第109回(R8) 助産師国家試験 解説【午後11~15】

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11 Aさん(26歳、会社員)は産婦人科クリニックでクラミジア感染症と診断された。助産師の説明で適切なのはどれか。

1.「異所性妊娠の原因になります」
2.「月経困難症の原因になります」
3.「外陰部の痛みの原因になります」
4.「ワクチン接種で感染を予防できます」

解答

解説

性器クラミジア感染症とは?

性器クラミジア感染症とは、クラミジア・トラコマチスによって引き起こされる代表的な性感染症である。自覚症状に乏しいことが多いが、子宮頸管炎を起こすと性交後に白色帯下が増加し、時々下腹部痛を自覚することがある。子宮頸管炎や骨盤内炎症性疾患を起こし、不妊や子宮外妊娠の原因となる。妊娠中に感染している場合、流産、早産、前期破水、絨毛膜羊膜炎などのリスクが高まる。

1.〇 正しい。「異所性妊娠の原因になります」と説明する。なぜなら、クラミジアが、子宮頸管から子宮・卵管へ上行感染し、卵管炎や卵管周囲の癒着を起こすことで、受精卵の輸送が障害されるため。
・卵管妊娠(子宮外妊娠、異所性妊娠)とは、正常妊娠と異なり、受精卵が子宮内膜以外に着床し、胎芽・胎児の発育が進んでしまうことである。最も多いのは卵管に着床するケースで、そのほかに卵巣や腹腔、子宮頸管などに着床することもある。全妊娠数の1%程度で発症する。卵管妊娠(子宮外妊娠、異所性妊娠)の原因として、性感染症であるクラミジアや一般細菌などへの感染が卵管付近の炎症を引き起こしたり、卵管の癒着につながったりするとされている。

2.× 月経困難症の原因「にならない」。なぜなら、クラミジア感染症の主な問題は、子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患、不妊、異所性妊娠などであるため。
・月経困難症とは、月経に伴って下腹部痛、腰痛、悪心、頭痛などが起こる状態である。原因には、器質的疾患を伴わない機能性月経困難症のほか、器質性月経困難症(子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫など)がある。

3.× 外陰部の痛みの原因「にならない」。なぜなら、クラミジア感染症は主に子宮頸管や尿道に感染し、女性では無症状または軽い帯下・下腹部痛などが多いため。ちなみに、外陰部の強い痛み、水疱、潰瘍などが目立つ場合は、主に性器ヘルペスが疑われる。
・性器ヘルペスとは、ヘルペスウィルスの感染により性器に水泡(水ぶくれ)、腫れ、痛み、かゆみなどの症状が起こる。初めての感染のときに症状が強く出て、全身倦怠感やリンパ節の腫れを起こす。発病後たいてい1~2週間で症状は治まる。性器ヘルペスウイルス感染症は、5類感染症の定点把握対象疾患である。

4.× ワクチン接種で感染を「予防できない」。なぜなら、現時点で一般に使用できるクラミジア感染症予防ワクチンはないため。予防の基本はコンドーム使用で、検査や早期治療、パートナー治療である。

クラミジアとは?

クラミジアとは、日本国内で最も多い性感染症(STD)の一つで、クラミジア感染症とも呼ばれており、クラミジア・トラコマチスという病原体(細菌)が、性行為などにより粘膜に感染する。 感染した場合、クラミジア性尿道炎(男性)、クラミジア性子宮頚管炎(女性)、咽頭クラミジア(男性・女性)などの病気を引き起こす。また、出産時に母子感染する場合、分娩時の産道感染を引き起こす。出生後1週間前後に発症する結膜炎(目が赤くなり「目やに」の増加)、出生後1カ月前後には肺炎( 咳、哺乳力が低下)する。陽性者には内服薬(抗菌薬)を投与して治療する。ちなみに、淋菌感染症とは、淋菌の感染による性感染症である。淋菌は弱い菌で、患者の粘膜から離れると数時間で感染性を失い、日光、乾燥や温度の変化、消毒剤で簡単に死滅する。したがって、性交や性交類似行為以外で感染することはまれである。女性では男性より症状が軽くて自覚されないまま経過することが多く、また、上行性に炎症が波及していくことがある。米国ではクラミジア感染症とともに、骨盤炎症性疾患、卵管不妊症、子宮外妊娠、慢性骨盤痛の主要な原因となっている。その他、咽頭や直腸の感染では症状が自覚されないことが多く、これらの部位も感染源となる。淋菌感染症は何度も再感染することがある。

 

 

 

 

 

