第105回(R4) 助産師国家試験 解説【午前16~20】

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16 新生児低血糖のため輸液療法中の児。
 全身状態の観察をする際、低血糖症状の増悪を疑う所見はどれか。

1.振戦
2.発熱
3.発疹
4.筋緊張亢進

解答

解説

出生後の血糖の変化

お腹にいる間は胎盤を通じて栄養分(ブドウ糖など)をもらっているが、出生後は栄養分の供給がストップするため、一時的に血糖値が低下しやすい。正常で生まれた赤ちゃんでも生まれた直後は、血糖値が下がる。哺乳が始まってから2〜3日で安定することが多い。症状のある正期産児では一般に血清血糖値40mg/dL(2.2mmol/L)未満,生後24~48時間の無症状の正期産児では,45mg/dL(2.5mmol/L)未満,生後48時間以内の早期産児では30mg/dL(1.7mmol/L)未満とされる。危険因子として,未熟性,在胎不当過小児(SGA児),母体糖尿病,および周産期仮死などが挙げられる。最も頻度の高い原因は,グリコーゲン貯蔵の不足,授乳遅延と高インスリン血症である。徴候として頻脈,チアノーゼ,痙攣,無呼吸発作がある。

1.〇 正しい。振戦は、全身状態の観察をする際の低血糖症状の増悪を疑う所見である。出生1時間で血糖は最低となりやすいが、出生3時間までには肝臓に蓄えられたグリコーゲンがグルコースへと変換され血糖は上昇・安定することが多い。
2.× 発熱は、感染症脱水飢餓熱などで起こる。ちなみに、飢餓熱とは、一般に新生児期(特に生後2~3日目)の乳児の発熱をいう。 生後まもなくは、母乳の分泌も不十分なことが多く、乳児の哺乳力も未熟なことが多い。その結果、新生児に必要な哺乳量、水分量が不足がちとなり、軽度の脱水状態になる。
3.× 発疹は、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群などで生じる。ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群とは、熱傷を負ったときのように皮膚に水疱が生じて剥がれてしまう病気で、ブドウ球菌による皮膚感染症に対する体の反応として起こる。皮膚の水疱と剥離以外の症状として、発熱、悪寒、脱力感がみられる。また、他にも失神を生じるものとして、乳児湿疹がみられる。乳児湿疹とは、生後2週~2か月頃に多く見られる湿疹のことで、顔・首・頭皮を中心に発症する。湿疹は、赤いポツポツしたもの、黄色いかさぶたやフケのようなもので覆われているもの、膿の流出があるものなどさまざまな形状で現れる。
4.× 筋緊張亢進は、ビリルビン脳症などで生じる。ビリルビン脳症は、ビリルビンの神経毒性に起因する脳障害を指す。早産児では、比較的軽度の高ビリルビン血症でもビリルビン脳症が起きることが知られている。黄疸(ビリルビンという物質が体内にたまって体が黄色くなる状態)が強いと、ビリルビンの毒性により脳に障害が生じることがある。症状として、①筋緊張亢進や②不随意運動などがみられる。

一般的な低血糖症状

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

 

 

 

 

 

17 日本の平成30年(2018年)の早期新生児死亡で正しいのはどれか。

1.周産期死亡の8割を占める。
2.新生児死亡数の3割を占める。
3.死亡原因の第1位は敗血症である。
4.死亡率は出生1,000に対して0.7である。

解答

解説

早期新生児死亡とは?

