。看護師がAさんに状況を聞くと、最近は食欲がなく、食べたり飲んだりしていなかったし、昨日は排尿回数も普段より少なかったと話した。

100 このときに看護師が追加で収集する情報で優先度が高いのはどれか。

1.睡眠状況
2.口渇の有無
3.ADLの状況
4.抗認知症薬の内服状況

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(80歳、女性、1人暮らし:アパートの1階)。
・半年前:軽度Alzheimer型認知症(抗認知症薬の内服治療、要支援2)。
屋内でぐったりしており、救急搬送。
・来院時のバイタルサイン:体温36.5℃、呼吸数20/分、脈拍92/分、血圧130/82mmHg。
・皮膚に軽度の発汗がみられた
・頭痛や吐き気はなかった。
・最近:食欲がなく、食べたり飲んだりしていなかった
・昨日:排尿回数も普段より少なかった
→本症例は、脱水状態であると考えられる。脱水とは、生体において体液量が減少した状態をいう。水やナトリウムの喪失が原因で起こる。この際、ナトリウムの喪失を伴わず水欠乏を起こす病態を高張性脱水(水欠乏性脱水)や一次脱水という。脱水症状とは、体内の水分が2%失われると、のどの渇きを感じ、運動能力が低下しはじめる。3%失われると、強いのどの渇き、ぼんやり、食欲不振などの症状がおこり、4~5%になると、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状が現れる。10%以上になると、死にいたることもある。

1.× 睡眠状況より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんの症状(ぐったりしている、食欲不振、排尿回数減少、軽度の発汗)と関連性は低いため。ただし、睡眠不足が、疲労感や認知症状に影響を及ぼすことがあるため観察・評価は必要である。

2.〇 正しい。口渇の有無は、このときに看護師が追加で収集する情報で優先度が高い。なぜなら、本症例は、脱水状態であると考えられるため。口渇は、脱水の重要な兆候の一つであり、その有無を確認することはAさんの現在の身体状態を把握し、必要な水分補給などの緊急対応を判断するために不可欠である。

3.× ADLの状況より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんは、ぐったりしている状況で、原因を直接的に特定するものではないため。

4.× 抗認知症薬の内服状況より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんの体調の症状と、抗認知症薬の副作用と関連性が低いため。また、抗認知症薬の作用(副作用)で、ぐったりすることは考えにくい。

 

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