第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午前111~115】

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次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(41歳、初妊婦、会社員)は夫(42歳、会社員)と2人で暮らしている。身長は158cm、非妊時体重55kgである。Aさんは妊娠16週3日に妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。妊婦健康診査後「夫から、高齢妊娠だから安静にするよう言われ、夫が家事をしてくれています。妊娠前はバスケットボールを週に3回、毎日夕方に夫とウォーキングをしていました。今は仕事に行く以外は、家でなるべく動かないようにしています」とAさんが看護師に話した。

111 Aさんは夫に付き添われ、妊娠35週日に妊婦健康診査を受けた。妊婦健康診査では、体重65kg、血圧126/76mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。浮腫(±)。子宮底長30cm、腹囲88cmで異常を認めなかった。その後、Aさんは看護師に「夕方になると足がだるくなり、膝の裏を見たら、血管が膨らんで、青く浮き出ていました」と言う。
 Aさんへの指導で適切なのはどれか。

1.「体重を減らしましょう」
2.「腹帯を強く巻きましょう」
3.「できるだけ立っていましょう」
4.「弾性ストッキングを着用しましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(41歳、初妊婦、会社員)
・2人暮らし:夫(42歳、会社員)。
・身長:158cm、非妊時体重55kg
・妊娠16週3日:妊婦健康診査を受診(順調な経過
・妊娠35週日:体重65kg、血圧126/76mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。浮腫(±)。子宮底長30cm、腹囲88cmで異常を認めなかった。
・Aさん「夕方になると足がだるくなり、膝の裏を見たら、血管が膨らんで、青く浮き出ていました」と。
→Aさんは、下肢静脈瘤の症状が疑われる。

→BMIの計算方法は、BMI(kg/㎡)=体重(kg)÷ 身長(m)の2乗で求められる。
→基準として、①低体重(やせ)の場合:12~15kg、②標準(ふつう)の場合:10~13kg、③肥満(1度)の場合:7~10kg、④肥満(2度以上):個別対応(上限5kgまでが目安)とされている(厚生労働省「『妊産婦のための食生活指針』の改定について(令和3年3月 31 日)」)

改定前に使用されていた「妊娠全期間を通しての推奨体重増加量」
①BMI18.5以下:9~12㎏
②BMI18.5~25:7~12㎏
③BMI25以上:個別対応

1.× 「体重を減らしましょう」と伝える優先度は低い。なぜなら、Aさんは普通レベルで、10~13kgの増加は許容範囲であるため。Aさんは、妊娠35週で体重65kg、非妊時体重55kgから10kg増加している。

2.× 「腹帯を強く巻きましょう」と伝える必要はない。なぜなら、腹帯装着は、起立性低血圧への対処法であるため。Aさんの訴えている足のだるさや血管の浮き出(下肢静脈瘤の可能性)を悪化させる可能性が高い。これは、腹帯を強く巻くと、腹部が圧迫され、腹腔内圧が上昇し、下肢からの静脈還流がさらに阻害される可能性があるため。
・腹帯とは、妊婦さんのお腹に巻く帯のことで、保温効果や胎児を転倒などの衝撃から守るなどといった効果がある。

3.× 「できるだけ立っていましょう」と伝える必要はない。なぜなら、長時間立位は、立位は下肢に血液がうっ滞しやすくなるため。したがって、症状を悪化させる要因となる。

4.〇 正しい。「弾性ストッキングを着用しましょう」と指導する。Aさんは、妊娠中にしばしば見られる下肢静脈瘤や浮腫の兆候である。弾性ストッキングは、下肢に適度な圧をかけることで、静脈の拡張を防ぎ、下肢の血液のうっ滞を改善し、心臓への静脈還流を促進できる。これにより、足のだるさ静脈瘤の症状を軽減し、進行を予防する効果が期待できる。
・弾性ストッキングとは、弾力性を持った特殊なストッキングである。これを着用して締めつけることにより下肢の静脈還流を改善する。

 

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(36歳、経産婦)は、夫(35歳)、男児(3歳)と3人で暮らしている。妊娠、分娩経過は順調で、妊娠39週5日で3200gの女児を経腟分娩で出産した。1分後のApgar〈アプガー〉スコア9点、5分後のApgar〈アプガー〉スコア10点であった。
産褥1日、Aさんの子宮底は臍下2横指、硬度良好、悪露は赤色であった。「1人目の出産後よりもお腹が痛くて眠れませんでした」と看護師に話す。

