第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午前51~55】

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51 Aさん(27歳、男性)は、突然の胸痛と呼吸困難があり、救急外来を受診した。意識は清明。身長179cm、体重63kg、胸郭は扁平である。20歳から1日50本の喫煙をしている。バイタルサインは、体温36.1℃、呼吸数22/分、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)96%(room air)である。
 胸部CTを下に示す。
 Aさんの所見から考えられるのはどれか。

1.酸素吸入が必要である。
2.抗菌薬投与が必要である。
3.右肺野の呼吸音は減弱している。
4.左胸腔内は液体成分で占められている。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(27歳、男性
突然の胸痛と呼吸困難があり。
・意識は清明。
身長179cm体重63kg、胸郭は扁平。
・20歳から1日50本の喫煙。
・バイタルサインは、体温36.1℃、呼吸数22/分、SpO2:96%
→本症例は、自然気胸が疑われる。理由として、①やせ型(身長179cm、体重63kg)、高身長の若者であること、②突然出現した胸痛と呼吸困難がみられること、③胸部CT上で右の肺が虚脱しているため。
→自然気胸とは、明らかな原因がなく起こる気胸のことである。一般的な症状として、①突然の胸の痛み、②咳、③呼吸困難などがあげられる。自然気胸は20歳前後に多く、その次には60歳代によく起こる。若年者の特徴は、男性・長身・やせ型である。体質的に肺の表面を覆っている胸膜が弱いため発症すると考えられている。一方で高齢者の場合は、喫煙者で栄養状態の悪い方が多い。高齢の方は肺の状態が元来良くないために、治療に時間がかかったり、治療後に気胸が再発することもある。

1.× 酸素吸入は、不要である。なぜなら、本症例のSpO2は96%であるため。一般的に、酸素吸入はSpO2が90%未満や呼吸不全が疑われる場合に行う。

2.× 抗菌薬投与は、不要である。なぜなら、抗菌薬の投与が必要なのは肺炎などの細菌感染症であるため。肺炎の主な症状は、発熱、咳、たんなどである。肺炎に特徴的な炎症症状やCT画像に炎症や感染を示唆する所見(浸潤影やすりガラス影)はみられない。

3.〇 正しい。右肺野の呼吸音は減弱している。なぜなら、右の肺が虚脱しており、右胸腔に空気が入り込んでいるため。気胸があると肺が萎縮し、呼吸音は減弱または消失する。

4.× 左胸腔内は液体成分で占められている「とはいえない」。左胸腔内は正常な肺野構造が保たれており、液体(胸水)を示すような陰影(白い部分)は認められない。

 

 

 

 

 

52 膵頭十二指腸切除術においてドレーンを留置する場所で正しいのはどれか。

1.Magendie〈マジャンディー〉孔
2.Winslow〈ウインスロー〉孔
3.Luschka〈ルシュカ〉孔
4.Monro〈モンロー〉孔

解答

解説

膵頭十二指腸切除術とは?

膵頭十二指腸切除術とは、膵頭部と十二指腸を一括して切除する手術術式である。 胆道再建を伴うため、胆嚢および中下部胆管も同時に切除される。消化器外科学領域では最も侵襲の大きい手術の一つである。膵頭十二指腸切除術後合併症として膵液瘻、腹腔内出血、腹腔内膿瘍、胃排泄遅延、胆汁漏、胆管炎、消化管潰瘍、消化管出血などが考えられる。

1.× Magendie〈マジャンディー〉孔は、第四脳室の正中口のことである。

2.〇 正しい。Winslow〈ウインスロー〉孔は、膵頭十二指腸切除術においてドレーンを留置する場所である。網嚢孔ともいい、肝十二指腸間膜の背側にある隙間で、網嚢の腹膜腔への出口である。消化器疾患の術後にはウィンスロー孔ドレーンが留置されることが多い。これは仰臥位の際に浸出液や血液が貯留しやすい部位のためである。

3.× Luschka〈ルシュカ〉孔は、第四脳室の外側口のことで、下髄帆と下小脳脚に位置する。下髄帆は左右の下小脳脚の間にある薄い板だが、小脳に接する部分で外側に広がり、その先端は外側口Luschka孔(ルシュカ孔)と呼ばれる開口になっている。

4.× Monro〈モンロー〉孔は、室間孔のことである。第三脳室の両外側では室間孔Monro孔(モンロー孔)を通じて側脳室に、尾側では中脳水道を通じて第四脳室につながり、脳脊髄液の通り道になっている。

 

 

 

 

 

