第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午後76~80】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

76 心房と心室の間を電気的に結合し、心房側の興奮を心室側に伝えるのはどれか。

1.心筋層
2.心内膜
3.洞房結節
4.His〈ヒス〉束
5.Purkinje〈プルキンエ〉線維

解答

解説

(図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

心臓の刺激伝導系

洞房結節→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維となる。

1.× 心筋層とは、心臓の壁を構成する筋肉組織そのものであり、心臓の収縮を行う主要な部分である。したがって、電気信号を生成したり、心房と心室の間で特定の電気的結合を行ったりする構造ではない。

2.× 心内膜とは、心臓の内腔を覆う薄い膜状の組織である。
・心膜とは、2層構造の、漿液性心膜と線維性心膜の2つからなっており、心筋の内表面に密着している膜を、心内膜という。

3.× 洞房結節とは、心臓の興奮のペースメーカーの働きをする部位である。心臓の興奮の起点となる部分である。

4.〇 正しい。His〈ヒス〉束は、心房と心室の間を電気的に結合し、心房側の興奮を心室側に伝える。His束とは、心臓の刺激伝導系で房室結節からのシグナルを受け取る。心室中隔の上部に位置する。

5.× Purkinje〈プルキンエ〉線維とは、刺激伝導系の左右脚の末梢が心室壁内面で細かく分岐して心筋に移行し、その直前で特殊心筋のネットワークが形成される部位である。His束からのシグナルを受け取り、心室の収縮を誘発する。

 

 

 

 

 

77 肝臓の機能はどれか。

1.糖の貯蔵
2.胆汁の貯蔵
3.体液量の調節
4.体液のpH調節
5.ホルモンの分泌

解答

解説

肝臓の機能とは?

肝臓の機能として、①胆汁の生成とビリルビンの代謝、②血漿蛋白質と尿素の合成、③脂質代謝、④糖の貯蔵と放出、⑤ビタミンDの代謝、⑥ホルモンの代謝、⑦解毒・薬物の代謝である。ちなみに、グルコースとは、果物や穀類などに多く含まれ、自然界に最も多く存在する単糖類である。

1.〇 正しい。糖の貯蔵は、肝臓の機能である。肝臓は、血糖値が上昇した際に、余分なブドウ糖をグリコーゲンという形で貯蔵する(グリコーゲン合成)。そして、血糖値が低下した際には、この貯蔵したグリコーゲンを分解してブドウ糖に戻し、血液中に放出することで血糖値を維持する(グリコーゲン分解)。

2.× 胆汁の貯蔵は、胆嚢の機能である。胆汁は、腸内での消化吸収の促進や毒素の排除などに重要な役割を果たす。
・胆嚢とは、胆汁を貯蔵し、必要に応じて腸に放出する役割を持つ臓器である。肝臓の右葉の下に位置し、長さは10cm、幅は4cm程度で、50〜60mlの胆汁を貯えることができる。

3~4.× 体液量の調節/体液のpH調節は、腎臓の機能である。腎臓は、尿の生成と排出を通じて、体内の水分量や電解質のバランスを細かく調整している。
・腎臓の機能は、体液の恒常性を保つことである。つまり、①水分・電解質の調節、②酸塩基平衡の調節、③代謝産物の排泄、④ホルモン産生・調節などがあげられる。

5.× ホルモンの分泌は、肝臓の機能ではない。ホルモンの分泌は、内分泌腺(例:甲状腺、副腎、膵臓、下垂体など)の役割である。

 

 

 

 

 

78 術後の回復過程でエネルギー不足の場合にケトン体の供給源となるのはどれか。

1.乳酸
2.尿酸
3.脂肪酸
4.蛋白質
5.アンモニア

解答

解説

クエン酸回路とは?

クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)とは、ミトコンドリアでアセチルCoAが二酸化炭素と水へと酸化されATPを生成する。グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→【クエン酸回路】(オキサロ酢酸)+クエン酸→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→サクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸となる。

1.× 乳酸とは、カラダを動かすエネルギーを作るため糖を分解している際にできる生成物で、その名の通り酸性である。筋疲労時には乳酸が蓄積する。
・解糖系とは、生体内に存在する生化学反応経路の名称であり、グルコースをピルビン酸などの有機酸に分解し、グルコースに含まれる高い結合エネルギー(ATP)を生物が使いやすい形に変換していくための代謝過程である。グルコースから生じたピルビン酸は、還元され最終産物として乳酸になる。このグルコースから乳酸への変換経路は、酸素の関与なしに起こりうるので、嫌気的代謝(解糖)と呼ばれる。

