第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午前46~50】

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46 Aさん(48歳、男性)は、直腸癌のため全身麻酔下で手術中、出血量が多く輸血が行われていたところ、41℃に体温が上昇し、頻脈となり、血圧が低下した。麻酔科医は下顎から頸部の筋肉の硬直を確認した。既往歴に特記すべきことはない。
 この状況の原因として考えられるのはどれか。

1.アナフィラキシー
2.悪性高熱症
3.菌血症
4.貧血

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(48歳、男、直腸癌)
全身麻酔下で手術中:出血量が多く輸血、体温41℃に上昇、頻脈、血圧低下。
・下顎から頸部の筋肉の硬直。
・既往歴:特記すべきことなし。
→本症例は、悪性高熱症が疑われる。悪性高熱症とは、通常は脱分極性筋弛緩薬と強力な揮発性の吸入全身麻酔薬の併用に対する代謝亢進反応により生じる体温上昇である。全身麻酔薬の使用中に発症し、急激な体温上昇や異常な高熱・頻脈・筋硬直・ミオグロビン尿などを特徴とする。遺伝性があるため、術前に家族歴や既往を聴取することが重要である。治療としては麻酔の中止、ダントロレン投与、全身冷却などを行う。

1.× アナフィラキシーは考えにくい。なぜなら、アナフィラキシーでは高熱や筋硬直はみられないため。ちなみに、アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。アナフィラキシーショックは、主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。
2.〇 正しい。悪性高熱症が最も考えられる。悪性高熱症とは、全身麻酔の重篤な合併症で、特徴的な症状では筋硬直で頻脈、不整脈、代謝性アシドーシスなどが起こる。血圧が不安定となり、体温が上昇し40℃以上の高熱が特徴的である。
3.× 菌血症は考えにくい。なぜなら、菌血症では下顎から頚部への筋肉の硬直は通常起こらないため。菌血症は血液中に細菌が存在している状態のことである。菌血症が感染症や敗血症を引き起こすことがあるが、この状況の原因とは考えにくい。
4.× 貧血は考えにくい。なぜなら、通常の貧血では発熱などは起こらないため。貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態である。貧血になると、酸素が運ばれる量が減るため、心臓が酸素不足を補うために心拍数を増える(頻脈、動悸)。

悪性高熱症とは?

全身麻酔薬の使用中に発症し、急激な体温上昇や異常な高熱・頻脈・筋硬直・ミオグロビン尿などを特徴とする。遺伝性があるため、術前に家族歴や既往を聴取することが重要である。治療としては麻酔の中止、ダントロレン投与、全身冷却などを行う。

 

 

 

 

 

47 慢性副鼻腔炎についての説明で適切なのはどれか。

1.1週間の内服で症状が軽減すれば受診の必要はない。
2.発症後1週は空気感染の危険性がある。
3.眼窩内感染を起こす危険性がある。
4.透明の鼻汁が特徴的である。

解答3

解説

慢性副鼻腔炎とは?

慢性副鼻腔炎とは、いわゆる蓄膿症のことで、副鼻腔の中のいくつかが慢性的な粘膜の炎症を起こしている状態をいう。一般的には感冒などの急性炎症から始まり、インフルエンザウイルスやその他の細菌の感染を繰り返すことによって慢性化することが多く、アレルギー性鼻炎からの移行もみられる。主な症状として、①鼻水、②鼻づまり、③頭が重い、④鼻の中に悪臭を感じる、⑤嗅覚低下などがあげられる。