112 このときのAさんへの説明で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.「痛み止めは使用できません」
2.「授乳をすると痛みが和らぎます」
3.「経産婦のほうが痛みを強く感じます」
4.「産後5日くらいまで痛みは続きます」
5.「子宮が元の大きさに戻るための痛みです」

解答3・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(36歳、経産婦)
・3人暮らし:夫(35歳)、男児(3歳)。
・妊娠、分娩経過:順調、妊娠39週5日:3200g、女児、経腟分娩で出産。
・1分後のApgarスコア9点、5分後のApgarスコア10点。
・産褥1日:子宮底は臍下2横指、硬度良好、悪露は赤色。
・「1人目の出産後よりもお腹が痛くて眠れませんでした」と。
→Aさんは、後陣痛が疑われる(子宮復古は正常:下参照)。後陣痛とは、赤ちゃんを出産した後に、子宮が元の大きさに戻ろうと収縮する時に生じる痛み(下腹部痛)のことである。子宮を収縮させることで、胎盤が剥がれた部分の血管断裂部を圧迫し、止血する役割がある。分娩後に子宮が収縮し、元の大きさに戻ろうとすることを子宮復古といい、産後6週~8週で妊娠前の状態に戻る。正常な子宮復古の経過の場合、産褥7日頃の子宮底高は恥骨結合上縁にわずかに触れる程度である。

1.× 痛み止めは、「使用できる」。なぜなら、生理的な現象である後陣痛に対し、痛みが強く、患者の安楽を阻害する場合には、適切な鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬など)の使用が可能であるため。特に、授乳婦でも使用できる鎮痛薬が選択される。

2.× 授乳をすると痛みが、「和らぐ」のではなく強くなることが多い。なぜなら、授乳は子宮収縮を促すため。授乳によって乳頭が刺激されると、オキシトシンというホルモンが分泌される。オキシトシンは、子宮収縮を促す作用があるため、授乳中は後陣痛が一時的に強まる。

3.〇 正しい。「経産婦のほうが痛みを強く感じます」と説明する。なぜなら、経産婦の場合、子宮が一度大きくなっているため、分娩後に子宮が元の大きさに戻る(子宮復古)際の収縮が、初産婦よりも強く、痛みを伴いやすい傾向があるため。これは、子宮筋の緊張が低下しているため、より強い収縮が必要となるためと考えられている。

4.× 「産後5日」ではなく2~3日くらいまで痛みは続く。ただし、個人差があり、長い場合1週間程度で軽減することもある。後陣痛の一般的な期間を伝えることの方が望ましいと考える。

5.〇 正しい。「子宮が元の大きさに戻るための痛みです」と説明する。なぜなら、後陣痛が疑われるため。この痛みが生理的な現象であり、子宮が正常な状態に戻るために必要な過程であることを説明することは、Aさんの不安を軽減し、痛みを理解する助けとなる。

子宮復古の状態

・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(36歳、経産婦)は、夫(35歳)、男児(3歳)と3人で暮らしている。妊娠、分娩経過は順調で、妊娠39週5日で3200gの女児を経腟分娩で出産した。1分後のApgar〈アプガー〉スコア9点、5分後のApgar〈アプガー〉スコア10点であった。
産褥1日、Aさんの子宮底は臍下2横指、硬度良好、悪露は赤色であった。「1人目の出産後よりもお腹が痛くて眠れませんでした」と看護師に話す。

113 産褥3日、乳房は緊満、乳管開通は左右とも5、6本、射乳がある。1日8回授乳をしている。児の体重は3080gで前日よりも20g減少している。「母乳で育てたいと思っていたけど、乳房が張って授乳がうまくできないです」と話す。
 このときのAさんへの説明で適切なのはどれか。

1.「水分を多めに摂りましょう」
2.「時間を決めて授乳をしましょう」
3.「乳房の張りは2週間程度続きます」
4.「授乳の前に乳輪部のマッサージをしましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(36歳、経産婦)
・3人暮らし:夫(35歳)、男児(3歳)。
・妊娠、分娩経過:順調、妊娠39週5日:3200g、女児、経腟分娩で出産。
産褥3日:乳房は緊満、乳管開通は左右とも5、6本、射乳がある。
・1日8回授乳をしている。
・児の体重は3080gで前日よりも20g減少している。
・「母乳で育てたいと思っていたけど、乳房が張って授乳がうまくできないです」と話す。
→本症例の主訴に対しての対応が望ましい。児の体重の減少は、生理的な正常範囲である。

