第103回(R2) 助産師国家試験 解説【午前36~40】

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36 Naegele<ネーゲレ>鉗子による急速遂娩で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.矢状縫合が横径の場合に適応となる。
2.鉗子柄を左右に動かして牽引する。
3.娩出完了まで会陰保護は行わない。
4.吸引分娩より牽引力が強い。
5.膀胱を空にして実施する。

解答4・5

解説

(※図引用:「ネーゲレ鉗子」産科鉗子 | アトムメディカルより)

MEMO

緊急時の対応(症状の悪化や胎児仮死のある場合)として、鉗子分娩・吸引分娩及び緊急帝王切開などのほかにも、可能な限り速やかに分娩を完了させる必要がある場合に行われる産科手術で、急速遂娩と呼ばれる。つまり、急速分娩とは、分娩中に母児に危機的状況が生じた場合に、分娩を早めるために、①帝王切開、②鉗子分娩、③吸引分娩などによって児を娩出することである。

1.× 矢状縫合が、「横径」ではなく縦径の場合に適応となる。児頭が骨盤出口部まで下降(Station+2~+3以上)し、矢状縫合が骨盤縦径と一致していることが適応基準である。また、急速遂娩の適応は分娩第2期の胎児機能不全、回旋異常、遷延分娩、分娩停止、母体疲労や母体の心疾患などの合併症により第2期短縮が望ましい場合である。
2.× 鉗子柄を「左右」ではなく、骨盤軸に沿ってゆっくり持続的に動かして牽引する。陣痛発作、妊婦の努責に合わせてゆっくり持続的にけん引する。決して断続的・衝動的にけん引したり、体重をかけてはならない。骨盤誘導線に沿って、一回の牽引で娩出させることが大前提である。ましてや鉗子柄を「左右」に動かすと膣壁を損傷するため行ってはならない。牽引の方向は第1位に後下方、第2位に水平方向、第3位に骨盤誘導線に沿って上方に牽引する。その後、児頭発露で鉗子を抜去する。
3.× 娩出完了まで会陰保護は「行わない」のではなく、児頭発露から会陰保護を行い、通常の分娩介助を実施する。片手で鉗子を操作し、もう一方の手で会陰保護を行う。
4.〇 正しい。吸引分娩より牽引力が強い。吸引分娩では急速遂娩できないときに、鉗子分娩が適応となる。そのため確実性があり、迅速に行うことができる。術者の手技が未熟な場合は母児に対するダメージが大きい。
5.〇 正しい。膀胱を空にして実施する。その他に膀胱とともに直腸が空であること、子宮口全開大、既破水、児頭骨盤不均衡がないこと、児頭がStation+2より下降している、児生存、児が鉗子に耐えられるくらい成熟していることが望ましい。

鉗子分娩とは?

鉗子分娩とは、児頭を鉗子で挟み児を娩出させる急速遂娩法である。先進児頭の下降度によって、①低在鉗子(出口鉗子)、②中在鉗子、③高在鉗子に分けられる。①低在鉗子(出口鉗子)の定義は諸説あるが、おおむねStation+2~+3以上である。術前に陰部神経麻酔、硬膜外麻酔を行うことが望ましい。

 

 

 

 

 

 

37 播種性血管内血液凝固<DIC>を発生しやすい基礎疾患として産科DICスコアで加点対象となっているのはどれか。2つ選べ。

1.羊水塞栓症
2.癒着胎盤
3.妊娠糖尿病
4.常位胎盤早期剝離
5.仰臥位低血圧症候群

解答1・4

解説

産科DICスコア

【基礎疾患】
常位胎盤早期剥離
羊水塞栓症
③DIC型後産期出血
④子癇
⑤その他の基礎疾患

【臨床症状】
①急性腎不全
②急性呼吸不全(羊水塞栓症を除く)
③心、肝、脳、消化管などに重篤な障害(それぞれ4点を加える)
④出血傾向
⑤その他(脈拍、血圧、冷汗、蒼白)

