第115回(R8) 看護師国家試験 解説【午前56~60】

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56 高齢の親の介護が必要となった家族の発達課題で正しいのはどれか。

1.社会性の縮小
2.家族役割の維持
3.家族関係の再構築
4.子離れ・親離れの確立

解答

解説

ハヴィガースト.R.J.とは?

発達段階に対応する発達課題の概念を最初に提唱したとされるアメリカの教育学者である。ライフサイクルを6つの段階に分け、それぞれの時期において乗り越えなければならない代表的な課題を発達課題として示した。発達課題とは、「発達段階に対応する発達課題(能力・役割)」である。つまり、「発達課題とは人生の各段階の時期に生じる課題で、それを達成すれば人は幸福になり、次の発達段階の課題の達成も容易になるが、失敗した場合にはその人は不幸になり、社会から承認されず、次の発達段階の課題を成し遂げることが困難となる課題」とし、人間が健全で幸福な発達を遂げるために各発達段階で達成しておかなければならない課題を提唱した。

1.× 社会性は、「縮小」ではなく維持するように関わる。なぜなら、介護が始まると、家族は時間的・心理的負担を抱えやすくなるため。その結果、介護者が外出や仕事、友人関係を減らしてしまうことがある。介護保険サービス、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、地域包括支援センターなどを活用し、家族だけで抱え込まないことが重要である。

2.× 家族役割は、「維持」ではなく見直すよう関わる。なぜなら、介護の発生によって家族内の役割が変化するため。子ども世代が親を支える役割を担うようになる。

3.〇 正しい。家族関係の再構築は、高齢の親の介護が必要となった家族の発達課題である。なぜなら、親の加齢や介護ニーズの出現により、家族内役割が変化するため。たとえば、これまで親が子を支えていた関係から、子が親を支える関係へ変化する。

4.× 子離れ・親離れの確立は、主に青年期に関係する発達課題である。なぜなら、この時期は、子どもが成長して親から心理的・生活的に自立していく時期であるため。

 

 

 

 

 

57 介護保険制度の説明で正しいのはどれか。

1.措置制度である。
2.共助を実現する仕組みである。
3.介護保険料は65歳から徴収される。
4.地域密着型サービスの指定・監督は都道府県が行う。

解答

解説

介護保険制度とは?

介護保険制度とは、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合に、介護の必要度合いに応じた介護サービスを受けることができる。

【目標】
予防とリハビリテーションの重視
高齢者による選択
在宅ケアの推進
利用者本位のサービスの提供
社会連帯による支え合い
介護基盤の整備
重層的で効率的なシステム

【基本理念】
自己決定の尊重
生活の継続
自己支援(残存能力の活用)

1.× 「措置制度」ではなく社会保険制度である。なぜなら、介護保険制度は、保険料を拠出し、介護が必要になった際に給付を受ける社会保険方式の制度であるため。
・措置制度とは、身体障害者及び知的障害者、その他児童、高齢者に対し、行政が利用できるサービスの内容を決定する制度のことである。

2.〇 正しい。共助を実現する仕組みである。なぜなら、介護保険制度は、被保険者が保険料を負担し、介護が必要になった人を社会全体で支える社会保険制度であるため。
「公助」は税による公の負担。
「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担。
「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。
「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。

3.× 介護保険料は、「65歳」ではなく40歳から徴収される。なぜなら、介護保険では40歳になると被保険者として加入し、介護保険料を支払う仕組みであるため。
介護保険の被保険者は、次の2つに分けられる。
第1号被保険者:65歳以上
第2号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険加入者

4.× 地域密着型サービスの指定・監督は、「都道府県」ではなく市町村が行う。なぜなら、地域密着型サービスは、住み慣れた地域で生活を継続できるよう市町村単位で整備・管理されるサービスであるため。

 

 

 

 

58 Aさん(70歳)は脳梗塞の後遺症で片麻痺があり、要支援2と認定された。杖で歩行しており、尿意はある。リハビリテーション病院から介護施設に入所することになった。
 Aさんの排泄に関する支援で適切なのはどれか。

1.一定の時間間隔で排尿誘導を行う。
2.ベッドサイドにポータブルトイレを設置する。
3.トイレの場所がわかりやすいように目印をつける。
4.トイレ移動時は滑り止めのついた靴を履くように指導する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(70歳、要支援2
・脳梗塞の後遺症で片麻痺。
杖で歩行しており、尿意はある
・リハビリテーション病院から介護施設に入所する。
→ほかの選択肢が消去できる理由をあげられるようにしよう。

1.× 一定の時間間隔で排尿誘導を行うより優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんには尿意があり、排尿の意思表示やトイレ移動が可能と考えられるため。一定の時間間隔で排尿誘導を行う方法は、尿意が不明確な人、認知症などでトイレに行くタイミングを判断しにくい人、失禁を繰り返す人などに用いられる。

2.× ベッドサイドにポータブルトイレを設置するより優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんは杖で歩行でき尿意もあるため。まずは通常のトイレでの排泄を維持する支援が望ましい。
・ポータブルトイレは、トイレまでの移動が難しい場合や、夜間の移動で転倒リスクが高い場合などに用いられる。

3.× トイレの場所がわかりやすいように目印をつけるより優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんには、認知機能障害見当識障害があるとは示されていないため。トイレの場所をわかりやすくする支援は、認知症、せん妄、記憶障害、視覚認知障害などがあり、トイレの場所がわからず失禁や混乱につながる人に有効である。

4.〇 正しい。トイレ移動時は、滑り止めのついた靴を履くように指導する。なぜなら、Aさんは片麻痺があり杖歩行しているため。したがって、トイレ移動時の転倒リスクが高い状態であると考えられる。

