第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午前41~45】

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41 片麻痺のある患者の歩行介助で正しいのはどれか。

1.患者の患側に立つ。
2.靴底は摩擦が少ないものを準備する。
3.杖を使用する場合は杖を持つ側で介助する。
4.階段を昇る場合は患側下肢から昇るように指導する。

解答1

解説

1.〇 正しい。患者の患側(麻痺側)に立つ。なぜなら、患側(麻痺側)は力が入りにくかったり、感覚が低下していたりと、患側(麻痺側)に倒れることが多くすぐに支えられるようにするため。
2.× 靴底は、摩擦が「少ない(滑りやすい)もの」ではなく、大きい(滑りにくい)ものを準備する。なぜなら、容易に滑る靴底だと、滑ってバランスを崩しやすくなるため。
3.× 杖を使用する場合は、「杖を持つ側(非麻痺側)」ではなく杖を持たない側(麻痺側)で介助する。なぜなら、杖を使用する側は、非麻痺側で倒れにくいため。
4.× 階段を昇る場合は、「患側下肢(麻痺側)から」ではなく健側下肢(非麻痺側)から昇るように指導する。なぜなら、階段を昇る場合、先に踏み出す側の下肢に関節の可動性や筋力が必要となるため。

 

 

 

 

 

42 冷罨法の目的はどれか。

1.腸蠕動の促進
2.筋緊張の除去
3.機能訓練の前処置
4.局所の炎症の抑制

解答4

解説

寒冷療法の生理作用

寒冷療法の生理作用には、局所新陳代謝の低下、毛細血管浸透圧の減少、血管収縮とその後の拡張、感覚受容器の閾値の上昇、刺激伝達遅延による中枢への感覚インパルス減少、筋紡錘活動の低下等がある。これらの作用により、炎症や浮腫の抑制、血液循環の改善、鎮痛作用、筋スパズムの軽減が期待される。

(引用:「寒冷療法」物理療法系専門領域研究部会 著:加賀谷善教)

1~3.× 腸蠕動の促進/筋緊張の除去/機能訓練の前処置は、温罨法の目的である。温罨法とは、身体の一部に温熱刺激を与える(温める)看護技術である。温熱刺激を体の一部に与えて血管、筋、神経系に作用させ、血液やリンパ液の循環を促進したり、老廃物の排出を促したり、筋肉の緊張や疼痛を緩和するなどの目的で行う。
4.〇 正しい。局所の炎症の抑制は、冷罨法の目的であり、炎症を抑える作用がある。

温罨法の作用とは?

温罨法(※読み:おんあんぽう)とは、身体の一部に温熱刺激を与える(温める)看護技術である。温熱刺激を体の一部に与えて血管、筋、神経系に作用させ、血液やリンパ液の循環を促進したり、老廃物の排出を促したり、筋肉の緊張や疼痛を緩和するなどの目的で行う。

【温罨法の作用】
血管拡張、循環促進、細胞の新陳代謝促進、筋の緊張緩和、鎮痛など。

【温熱療法の目的】
①組織の粘弾性の改善
②局所新陳代謝の向上
③循環の改善

慢性的な疼痛に対する温熱療法の生理学的影響として、血行の改善によるケミカルメディエーター(痛み物質)の除去、二次的な筋スパズムの軽減、疼痛閾値の上昇などがある。

 

 

 

 

 

43 胃洗浄を行うときの体位で最も適切なのはどれか。

1.仰臥位
2.腹臥位
3.左側臥位
4.右側臥位

解答3

解説

(※図引用:「イラスト素材:胃」illustAC様より)

1~2.4.× 仰臥位/腹臥位/右側臥位は、胃洗浄を行うときの体位とはいえない。なぜなら、胃の解剖上、洗浄に向かないため。
3.〇 正しい。左側臥位が、胃洗浄を行うときの体位である。最も洗浄に向く姿勢は、左側臥位で、頭側を15度程度まで低くした体位(もしくは足側を15度程度挙上した位置)である。なぜなら、胃の幽門側を高くすることで、胃内容物の流出を防いで洗浄の効率が上がるため。さらに、この体位は嘔吐した場合の誤嚥も防ぎやすい。また、両下肢は屈曲位にすることにより腹壁の緊張が低い状態に保たれる。

 

 

 

 

 

44 Aさん(59歳、男性)は、糖尿病で内服治療中、血糖コントロールの悪化を契機に膵癌と診断され手術予定である。HbA1c7.0%のため、手術の7日前に入院し、食事療法、内服薬およびインスリンの皮下注射で血糖をコントロールしている。Aさんは、空腹感とインスリンを使うことの不安とで、怒りやすくなっている。
 Aさんに対する説明で適切なのはどれか。

1.「手術によって糖尿病は軽快します」
2.「術後はインスリンを使用しません」
3.「少量であれば間食をしても大丈夫です」
4.「血糖のコントロールは術後の合併症を予防するために必要です」

