第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午後116~120】

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次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(65歳、女性)は、夫と2人で暮らしている。友人の死去後、食事量が減り、1か月前から気分の落ち込みが強くなった。夫が積極的に散歩に誘っても、Aさんは「体がだるい」「何をしても意味がない」と話し、寝つきも悪くなり、日中ほとんどの時間を臥床して過ごすようになった。心配した夫に連れられて精神科外来を受診したところ、うつ病と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉と不眠時の睡眠薬が処方された。夫から精神科外来の看護師に「日常生活で気を付けることはありますか」と質問があった。

116 Aさんの症状は半年ほどで落ち着き、夫との散歩や料理を楽しみ、特に問題なく過ごせるようになった。精神科受診を終了して1年後、Aさんは再び家にこもりがちになった。夫の話では、急に料理の作り方や人の名前を何度も確認するなど、家事に時間がかかるようになった。Aさんは「何もできないと思っているでしょ」と、ささいなことに怒ったり、急に泣き出すことが増え、夫と一緒に精神科外来を再受診した。
頭部MRI検査の結果、多発性脳梗塞がみられ、血管性認知症と診断された。Aさんは「自分が認知症なんて信じられない。もう治らない」と話した。
 Aさんに認められるのはどれか。2つ選べ。

1.感情失禁
2.観念奔逸
3.強迫行為
4.心気妄想
5.実行機能障害

解答1・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(65歳、女性、夫と2人暮らし)。
・既往歴:うつ病(半年ほどで落ち着く)
・1年後:Aさんは再び家にこもりがちになった。
・夫の話では、急に料理の作り方や人の名前を何度も確認するなど、家事に時間がかかるようになった。
・Aさん「何もできないと思っているでしょ」と、ささいなことに怒ったり急に泣き出すことが増えた。
・頭部MRI検査:多発性脳梗塞がみられ、血管性認知症と診断された。
・Aさんは「自分が認知症なんて信じられない。もう治らない」と話した。
→脳血管性認知症とは、脳血管が詰まったり破れたりすることで突然発症する。その後、脳血管が詰まったり破れたりするたびに、症状が悪化する特徴を持つ。その部位や範囲によって症状は様々である。他の症状として、巣症状(失語、失行、失認など脳の局所性病変によって起こる機能障害)や階段状に認知障害が進行することが特徴である。

1.〇 正しい。感情失禁がAさんに認められる。Aさん「何もできないと思っているでしょ」と、ささいなことに怒ったり急に泣き出すことが増えたことが感情失禁といえる。
・感情失禁とは、軽度の情動的刺激で笑ったり、泣いたりする現象で、感情の調節がうまくいかない状態である。前頭葉障害や脳血管性認知症に多い症状である。

2.× 観念奔逸とは、考えが次々と浮かびあがって勝手に展開していき、全体として思考の流れが逸れていく状態である。繰状態にみられる。

3.× 強迫行為とは、不合理な観念(手を洗っても汚いままなど)を解消するために繰り返し行ってしまう行為のことをいう。自分でもおかしいとわかっていながら、その行為を繰り返し、それが日常生活に障害をもたらしていることを強迫性障害という。

4.× 心気妄想とは、自分は重い病気にかかっていると思い込む妄想である。気分障害(うつ病)でみられやすい妄想である。

5.〇 正しい。実行機能障害がAさんに認められる。夫の話では、急に料理の作り方や人の名前を何度も確認するなど、家事に時間がかかるようになったことが、実行機能障害といえる。
・実行機能障害とは、遂行機能障害ともいわれ、論理的・計画的な行動ができなくなることである。例えば、料理を作る、洗濯をするなどの段取りのことをいい、前頭葉の障害で出現する。

 

 

 

 

 

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(65歳、女性)は、夫と2人で暮らしている。友人の死去後、食事量が減り、1か月前から気分の落ち込みが強くなった。夫が積極的に散歩に誘っても、Aさんは「体がだるい」「何をしても意味がない」と話し、寝つきも悪くなり、日中ほとんどの時間を臥床して過ごすようになった。心配した夫に連れられて精神科外来を受診したところ、うつ病と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉と不眠時の睡眠薬が処方された。夫から精神科外来の看護師に「日常生活で気を付けることはありますか」と質問があった。

117 Aさんは要介護2の認定を受け、介護サービスを検討することになった。体調が良いときは、夫の料理を手伝ったり散歩に出かけている。排泄や着替えは時間をかけて1人で行えるが、入浴は夫の介助が必要である。夫は「入浴のサポートを受けたり、自分が不在のときに泊まれる場所はないか」と話している。外来看護師がAさんの希望を聞くと「人が多い場所は苦手です。家の近くで好きなときに通えたり、家に来てもらえると安心です」と話した。
 Aさんに紹介するサービスで適切なのはどれか。