2.× 尿酸とは、「プリン体」という物質が体内で分解されてできるものである。分解場所は肝臓である。プリン体は運動したり臓器を動かしたりするためのエネルギー物質で、常に体内で作られている。過剰に蓄積されると痛風となる。
尿素回路は、蛋白質代謝の結果として生じたアンモニアを処理する経路である。尿素回路(オルニチン回路)は、肝臓でアンモニアを無毒な尿素に変換する経路である。蛋白質の代謝により生じたアンモニアは毒性が高いため、尿素回路によって処理され、尿素として体外に排出される。

3.〇 正しい。脂肪酸は、術後の回復過程でエネルギー不足の場合にケトン体の供給源となる。術後の絶食期や糖質制限時など、体内の糖質(ブドウ糖)が不足すると、体は脂肪組織に蓄えられた中性脂肪を分解して脂肪酸を生成する。この脂肪酸が肝臓に取り込まれ、β酸化という過程を経てアセチルCoAとなり、最終的にケトン体が産生される。
・β酸化は、ミトコンドリア内で脂肪酸が分解される過程である。脂肪酸は、アセチルCoAへと変換され、その後クエン酸回路に参加する。

4.× 蛋白質とは、体を作る構成要素で、酵素やホルモンなど体の機能を調節する大切な役割を果たしている。欠乏症状として、肌ハリの低下、枝毛、免疫機能低下などがみられる。
・飢餓の最終段階や極度の低栄養状態で、筋肉などのタンパク質が分解されてエネルギー源として利用されるが、これは緊急時の反応であり、ケトン体産生よりも糖新生やTCA回路への関与が主である。

5.× アンモニアは、主に蛋白質やアミノ酸の代謝によって生じる有毒な老廃物である。肝臓で尿素に変換され、腎臓から排泄されることで解毒される。

 

 

 

 

 

79 狭窄による血流低下で二次性高血圧を起こす血管はどれか。

1.冠動脈
2.肝動脈
3.頸動脈
4.腎動脈
5.脳動脈

解答

解説

MEMO

高血圧症とは、①本態性高血圧(原因が生活習慣や環境、遺伝などはっきり特定できないもの:高血圧症全体の9割)と、②二次性高血圧(ホルモン分泌異常や臓器の奇形などで生じ原因が特定できるもの:腎血管性高血圧を含む)に分けられる。二次性高血圧症の原因として、①腎実質性、②腎血管性、③内分泌性、④血管性、⑤脳・中枢神経性(脳幹部血管圧迫)、⑥遺伝性、⑦薬剤誘発性などがある。②腎血管性高血圧は、腎動脈硬化症や線維筋性異形成、高安大動脈炎、解離性大動脈瘤などによる腎血流低下により腎臓でレニン産生が増加するため高血圧となる。③内分泌性高血圧には、先端巨大症、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、レニン産生腫瘍などにより高血圧となる。

1.× 冠動脈と血圧上昇の関連性はひくい。ちなみに、冠動脈が狭窄すると、心筋への血流が低下し、狭心症や心筋梗塞を引き起こす。
・冠動脈とは、冠状動脈ともいい、心臓を栄養する終動脈(細動脈で吻合をもたない血管)である。心臓自身を栄養するために、心拍出量の約1/20(250mL/分)の血液が冠動脈へ流れている。

2.× 肝動脈と血圧上昇の関連性はひくい。ちなみに、肝動脈が狭窄すると、肝臓への血流低下を引き起こし、肝機能障害がみられることがある。
・肝臓の機能として、①胆汁の生成とビリルビンの代謝、②血漿蛋白質と尿素の合成、③脂質代謝、④糖の貯蔵と放出、⑤ビタミンDの代謝、⑥ホルモンの代謝、⑦解毒・薬物の代謝である。

3.× 頸動脈と血圧上昇の関連性はひくい。ちなみに、頸動脈が狭窄すると、脳への血流が低下し、一過性脳虚血発作や脳梗塞の原因となる。

4.〇 正しい。腎動脈は、狭窄による血流低下で二次性高血圧を起こす血管である。これを腎血管性高血圧という。腎血管性高血圧とは、腎動脈硬化症や線維筋性異形成、高安大動脈炎、解離性大動脈瘤などによる腎血流低下により、腎臓でレニン産生が増加するため高血圧となる。

5.× 脳動脈と血圧上昇の関連性はひくい。ちなみに、脳動脈が狭窄すると、脳への血流低下を引き起こし、脳梗塞や一過性脳虚血発作の原因となる。

 

 

 

 

 

80 日本の人口動態統計の死因別死亡率の年次推移をグラフに示す。
 Cの死因はどれか。

1.肺炎
2.老衰
3.心疾患
4.脳血管疾患
5.悪性新生物〈腫瘍〉

解答

解説

(※引用:「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況 」厚生労働省様HPより)

1.× 肺炎は、Eに該当する。

2.〇 正しい。老衰は、Cに該当する。

3.× 心疾患は、Bに該当する。

4.× 脳血管疾患は、Dに該当する。

5.× 悪性新生物〈腫瘍〉は、Aに該当する。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)