第101回(H30) 助産師国家試験 解説【午前1~5】

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※問題引用:第104回保健師国家試験、第101回助産師国家試験、第107回看護師国家試験の問題および正答について

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

1 老年期の女性における健康課題のうち、エストロゲンの補充によって予防効果があるのはどれか。

1.骨盤臓器脱
2.骨粗鬆症
3.卵巣癌
4.認知症

解答

解説

閉経後の変化

閉経は、加齢とともに卵胞が枯渇するため、卵巣からの卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することで起こる。12か月以上の無月経を確認するか、黄体ホルモン剤を投与しても消退出血を認めないことにより診断する。閉経後も女性の体は変化し続け、①黄色のおりもの、②外陰部の乾燥感、③掻痒感を伴う萎縮性腟炎、④尿失禁、⑤心血管疾患(動脈硬化、高血圧、脳卒中)、⑥骨粗鬆症が出現する。特に萎縮性腟炎は繰り返し出現し、女性に不快感を与え、性交痛の原因にもなる。

1.× 骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸といった骨盤臓器が下垂し腟から脱出した状態である。骨盤臓器脱の原因は、出産や加齢、婦人科領域の手術などで、子宮、膀胱、直腸などの臓器を支えている骨盤の底の靭帯、筋膜、筋肉が緩むことである。
2.〇 正しい。骨粗鬆症がエストロゲンの補充によって予防効果がある。骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい。
3.× 卵巣癌とは、卵巣に発生する悪性腫瘍(がん)のことである。卵巣がんは複数の要因が関与して発生するといわれている。遺伝的関与は10%程度と考えられているが、母や姉妹などの近親者に卵巣がんを発症した人間がいる場合は、発症した人間がいない場合と比較して発症の確率が高くなる傾向にある。子宮内膜症・骨盤内炎症性疾患・多のう胞性卵巣症候群などの疾患も卵巣がんの原因となり得る。その他にも長年にわたるホルモン補充療法、肥満・食事などの生活習慣、排卵誘発剤の使用なども要因と考えられている。また排卵の回数が多いほど卵巣がんを発症しやすいといわれているため、妊娠や出産の経験が少ない人、閉経が遅い人は発症の確率が高くなる可能性がある。
4.× 認知症とは、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいう。アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症である。次いで、多い血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によっておきる認知症である。

更年期障害とは?

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

 

 

 

 

 

2 正常の卵巣機能をもつのはどれか。

1.アンドロゲン不応症
2.Turner<ターナー>症候群
3.Asherman<アッシャーマン>症候群
4.Klinefelter<クラインフェルター>症候群

解答

解説

1.× アンドロゲン不応症(以前は精巣性女性化症候群とも)とは、通常、染色体が46,XYで精巣を持つが、表現型(外見に現れた形態・生理的な性質)が女性である病態のことである。つまり、外性器は完全に女性型であるが、精巣は存在しテストステロンやアンチミューラリアンホルモン(または抗ミュラー管ホルモン)は分泌されるため、ミューラー管から分化する子宮・卵巣・卵管は欠如する。したがって、外見的には女性であり、腟も存在し女性として養育され原発性無月経で初めて診断されることが多い。連鎖劣性遺伝(伴性劣性遺伝)で起こる。
2.× Turner<ターナー>症候群とは、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみがあり、学習障害がみられ、思春期が始まらないのが特徴である。2本のX染色体のうち1本の部分的または完全な欠失によって引き起こされる性染色体異常である。完全欠損例では、卵巣は策状に萎縮するために性腺ホルモンの分泌はなく、第2次性徴の欠如をきたす。
3.〇 正しい。Asherman<アッシャーマン>症候群は正常の卵巣機能をもつ。アッシャーマン症候群(子宮内腔癒着)とは、子宮内膜がなんらかの炎症を起こし、子宮内組織同士がひっついてしまっている状態のことをさす。子宮内膜の炎症等による子宮内陸の癒着により、排卵があっても月経が起こらない。原因として、帝王切開や妊娠中絶そのほかの子宮に対する手術や結核菌による感染などがあげられる。
4.× Klinefelter<クラインフェルター>症候群とは、性染色体異常により生じる先天異常で、高身長・精子形成不全・無精子症などの性腺機能不全、言語発達遅延、女性化乳房が特徴である。X染色体がXXYであり、Y染色体をもつため性腺は精巣へと分化し、内性器・外性器とも男性型に分化するが、精巣は正常な機能は示さない。

 

 

 

 

3 感染症発生動向調査における性感染症<STI>の報告数の年次推移を図に示す。
 Aに該当するのはどれか。

1.淋菌感染症
2.尖圭コンジローマ
3.性器クラミジア感染症
4.性器ヘルペスウイルス感染症

解答

解説

定点における疾患別報告数(2020年)

