第103回(R2) 助産師国家試験 解説【午前41~45】

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次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、初妊婦)。自然妊娠して病院の産婦人科で妊婦健康診査を受け、妊娠経過は順調であった。夫婦関係は良好で、夫は出産を非常に楽しみにしている。
 妊娠24週の受診時に、Aさんは助産師に実兄のBさん(37歳)について話をした。Bさんは3年前から体が疲れやすく、握った指が開きにくい症状があり、神経内科を受診したところ検査の結果、遺伝性の神経筋疾患の診断を受けたという。Aさんは、Bさんの病気が今回の胎児に影響することを心配している。Bさんの病気については夫に話しておらず、今のところAさんには自覚症状はない。

41 この時点でのAさんへの助産師の対応で適切なのはどれか。

1.出産するまで悩まないよう励ます。
2.成人した後に発症する病気であると説明する。
3.次回の妊娠では児に遺伝する可能性が高まると説明する。
4.Bさんの病気について夫と情報共有することを提案する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、初妊婦)
・自然妊娠、妊娠経過:順調
・夫婦関係:良好(夫は出産を非常に楽しみ)
・妊娠24週:実兄のBさん(37歳、遺伝性の神経筋疾患)について話す。
・Aさん「Bさんの病気が今回の胎児に影響することが心配
・Bさんの病気については夫に話しておらず、今のところAさんには自覚症状はない。
→本症例は、妊娠経過は順調で、今のところAさんには自覚症状はない。現時点では、「遺伝性の神経筋疾患」という情報のみで、疾患名やどのような遺伝形式であるかなど不明である。話を傾聴し不安や悩みの解消に努める。現時点では、①胎児に影響することが心配であること、②夫に話していないことが具体的な不安な材料といえる。

1.× 出産するまで悩まないよう励ます必要はない。なぜなら、出産するまで悩まないよう励ますことは、直接的な解決とはならないため。現時点では、①胎児に影響することが心配であること、②夫に話していないことが具体的な不安な材料といえる。
2~3.× 「成人した後に発症する病気である」「次回の妊娠では児に遺伝する可能性が高まる」と説明する必要はない。なぜなら、現時点では、「遺伝性の神経筋疾患」という情報のみで、疾患名やどのような遺伝形式であるかなど不明であるため。また、Aさんは「Bさんの病気が胎児に影響すること」を心配していることから、さらに不安を煽ることになりかねない。
4.〇 正しい。Bさんの病気について夫と情報共有することを提案する。本症例は、妊娠経過は順調で、今のところAさんには自覚症状はない。現時点では、「遺伝性の神経筋疾患」という情報のみで、疾患名やどのような遺伝形式であるかなど不明である。話を傾聴し不安や悩みの解消に努める。現時点では、①胎児に影響することが心配であること、②夫に話していないことが具体的な不安な材料といえる。Bさんは病気については夫に話していないため、今後起こりうることや不安解消のためにもBさんの病気について夫と情報共有することを提案する。

 

 

 

 

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、初妊婦)。自然妊娠して病院の産婦人科で妊婦健康診査を受け、妊娠経過は順調であった。夫婦関係は良好で、夫は出産を非常に楽しみにしている。
 妊娠24週の受診時に、Aさんは助産師に実兄のBさん(37歳)について話をした。Bさんは3年前から体が疲れやすく、握った指が開きにくい症状があり、神経内科を受診したところ検査の結果、遺伝性の神経筋疾患の診断を受けたという。Aさんは、Bさんの病気が今回の胎児に影響することを心配している。Bさんの病気については夫に話しておらず、今のところAさんには自覚症状はない。

42 その後、AさんはBさんから詳しい診療情報を入手して、妊娠26週の妊婦健康診査の際に助産師に渡した。Bさんの主治医が作成した家系図によると、Bさん以外にもAさんの実母および実叔父、実祖父にもBさんと同様の疾患が発症していた。AさんとBさんの家系図を示す。
 Aさんの家系における遺伝性疾患の遺伝形式で可能性が高いのはどれか。

1.母系遺伝
2.X連鎖優性遺伝
3.X連鎖劣性遺伝
4.常染色体優性遺伝
5.常染色体劣性遺伝

解答

解説

X連鎖性遺伝性とは?

