第105回(R4) 助産師国家試験 解説【午前11~15】

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11 Aさん(30歳、1回経産婦)は28歳のときに子宮鏡下手術によって子宮粘膜下筋腫を切除した。妊娠39週6日で自然破水、破水後1日経過したが陣痛発来せず、子宮収縮薬の点滴静脈注射による分娩誘発を開始した。開始後6時間、Aさんは突然激しい腹痛を訴え、その後、陣痛が減弱した。顔面蒼白となり呼吸が速くなった。胎児心拍数陣痛図では変動一過性徐脈が出現した後、高度徐脈となった。内診所見は、子宮口全開大、Station+2で、異常な腟からの出血はみられなかった。
 このときのAさんの状態で最も考えられるのはどれか。

1.子宮内反
2.子宮破裂
3.腟壁裂傷
4.常位胎盤早期剝離

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(30歳、1回経産婦)
・28歳:子宮鏡下手術によって子宮粘膜下筋腫を切除した。
・妊娠39週6日:自然破水、破水後1日経過したが陣痛発来せず、子宮収縮薬の点滴静脈注射による分娩誘発を開始した。
・開始後6時間:突然激しい腹痛を訴え、その後、陣痛が減弱した。
・顔面蒼白となり呼吸が速くなった。
・胎児心拍数陣痛図では変動一過性徐脈が出現した後、高度徐脈となった。
・内診所見は、子宮口全開大、Station+2で、異常な腟からの出血はみられなかった。
→本症例は、「子宮収縮薬の点滴静脈注射」を起点として、開始後6時間には様々な症状(突然激しい腹痛を訴え、その後、陣痛が減弱し、顔面蒼白となり呼吸が速くなった)が起こった。

1.× 子宮内反とは、子宮が内膜面を外方に反転した状態をいう。子宮が裏返しになり子宮内膜面が腟内または腟外に露出し、胎盤剝離面から出血が続く状態である。病因は外因性と内因性がある。ほとんどが外因性で、胎盤剝離前の臍帯牽引によることがもっとも多く、他のリスク因子として癒着胎盤や過短臍帯、臍帯巻絡がある。また、診断は、①分娩直後の強烈な疼痛や異常出血、子宮底が触れないこと、内診で腫瘤が触れることがあげられる。
2.〇 正しい。子宮破裂がこのときのAさんの状態で最も考えられる。本症例は、「子宮収縮薬の点滴静脈注射」を起点として、開始後6時間には様々な症状(突然激しい腹痛を訴え、その後、陣痛が減弱し、顔面蒼白となり呼吸が速くなった)が起こった。子宮破裂とは、分娩時、まれに妊娠末期に起こる子宮の裂傷で、胎児死亡のみならず母体死亡にもいたる重篤な疾患である。 子宮破裂の発生頻度は、0.02~0.1%で、若干増加傾向にある。 陣痛促進薬で誘発された出産や子宮手術、帝王切開瘢痕(子宮の外傷)などが誘因となるものと、分娩中、何らかの原因により胎児の進行が停止し収縮輪が上昇することで破裂にいたるものがある。
3.× 腟壁裂傷とは、主に分娩時に腟が裂けてしまう状態を指す。赤ちゃんの体は腟の大きさに比べると大きく、物理的に腟が傷ついてしまうことがある。腟の壁はある程度伸び縮みしやすい構造をしているが、それでも腟壁裂傷が生じることは稀ではない。児分娩後に腟からの外出血が観察されるが、表層のみに傷口が留まっているときには自然治癒も期待できるため、縫い合わせる処置は行わず止血を確認することに留まる。しかし、傷口の深さが深い場合には、傷口を縫い合わせる処置が必要であり、大量出血を伴うような傷口になることもある。
4.× 常位胎盤早期剝離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいう。剥離出血のため、性器出血や激しい腹痛、子宮内圧の上昇、子宮壁の硬化が起こり、ショック状態を起こすことがある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。また、低酸素のために急速に胎児機能不全に陥る。

 

 

 

 

 

12 Aさん(32歳、1回経産婦)は本日午前11時に3,100gの児を正常分娩した。分娩所要時間は7時間30分で出血量は150mL。分娩後1時間経過した時点で「上の子のお産は丸1日かかりました。やはり2回目は早いですね」と話した。体温37.0℃、脈拍84/分、血圧122/66mmHg。出血量は25mL、子宮底は臍高で硬度は良好だった。尿意はまだない。
 この時のAさんへの助産ケアで適切なのはどれか。