早期新生児死亡率とは、年間の1000出生当たりの早期新生児の死亡数(生後1週未満の死亡数) を指す。【早期新生児死亡率】= 年間早期新生児死亡数(生後1週(7日)未満の死亡数)÷ 年間出生数×1000で表せる。

つまり、早期新生児死亡とは、「早期新生児の死亡数(生後1週未満の死亡数) 」である。

1.× 早期新生児死亡は、周産期死亡の「8割」ではなく約2割を占める。周産期死亡とは、妊娠満 22週(154日)以後の死産と新生児死亡数(生後1週未満の早期新生児死亡)を合わせたものである。周産期死亡数は2999人に対し、早期新生児死亡は614人であるため、周産期死亡の約2割になる。
2.× 早期新生児死亡は、新生児死亡数の「3割」ではなく約7.5割を占める。新生児死亡数とは、生後1週未満の早期新生児死亡数のことである。新生児死亡数は801人に対し、早期新生児死亡は614人であるため、新生児死亡数の約7.5割を占める。(データ引用:「平成 30 年(2018)人口動態統計(確定数)の概況:第2表-1 人口動態総覧の年次推移」厚生労働省HPより)
3.× 早期新生児死亡の死亡原因の第1位は、「敗血症」ではなく先天奇形などである。ちなみに、2位は呼吸障害など、3位は乳幼児突然死症候群である。(データ引用:「第7表 死因順位1)(1~5位)別死亡数・死亡率(人口10万対),性・年齢(5歳階級)別」厚生労働省HPより)
4.〇 正しい。死亡率は出生1,000に対して0.7である。下図参照(データ引用:「平成 30 年(2018)人口動態統計(確定数)の概況:第2表-1 人口動態総覧の年次推移」厚生労働省HPより)

(図引用:「平成 30 年(2018)人口動態統計(確定数)の概況」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

18 児童虐待の防止等に関する法律<児童虐待防止法>で規定されているのはどれか。

1.児童相談所への看護師の配置
2.特定妊婦に対する養育支援訪問
3.心身の危険がある児童の一時保護
4.保護者に対する施設入所等の措置となった児童との面会の制限

解答

解説

児童虐待防止法とは?

『児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)』とは、児童虐待防止に関する施策を促進し、児童の権利・利益を擁護することを目的としている。児童に対する虐待の禁止、虐待に関する地方自治体の責務、児童の保護措置などが規定されている。

1.× 児童相談所への看護師の配置は規定されていない。児童相談所とは、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。職員は、児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士などである。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者などである。
2.× 特定妊婦に対する養育支援訪問は、「児童福祉法」の第6条3に規定されている。「養育支援訪問事業とは、厚生労働省令で定めるところにより、乳児家庭全戸訪問事業の実施その他により把握した保護者の養育を支援することが特に必要と認められる児童(第八項に規定する要保護児童に該当するものを除く。以下「要支援児童」という。)若しくは保護者に監護させることが不適当であると認められる児童及びその保護者又は出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦(以下「特定妊婦」という。)(以下「要支援児童等」という。)に対し、その養育が適切に行われるよう、当該要支援児童等の居宅において、養育に関する相談、指導、助言その他必要な支援を行う事業をいう(一部引用:「児童福祉法」e-GOV法令検索様HPより)」ちなみに、児童福祉法とは、児童の福祉を担当する公的機関の組織や、各種施設及び事業に関する基本原則を定める日本の法律である。児童が良好な環境において生まれ、且つ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援する法律である。
3.× 心身の危険がある児童の一時保護は、「児童福祉法」の第11条に規定されている。「ホ 児童の一時保護を行うこと。ヘ 児童の権利の保護の観点から、一時保護の解除後の家庭その他の環境の調整、当該児童の状況の把握その他の措置により当該児童の安全を確保すること。(一部引用:「児童福祉法」e-GOV法令検索様HPより)」
4.〇 正しい。保護者に対する施設入所等の措置となった児童との面会の制限は、児童虐待の防止等に関する法律<児童虐待防止法>の12条で規定されている。「児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護のため必要があると認めるときは、児童相談所長及び当該児童について施設入所等の措置が採られている場合における当該施設入所等の措置に係る同号に規定する施設の長は、厚生労働省令で定めるところにより、当該児童虐待を行った保護者について、次に掲げる行為の全部又は一部を制限することができる(一部引用:「児童虐待の防止等に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)」

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①助言指導 
②児童の一時保護
③児童福祉施設等への入所措置
④児童の安全確保
⑤里親に関する業務
⑥養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