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(59歳、男性、糖尿病で内服治療中)
血糖コントロールの悪化
膵癌と診断、手術予定。
HbA1c7.0%のため、手術の7日前に入院し、食事療法、内服薬およびインスリンの皮下注射で血糖をコントロールしている。
・Aさんは、空腹感とインスリンを使うことの不安とで、怒りやすくなっている。
→本症例は、血糖コントロール不良患者である。さらに血糖のコントロールに必要な膵臓が手術で摘出されることで、さらに血糖コントロールが不良となる可能性が高い。一般的に、手術後の血糖コントロールが不良な場合、縫合不全や創部感染のリスクが高くなり、血糖値が極端に不良だと、昏睡を起こすことがある。

ヘモグロビンA1cとは、ヘモグロビンのアミノ基とブドウ糖が結合したもので過去1~2ヶ月程度の血糖の高さを反映する検査である。糖尿病の診断基準は、6.5%以上である。

1.× 「手術によって糖尿病は軽快します」とはいえない。むしろ、膵臓を切除するとインスリン分泌能が低下するため、糖尿病は増悪する可能性がある。
2.× 「術後はインスリンを使用しません」とはいえない。むしろ、膵臓を切除するとインスリン分泌能が低下するため、糖尿病は増悪する可能性がある。したがって、術後もインスリンが必要となる可能性が高い
3.× 「少量であれば間食をしても大丈夫です」と約束することはできない。むしろ、少量であっても間食をするべきではない。なぜなら、Aさんは手術のために入院して食事療法を受け、血糖をコントロールしているため。
4.〇 正しい。「血糖のコントロールは術後の合併症を予防するために必要です」と伝える。本症例は血糖コントロール不良患者である。一般的に、手術後の血糖コントロールが不良な場合、縫合不全や創部感染のリスクが高くなり、血糖値が極端に不良だと、昏睡を起こすことがある。

低血糖症状とは?

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

 

 

 

 

 

45 冠動脈バイパス術<CABG>後5時間が経過したとき、心囊ドレーンからの排液が減少し、血圧低下と脈圧の狭小化とがあり、「息苦しい」と患者が訴えた。
 最も考えられるのはどれか。

1.肺梗塞
2.不整脈
3.心筋虚血
4.心タンポナーデ

解答4

解説

本症例のポイント

・冠動脈バイパス術<CABG>後5時間経過
・心囊ドレーンからの排液:減少
・血圧低下、脈圧の狭小化
・「息苦しい」と訴えた。
→本症例は、心タンポナーデが疑われる。心タンポナーデとは、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に体液などの血液が貯留し、心臓が圧迫される。その結果、血液を送り出す心臓のポンプ機能が阻害され、 典型的にはふらつきや息切れを感じ、失神することもある。心膜腔に大量の血液が貯留し、著明な心室拡張障害から静脈還流障害が生じ、血圧低下およびショック状態に至る病態である。開心術後の合併症として生じ得る。

1.× 肺梗塞は考えにくい。肺梗塞とは、肺の血管内(肺動脈)に血の固まり(血栓)が詰まり肺の血流が低下し呼吸困難、チアノーゼそして最悪の場合死にいたる病気である。長期臥床などによって生じた下肢深部静脈血栓が遊離し、肺動脈を閉塞することにより生じる。
2.× 不整脈は考えにくい。なぜなら、心嚢ドレーンからの排液の減少との関係性が低いため。冠動脈バイパス術<CABG>後にみられる不整脈として、心房細動(AF)や心室頻拍(VT)などがある。主な症状は、動悸の自覚・血圧低下などである。
3.× 心筋虚血は考えにくい。なぜなら、心嚢ドレーンからの排液の減少との関係性が低いため。心筋虚血とは、心筋に血液を送る冠動脈が狭窄や閉塞を起こし、心筋に送られる血液が不十分(虚血)な状態である。心筋虚血の原因は、多くの場合動脈硬化で、ほかにもバイパス血管の閉塞により生じる。症状として、息苦しさや運動中や、強いストレスがかかった時に、前胸部、時に左腕や背中に痛み、圧迫感を生じる。
4.〇 正しい。心タンポナーデは最も考えられる。なぜなら、ドレーンからの排液の減少は、ドレーンの閉塞が示唆されるため。これにより増加した心膜液(心嚢液)が心臓を圧迫し、血圧低下と脈圧の狭小化を生じさせたと考えられる。

心房細動とは?

心房細動は、心原性脳塞栓症の原因として最も多い不整脈である。心房細動は、心臓がこまかく震えている状態である。血栓ができやすいため脳塞栓の原因となり最多である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れている(f波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。

心房細動を洞調律に戻す非薬物療法には、カテーテルアブレーションのほかに電気的除細動という方法もある。電気的除細動を行うのは、心房細動が起こると①血圧が急に下がって強い症状のために動けなってしまうような場合、②抗不整脈薬が有効でない場合、③肥大型心筋症・心アミロイドーシスや心不全などがあるため抗不整脈薬を使うよりも電気的除細動の方が安全と判断される場合などである。

 

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