1.小規模多機能型居宅介護
2.認知症対応型通所介護
3.自立訓練
4.療養介護

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(65歳、女性、夫と2人暮らし)。
・既往歴:うつ病(半年ほどで落ち着く)、血管性認知症
要介護2の認定、介護サービスを検討する。
・体調が良いとき:夫の料理を手伝ったり散歩に出かけている。
・排泄や着替えは時間をかけて1人で行えるが、入浴は夫の介助が必要
・夫は「入浴のサポートを受けたり、自分が不在のときに泊まれる場所はないか」と話している。
・Aさんの希望「人が多い場所は苦手です。家の近くで好きなときに通えたり、家に来てもらえると安心です」と。
→それぞれの施設の特徴をおさえておこう。

1.〇 正しい。小規模多機能型居宅介護は、Aさんに紹介するサービスである。なぜなら、Aさんと夫の希望に対応できるサービスであるため。
・小規模多機能型居宅介護とは、デイサービスを中心に訪問介護やショートステイを組み合わせ、在宅での生活の支援(訪問)や、機能訓練を行うサービスで、居宅・通所・短期入所を状況に応じて組み合わせて行うものである。

2.× 認知症対応型通所介護より優先されるものが他にある。なぜなら、夫の「自分が不在のときに泊まれる場所はないか」というものに対応できないため。ただし、施設によっては、自費サービスで行うところもある(※自費であるため高額)。
・認知症対応型通所介護とは、脳血管疾患、アルツハイマー病等により記憶機能等の認知機能が低下し日常生活に支障が生じている要介護者に対して、デイサービス等において、入浴、排泄、食事等の介護、機能訓練を提供するサービスである。

3.× 自立訓練より優先されるものが他にある。なぜなら、自立訓練は、障害者総合支援法に基づくサービスであるため。Aさんは介護保険の要介護2の認定を受けていることから、主なサービス利用の根拠は介護保険法である。
・自立訓練とは、知的障害者・精神障害者に対して、自立した日常生活ができるように訓練や助言をするものである。

4.× 療養介護より優先されるものが他にある。なぜなら、療養介護は、障害者総合支援法に基づくサービスであるため。Aさんは介護保険の要介護2の認定を受けていることから、主なサービス利用の根拠は介護保険法である。
・療養介護とは、病院において機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護、日常生活上の世話その他必要な医療を要する障害者であって常時介護を要するものにつき、主として昼間において、病院において行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び日常生活上の世話を行う。また、療養介護のうち医療に係るものを療養介護医療として提供する。【対象者】病院等への長期の入院による医療的ケアに加え、常時の介護を必要とする障害者として次に掲げる者(障害支援区分5~6)とされている。

 

 

 

 

 

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大腿部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。

118 このときの看護師の感染予防対策で正しいのはどれか。

1.ゴーグルを装着して処置の介助を行う。
2.使い捨て手袋を1時間ごとに交換する。
3.処置を行う前に破傷風のワクチンを受ける。
4.看護師が着用するガウンにAさん用と記載しAさん専用にする。

解答

解説

本症例のポイント

・午後1時:震度6強の地震発生、避難所が開設。
・地震発生の2時間後:避難所に救護所が設置、近隣の病院から医療救護班が派遣。
・Aさん(54歳、男性):右大腿部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。
・すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。
→様々な感染リスクが考えられるため、標準予防策に基づいた対応を考えよう。
→標準予防策(standard precaution)とは、院内感染の防止策として推奨されている方法であり、感染の有無に関わらず入院患者すべてに適用される予防対策であり、患者の血液や体液、分泌、排泄されるすべての湿性物質、粘膜、創傷の皮膚は感染のおそれがあるとみなして、対応、行動する方法である。

1.〇 正しい。ゴーグルを装着して処置の介助を行う。なぜなら、Aさんは右大腿部に4cmの切創があり、出血部位をタオルで押さえていることから、処置中に血液が飛び散る可能性があるため。ゴーグル(またはフェイスシールド)の装着は、血液や体液が眼の粘膜に飛散し、感染するのを防ぐための重要な個人防護具である。

2.× 使い捨て手袋を「1時間ごと」ではなく患者ごとに交換する。ただし、同じ患者であっても汚染された場合、あるいは異なる部位の処置を行う場合などに交換するのが原則である。災害時は物資が限られるため、特に適切なタイミングでの交換が求められる。

3.× 処置を行う前に破傷風のワクチンを受ける必要はない。なぜなら、破傷風のワクチンは、予防接種であり、効果が発現するまでに時間を要すため。破傷風トキソイドを3~8週間の間隔で2回接種後、4週間で免疫を獲得できる。したがって、処置を行う「前」に受けても、直ちに対象の患者からの感染を防ぐ効果は期待できない。
・破傷風とは、接触感染で、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。

4.× 看護師が着用するガウンにAさん用と記載しAさん専用にする必要はない。なぜなら、通常、ガウンは処置のたびに使い捨てにするか、汚染された場合はすぐに交換するのが原則であるため。
・ガウンとは、血液や体液の飛散から衣服や皮膚を保護するために着用する個人防護具である。

 

 

 

 

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大腿部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。