【新生児の生理的体重の変化】
正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷ 出生時の体重 × 100」で算出される。

1.× 「水分を多めに摂りましょう」と伝える優先度は低い。なぜなら、母乳の分泌は水分摂取量だけでなく、ホルモンや乳房刺激など複合的な要因で調整されるため。また、乳房の緊満がある状態で水分摂取を増やすと、乳汁の生成がさらに促進され、張りが強まる可能性も考えらえる。

2.× 「時間を決めて授乳をしましょう」と伝える優先度は低い。なぜなら、児が欲しがる時に欲しがるだけ与える「自律授乳」が基本であるため。
・自律授乳とは、児が欲しがるときに欲しがるだけ飲ませる授乳方法のことである。児に吸われる刺激によって母乳分泌が促されて母乳育児がスムーズになることから、とくに生後1~2か月ぐらいまでの間は自律授乳が推奨されている。自律授乳の場合、新生児期の授乳回数は1日10回以上になることもあるが、たくさん吸うことで飲むことに慣れ、上手に飲めるようになっていく。赤ちゃんの口の動きなどからほしがるサインに早期に気づき、授乳できるよう指導する。

3.× 「乳房の張りは2週間程度続きます」と伝える優先度は低い。なぜなら、適切に対処すれば数日で軽減することがほとんどであるため。Aさんのように、産褥3日は乳汁分泌が本格化し、生理的な乳房緊満が起こりやすい時期である。

4.〇 正しい。「授乳の前に乳輪部のマッサージをしましょう」と説明する。なぜなら、授乳前に乳輪部をやわらかくマッサージすることで、児が乳頭を深く含みやすくなり、効果的な授乳につながるため。Aさん「乳房が張って授乳がうまくできないです」と困っていることに対しても対応策を促すことができている。

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(36歳、経産婦)は、夫(35歳)、男児(3歳)と3人で暮らしている。妊娠、分娩経過は順調で、妊娠39週5日で3200gの女児を経腟分娩で出産した。1分後のApgar〈アプガー〉スコア9点、5分後のApgar〈アプガー〉スコア10点であった。
産褥1日、Aさんの子宮底は臍下2横指、硬度良好、悪露は赤色であった。「1人目の出産後よりもお腹が痛くて眠れませんでした」と看護師に話す。

114 日齢4、Aさんの児の体重は3100g。体温37.1℃、呼吸数48/分、心拍数130/分。経皮ビリルビン10.0mg/dL。排尿9回/日、排便8回/日。
 児のアセスメントで正しいのはどれか。

1.経皮ビリルビン値は光線療法が必要な値である。
2.生理的体重減少の範囲を超えている。
3.バイタルサインは正常である。
4.排尿回数が少ない。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(36歳、経産婦)
・3人暮らし:夫(35歳)、男児(3歳)。
・妊娠、分娩経過:順調、妊娠39週5日:3200g、女児、経腟分娩で出産。
・日齢4:体重3100g。体温37.1℃、呼吸数48/分、心拍数130/分。経皮ビリルビン10.0mg/dL。排尿9回/日、排便8回/日。
→上記の評価を正確に読み取れるようにしよう。正常範囲も覚えておこう。

1.× 経皮ビリルビン値は、光線療法が必要な値「とはいえない」。なぜなら、本児の経皮ビリルビン10.0mg/dLであるため。①生理的黄疸:血中のビリルビン値が、黄疸のピーク時(生後4、5日)に成熟児で12mg/dl、未熟児で15mg/dl以下であり、かつ1日のビリルビン値の上昇が5mg/dl以下である。②病的黄疸:血中のビリルビン値が、成熟児で12mg/dl、未熟児で15mg/dlを超える。または、1日のビリルビン値の上昇が5mg/dlを超える。本症例は、病的黄疸(早発黄疸)と考えられ光線療法が開始されている。
・光線療法とは、新生児に特殊な光線を当てて治療する方法である。光源は450~470nm付近の波長の青色LEDで、その光の作用で毒性の高い間接型ビリルビンを直接型に変え、体外への排出を促す。早ければ治療開始後2~3日で血中ビリルビン値は正常値に戻り、治療が完了する。

2.× 生理的体重減少の範囲を「超えていない」超えている。なぜなら、3200gから、日齢4にて体重3100g(100g減少)であるため。3200gの児の場合、最大で320gの減少(-10%)までが生理的範囲である。
【新生児の生理的体重の変化】
正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷ 出生時の体重 × 100」で算出される。