1.〇 正しい。羊水塞栓症は、基礎疾患として産科DICスコアで加点対象となっている。羊水塞栓症とは、羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる「肺毛細管の閉塞を原因とする肺高血圧症と、それによる呼吸循環障害」を病態とする疾患である。 
2.× 癒着胎盤とは、胎盤の組織の一部(絨毛)が脱落膜を貫通して子宮の筋肉の内側に入り込んでいる状態をいう。分娩前には正確な診断が難しく、赤ちゃ んを取り出した後、胎盤が子宮からなかなかはがれないために判明することがほとんどである。
3.× 妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。
4.〇 正しい。常位胎盤早期剝離は、基礎疾患として産科DICスコアで加点対象となっている。常位胎盤早期剝離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいう。剥離出血のため、性器出血や激しい腹痛、子宮内圧の上昇、子宮壁の硬化が起こり、ショック状態を起こすことがある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。また、低酸素のために急速に胎児機能不全に陥る。
5.× 仰臥位低血圧症候群とは、妊娠末期の妊婦が仰臥位になった際、子宮が脊柱の右側を上行する下大静脈を圧迫することにより右心房への静脈還流量が減少、心拍出量が減少し低血圧となることである。多くの場合、妊娠末期の妊婦が帝王切開の準備のため腰椎麻酔をおこなった後に生じやすい。

DICとは?

播種性血管内凝固症候群〈DIC〉とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気である。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こす。感染、手術、出産時の合併症など、考えられる原因はいくつかある。妊娠高血圧症候群性の常位胎盤早期剥離では播種性血管内凝固症候群〈DIC〉を発生することが多い。

 

 

 

 

38 母乳ケア外来で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.集団指導を中心とする。
2.乳房ケア以外に心理的サポートも行う。
3.卒乳に関する相談は産科外来を紹介する。
4.対象の基準は出産後1年までの母親とする。
5.母乳ケア外来の評価を入院中の母乳育児ケアに活用する。

解答2・5

解説

MEMO

母乳外来とは、助産師から母乳ケア(乳房ケアや母乳育児サポートなど)を教えてもらう外来のことである。 産婦人科や助産院などで行われている。出産を終えてこれから母乳育児をするママ、卒乳・断乳を考えているママなど、必要に応じてマッサージをしてくれたり、赤ちゃんの成長に合わせた母乳育児の相談に乗ってくれる。母子の個別性に合わせて指導をする。

1.× 「集団指導」ではなく個別指導を中心とする。なぜなら、母乳ケアの悩みや状況が異なり、それぞれプライバシーの確保も大切であるため。
2.〇 正しい。乳房ケア以外に心理的サポートも行う。母乳・育児(乳房ケア、乳房・乳頭トラブル、断乳・卒乳、児の体重増加など)に関する悩み全般をサポートする。もちろん乳房ケア以外に心理的サポートも行う。
3.× 卒乳に関する相談は産科外来を紹介する必要はない。なぜなら、母乳・育児(乳房ケア、乳房・乳頭トラブル、断乳・卒乳、児の体重増加など)に関する悩み全般をサポートするため。スムーズに卒乳したい、事情により断乳しなければならないなどの相談に対しても、母子ともに無理なく進められるタイミングや方法をアドバイスしている。ちなみに、産科外来は子宮復古や血圧などの産褥期の身体についての管理を行っている。
4.× 対象の基準は、「出産後1年まで」ではなく定まった期間はない。なぜなら、母乳外来は個別指導を中心とし、それぞれの成長に合わせる必要があるため。
5.〇 正しい。母乳ケア外来の評価を入院中の母乳育児ケアに活用する。母乳ケア外来の評価は、言い換えると「退院後の母子の困りごとや解決事例」である。事前に入院中、母乳育児ケアと指導しておくことで、退院後の育児の理解・悩みの解決につながりやすい。したがって、プライバシーの確保を十分に配慮しつつ、入院中から退院、退院後の一連のケアを、現在入院中の母乳育児ケアに活用するべきである。

 

 

 

 

 

 