53 自己血糖測定を行う患者への説明で正しいのはどれか。

1.「皮下の間質液のグルコースを測定します」
2.「耳たぶから検体を採取します」
3.「採取部位の消毒は不要です」
4.「低血糖が分かります」

解答

解説
1.× 「皮下の間質液」ではなく、血液中のグルコースを測定する。自己血糖測定は、指先などの毛細血管から採取した血液中のグルコース濃度を測定する。ちなみに、皮下の間質液のグルコースを測定するのは、持続血糖モニターである。

2.× 「耳たぶ」ではなく指先(特に薬指、中指、小指の腹側)から検体を採取する。耳たぶは、医療機関での採血などで使用されることがあるが、耳たぶは指先と比べて組織が薄いため、穿刺針が耳たぶを貫通し、裏側を支えている指を刺してしまう針刺し事故のリスクがある。

3.× 採取部位の消毒は、「必要」である。なぜなら、感染予防のため。特にアルコール綿などで拭き、乾燥させてから穿刺することが推奨される。

4.〇 正しい。「低血糖が分かります」と説明する。自己血糖測定とは、その名の通り、患者さん自身が現在の血糖値を把握するための手段である。血糖値が高すぎる「高血糖」だけでなく、低すぎる「低血糖」の状態も数値として確認できる。低血糖は迅速な対処が必要な状態であり、自己血糖測定で早期に発見することは非常に重要である。

低血糖症状とは?

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

 

 

 

 

 

54 成人の骨髄検査の穿刺部位を図に示す。
 正しいのはどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④

解答

解説

骨髄穿刺とは?

骨髄穿刺とは、骨髄液を採取して塗抹標本を作製する検査で、原因不明の貧血、血小板減少、汎血球減少の原因検索などに用いられる。穿刺部位は、成人の場合:(上)後腸骨棘、胸骨(後腸骨稜が使えない時のみ)、小児の場合:(上)後腸骨棘、脊椎骨棘突起、脛骨などである。

1.× ①(胸骨)は、一般的に使用されません。後腸骨稜が使えない時のみ選択されることがあるが、重要な臓器(心臓や大血管)に近く、合併症のリスクが高いため、第一選択肢にはならない

2.× ②(腰椎)は、腰椎穿刺で使用される部位である。腰椎穿刺とは、診断・検査のために脳脊髄液を採取するために、脊柱管に針を挿入する医療処置である。腰椎穿刺の主な理由は、脳や脊髄を含む中枢神経系の病気の診断に役立てることである。これらの状態の例には、髄膜炎およびくも膜下出血などがある。

3.〇 正しい。③(上後腸骨棘)は、成人の骨髄検査の穿刺部位である。なぜなら、上後腸骨棘は骨髄が豊富で、臓器からも離れており安全性が高いため。

4.× ④(仙腸関節付近)は、解剖学的に穿刺が難しい。神経損傷へのリスクもある。

 

 

 

 

 

55 脊髄造影を受ける患者への説明で正しいのはどれか。

1.「検査前の食事制限はありません」
2.「造影剤が硬膜外腔に注入されます」
3.「検査後は頭痛の有無を確認します」
4.「検査後はベッドを水平にします」

解答

解説

脊髄造影とは?

脊髄造影とは、ミエログラフィーともいい、クモ膜下腔に造影剤を注入してX線で撮影する検査である。脊柱管内の神経組織の圧迫や狭窄の位置、その程度を評価する検査(椎間板ヘルニアなどに行われる検査)である。

(※引用:「脊髄造影検査」兵庫医科大学病院様HPより) 

1.× 検査前の食事制限「するのが一般的である」。なぜなら、造影剤による副作用(吐き気や嘔吐など)が発生した場合に備え、誤嚥を防ぐため。検査の数時間前からは水分の摂取も控えるように指導される。

2.× 造影剤は、「硬膜外腔」ではなくクモ膜下腔に注入される。なぜなら、くも膜下腔は、脳脊髄液で満たされており、脊髄や神経根の形状をX線で明瞭に描出することができるため。
・くも膜下腔とは、くも膜と軟膜の間の空間である。

3.〇 正しい。「検査後は頭痛の有無を確認します」と説明する。なぜなら、脊髄造影の検査後は、脳脊髄液の漏出によって頭痛が生じることがあるため。これを「脊椎穿刺後頭痛」と呼ばれる。

4.× 検査後はベッドを「水平」ではなく、ギャッチアップを60度程度(2時間程度)にする。なぜなら、脊髄造影後は、脳脊髄液の漏出による頭痛を予防または軽減するため。ベッドを水平にすると、脳脊髄液の圧変動が大きくなり、頭痛を誘発または悪化させる可能性がある。

 

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