 

19 助産業務と規定する法律の組合せで正しいのはどれか。

1.臍帯切断:保健師助産師看護師法
2.臨時応急の手当:母子保健法
3.妊産婦の訪問指導:母体保護法
4.助産所に関する広告:地域保健法

解答

解説

1.〇 正しい。保健師助産師看護師法に臍帯切断(へその緒を切る)について記載されている。保健師助産師看護師法とは、保健師・助産師および看護師の資質を向上し、もって医療および公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする日本の法律である。通称は保助看法。助産業務については、第4章に記載されている。第三十七条 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。(※一部引用:「保健師助産師看護師法」厚生労働省HPより)
2.× 臨時応急の手当は、「母子保健法」ではなく保健師助産師看護師法の第4章第三十七条に規定されている。「・・・ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。(※一部引用:「保健師助産師看護師法」厚生労働省HPより)」ちなみに、母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。
3.× 妊産婦の訪問指導は、「母体保護法」ではなく妊産婦訪問指導実施要綱(母子保健法)に規定されている。妊産婦訪問指導実施要綱の第1条(目的)には「妊産婦訪問指導は、母子保健法(昭和40年法律第141号)第13条第1項の規定による健康診査の結果、保健指導を行う必要がある妊産婦について、当該妊産婦の家庭を訪問し、妊娠、出産、育児等に必要な指導を行うとともに、妊娠又は出産に支障を及ぼすおそれがある疾病にかかっている疑いのある者については、医師又は歯科医師の診療を受けることを勧奨するものとする」と記載されている(※一部引用:「妊産婦訪問指導実施要綱」e-GOV法令検索様HPより)。
4.× 助産所に関する広告は、「地域保健法」ではなく医療法に規定されている。医療法の第六条の七に「何人も、助産師の業務又は助産所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告をする場合には、虚偽の広告をしてはならない」と規定されている(※一部引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

 

 

 

 

20 出生届について正しいのはどれか。

1.母子保健法に規定されている。
2.出生の年月日時分及び場所を記入する欄がある。
3.子の両親以外の代理人が届け出ることはできない。
4.出生の日から7日以内に届け出るよう規定されている。

解答

解説

出生届とは?

出生届とは、生まれてきたお子さんの氏名等を戸籍に記載するための届出である。戸籍に記載されることで、生まれてきたお子さんの親族関係が公的に証明され、住民票が作成される。なお、外国人のお子さんであっても、日本国内で出生した場合は、出生届をしなければならない。

1.× 「母子保健法」ではなく戸籍法に規定されている。ちなみに、出生届については戸籍法の第49条に「出生の届出は、十四日以内(国外で出生があつたときは、三箇月以内)にこれをしなければならない・・・以下略」と規定されている(※一部引用:「戸籍法」e-GOV法令検索様HPより)。
2.〇 正しい。出生の年月日時分及び場所を記入する欄がある。届書には、次の事項を記載しなければならない。
①子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別、②出生の年月日時分及び場所、③父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍、④その他法務省令で定める事項である。
3.× 子の両親以外の代理人でも届け出ることができる。これは、戸籍法の第52条に「①出子出生の届出は、父又は母がこれをし、子の出生前に父母が離婚をした場合には、母がこれをしなければならない。②嫡出でない子の出生の届出は、母がこれをしなければならない。③前二項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、左の者は、その順序に従つて、届出をしなければならない。第一:同居者、第二:出産に立ち会つた医師、助産師又はその他の者、④第一項又は第二項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、その者以外の法定代理人も、届出をすることができる」と規定されている(※一部引用:「戸籍法」e-GOV法令検索様HPより)。
4.× 出生の日から、「7日以内」ではなく14日以内に届け出るよう規定されている。戸籍法の第49条に「出生の届出は、十四日以内(国外で出生があつたときは、三箇月以内)にこれをしなければならない・・・以下略」と規定されている(※一部引用:「戸籍法」e-GOV法令検索様HPより)。

 

 

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