第103回(R2) 助産師国家試験 解説【午前46~50】

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次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、2回経産婦)。第2子分娩後に腹腔鏡下子宮筋腫核出術の既往があるが、経腟分娩は可能と診断されていた。妊娠経過は順調であった。妊娠40週0日、陣痛発来にて入院となった。入院1時間後の時点で破水し、その後陣痛が増強した。さらに2時間が経過し、Aさんは額に汗を浮かべながら陣痛に耐えている。内診所見では既破水、子宮口全開大、Station +2であった。

46 産褥3日の午後、Aさんは悪寒と発熱を自覚した。バイタルサインは体温38.8℃、血圧125/75 mmHg、呼吸数25/分である。乳房は緊満しており軽度熱感があるが、痛みはない。子宮に圧痛があり、子宮底は臍高でやや軟である。経腹超音波検査では子宮内に悪露の貯留があるが、子宮体部筋層の異常はなく、腹腔内の出血は認めない。血液検査で白血球15,300/μL、Hb 11.3g/dL、血小板12万/μL、CRP 4.2mg/dLであった。
 Aさんの発熱の原因で考えられるのはどれか。

1.乳腺炎
2.子宮破裂
3.子宮内膜炎
4.生理的な子宮復古
5.妊娠高血圧症候群

解答

解説

本症例のポイント

・産褥3日:悪寒と発熱を自覚。
・バイタルサイン:体温38.8℃、血圧125/75 mmHg、呼吸数25/分。
・乳房:緊満、軽度熱感、痛みなし。
子宮:圧痛、子宮底:臍高でやや軟。
・経腹超音波検査:子宮内に悪露の貯留、子宮体部筋層の異常なし、腹腔内の出血なし。
・血液検査:白血球15,300/μL、Hb 11.3g/dL、血小板12万/μL、CRP 4.2mg/dL
→本症例は、①子宮の圧痛、②子宮復古不全(悪露の貯留)、③血液検査(白血球15,300/μL、CRP 4.2mg/dL)から、子宮内感染が疑われる。子宮復古不全とは、妊娠によって大きくなった子宮が出産を終えて元に戻る過程である子宮復古に異常が起き、通常の子宮収縮が認められない病態である。 原因は、①子宮内に胎盤の一部が残っている場合(子宮内残留)や、②母体疲労によるもの、③胎盤や卵膜の子宮内感染など原因は多岐に渡る。ちなみに、白血球の基準値は4000~9000/μL、CRPの基準値は0.3mg/dl以下である。CRPの特徴として、炎症などが起きてから数時間で増え始め、数値の上昇までに半日程度かかる。また、一度上昇すると薬が効いたとしても数値が下がるまで24時間程度を要するため、発症すぐの場合や治癒直後には指標とならないことに注意する。

1.× 乳腺炎とは、乳汁を分泌する乳腺で炎症を起こす病気である。症状として乳房の熱感痛み、腫れ、発熱や倦怠感が見られる。本症例の乳房は緊満、軽度熱感、痛みなしであるため、乳腺炎より優先度が高いものが他にある。
2.× 子宮破裂とは、主として分娩時に起こる子宮体部ないしは子宮下部の裂傷である。強い腹痛が続き、胎児の心拍数が異常に下がる。帝王切開の既往がある女性で治癒した瘢痕線に沿って起こることが多い。他に多胎妊娠や羊水過多なども原因となることがある。本症例の子宮体部筋層に異常はなく、腹腔内の出血は認めないため、子宮破裂より優先度が高いものが他にある。
3.〇 正しい。子宮内膜炎はAさんの発熱の原因で考えられる。子宮内膜炎とは、子宮に細菌が入り、子宮内膜に炎症を起こす病気である。発熱、子宮の圧痛、悪露の貯留、子宮底の状態から子宮内に炎症を起こしている可能性が考えられる。
4.× 生理的な子宮復古は考えにくい。なぜなら、産褥3日目の正常な子宮底はおよそ臍下3横指で硬度良好のため。ちなみに、子宮復古不全とは、妊娠によって大きくなった子宮が出産を終えて元に戻る過程である子宮復古に異常が起き、通常の子宮収縮が認められない病態である。 原因は、①子宮内に胎盤の一部が残っている場合(子宮内残留)や、②母体疲労によるもの、③胎盤や卵膜の子宮内感染など原因は多岐に渡る。
5.× 妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(血圧140/90mmHg以上)を発症した場合をいう。基準値として、収縮期血圧が140mmHg以上(重症では160 mmHg以上)、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上(重症では110mmHg以上)になった場合が該当する。ちなみに、妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。常位胎盤早期剥離の原因には、妊娠高血圧症候群(合併率 25~50%)、子宮内感染、子宮内圧の急激な変化などが挙げられる。

産褥子宮内膜炎とは?