X連鎖性遺伝性とは、X染色体上にある遺伝子の変化によって発症する疾患である。女性はX染色体を2本、男性はX染色体とY染色体を1本持っている。

1.× 母系遺伝とは、母由来のミトコンドリアDNAが児に伝わることである。主にミトコンドリア病に起こる。母系遺伝の場合、Bさんの祖父(男)から遺伝しているため否定できる。
2.× X連鎖優性遺伝とは、変異遺伝子が優性遺伝子のX染色体にあるものである。つまり、X連鎖優性遺伝の場合、Bさんの祖父(男)から息子に変異遺伝子が受け継がれることはない。
3.× X連鎖劣性遺伝とは、変異遺伝子が劣性遺伝子のX染色体にあるものである。つまり、X連鎖劣性遺伝の場合、Bさんの母(女)はキャリアとなるため否定できる。
4.〇 正しい。常染色体優性遺伝が遺伝性疾患の遺伝形式で可能性が高い。常染色体優性遺伝とは、特徴が出やすい優性遺伝子に遺伝子変異があるために男女差なく1/2の確率で病気に関係する遺伝子症状が出る遺伝である。
5.× 常染色体劣性遺伝とは、同じ部分に変異がある劣性遺伝子を持つ両親の間に変異が2つ揃った子どもが生まれる場合に起こる遺伝である。男女差はなく、両親のどちらもその病気の保因者であると考えられる。両親と他の親族に同じ症状を持つ人がいなくても、生まれてくる子どもだけが遺伝性疾患による症状を持つこともある。つまり、常染色体劣性遺伝の場合、Bさんの両親は病気の保因者でないため否定できる。

常染色体優性遺伝とは?

染色体には性染色体と常染色体がある。常染色体優性遺伝とは、遺伝によって子孫に伝えられる性質(形質)が常染色体上の遺伝子で決定され、その形質が現れる場合のことを指す。

 

 

 

 

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、初妊婦)。自然妊娠して病院の産婦人科で妊婦健康診査を受け、妊娠経過は順調であった。夫婦関係は良好で、夫は出産を非常に楽しみにしている。
 妊娠24週の受診時に、Aさんは助産師に実兄のBさん(37歳)について話をした。Bさんは3年前から体が疲れやすく、握った指が開きにくい症状があり、神経内科を受診したところ検査の結果、遺伝性の神経筋疾患の診断を受けたという。Aさんは、Bさんの病気が今回の胎児に影響することを心配している。Bさんの病気については夫に話しておらず、今のところAさんには自覚症状はない。

43 その後、妊娠30週の妊婦健康診査で胎児の解剖学的構造の異常はないが、羊水量が多いことが確認された。Aさんは産科医の勧めで、神経内科の診察と筋電図検査を受けたところ、Bさんと同じ疾患を有する可能性が高く、診断確定には遺伝子の検査が必要であると説明を受けた。Aさんは産科医と助産師に、分娩前に胎児に遺伝する可能性について調べる方法があるかどうかを質問した。
 胎児の罹患の確定診断が可能な検査はどれか。

1.羊水検査
2.胎児MRI検査
3.胎児心拍数陣痛図
4.母体血清マーカー検査
5.非侵襲的出生前検査<NIPT>

解答

解説

本症例のポイント

妊娠30週:胎児の構造に異常なし、羊水量が多い。
・産科医「Bさんと同じ疾患を有する可能性が高く、診断確定には遺伝子の検査が必要である」と。
・Aさんの質問「分娩前に胎児に遺伝する可能性について調べる方法があるかどうか?」
→本症例は、①妊娠30週、②分娩前に実施、③遺伝子検査の確定診断をすることが条件に挙げられる。出生前診断のために行われる各検査の特徴を覚えておく必要がある。※下図参照(※図引用「産婦人科ガイドライン」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

1.〇 正しい。羊水検査が、胎児の罹患の確定診断が可能な検査である。羊水検査とは、羊水穿刺により羊水中に浮遊する胎児細胞を分析し、染色体の数や構造の異常などを診断する検査である。15~16週以降の胎児染色体異常・遺伝子異常に適応となり、ほぼ100%で確定診断が可能である。
2.× 胎児MRI検査とは、磁場と電波を使用して体内の情報を画像化し撮影する検査である。胎児位置・妊娠週数・胎盤位置異常・子宮筋腫などにより脳神経系超音波検査が不適で、胎児に脳神経系異常が疑われる場合に行われる。胎児の染色体異常の診断には使用できない。
3.× 胎児心拍数陣痛図とは、分娩監視装置による胎児心拍数と陣痛の連続記録であり、子宮収縮に対する胎児の心拍数変化により胎児の状態を推測するものである。
4.× 母体血清マーカー検査とは、母体から採血した血液に含まれる特定の成分を調べることで児に染色体疾患があるかどうかを調べる非確定的検査である。この検査の施行時期は15~20週で、検出できるのは 21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、神経管閉鎖不全などである。
5.× 非侵襲的出生前検査<NIPT>とは、母体の血液を採血し、DNAの断片を分析することで児に染色体疾患があるかどうかを調べる非確定的検査(スクリーニング検査)である。陽性の場合は、羊水検査を実施し、確定診断を行う。ちなみに、非侵襲的出生前検査<NIPT>で検出できるのは、21トリソミー症候群(ダウン症候群)、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群の3つの染色体の数的異常症である。