12 Aさん(30歳、初産婦)は陣痛開始から10時間が経過した。分娩第1期の内診所見は、前方後頭位、先進部の下降度はStation+2で、矢状縫合は斜径であった。
 このときの児頭の骨盤内下降の状態で正しいのはどれか。

1.児頭は排臨の状態である。
2.児頭の先進部は坐骨棘線上である。
3.児頭の最大周囲径は骨盤濶部にある。
4.内診指で恥骨結合を触れることができない。

解答

解説

ポイント

・Aさん(30歳、初産婦)
・陣痛開始から10時間が経過。
分娩第1期の内診所見:前方後頭位、先進部の下降度はStation+2、矢状縫合は斜径。

(※図引用:「C.産婦人科検査法16.骨盤計測」)

1.× 児頭は排臨の状態である「といえない」。なぜなら、本児は分娩第1期(Station+2であり、児頭が外陰部に見える段階ではないため。
・排臨とは、分娩第2期において陣痛発作時に児頭は大きく下降して見えるようになるが、陣痛間欠期に児頭は腟内に後退して見えなくなることを繰り返す状態である。

2.× 児頭の先進部は、坐骨棘線上であるのは「Station±0」である。ちなみに、Station+2は、児頭先進部が坐骨棘線より約2cm下方にある状態である。

3.〇 正しい。児頭の最大周囲径は骨盤濶部にある。なぜなら、本児はStation+2で、かつ矢状縫合が斜径にあることから、児頭は骨盤濶部を下降中と判断できるため。

4.× 内診指で恥骨結合を触れることができない「と断言できない」。なぜなら、Station+2は児頭が骨盤内を下降している途中であるため。したがって、恥骨結合後面の触知が完全に不能となる段階ではない。分娩がさらに進み、児頭が骨盤出口部へ下降すると、内診指で骨盤内の後方・上方構造を触れにくくなる。

(※図引用:「助産師基礎教育テキスト:第 5 巻:2020 年版訂正ご案内」株式会社日本看護協会出版会様HPより)

 

 

 

 

 

13 Aさん(28歳、初妊婦、事務職員)はパートナーと同居しているが、入籍の予定はない。妊娠20週で2か月ぶりに産科外来を受診した。妊娠経過は順調であった。Aさんは、妊娠を予定していなかったこと、妊娠している実感がないこと、腹部が気になっているので食事量を減らしていることを助産師に話した。
 このときのAさんへの関わりで最も適切なのはどれか。

1.腹帯の着用を勧める。
2.出産準備教室を受講するように勧める。
3.超音波診断装置で胎児の画像を見せる。
4.胎児のことを第一に考えて生活するように説明する。

解答

解説

ポイント

・Aさん(28歳、初妊婦、事務職員)
・パートナーと同居(入籍の予定はない)。
妊娠20週で2か月ぶりに産科外来を受診した。
・妊娠経過:順調。
・Aさんは、妊娠を予定していなかったこと妊娠している実感がないこと腹部が気になっているので食事量を減らしていることを助産師に話した。
→Aさんは、妊娠の自然な変化として受け止めにくい状態である。

1.× 腹帯の着用を勧める「必要はない」。なぜなら、Aさんの問題と、腹帯の着用との関連性は低いため。
・腹帯とは、妊婦さんのお腹に巻く帯のことで、保温効果や胎児を転倒などの衝撃から守るなどといった効果がある。

2.× 出産準備教室を受講するように勧めるより優先されるものがほかにある。なぜなら、Aさん(妊娠20週)は、まだ妊娠の実感が乏しく、妊娠や胎児への関心を形成する支援が先に必要であるため。
・出産準備教室とは、妊婦やその家族が、妊娠・出産・育児に必要な知識や技術を学ぶ教室である。母親学級・両親学級とも呼ばれ、妊娠中の生活、分娩の経過や呼吸法、入院準備、授乳、沐浴、おむつ交換などを学ぶ。助産師や保健師などが担当し、不安を軽減して、家族で安心して出産や育児に臨むことを目的とする。

3.〇 正しい。超音波診断装置で胎児の画像を見せる。なぜなら、超音波画像で胎児の姿や動きを見ることは、妊娠の実感を高め、胎児への関心や母親役割の形成を促すため。ちなみに、妊娠20週(Aさん)の時期は、胎児の身体構造や動きが超音波で比較的わかりやすい時期である。したがって、胎児を「自分の中にいる存在」として感じやすい。

4.× 胎児のことを第一に考えて生活するように説明する「必要はない」。なぜなら、。Aさんは、予定外妊娠への戸惑いや妊娠の実感の乏しさを抱えているため。したがって、胎児優先を一方的に求めると、かえって、指示的・説教的に聞こえやすく、信頼関係を損なうおそれがある。

 

 

 

 

 

14 オキシトシン点滴静脈内注射による分娩誘発中の管理で正しいのはどれか。

1.精密持続点滴装置を用いて投与する。
2.分娩第1期の胎児心拍数陣痛図の評価は30分ごとに行う。
3.胎児心拍数波形のレベル3では、オキシトシンを増量してよい。
4.前回の増量時から15分経過していれば、オキシトシンを増量してよい。

解答

解説

オキシトシン点滴静脈内注射とは?