産褥子宮内膜炎とは、子宮の感染症であり、通常は下部性器や消化管から上行してくる細菌によって引き起こされる。症状は、子宮の圧痛・腹痛または骨盤痛・発熱・倦怠感ときに分泌物がみられる。 診断は臨床的に行うが、まれに培養を要する。 治療は広域抗菌薬(例:クリンダマイシンとゲンタマイシンの併用)による。ちなみに、子宮内膜炎は、分娩中または分娩後における絨毛膜羊膜炎の後に発生しうる。素因となる状態としては、①前期破水および長時間の分娩、②内測式胎児モニタリング、③遷延分娩、④帝王切開、⑤頻回の指による内診、⑥胎盤断片の子宮内残留、⑦分娩後出血などがあげられる。

子宮復古の状態

・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(43歳、経産婦、専業主婦)。夫(45歳、会社員)と男児(2歳)と3人暮らし。妊娠11週3日。Aさんは「つわりがつらく、食事がしっかり摂れていません。水分は気を付けて摂っています」と言う。身長160 cm、体重63 kg(非妊娠時から -1 kg)。血圧132/80 mmHg。Hb 10.6 g/dL、Ht 33 %。尿蛋白(-)、尿ケトン体(-)。胎児は頭臀長<CRL>55 mm、胎児心拍が確認された。

47 Aさんの妊娠経過の診断で正しいのはどれか。

1.貧血
2.重症妊娠悪阻
3.胎児発育不全
4.高血圧合併妊娠

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(43歳、経産婦、専業主婦)
・3人暮らし:夫(45歳、会社員)、男児(2歳)
・妊娠11週3日:「つわりがつらく、食事がしっかり摂れていません。水分は気を付けて摂っています」。
・身長160cm、体重63kg(非妊娠時から-1kg)。
・血圧132/80mmHg。Hb 10.6g/dLHt 33%
・尿蛋白(-)、尿ケトン体(-)。
・胎児:頭臀長<CRL>55mm、胎児心拍が確認された。
→へモグロビン(Hb)の基準値:男性14~18g/dl、女性12~16g/dlである。血液中のヘモグロビンの量を示し、へモグロビンは赤血球に含まれ、酸素を全身に運ぶ重要な役目を果たしている。減少すると「貧血」を起こす。
→ヘマトクリット値(Ht)の基準値:男性40~50%、女性34~45%である。採取した血液を遠心分離器で固体である血球と液体の血漿に分けて測定する。貧血を診断する指標のひとつである。

1.〇 正しい。貧血が最も考えられる。なぜなら、本症例のHb 10.6g/dLHt 33%であるため。へモグロビン(Hb)の基準値:男性14~18g/dl、女性12~16g/dlである。血液中のヘモグロビンの量を示し、へモグロビンは赤血球に含まれ、酸素を全身に運ぶ重要な役目を果たしている。減少すると「貧血」を起こす。ヘマトクリット値(Ht)の基準値:男性40~50%、女性34~45%である。採取した血液を遠心分離器で固体である血球と液体の血漿に分けて測定する。貧血を診断する指標のひとつである。
2.× 重症妊娠悪阻とは、つわりの症状が悪化し治療が必要になるような状態である。診断基準として、①5%以上の体重減少、②血中・尿中のケトン体の増加が見られる。
3.× 胎児発育不全とは、平均と比べて成⻑が遅くなっていることをいい、胎盤由来の妊娠合併症の代表的なものである。子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態で、妊娠週数に対して胎児が明らかに小さい場合をいい、胎児発育曲線において「-1.5SD以下」の場合に診断される。本症例(11週3日)の頭臀長<CRL>55mmであり、「-1.5SD以下」となると43mm程度であるため、胎児発育不全は否定できる。
4.× 高血圧合併妊娠とは、妊娠前または妊娠20週未満、または分娩後12週以降も140/90mmHg以上の高血圧を認める場合をいう。本症例の血圧は140/90mmHg以上でないため、高血圧合併妊娠は否定できる。ちなみに、妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。

妊娠悪阻とは?