 

(※図引用「産婦人科ガイドライン」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

 

 

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、2回経産婦)。第2子分娩後に腹腔鏡下子宮筋腫核出術の既往があるが、経腟分娩は可能と診断されていた。妊娠経過は順調であった。妊娠40週0日、陣痛発来にて入院となった。入院1時間後の時点で破水し、その後陣痛が増強した。さらに2時間が経過し、Aさんは額に汗を浮かべながら陣痛に耐えている。内診所見では既破水、子宮口全開大、Station +2であった。

44 この時点の胎児心拍数陣痛図を下図に示す。
 胎児心拍数陣痛図の所見で正しいのはどれか。

1.一過性頻脈
2.サイヌソイダルパターン
3.早発一過性徐脈
4.遅発一過性徐脈
5.変動一過性徐脈

解答

解説

 

1.× 一過性頻脈とは、胎児が体を動かすとき(胎動があるとき)、一時的に心拍数が多くなることをいい、一定範囲で出るのが正常である。心拍数が開始からピークまで30秒未満の急速な増加で開始から頂点までが15bpm以上、元に戻るまでの持続が15秒以上 2分未満のものをいう。本症例の胎児心拍数陣痛図は、心拍が減少しているため「頻脈」ではなく徐脈である。
2.× サイヌソイダルパターンとは、サインのようなカーブを連続して描いている状態である。1分間に3~4サイクル、振幅10~15bpmの規則的で滑らかなカーブを描くことが特徴である。主に、胎児貧血などによる低酸素血症を示唆している。
3.× 早発一過性徐脈とは、子宮収縮にともなって心拍数の減少の開始から最下点まで30秒以上の経過でゆるやかに下降し、子宮収縮の消退にともなってゆるやかに元に戻る徐脈のことをいう。一過性徐脈の最下点が子宮収縮の最強点と概ね一致しているものをいう。
4.× 遅発一過性徐脈とは、子宮収縮の最強点に遅れて心拍数が減少し、減少開始から最下点まで30秒以上の経過でゆるやかに下降し、子宮収縮の消退にともなって元に戻る徐脈である。母児間におけるガス交換の減少を示し、胎児の危険を示す。糖尿病、高血圧、妊娠中毒症、腎炎、予定日超過などの胎盤機能不全や母児低血圧、その他子宮収縮剤の過剰投与などが原因となる。
5.〇 正しい。変動一過性徐脈とは、15bpm以上の心拍減少が急速に起こり、減少開始から最下点まで30秒未満で急速し、回復までに15秒以上2分未満かかる徐脈である。高度の判断は、①最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上、②最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上で評価する。子宮収縮に伴って発生する場合は、一定の形を取らず、下降度、持続時間は子宮収縮ごとに変動することが多い。

胎児心拍数陣痛図の基準値

胎児心拍数基線は、10分間の区間の平均心拍数で5の倍数で表現する。基線は一過性変動部分や基線細変動増加の部分は除外し、2分間以上持続している部分で判断する。胎児心拍数基線細変動は、胎児心拍数基線が判読可能な部分で判読する。基線細変動は、胎児心拍数基線の細かい変動で、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動で、振幅、周波数とも規則性がないものを指す。

①胎児心拍数基線
・頻脈:160bpm以上
・正常脈:110bpm~160bpm
・徐脈:110bpm未満

②胎児心拍数基線細変動
・細変動消失:肉眼的に認められない
・細変動減少:5bpm以下
・細変動中等度:6~25bpm
・細変動増加:26bpm以上

 

 

 

 

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、2回経産婦)。第2子分娩後に腹腔鏡下子宮筋腫核出術の既往があるが、経腟分娩は可能と診断されていた。妊娠経過は順調であった。妊娠40週0日、陣痛発来にて入院となった。入院1時間後の時点で破水し、その後陣痛が増強した。さらに2時間が経過し、Aさんは額に汗を浮かべながら陣痛に耐えている。内診所見では既破水、子宮口全開大、Station +2であった。