オキシトシン点滴静脈内注射とは、分娩誘発、微弱陣痛、弛緩出血、胎盤娩出前後、子宮復古不全、流産、人工妊娠中絶などが適応として用いられる。

・オキシトシン点滴による分娩誘発中は、精密持続点滴装置を用いて少量から開始し、陣痛の強さや間隔に応じて投与量を調節する。分娩監視装置で胎児心拍数と子宮収縮を連続的に観察し、母体の血圧・脈拍・自覚症状も確認する。過強陣痛や胎児心拍異常がみられた場合は、直ちに減量または中止し、必要な処置を行う管理である。

(※「胎児心拍数モニタリング―胎児心拍数陣痛図の判読と胎児管理の指針」日本産婦人科医会様HPより)

1.〇 正しい。精密持続点滴装置を用いて投与する。なぜなら、オキシトシンは、投与量のわずかな変化でも子宮収縮が強くなりすぎる危険がある薬剤であるため。

2.× 分娩第1期の胎児心拍数陣痛図の評価は、「30分ごと」ではなく約15分ごとに行う。ガイドライン関連資料では、子宮収縮薬投与中は分娩監視装置を連続装着し、分娩第1期は約15分間隔、第2期は約5分間隔で胎児心拍数陣痛図を評価する。

3.× 胎児心拍数波形のレベル3では、オキシトシンを増量「してはならない」。なぜなら、レベル3以上の胎児心拍数波形は、胎児機能不全を疑う所見(異常波形)であり、子宮収縮薬の増量条件を満たさないため。子宮収縮薬の増量は、胎児機能不全がないこと、子宮頻収縮がないこと、前回増量から30分以上経過していることなどを確認したうえで行う。したがって、レベル3〜5の胎児心拍数波形がある場合は、増量ではなく、減量または中止を検討するべきである。

4.× 前回の増量時から、「15分」ではなく30分経過していれば、オキシトシンを増量してよい(ただし、時間だけで増量を判断できない)。子宮収縮薬の増量は、胎児機能不全がないこと、子宮頻収縮がないこと、前回増量から30分以上経過していることなどを確認したうえで行う。

 

 

 

 

 

15 Aさん(30歳、初産婦)は妊娠36週。Aさんの夫から「血液を見るのがすごく苦手です。気分が悪くなります。妻は出産の立ち会いを希望していますが、自分はしたくない。仕事も忙しくて休めないし、父親になる実感がわかなくて。両親学級も参加できていないので育児も心配です。どうしたらいいですか」と相談を受けた。
 このときの助産師の対応で適切なのはどれか。

1.出産への立ち会いを促す。
2.夫への育児指導を計画する。
3.育児休業を1年間取得するように勧める。
4.毎回妊婦健康診査に付き添うように伝える。

解答

解説

ポイント

・Aさん(30歳、初産婦、妊娠36週)。
・Aさんの夫から「血液を見るのがすごく苦手です。気分が悪くなります。妻は出産の立ち会いを希望していますが、自分はしたくない。仕事も忙しくて休めないし、父親になる実感がわかなくて。両親学級も参加できていないので育児も心配です。どうしたらいいですか」と相談を受けた。
→両親学級とは、妊娠・分娩・育児について学ぶだけでなく、同じ時期に出産を迎える妊婦や夫婦と交流できる場である。妊婦さんとパートナーが一緒に妊娠・出産・育児について学んだり、赤ちゃんのお世話を体験したりする場で、自治体、病院や産院、民間企業などが主催している。 医師、助産師、看護師、保健師、管理栄養士といった専門家から直接アドバイスを受けることができ、不安なことがあれば相談することもできる。

1.× 出産への立ち会いを促す「必要はない」。なぜなら、Aさんの夫は、血液を見ることが苦手で気分不快を起こしやすく、本人も立ち会いを希望していないため。無理に立ち会わせると、夫自身が気分不快や迷走神経反射を起こし、かえってAさんの分娩時の支援にならない可能性がある。

2.〇 正しい。夫への育児指導を計画する。なぜなら、夫は父親になる実感の乏しさ育児への不安を表出しているため。したがって、具体的な育児行動を学ぶ支援が必要である。

3.× 育児休業を1年間取得するように勧める「必要はない」。なぜなら、夫は「仕事が忙しくて休めない」と話しているため。現実的でない提案として受け取られ、夫の不安を強める可能性がある。また、育児休業の取得期間は、家庭の状況、職場環境、経済状況、本人の意思に応じて検討するものである。

4.× 毎回妊婦健康診査に付き添うように伝える「必要はない」。なぜなら、夫は「仕事が忙しくて休めない」と話しているため。現実的でない提案として受け取られ、夫の不安を強める可能性がある。父親役割の形成には、健診への付き添いだけでなく、家庭での会話、胎動に触れる、育児用品の準備、産後の家事分担、育児技術の練習など、多様な方法がある。

 

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