1.睡眠を促す。
2.導尿を行う。
3.腹帯を強く締める。
4.食事や水分摂取を促す。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、1回経産婦)
・本日午前11時:3,100gの児を正常分娩した。
・分娩所要時間:7時間30分、出血量:150mL。
・分娩後1時間経過:Aさん「上の子のお産は丸1日かかりました。やはり2回目は早いですね」。
・体温37.0℃、脈拍84/分、血圧122/66mmHg。
・出血量:25mL、子宮底は臍高で硬度は良好。
尿意:まだない
→本症例は、意識清明・バイタルサインも正常である。分娩後1時間経過していても、交感神経が優位に働いていることが多い。分娩で消耗した体力・発汗による水分を回復するためエネルギー・水分補給を勧めていく。

1.× 睡眠を促すより優先度が高いものがほかにある。なぜなら、分娩後1時間経過していても、交感神経が優位に働いていることが多いため。気分の高揚していることが多く、分娩時の消耗を認識している一方で寝られないことが多い。
2.× 導尿を行う必要はない。なぜなら、導尿の目的は、前立腺肥大症、尿道狭窄などによる尿閉、手術後の尿閉や神経因性膀胱でたまった膀胱尿の除去およびその採取のほか、薬剤注入や内視鏡検査、膀胱洗浄の前処置などである。つまり、尿意がない時に実施する。本症例は、分娩後1時間経過し、尿意はまだない状態であるが、導尿と判断するには時期尚早である。
3.× 腹帯を強く締めるより必要はない。なぜなら、分娩直後の子宮底が上昇する動きを阻害してしまうため。分娩数時間後には、骨盤底筋群の緊張の回復と膀胱内の尿の貯留により子宮底が上昇し始める。子宮底が上昇し始める前に、腹帯を強く締めると、骨盤底筋群がうまく機能しないため分娩後に排尿困難や尿失禁、排便障害が起こりやすいという報告もある。
4.〇 正しい。食事や水分摂取を促す。分娩で消耗した体力・発汗による水分を回復するためエネルギー・水分補給を勧めていく。

 

 

 

 

13 産褥20日の褥婦。「子どもが右側の乳頭ばかりを吸うので、左側の乳汁分泌が悪くなった」と話す。
 関係するメカニズムはどれか。

1.エンドクリンコントロール
2.オートクリンコントロール
3.腺房細胞の分泌細胞への分化
4.エストロゲンによる乳管系の増殖

解答

解説

本症例のポイント

・産褥20日の褥婦。
・「子どもが右側の乳頭ばかりを吸うので、左側の乳汁分泌が悪くなった」と話す。
→本症例は、産褥20日(乳汁生成Ⅲ期)である。

(※図引用:「母乳・授乳の進め方」甲府市HPより)

1.× エンドクリンコントロールとは、母乳分泌が内分泌物質の放出や抑制により生産量が調節されることである。乳汁生成Ⅱ期は児が乳房を吸啜する刺激で下垂体前葉からプロラクチンが分泌され、腺胞細胞で乳汁を産生する。さらに下垂体後葉からオキシトシンが分泌されて筋上皮細胞を収縮させ、射乳反射を起こし、母乳を乳腺房から押し出す。
2.〇 正しい。オートクリンコントロールは、本症例に関係するメカニズムである。オートクリンコントロールとは、乳汁生成Ⅲ期になると、短期的な(時間単位の)乳汁産生量の制御をさす(飲んだだけ母乳が作られる)。乳汁分泌が始まった母親では、授乳回数が多いほど乳汁産生が多くなる。授乳回数が同じでも、子どもの要求が増すにつれて 1 回の授乳で飲む量は多くなる。子どもが1回の授乳で飲みとることができる最大量は乳房が提供できる量のおよそ76%であり、逆にいえば約2割はかならず乳房内に残る。乳房の乳汁産生は左右それぞれ独立して調整されている。乳汁中には、乳汁産生抑制因子(feedback inhibitor of lactation:FIL)というホエー蛋白が含まれていて、分泌を調節している。乳汁が長時間溜まるとその濃度が上昇し、乳汁産生を低下させる。
3.× 腺房細胞の分泌細胞への分化は起こらない。腺房細胞(乳腺組織)は、乳腺上皮細胞に囲まれた球状構造からなる。腺房の基本単位は、乳腺上皮細胞(分泌細胞)で乳腺上皮細胞に取り囲まれた腺房腔は小管、乳管、乳管口へとつながる。乳腺上皮細胞から腺房腔に分泌された乳汁は、筋上皮細胞が収縮することによって小管に放出され射乳が起こる。
4.× エストロゲン(卵胞ホルモン)による乳管系の増殖は、妊娠中の乳腺発育期に起こる。他にも、乳房の発達として、10~15歳くらいにエストロゲン(卵胞ホルモン)の作用で乳管が増えていく。多くは初潮が来るより先に乳房が発達することが多い。