【男性】2020年における感染者順位
1位:性器クラミジア感染症、2位:淋病感染症、3位:尖圭コンジローマ、4位:性器ヘルペスウイルス感染症

【女性】2020年における感染者順位
1位:性器クラミジア感染症、2位:性器ヘルペスウイルス感染症、3位:尖圭コンジローマ、4位:淋病感染症

(データ参照:「性感染症報告数(2004年~2020年)」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。淋菌感染症は図のA(青線)に該当する。淋菌感染症とは、淋菌の感染による性感染症である。淋菌は弱い菌で、患者の粘膜から離れると数時間で感染性を失い、日光、乾燥や温度の変化、消毒剤で簡単に死滅する。したがって、性交や性交類似行為以外で感染することはまれである。女性では男性より症状が軽くて自覚されないまま経過することが多く、また、上行性に炎症が波及していくことがある。米国ではクラミジア感染症とともに、骨盤炎症性疾患、卵管不妊症、子宮外妊娠、慢性骨盤痛の主要な原因となっている。その他、咽頭や直腸の感染では症状が自覚されないことが多く、これらの部位も感染源となる。淋菌感染症は何度も再感染することがある。
2.× 尖圭コンジローマは図の紫線に該当する。尖圭コンジローマとは、性病の一種で、性器にイボのようなぶつぶつができる病気で、主に性行為や性行為に似た行為によって感染する。粘膜が接触することで、傷口などからヒトパピローマウイルス(HPV)が侵入する。粘膜だけではなく皮膚に傷があれば、そこから感染することもある。ちなみに、電気焼灼法とは、高周波電流のメスで対象物(イボ)を焼く方法である。この治療方法を行うには、手術前に局所麻酔が必要となり、対象物の表面のみを焼杓しても不十分で再発してしまうことが多いため、深く広範囲に焼勺を行う必要がある。そのため、副作用としても腹痛、発熱、出血などがあげられる。
3.× 性器クラミジア感染症は図の赤線に該当する。性器クラミジア感染症とは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって性器やその周辺に水疱や潰瘍等の病変が形成される疾患である。感染症法下では4類感染症定点把握疾患に分類されている。感染機会があってから2〜21 日後に外陰部の不快感、掻痒感等の前駆症状ののち、発熱、全身倦怠感、所属リンパ節の腫脹、強い疼痛等を伴って、多発性の浅い潰瘍や小水疱が急激に出現する。
4.× 性器ヘルペスウイルス感染症は図の緑線に該当する。性器ヘルペスウイルス感染症は、5類感染症の定点把握対象疾患である。ヘルペスウィルスの感染により性器に水泡(水ぶくれ)、腫れ、痛み、かゆみなどの症状が起こる。初めての感染のときに症状が強く出て、全身倦怠感やリンパ節の腫れを起こす。発病後たいてい1~2週間で症状は治まる。

 

 

 

 

 

4 出生直後の正期産新生児の血液中免疫グロブリンについて正しいのはどれか。

1.IgA高値は胎内感染を示唆する。
2.IgEは母体から経胎盤移行したものである。
3.IgG高値は児の原発性免疫不全症候群を示唆する。
4.IgMは主に児の体内で産生されたものである。