妊娠悪阻とは、妊娠中にみられる極めて強い吐き気や激しい嘔吐のことである。通常の「つわり」がみられる女性とは異なり、妊娠悪阻の女性は体重が減少し、脱水を起こす。妊娠悪阻の重篤な合併症としてビタミンB1の欠乏から発症するウエルニッケ脳症があり、意識障害や小脳性運動失調などが出現し、50%以上で逆行性健忘、記銘力の低下、作話が特徴のコルサコフ症候群という後遺症が残る。 母体死亡に至る症例もあるため、慎重に管理する必要がある。悪心・嘔吐が強く、脱水、3kg以上の体重減少、飢餓によるケトアシドーシスをきたすもの、経口摂取が困難な時、尿ケトン体が陽性の場合は、輸液を行い水分と栄養、ビタミン類を補充する。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(43歳、経産婦、専業主婦)。夫(45歳、会社員)と男児(2歳)と3人暮らし。妊娠11週3日。Aさんは「つわりがつらく、食事がしっかり摂れていません。水分は気を付けて摂っています」と言う。身長160 cm、体重63 kg(非妊娠時から -1 kg)。血圧132/80 mmHg。Hb 10.6 g/dL、Ht 33 %。尿蛋白(-)、尿ケトン体(-)。胎児は頭臀長<CRL>55 mm、胎児心拍が確認された。

48 妊娠30週0日。体重75kg。血圧142/90mmHg。尿蛋白+、浮腫+。時々腹部が張る感じがすると話す。推定胎児体重1,500g、胎児心拍正常。医師から1週後に受診するようにとの指示があった。Aさんは「自宅で血圧を測るとそんなに高くありません。子どもの世話もあるし、入院となると困ります」と言う。
 助産師がAさんに行う生活指導で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.「水分摂取を控えましょう」
2.「毎日ウォーキングをしましょう」
3.「自宅での血圧測定を続けましょう」
4.「家事や育児の合間には安静を心がけましょう」
5.「摂取エネルギーは、1日1,600kcal程度にしましょう」

解答3・4

解説

本症例のポイント

・妊娠30週0日(体重75kg、血圧142/90mmHg、尿蛋白+、浮腫+)
・「時々腹部が張る感じがする」と。
・推定胎児体重1,500g、胎児心拍正常。
・医師から「1週後に受診するように」と。
・Aさん「自宅で血圧を測るとそんなに高くありません。子どもの世話もあるし、入院となると困ります」と。
→本症例は、血圧142/90mmHgであることから妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧腎症)が疑われる。妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。

1.× 水分摂取を控える必要はない。むしろ水分を控えることで脱水や膀胱炎が起こりやすくなる。本症例の場合、尿蛋白や浮腫がみられているため、心配であれば主治医に相談するよう促す必要がある。
2.× 毎日ウォーキングする必要はない。なぜなら、本症例は「時々腹部が張る感じ(腹部緊満感)」を言っているため。30週での腹部緊満感は切迫早産となる可能性もあり、ウォーキングは腹部緊満感を増強させる。
3.〇 正しい。「自宅での血圧測定を続けましょう」と生活指導する。なぜなら、Aさん「自宅で血圧を測るとそんなに高くありません」と言っていることから、白衣高血圧も考えれるため。白衣性高血圧とは、家などの医療機関外では血圧が正常であるにもかかわらず、医療者が血圧を測った時や診察室などの医療機関で血圧が高値になる高血圧である。白衣性高血圧であるかの判断、自宅血圧の経過を判断するために自宅での血圧測定を継続してもらう必要がある。
4.〇 正しい。「家事や育児の合間には安静を心がけましょう」と生活指導する。なぜなら、本症例は妊娠高血圧症候群が疑われるため。妊娠高血圧症候群の治療には、「安静」「食事療法」「薬物療法」があり、安静により交感神経の緊張緩和、妊娠子宮による下大動脈の圧迫解除が起こり、子宮・腎血流量は増加し、血圧は低下を図る。
5.× 摂取エネルギーを1日1,600kcal程度にする必要はない。本症例の妊娠前のBMIは24.6であった。妊娠30週0日で体重75kg(12㎏)は正常範囲内の変化である。基準として、①低体重(やせ)の場合:12~15kg、②標準(ふつう)の場合:10~13kg、③肥満(1度)の場合:7~10kg、④肥満(2度以上):個別対応(上限5kgまでが目安)とされている。これ以上、体重が増加した場合、早産や切迫早産、胎児の発育の遅れによる影響、成人後の生活習慣病などのリスクがあげられる。