39 平成27年(2015年)3月に制定された少子化社会対策基本法に基づく少子化社会対策大綱(第3次)の重点課題にあげられているのはどれか。2つ選べ。

1.男女の働き方改革
2.若い年齢での結婚・出産の希望の実現
3.若者の自立とたくましい子どもの育ち
4.思春期の健康対策の強化と健康教育の推進
5.生命の大切さ、家庭の役割等についての理解

解答1・2

解説

少子化社会対策大綱(第3次)の重点課題

①子育て支援施策を一層充実
・「子ども・子育て支援新制度」の円滑な実施
・待機児童の解消
・「小1の壁」の打破 
②若い年齢での結婚・出産の希望の実現
・経済的基盤の安定
・結婚に対する取組支援
③多子世帯へ一層の配慮
・子育て・保育・教育・住居などの負担軽減
・自治体、企業、公共交通機関などによる多子世帯への配慮・優遇措置の促進
④男女の働き方改革
・男性の意識・行動改革
・「ワークライフバランス」・「女性の活躍」
⑤地域の実情に即した取組強化
・地域の「強み」を活かした取組
・「地方創生」と連携した取組

(※一部引用:「少子化社会対策大綱(概要)」内閣府より)

1~2.「男女の働き方改革」、「若い年齢での結婚・出産の希望の実現」は、少子化社会対策大綱(第3次)の重点課題にあげられている。平成27年(2015年)3月に制定された少子化社会対策基本法に基づく少子化社会対策大綱(第3次)の重点課題は、①子育て支援策を一層充実、②若い年齢での結婚・出産の希望の実現、③多子世帯へ一層の配慮、④男女の働き方改革、⑤地域の実情に即した取組強化の5つである。
3.× 「若者の自立とたくましい子どもの育ち」は2005(平成17)年度から2009(平成21)年度までの5年間に講ずる具体的な施策内容と目標を掲げていた子ども・子育て応援プランの重点課題の1つである。
4.× 「思春期の健康対策の強化と健康教育の推進」は母子保健の平成26年までの国民運動計画であった健やか親子21の内容の1つである。
5.× 「生命の大切さ、家庭の役割等についての理解」は子ども・子育て応援プランの重点課題の1つである。

少子化社会対策大網での重点課題

少子化の流れを変えるための4つの重点課題:①若者の自立とたくましい子どもの育ち、②仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し、③生命の大切さ、家庭の役割等についての理解、④子育ての新たな支え合いと連帯。

【重点課題に取り組むための28の行動】
〔若者の自立とたくましい子どもの育ち〕
①若者の就労支援に取り組む
②奨学金の充実を図る
③体験を通じ豊かな人間性を育成する
④子どもの学びを支援する
〔仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し〕
⑤企業等におけるもう一段の取組を推進する
⑥育児休業制度等についての取組を推進する
⑦男性の子育て参加促進のための父親プログラム等を普及する
⑧労働時間の短縮等仕事と生活の調和のとれた働き方の実現に向けた環境整備を図る
⑨妊娠・出産しても安心して働き続けられる職場環境の整備を進める
⑩再就職等を促進する
〔生命の大切さ、家庭の役割等についての理解〕
⑪乳幼児とふれあう機会の充実等を図る
⑫生命の大切さ、家庭の役割等についての理解を進める
⑬安心して子どもを生み、育てることができる社会の形成についての理解を進める
〔子育ての新たな支え合いと連帯〕
(地域における子育て支援)
⑭就学前の児童の教育・保育を充実する
⑮放課後対策を充実する
⑯地域における子育て支援の拠点等の整備及び機能の充実を図る
⑰家庭教育の支援に取り組む
⑱地域住民の力の活用、民間団体の支援、世代間交流を促進する
⑲児童虐待防止対策を推進する
⑳特に支援を必要とする家庭の子育て支援を推進する
㉑行政サービスの一元化を推進する
(子どもの健康の支援)
㉒小児医療体制を充実する
㉓子どもの健康を支援する

(妊娠・出産の支援)
㉔妊娠・出産の支援体制、周産期医療体制を充実する
㉕不妊治療への支援等に取り組む
(子育てのための安心、安全な環境)
㉖良質な住宅・居住環境の確保を図る
㉗子育てバリアフリーなどを推進する

(経済的負担の軽減)
㉘児童手当の充実を図り、税制の在り方の検討を深める

(※一部引用:「少子化社会対策大綱(案) 目次」内閣府HPより)

(※図引用:「課題の概要」厚生労働省HPより)

健やか親子21とは?