1.× 1週間の内服で症状が軽減しても、受診の必要がある。なぜなら、慢性副鼻腔炎は慢性疾患であるため。主に薬物療法を行い、治療期間は、2~3ヶ月程度である。また、炎症の程度によって服用する期間が異なる。
2.× 発症後1週でも、空気感染の危険性はない。なぜなら、慢性副鼻腔炎は空気感染でないため。発症の原因は主に細菌感染である。
3.〇 正しい。眼窩内感染を起こす危険性がある。眼窩内感染とは、眼窩内および眼の周囲と後方の組織の感染症である。副鼻腔の炎症(慢性副鼻腔炎)が、篩骨洞や前頭洞からの波及により、近接する眼窩内へ広がり、眼窩内蜂窩織炎や眼窩内腫瘍などの眼窩内合併症を起こすことがある。
4.× 「透明の鼻汁」ではなく、膿性・膿粘性・粘性の鼻汁(粘調度の高い黄緑色の鼻汁)が特徴的である。他の症状として、頭痛・鼻閉・嗅覚低下などである。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

48 過活動膀胱の説明で正しいのはどれか。

1.尿意切迫感がある。
2.失禁することはない。
3.水分を制限して治療する。
4.50歳台の有病率が最も高い。

解答1

解説

過活動膀胱とは?

過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。

骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。座位や膝立て背臥位などで、上体の力を抜いてお尻の穴を引き上げて「きゅっ」とすぼめ、5秒キープする動作を10~20回ほど繰り返す方法と、すぼめたりを繰り返す方法の2種類ある。

膀胱訓練とは、排尿の間隔を徐々に延長し、膀胱にためることができる尿量を徐々に増やしていくものである。最初は30秒程度からスタートし、徐々に我慢する時間を延ばしていく。

1.〇 正しい。尿意切迫感がある。尿意切迫感は、過活動膀胱の蓄尿症状に分類される。尿意切迫感とは、膀胱が膨張して、排尿したいという切迫感や強い尿意を感じる症状である。膀胱が膨張しているため、排尿が必要であるという感覚がある。
2.× 失禁することがある。過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。
3.× 水分を制限はしない。なぜなら、水分制限により脱水や尿路感染症、血栓のリスクが上昇するため。
4.× 有病率が最も高いのは、「50歳台」ではなく、高齢になるほど高い。加齢に伴い有病率が高くなり、40~50歳代では10%以下、60歳代は10%、70歳代は20%、80歳代は35%程度との報告がある。

尿路感染症とは?

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」日本臨床検査医学会より)

 

 

 

 

 

49 ハヴィガースト,R.J.による発達課題のうち、老年期の発達課題はどれか。

1.健康の衰退に適応する。
2.大人の余暇活動を充実する。
3.個人としての自立を達成する。
4.大人の社会的な責任を果たす。

解答1

解説

ハヴィガースト.R.J.とは?

発達段階に対応する発達課題の概念を最初に提唱したとされるアメリカの教育学者である。ライフサイクルを6つの段階に分け、それぞれの時期において乗り越えなければならない代表的な課題を発達課題として示した。発達課題とは、「発達段階に対応する発達課題(能力・役割)」である。つまり、「発達課題とは人生の各段階の時期に生じる課題で、それを達成すれば人は幸福になり、次の発達段階の課題の達成も容易になるが、失敗した場合にはその人は不幸になり、社会から承認されず、次の発達段階の課題を成し遂げることが困難となる課題」とし、人間が健全で幸福な発達を遂げるために各発達段階で達成しておかなければならない課題を提唱した。

1.〇 正しい。健康の衰退に適応するのは、老年期の発達課題である。
2.× 大人の余暇活動を充実することは、中年期の発達課題である。
3.× 個人としての自立を達成することは、青年期の発達課題である。
4.× 大人の社会的な責任を果たすことは、青年期の発達課題である。

1.乳幼児期

(1) 歩行の学習
(2) 固形の食物をとることの学習
(3) 話すことの学習
(4) 大小便の排泄を統御することの学習(排泄習慣の自立)
(5) 性の相違及び性の慎みの学習
(6) 生理的安定の獲得
(7) 社会や事物についての単純な概念形成
(8) 両親、兄弟及び他人に自己を情緒的に結びつけることの学習
(9) 正・不正を区別することの学習と良心を発達させること

 