45 児娩出後30分が経過したが、胎盤剝離徴候がみられないため、医師によって胎盤用手剝離が行われて胎盤娩出となった。胎盤娩出後30分の時点で赤色の性器出血が持続しており、胎盤娩出後の出血量が300 mL を超えた。Aさんは間歇的に軽度の下腹部痛を訴えているが、バイタルサインは正常である。子宮頸管や腟壁および会陰に異常所見はない。子宮底は臍高の位置に硬く触れる。
 この時点での助産師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.下腹部を温める。
2.輸血の準備をする。
3.子宮底の輪状マッサージを行う。
4.胎盤実質の欠損の有無を確認する。
5.子宮内腔バルーン圧迫法の準備をする。

解答4・5

解説

本症例のポイント

・児娩出後30分経過:胎盤剝離徴候なし、胎盤娩出(胎盤用手剝離)。
・赤色の性器出血が持続、胎盤娩出後の出血量が300mL超えた
・間歇的に軽度の下腹部痛を訴える(バイタルサイン正常)。
・子宮頸管や腟壁および会陰に異常所見なし。
・子宮底:臍高の位置に硬く触れる
→本症例は、胎盤残留(遺残:いざん)から胎盤用手剝離を行っている。胎盤残留とは、通常赤ちゃんの出生後数分~10分ほどで自然に排出される胎盤が、なにかしらの原因で排出されず子宮内に残ってしまう状態のことをいう。胎盤用手剥離とは、子宮の中まで手を挿し入れ胎盤を用手的に子宮壁から剥離する方法である。この場合、剥離面から急激な出血が起こる場合があるため注意して観察する必要がある。

1.× 下腹部を「温める(温罨法)」のではなく冷やす。なぜなら、止血を行うため。胎盤娩出後30分の時点で赤色の性器出血が持続しており、胎盤娩出後の出血量が300 mLを超えており、止血が優先される。ちなみに、下腹部を「温める(温罨法)」のはより血行が活性するため禁忌である。
2.× 輸血の準備をする優先度が低い。なぜなら、現在出血量は300mlでバイタルサインには異常が見られないため。ちなみに、輸血の基準として、出血量が経腟分娩では1L、帝王切開では2Lを目安とすることが多い。
3.× 子宮底の輪状マッサージを行う優先度が低い。なぜなら、子宮底輪状マッサージは分娩直後の子宮収縮不全の防止に有効であるため。子宮底部の輪状マッサージとは、子宮筋を刺激して、子宮収縮を促進させるマッサージである。 排尿・排便を定期的に促し、膀胱・直腸充満からの圧迫による子宮収縮不全を防止する。早期離床を促し、悪露の貯留による子宮収縮不全を防止する。本症例の子宮底は、臍高の位置に硬く触れられ、出血が体外に流出している状態ある。
4.〇 正しい。胎盤実質の欠損の有無を確認する。なぜなら、本症例は、胎盤残留(遺残:いざん)から胎盤用手剝離を行っているため。胎盤用手剝離した場合、胎盤遺残の可能性が高いため、娩出した胎盤に欠損がないか確認する必要がある。
5.〇 正しい。子宮内腔バルーン圧迫法の準備をする。なぜなら、子宮内を圧迫止血する必要があるため。子宮内腔バルーン圧迫法(子宮腔内バルーンタンポナーデ)とは、子宮腔内に生理食塩水などで膨らんだ水風船(バルーン)を留置し、圧迫する方法である。子宮体下部をバルーンで圧迫すると、子宮を収縮させる作用のあるオキシトシンの分泌が促され、その結果子宮筋全体が収縮し、出血がおさまると考えられている。

胎盤剝離の徴候

・シュレーダー徴候(Schroder徴候):児娩出後ほぼ臍高にあった子宮底が胎盤剥離するとやや上昇し右に傾く。
・アールフェルド徴候(Ahlfeld徴候):胎児娩出直後に臍帯の腟入口に位置する部に止血鉗子で目じるしをつけておくと、胎盤が剥離下降してくるとこの目じるしが10〜15cm外方へ下垂する現象である。
・キュストナー徴候(Kustner徴候):胎児娩出後に恥骨結合上から子宮下方を骨盤内に圧すると臍帯が圧出される状態である。
・シュトラスマン徴候(Strassmann徴候):一方の手で臍帯を持ち、他方の手で子宮底を叩いても手に響かない。癒着しているときは手に響く。

 

 

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