119 発災翌日、避難所には150名ほどの避難者が登録をしている。医療救護班の医師から「この数日間で、インフルエンザの患者が病院で増えている。避難所でも注意したほうがよい」と看護師に助言があった。看護師は避難所運営者と連携して、避難所でのインフルエンザの集団発生防止策を立てることにした。午前9時現在、避難者の中には発熱や咳をしている有症者はいない。
 避難所での集団感染を防止する対策で適切なのはどれか。

1.避難所の床を毎日アルコールで清掃する。
2.共同のトイレにあるタオルを毎日交換する。
3.避難所の居住スペースの換気を1日1回行う。
4.避難者に入所時からの体調を健康チェック表に記載してもらう。

解答

解説

本症例のポイント

・午後1時:震度6強の地震発生、避難所が開設。
・発災翌日:避難所150名ほどの避難者。
・医療救護班の医師から「この数日間で、インフルエンザの患者が病院で増えている。」と。
・看護師は避難所運営者と連携して、避難所でのインフルエンザの集団発生防止策を立てることにした。
・午前9時現在:避難者の中には発熱や咳をしている有症者はいない。
→どのようにすれば、インフルエンザなどの感染症の早期発見と早期隔離に繋がるか考えよう。

1.× 避難所の床を毎日アルコールで清掃する優先度は低い。なぜなら、インフルエンザウイルスは主に飛沫感染接触感染で広がるため。したがって、床よりも人の手が触れる場所(ドアノブ、手すり、テーブルなど)の消毒がより重要である。

2.× 共同のトイレにあるタオルを「毎日」ではなく毎回(もしくはペーパータオルに)交換する。なぜなら、タオルの共有は、接触感染のリスクをあげるため。感染予防の観点からは、共同で使用するタオルは設置せず、使い捨てのペーパータオルを使用するか、各自で私用のタオルを持参・管理してもらうようにする。

3.× 避難所の居住スペースの換気を、「1日」ではなく10分程度1回(頻繁な換気)行う。なぜなら、閉鎖された空間では空気中にウイルスが滞留しやすく、感染リスクが高まるため。したがって、窓やドアを開ける、換気扇を使用するなどして対策する。

4.〇 正しい。避難者に入所時からの体調を健康チェック表に記載してもらう。なぜなら、避難者一人ひとりの健康状態を把握することで、症状の変化をいち早く察知し、感染症の早期発見と早期隔離に繋がるため。認知症の高齢者など、自分で記録が難しい人には、医療救護班や避難所運営者がサポートする。

 

 

 

 

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大腿部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。

120 発災3日後、Bさん(72歳、男性)が救護所を訪れた。地震で自宅が半壊したため、妻と避難所で生活している。Bさんは、左胸部から左腋窩にかけてピリピリとした持続する痛みを訴えた。看護師が観察すると、痛みの部位に沿って水疱を伴う浮腫性紅斑が確認できた。体温36.5℃、呼吸数12/分、脈拍66/分、血圧126/80mmHg。
 看護師がBさんに行う観察で優先度が高いのはどれか。

1.痛みの持続時間を問診する。
2.1週間の睡眠状況を問診する。
3.痛みが限局しているか触診する。
4.全身性の浮腫性紅斑か視診する。
5.ステロイド薬の長期投与の有無を問診する。

解答

解説

本症例のポイント

・午後1時:震度6強の地震発生、避難所が開設。
・発災3日後:Bさん(72歳、男性)が救護所を訪れた。
・地震で自宅が半壊したため、妻と避難所で生活。
・Bさん:左胸部から左腋窩にかけてピリピリとした持続する痛み
・痛みの部位に沿って水疱を伴う浮腫性紅斑
・体温36.5℃、呼吸数12/分、脈拍66/分、血圧126/80mmHg。
→本症例は、帯状疱疹が疑われる。帯状疱疹とは、身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、これに続いて赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状にあらわれる病気である。多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こる。皮疹部の接触感染の感染経路をとり、個室隔離の必要はない。

1~2.× 痛みの持続時間/1週間の睡眠状況を問診する優先度は低い。なぜなら、痛みの持続時間/1週間の睡眠状況の差によって、治療内容や診断名が変わるものではないため。帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化して神経に沿って痛みと発疹が出る疾患である。したがって、痛みの持続時間よりも、発疹の広がりや痛みの質、他の誘発要因(ストレス、免疫力低下など)の方が、アセスメントとして優先される。

3.× 痛みが限局しているか触診する優先度は低い。なぜなら、Bさんの症状は「左胸部から左腋窩にかけてピリピリとした持続する痛み」とあり、すでに痛みの部位が特定されているため。さらに触診して、痛みを助長させるのは患者にとって負担がかかる。

4.〇 正しい。全身性の浮腫性紅斑か視診する。なぜなら、本症例は、帯状疱疹が疑われるが、ほかの型や感染症の鑑別が必要であるため。もし「全身性」に発疹が広がっている場合、汎発性帯状疱疹(全身に広がる重症型)の可能性や、他の感染症(例えば水痘など)の可能性がある。

5.× ステロイド薬の長期投与の有無を問診する優先度は低い。なぜなら、まずはその身体所見を詳細に確認し、感染のリスクや重症度をアセスメントする。

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

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