3.〇 正しい。バイタルサインは正常である。本児のバイタルサインは、体温37.1℃、呼吸数48/分、心拍数130/分である。いずれも正常範囲である。
・新生児の正常体温は、36.5〜37.5℃程度である。
・新生児の正常呼吸数は、30〜60回/分程度である。
・新生児の正常心拍数は、120〜160拍/分程度である。

4.× 排尿回数が少ない「とはいえない」。本児の排尿9回/日である。
新生児の排尿回数は、1日に15~20回程度と頻回である。これは、新生児の膀胱が小さく、排泄機能が未熟であるため。ただし、排尿回数や排便回数は、そのときの発汗や呼吸によっても左右されるため、一概に正常回数範囲といったものは設けられていない。成長とともに、1回の尿の量が増え、1日の回数が減っていく。これはからだ全体が発育していくように、おしっこを貯める膀胱も成長していくからである。

 

 

 

 

 

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、男性)は統合失調症で内服治療をしていた。最近、部屋にこもり、精神科受診以外は外出しなくなった。ある日、母親がAさんの部屋で大量の薬を見つけ、確認すると「薬は飲みたくない」と話した。受診に付き添った母親は「Aは昼間に寝ていて、夜に窓を開けて、隣の家に向かって『悪口を言うな』『監視するな』と大声で怒鳴る」と主治医に話した。Aさんと母親の強い希望があり、精神科病棟に入院することになり、薬物療法が開始された。
 入院3日、夜間の巡視のたびにAさんは起きていて「隣の人が自分を監視している」「皆が悪口を言っている」と小さな声で看護師に話した。日中はホールで眠そうにしていることもあり、レクリエーションには「疲れた」と言って参加しない。他の患者と話すことはあるがトラブルはない。歯磨きや身だしなみは、声をかけると行う。

115 Aさんのセルフケアの観察項目で優先度が高いのはどれか。

1.孤独と付き合いのバランス
2.活動と休息のバランス
3.安全を保つ能力
4.個人衛生

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(30歳、男性、統合失調症で内服治療)
・最近、部屋にこもり、精神科受診以外は外出せず。
・部屋に大量の薬あり「薬は飲みたくない」と。
・母親「Aは昼間に寝ていて、夜に窓を開けて、隣の家に向かって『悪口を言うな』『監視するな』と大声で怒鳴る」と。
・Aさんと母親の強い希望があり、精神科病棟に入院することになり、薬物療法が開始。
・入院3日:夜間の巡視のたびにAさんは起きていて「隣の人が自分を監視している」「皆が悪口を言っている」と小さな声で看護師に話した。
・日中はホールで眠そうにしていることもあり、レクリエーションには「疲れた」と言って参加しない。
・他の患者と話すことはあるがトラブルはない。
歯磨きや身だしなみは、声をかけると行う
→本症例は、統合失調症の急性期~消耗期である。それぞれの対応を覚えておこう。また、本症例は、「皆が悪口を言っている」と小さな声で話していることから、ほかの患者の安全の確保も必要となる。

1.× 孤独と付き合いのバランスより優先されるものが他にある。なぜなら、付き合いを促す時期ではなないため。デイケアや他者との関りを促すのは、維持期以降となる。

2.〇 正しい。活動と休息のバランスは、Aさんのセルフケアの観察項目で優先度が高い。なぜなら、本症例は、歯磨きや身だしなみは、声をかけると行うことができているため。したがって、次の課題でもあるセルフケアの観察項目で、どの項目ができているか、正確に評価していく。ただし、一般的に、簡単な周辺処理の活動を「促す」のは、幻覚がみられなくなる消耗期以降である。

3.× 安全を保つ能力より優先されるものが他にある。なぜなら、現時点では「他の患者と話すことはあるがトラブルはない」とあり、具体的な他害行為や自傷行為がみられないため。ただし、統合失調症の急性期は、①十分な睡眠や休養、②安心感の確保が優先される。十分な睡眠や休養のためにも安全を保つ能力が必要な課題である。

4.× 個人衛生より優先されるものが他にある。なぜなら、 Aさんは「歯磨きや身だしなみは、声をかけると行う」とあり、個人衛生の評価は済んでいるため。現時点では声かけで対応可能であり、優先度が高いセルフケアの観察項目とはいえない。

統合失調症とは?

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

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