解答

解説

1.× IgA高値は胎内感染を示唆されない。IgAは、母乳中に含まれている免疫グロブリンで最も多い。IgAは、新生児ではほとんど産生されていないが、母乳中には母親由来のIgAが豊富に含まれている。母乳とともに摂取されたIgAは、消化管からの微生物侵入の防御に役立っている。IgAはIgM 同様に胎盤を通過しない性質を持つため、新生児期にはきわめて低い。したがって、IgA高値場合は母体血が新生児血に混じったことを意味するため、 IgM、IgAの両者が高値場合、先天性感染は否定的となる。ちなみに、胎内感染が示唆されるのはIgG高値の場合である。IgGは、分子量が最も小さい抗体であるため、唯一、胎盤を通過する免疫グロブリンである。IgGは、血中で最も多く存在する抗体である。母親から移行したIgGは生後1週間まで新生児を守る。血中に最も多い抗体であり、血中や組織中に広く分布して生体防御を担う。
2.× 母体から経胎盤移行したものであるのは、「IgE」ではなくIgGである。IgEは、肥満細胞や好塩基球の細胞表面に存在している。ヒスタミン遊離によりアレルギー疾患を引き起こす。生後6か月以降の乳幼児では、しばしばアトピー性アレルギー疾患の進行に伴って血清中のIgE抗体が上昇する。ちなみに、IgGは、分子量が最も小さい抗体であるため、唯一、胎盤を通過する免疫グロブリンである。IgGは、血中で最も多く存在する抗体である。母親から移行したIgGは生後1週間まで新生児を守る。血中に最も多い抗体であり、血中や組織中に広く分布して生体防御を担う。感染に対する胎児の防御機構は、基本的には母体から胎盤を経由して移行したIgG抗体に依存している。
3.× IgG「高値」ではなく低値は、児の原発性免疫不全症候群を示唆する。原発性免疫不全症候群とは、先天的に免疫系のいずれかの部分に欠陥がある疾患の総称であり、後天的に免疫力が低下するエイズなどの後天性免疫不全症候群と区別される。障害される免疫担当細胞(例えば、好中球、T細胞、B細胞)などの種類や部位により200近くの疾患に分類される。原発性免疫不全症候群で問題となるのは、感染に対する抵抗力の低下である。重症感染のため重篤な肺炎、中耳炎、膿瘍、髄膜炎などを繰り返す。時に生命の危険を生じることもあり、中耳炎の反復による難聴、肺感染の反復により気管支拡張症などの後遺症を残すこともある。原因の多くは、免疫系に働く蛋白の遺伝子の異常である。この10年間に代表的な原発性免疫不全症候群の原因遺伝子は多くが解明され、確定診断や治療に役立っている。しかし、IgGサブクラス欠乏症の一部、乳児一過性低γグロブリン血症のように一時的な免疫系の未熟性、慢性良性好中球減少症のように自己抗体によると思われる疾患もある。(※一部引用:「65 原発性免疫不全症候群」厚生労働省HPより)
4.〇 正しい。IgMは主に児の体内で産生されたものである。IgMは、新生児由来であり、児に感染が起きたときに産生される免疫グロブリンである。しかし、感染防御力は低い。胎盤通過性がない。出生時でも成人の1/10しか存在しないが、免疫応答の初期に産生され、1歳ごろに成人と同じレベルに達する。出生直後の新生児の血中IgMが高値の場合は、胎内または分娩時の感染が示唆される。

 

 

 

 

5 胎児の器官形成期に影響を及ぼす催奇形性因子と児に与える主な影響の組合せで正しいのはどれか。

1.葉酸欠乏:爪の低形成
2.ワルファリン:骨端形成異常
3.サリドマイド:白内障
4.フェニトイン:歯牙の着色

解答

解説

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P60」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

1.× 葉酸欠乏によって、「爪の低形成」ではなく、神経系の発達に異常をきたしやすい。無脳症や二分脊椎などの神経管閉鎖不全障害と呼ばれる先天性疾患を引き起こすリスクが高くなる。したがって、十分な葉酸の摂取が推奨され、神経障害児の出産リスクを低下させる。ちなみに、爪の低形成が主に生じる疾患として、ネイル・パテラ症候群(爪膝蓋症候群)があげられる。ネイル・パテラ症候群(爪膝蓋症候群)とは、膝蓋骨の低形成あるいは無形成,腸骨の角状突起(Iliac horn),肘関節の異形成を4主徴とする常染色体優性遺伝性疾患である。しばしば腎症を発症し,一部は末期腎不全に進行する。
2.〇 正しい。ワルファリンは、骨端形成異常をきたしやすい。ワルファリンカリウム(クマリン系抗凝血薬)は、ワルファリン胎芽病,点状軟骨異栄養症,中枢神経異常が報告されている(※「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P60」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)。点状軟骨異形成症とは、骨端軟骨とその周囲軟部組織の点状石灰化像を呈する疾患群の総称であり、多くの疾患を含んでいる。疾患ごとに多様な症状があり、魚鱗癬様皮膚病変、部分脱毛、白内障、四肢非対称、感音性難聴、爪低形成、末節骨低形成、 関節変形や関節拘縮、脊椎変形、脊柱管狭窄、環軸椎不安定、呼吸障害、出血傾向、精神発達遅滞、先天性心疾患、 先天性腎異常などがみられる。
3.× サリドマイドは、「白内障」ではなくサリドマイド胎芽病(上肢・下肢形成不全、内臓奇形など)が報告されている。サリドマイド胎芽病は、最終月経36日から 56日の間に睡眠剤のサリドマイドを服用した妊婦から生まれた薬害の原点であり、1960年頃にドイツ、日本、英国など世界各国で発生した。ちなみに、先天白内障とは、生後早期に水晶体が白く濁る病気で、先天素因、胎内感染、全身疾患など様々な原因によって起こる。
4.× フェニトイン(抗てんかん薬)は、「歯牙の着色」ではなく胎児ヒダントイン症候群が報告されている。胎児ヒダントイン症候群とは、子宮内でヒダントインに曝露された一部の乳児で発生する。症状として、遠位の指節骨形成異常、およびその他の欠陥を含む、変化した成長などさまざまなパターンである。歯牙の着色は、テトラサイクリン系抗生物質によって起こりやすい。テトラサイクリン系抗生物質は、クラミジア感染症、リケッチア感染症、マイコプラズマ感染症などの感染症のほか、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎等の治療に使用される。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P61」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

 

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