妊娠高血圧症候群の治療

妊娠高血圧症候群の治療には、「安静」「食事療法」「薬物療法」があります。重症の場合には入院が必要になります。JSH2009では軽症妊娠高血圧に対しては積極的な治療は行わず、安静などの生活指導を行うことが提唱されています。妊娠合併高血圧では減塩や減量などによる有効性は証明されていません。むしろ欧州高血圧学会-心臓病学会(ESH-ESC2007)では減塩を行わず、通常食を摂取させるよう提唱しています。
 「安静」:安静により、交感神経の緊張緩和、妊娠子宮による下大動脈の圧迫解除が起こり、子宮・腎血流量は増加し、血圧は低下します。
 「食事療法」:体重が増えすぎると血圧が上がるため、摂取エネルギーを適正量にし、適切な体重管理が必要です。また塩分、脂肪、糖分をとりすぎないようにします。
 「薬物療法」:軽症でも安静、食事療法などで改善がみられない場合や重症の場合は、妊娠中でも使用できる降圧薬で血圧をコントロールします。

(※一部引用:「妊娠高血圧症候群」北海道薬剤師会より)

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(43歳、経産婦、専業主婦)。夫(45歳、会社員)と男児(2歳)と3人暮らし。妊娠11週3日。Aさんは「つわりがつらく、食事がしっかり摂れていません。水分は気を付けて摂っています」と言う。身長160 cm、体重63 kg(非妊娠時から -1 kg)。血圧132/80 mmHg。Hb 10.6 g/dL、Ht 33 %。尿蛋白(-)、尿ケトン体(-)。胎児は頭臀長<CRL>55 mm、胎児心拍が確認された。

49 妊娠35週0日。妊娠30週以降、血圧上昇はなく経過している。Aさんは「前回のお産は、時間がかかってつらかったのでお産が不安になってきました。バースプランはまだ立てていません。今回が最後のお産だと思うので、よい体験にしたいです」と助産師に話す。
 Aさんへの助産師の対応で適切なのはどれか。

1.「前回より短時間で出産できますよ」
2.「無痛分娩を検討してはどうでしょうか」
3.「分娩中の過ごし方について一緒に考えましょう」
4.「次回の健康診査までにバースプランを完成させてください」

解答

解説

本症例のポイント

・妊娠35週0日。
・妊娠30週以降:血圧上昇はなし。
・Aさん「前回のお産は、時間がかかってつらかったのでお産が不安になってきました。バースプランはまだ立てていません。今回が最後のお産だと思うので、よい体験にしたいです」と。
→本症例は、お産についての不安と今回を良い経験にしたいという感情が聞き取れる。具体的にどういった不安か?、またどうすれば良い経験にできるか?助産師と一緒に考えていく必要がある。ちなみに、バースプランとは、直訳すると「出産計画」である。 どのようなお産を望んでいるか、出産後や入院中はどのように過ごしたいのかなど、妊婦さん自身やパパの希望をまとめたものである。