2.児童期

(1) 普通のゲーム(ボール遊び、水泳など)に必要な身体的技能の学習
(2) 成長する生活体としての自己に対する健全な態度の養成
(3) 同年齢の友達と仲良くすることの学習
(4) 男子または女子としての正しい役割の学習
(5) 読み、書き、計算の基礎的技能を発達させること
(6) 日常生活に必要な概念を発達させること
(7) 良心、道徳性、価値の尺度を発達させること(内面的な道徳の支配、道徳律に対する尊敬、合理的価値判断力を発達させること)
(8) 人格の独立性を達成すること(自立的な人間形成)
(9) 社会的集団ならびに諸機関に対する態度を発達させること(民主的な社会的態度の発達)

3.青年期

(1) 同年齢の男女両性との洗練された新しい関係
(2) 自己の身体構造を理解し、男性または女性としての役割を理解すること
(3) 両親や他の大人からの情緒的独立
(4) 経済的独立に関する自信の確立
(5) 職業の選択及び準備
(6) 結婚と家庭生活の準備
(7) 市民的資質に必要な知的技能と概念を発達させること(法律、政治機構、経済学、地理学、人間性、あるいは社会制度などの知識、民主主義の問題を処理するために必要な言語と合理的思考を発達させること)
(8) 社会的に責任のある行動を求め、かつ成し遂げること
(9) 行動の指針としての価値や論理の体系の学習、適切な科学的世界像と調和した良心的価値の確立(実現しうる価値体系をつくる。自己の世界観を持ち、他人と調和しつつ自分の価値体系を守る)

4.壮年初期

(1) 配偶者の選択
(2) 結婚相手との生活の学習
(3) 家庭生活の出発(第一子をもうけること)
(4) 子どもの養育
(5) 家庭の管理
(6) 就職
(7) 市民的責任の負担(家庭外の社会集団の福祉のために責任を負うこと)
(8) 適切な社会集団の発見

5.中年期

(1) 大人としての市民的社会的責任の達成
(2) 一定の経済的生活水準の確立と維持
(3) 十代の子どもたちが、信頼できる幸福な大人になれるよう援助すること
(4) 大人の余暇活動を充実すること
(5) 自分と自分の配偶者をひとりの人間として結びつけること
(6) 中年期の生理的変化を理解し、これに適応すること
(7) 老年の両親への適応

6.老年期(高齢期)

(1) 肉体的な強さと健康の衰退に適応すること
(2) 隠退と減少した収入に適応すること
(3) 配偶者の死に適応すること
(4) 自分と同年輩の老人たちと明るい親密な関係を確立すること
(5) 肉体的生活を満足におくれるよう準備態勢を確立すること

 

 

 

 

 

50 エイジズムを示す発言はどれか。

1.「介護を要する高齢者を社会で支えるべきだ」
2.「後期高齢者は車の運転免許証を返納するべきだ」
3.「認知症の患者の治療方針は医療従事者が決めるべきだ」
4.「高齢者が潜在的に持つ力を発揮できるような環境を整えるべきだ」

解答2

解説

エイジズムとは?

エイジズムとは、年齢による差別、特に高齢者に対する偏見や差別をいう。具体的には、年齢が高いというだけで高齢者を画一的集団としてとらえ、役に立たない、能力が低下しているなどの否定的な考えのもと、高齢者を差別することである。

1.3~4.× 「介護を要する高齢者を社会で支えるべきだ」・「認知症の患者の治療方針は医療従事者が決めるべきだ」・「高齢者が潜在的に持つ力を発揮できるような環境を整えるべきだ」というのは、エイジズムにあたるとは言い難い
2.〇 正しい。「後期高齢者は車の運転免許証を返納するべきだ」というのは、エイジズムを示す発言である。エイジズムとは、年齢による差別、特に高齢者に対する偏見や差別をいう。具体的には、年齢が高いというだけで高齢者を画一的集団としてとらえ、役に立たない、能力が低下しているなどの否定的な考えのもと、高齢者を差別することである。

 

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