(図引用:「乳房の構造と乳腺の役割」町田市民病院様HPより)

乳房の構造と乳腺の役割

乳腺腺房と乳管はそれぞれ1層の乳腺腺房細胞(小葉細胞)または乳管細胞でおおわれています。これらの細胞は総称して上皮細胞と呼ばれています。この外側には1層の筋上皮細胞という細胞があり、この細胞はオキシトシンというホルモンに反応して収縮し、乳汁分泌にかかわっています。これら上皮細胞と筋上皮細胞はさらに基底膜という膜で裏打ちされており、腺組織を構成しています。各小葉・乳管組織の間には線維細胞やリンパ球、線維結合組織が存在します。

(※一部引用:「乳房の構造と乳腺の役割」町田市民病院様HPより)

 

 

 

 

 

14 在胎38週3日、正常分娩で出生した女児。Apgar<アプガー>スコア9点、体重3,000g。出生後20時間、直腸温は36.8℃、呼吸数40/分、心拍数145/分。
 このときの児の胎外生活への適応状態として異常所見はどれか。

1.胎便の排出がない。
2.体重が90g減少した。
3.レンガ色の排尿があった。
4.体幹にチアノーゼが見られる。

解答

解説

本症例のポイント

・在胎38週3日、正常分娩で出生した女児。
Apgar<アプガー>スコア9点、体重3,000g。
出生後20時間、直腸温は36.8℃、呼吸数40/分、心拍数145/分。
→本症例は、出生後20時間経過し、Apgarスコア9点である。Apgar〈アプガー〉スコア は出生直後の新生児の状態を評価するスコアであり、①皮膚色、②心拍数、③刺激による反射、④筋緊張、⑤呼吸状態の5項目に対し、0~2点のスコアをつける。つまり、10点満点であるため、本症例には何かしら1点減点した項目があると考えられる。

1.× 胎便の排出がないことは、胎外生活への適応状態としての異常所見とはいえない。胎便とは、乳児が排便によって最初に出す便である。2回目以降の便とは異なり、胎便は、乳児が子宮内で過ごしている間に摂取された物質、すなわち腸上皮細胞、産毛、粘液、羊水、胆汁、および水で構成されている。出生後1~2日以内に胎便を排泄しない場合には、胎便栓症候群が疑われる。本症例の場合、出生後20時間であるため、正常範囲と判断し様子を見ることが多い。
2.× 体重が90g減少したことは、胎外生活への適応状態としての異常所見とはいえない。正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は,出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷出生時の体重×100」で算出される。本症例の場合、出生後20時間であるため、正常範囲と判断し様子を見ることが多い。
3.× レンガ色の排尿があったことは、胎外生活への適応状態としての異常所見とはいえない。レンガ色の理由は、尿に含まれる尿酸塩などの結晶の色である。気温の高い夏や腎機能の未熟性によるものでよく見られる。
4.〇 正しい。体幹にチアノーゼが見られることは、胎外生活への適応状態としての異常所見である。四肢にチアノーゼがみられることは末梢性チアノーゼとして生後しばしばみられるため正常範囲と判断し様子を見ることが多い。ただし、顔面全体や体幹にチアノーゼが認められる場合は中心性チアノーゼとして異常所見に該当する。中心性チアノーゼの原因は、心臓・呼吸器・血液にあるため、中枢の動脈血そのものの酸素飽和度が低く重篤な疾患の合併症を意味する。

(※画像引用:ナース専科様HPより)

 

 

 

 

15 新生児における酸素消費量と環境温度の関係を図に示す。
 中性温度環境はどれか。

1.A
2.B
3.C
4.D

解答

解説

中性温度環境とは?

中性温度環境とは、体温調節が起きない状態が新生児の至適温度帯であり、体温を正常範囲(36.5~37.5℃,直腸温)に維持する代謝要求が最少である環境温度と定義される。

中性温度環境(代謝要求が最少である環境温度)は、酸素消費量が最低であるところとなる。したがって、選択肢3.Cである。

 

 

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