1.× 前回より短時間で出産できるといった確証はどこにもない。初産婦で2〜3時間、経産婦で1時間程度といわれ、経産婦は短時間で出産できることが多いとしても、本症例は妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧腎症)が疑われていたり、確実に問題が起こらないとは言えない。したがって、より不安に寄り添った発言や責任を持った発言が好ましい。
2.× 無痛分娩の検討は優先度が低い。なぜなら、本症例は無痛分娩の希望もなく、無痛分娩が不安の解決につながるとは言い切れないため。ちなみに、無痛分娩とは、麻酔を用いて痛みを緩和しながら分娩を行うことである。お産の痛みについて悩みや不安がある症例に対し、無痛分娩の検討を促す。
3.〇 正しい。「分娩中の過ごし方について一緒に考えましょう」と伝える。なぜなら、本症例は、お産についての不安と今回を良い経験にしたいという感情が聞き取れるため。具体的にどういった不安か?、またどうすれば良い経験にできるか?助産師と一緒に考えていく必要がある。
4.× 「次回の健康診査までにバースプランを完成させてください」と伝える優先度は低い。なぜなら、バースプランの提出は義務ではなく、急いで書くものでもないため。ちなみに、健康診査の頻度は、初期から妊娠23週までは4週間に1回、妊娠24週から妊娠35週までは2週間に1回、妊娠36週から出産までは週1回である。本症例は、「バースプランはまだ立てていません」と言っていることから、専門知識のある助産師がアシストしながら、ともに一緒に考えてバースプランを作成するのも良い。

 

 

 

 

次の文を読み50〜52の問いに答えよ。
 Aさん(39歳、1回経産婦)。妊娠中の経過は順調であった。妊娠40週2日、陣痛が開始したため入院となった。午前1時30分、陣痛は2〜3分間欠、発作は40〜50秒。午前2時00 分に破水。「便がしたい感じ。どうしてこんなに痛いの」と言いながら強くいきんでいる。内診所見は子宮口7cm開大、展退度90 %、Station+1。

50 このときの助産師の対応で最も適切なのはどれか。

1.食事摂取を勧める。
2.陣痛発作時に弛緩法を促す。
3.短息呼吸の方法を指導する。
4.分娩体位を整え努責を誘導する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(39歳、1回経産婦)
・妊娠中の経過:順調。
・妊娠40週2日:陣痛が開始したため入院。
・午前1時30分:陣痛2〜3分間欠、発作40〜50秒。
・午前2時00分:破水。
・「便がしたい感じ。どうしてこんなに痛いの」と強くいきんでいる
・内診所見は子宮口7cm開大、展退度90%、Station+1。
→本症例は、強くいきんでいる(努責)のは時期尚早と考えられる。努責は分娩第2期以降が望ましい。早いタイミングで努責(いきみ)を行うと産道に傷がついたり赤ちゃんの頭に無理がかかったりする。分娩第1期は呼吸法や肛門圧迫で努責(いきみ)を逃す。本事例の母親の子宮口は、「7cm開大」であり全開大(約10cm)していないことから、分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大まで)と考えられる。陣痛時にいきみを生じていることから体位を変えていきみを逃しつつお産が進むようにして経過を観察する。

1.× 食事摂取を勧める優先度は低い。なぜなら、本症例は「便がしたい感じ。どうしてこんなに痛いの」と強くいきんでいる状態であるため。時としては栄養補給としての食事摂取も必要ではあるが、選択肢の中にもっと優先度が高いものが他にある。
2.〇 正しい。陣痛発作時に弛緩法を促す。なぜなら、本症例は、強くいきんでいる(努責)のは時期尚早と考えられるため。努責は分娩第2期以降が望ましい。ちなみに、ラマーズ法の弛緩法は、身体をリラックスした状態にして痛みを和らげ産道が開くことができる。
3.× 短息呼吸の方法を指導する必要はない。なぜなら、短息呼吸(ハッ、ハッ、ハッ)は、発露後に行うため。努責は発露まで行い、その後は短息呼吸へと切り替える。具体的な切り替えタイミングは、児娩出時の後頭結節が恥骨弓からはずれ、反屈位となって会陰部に児頭があらわれたときである。短息呼吸とは、赤ちゃんの頭が出る瞬間に会陰部を傷つけないよう、お腹の力をゆるめて自然に産道を通過させるために行う。いきみから短息呼吸への切り替えは、助産師がリードする。〈方法〉①両手を胸に置き、体中の筋肉をゆるめ、口を開けハッハッハッと息を早く吐く呼吸をする。②息が続かなくなったら、息つぎをする。
4.× 分娩体位を整え努責を「誘導する」のではなく抑制する。なぜなら、子宮口が全開でない状態で努責を誘導すると、子宮口に負担がかかり出血する恐れがあるため。陣痛時にいきみを生じていることから体位を変えていきみを逃しつつお産が進むようにして経過を観察する。

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

 

 

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