 

 

 

 

59 Aさん(89歳、女性)は災害によって自宅が損壊し、避難所で生活を始めた。看護師が面談を行うと「食欲がない。横になっても眠れず、すぐに目が覚めてしまう」と話し、元気がない様子である。避難所ではトイレと食事以外はほとんど動かずに過ごしている。Aさんには被災前の通院歴はなく、日常生活動作〈ADL〉は自立している。
 看護師の対応で優先度が高いのはどれか。

1.頑張るように言葉をかける。
2.直ちに入院できる病院を探す。
3.軽い運動ができるように環境を整える。
4.睡眠薬の処方について医師と相談する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(89歳、女性)
・災害によって自宅が損壊、避難所で生活を始めた。
・Aさん「食欲がない。横になっても眠れず、すぐに目が覚めてしまう」と話し、元気がない様子。
・避難所ではトイレと食事以外はほとんど動かずに過ごしている。
被災前の通院歴はなく、日常生活動作〈ADL〉は自立。
→ほかの選択肢の消去理由もあげられるようにしよう。

1.× 頑張るように言葉をかける「必要はない」。なぜなら、被災後の高齢者は心身ともに疲弊しており、安易な励ましは心理的負担を強めることがあるため。特に、Aさんの場合、自宅が損壊し、避難所生活を始めている。さらに「食欲がない」「眠れない」「すぐ目が覚める」と話しており、災害による強いストレス反応が考えられる。本人は「これ以上どう頑張ればよいのか」と感じたり、「頑張れない自分が悪い」と自責感を強めたりする可能性がある。

2.× 直ちに入院できる病院を探す「必要はない」。なぜなら、Aさんには急性疾患やADL低下による入院の必要性が明確に示されていないため。Aさんの被災前の通院歴はなく、現在ADLは自立している。入院の必要性が高い場合は、脱水や感染症(発熱、意識障害、呼吸困難など)、重度の抑うつ、自殺念慮などである。

3.〇 正しい。軽い運動ができるように環境を整える。なぜなら、Aさんは、避難所でほとんど動かずに過ごしているため。したがって、生活不活発病を起こす危険が高い。
・生活不活発病とは、廃用症候群とも呼ばれる。「廃用」という表現があまりよくないという理由から、生活不活発病という呼び方に変わりつつある。廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

4.× 睡眠薬の処方について医師と相談するより優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんの不眠は、避難所生活によるストレスや日中活動量の低下と関連している可能性があり、まず非薬物的支援を優先するため。

 

 

 

 

 

60 正期産で出生した健康な乳児で正しいのはどれか。

1.出生36時間後に初めて胎便が排泄される。
2.学童と比べて胃食道逆流現象が起きやすい。
3.母乳栄養児では生後3か月以降も生理的な黄疸が遷延する。
4.経腟分娩で出生した児の腸内細菌叢はDöderlein〈デーデルライン〉桿菌が優勢である。

解答

解説

1.× 「出生36時間後」ではなく出生後24時間以内に、初めて胎便が排泄される。赤ちゃんはおなかの中で羊水を飲み込んでいる。その羊水のウンチは、黒緑色で粘り気があるため、胎便という。母乳を飲み始めると、黒緑色から少しずつ黄色味のある移行便となる。母乳を十分に飲むようになると、黄色いつぶつぶの黄色顆粒便になり、一日に何度もでるようになる。

2.〇 正しい。学童と比べて胃食道逆流現象が起きやすい。なぜなら、乳児では、下部食道括約筋が未熟で、胃内容物が食道へ逆流しやすい構造・生活条件であるため。また、乳児は胃が小さく、液体栄養が中心で、仰臥位で過ごす時間が長いため、学童よりも逆流が起こりやすい。多くは成長とともに改善する。

3.× 生理的な黄疸は、母乳栄養児で生後3か月以降「遷延しないものを指す」。生理的黄疸と母乳性黄疸は区別して考える必要がある。
・母乳性黄疸とは、生後1か月を経過しても黄疸が存在して長引く黄疸のことで、この場合には血液中に増加するビリルビンは非抱合型(間接型)であり、尿にも排泄されにくいために尿は黄色に着色しないのが特徴である。ただし、遷延性黄疸の原因として胆道閉鎖症などの重篤な疾患も考えられるため心配であれば主治医に相談することが望ましい。
・生理的黄疸とは、新生児黄疸ともいい、生後間もない新生児の大半にみられる黄疸である。黄疸になると、皮膚や白目の色が次第に黄色味を帯びるが、新生児でみられる黄疸のほとんどは、生理的におきる新生児黄疸(生理的黄疸)である。この新生児黄疸(生理的黄疸)は、およそ生後3~5日目をピークに自然と治まっていくものである。過度に心配する必要はない。起こる機序として、新生児でのビリルビン産生の亢進、グルクロン酸抱合能の未熟、腸肝循環の亢進などにより、出生後に一過性に高間接ビリルビン血症となり、生理的黄疸となる。

4.× 「経腟分娩で出生した児」ではなく成人女性の腸内細菌叢は、Döderlein〈デーデルライン〉桿菌が優勢である。乳酸桿菌であるデーデルライン桿菌は、腟内を酸性に保つ働きがあり、異常細菌の増殖を防ぐ腟の自浄作用を行う。妊娠中は乳酸桿菌が増加し強酸性となる。細菌性腟症の主な特徴は、善玉菌(乳酸桿菌)の数量の減少と有害な細菌の増加が起こる。

 

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