健やか親子21は、平成25年の第1次計画の最終評価報告書を受け、平成27年度より第2次計画が開始されている。第1次計画では目標を設定した指標が多かったため、第2次計画では見直しを行い、目標を設けた52の指標と、目標を設けない「参考とする指標」として28の指標を設定した。第2次計画の中間評価は5年後、最終評価は10年後を予定している。

<目標>
1. 思春期の保健対策の強化と健康教育の推進(十代の自殺、人工妊娠中絶、性感染症罹患)
2. 妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援(妊産婦死亡、産後うつ病、産婦人科医・助産師数)
3. 小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備(低出生体重児、事故、妊娠・育児期間中の喫煙)
4. 子どものこころの安らかな発達の促進と育児不安の軽減(虐待死亡、母乳育児、心の問題に対応する小児科医)

(※参考:「健やか親子21(第2次)について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

40 助産所の開設で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.医療法に規定されている。
2.開設者は助産師免許が必要である。
3.開設届は都道府県知事に提出する。
4.無床の助産所の開設届は不要である。
5.1人の助産師が同時に2か所以上の開設はできない。

解答1・3

解説

助産所について

助産所について、「医療法」に記載されている。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

助産所の管理(医療法第11条、第12条、第15条第2項)
・助産所の開設者は、助産師に、これを管理させなければならない。
・自ら管理者となることができるものである場合は、原則として、自ら管理しなければならない。
・助産所の管理者は、助産所に勤務する助産師その他の従業者を監督し、その業務遂行に遺憾のないよう必要な注意をしなければならない。

1.〇 正しい。医療法に規定されている。助産所について、「医療法」に記載されており、主に開設の届け出、助産所の開設者、管理者の掲示義務事項など助産所の運営に関する内容が規定されている。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。
2.× 開設者は助産師免許が必要「ではない」。これは医療法の開設許可(第7条第1項、第4項)に規定されており、助産師でないものが助産所を開設しようとするときは、開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない。都道府県知事は、開設許可の申請があった場合において、その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が省令の定める要件に適合するときは、許可を与えなければならないとされている。また、助産所の管理者は助産師でなければならない。つまり、助産所の開設者は助産師でなくてもよいが、管理者は助産師免許を持つ者でなければならない。
3.〇 正しい。開設届は都道府県知事(開設地が保健所を設置する市や特別区の区域にある場合、保健所を設置する市区町村長)に提出する。これは医療法の開設許可(医療法第8条)に規定されており、助産師が助産所を開設したときは、開設後10日以内に、助産所の所在地の都道府県知事(その開設地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては、当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長。以下同じ。)に届け出なければならないとされている。
4.× 無床の助産所でも開設届は「不要」ではなく必要である。これは医療法第5条に規定されており、「公衆又は特定多数人のため往診のみによつて診療に従事する医師若しくは歯科医師又は出張のみによつてその業務に従事する助産師については、第六条の四の二、第六条の五又は第六条の七、第八条及び第九条の規定の適用に関し、それぞれその住所をもつて診療所又は助産所とみなす」と記載されている(※一部引用「医療法」e-GOV法令検索様HPより)
5.× 1人の助産師が同時に2か所以上の開設は「できる」。しかし、その旨を記述、申請が必要である。根拠法令として、医療法の第12条第2項「病院、診療所又は助産所を管理する医師、歯科医師、又は助産婦は、その病院、診療所又は助産所所在地の都道府県知事の許可を受けた場合を除く外、他の病院、診療所又は助産所を管理しないものでなければならない」と記載されている。また、医療法施行規則の第9条「病院、診療所又は助産所の開設者が、法第12条第2項の規定による許可を受けようとするときは、左に掲げる事項を記載した申請書をその病院、診療所又は助産所所在地の都道府県知事に提出しなければならない」と記載されている。

(※参考:「助産所について」厚生労働省HPより)

 

 

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