第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午後51~55】

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51 Aさん(75歳、女性)は、終末期のがんの夫を自宅で介護している。Aさんと夫は自宅での看取りを希望している。
 Aさんへのケアで最も適切なのはどれか。

1.臨死期に起こる身体徴候について説明しておく。
2.自宅で看取る意思が揺らぐことがないように支援する。
3.配偶者を亡くした家族の会への参加を生前から勧める。
4.夫が元気だったころの思い出を話題にしないように勧める。

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(75歳、女性)
終末期のがんの夫を自宅で介護。
・Aさんと夫の希望:自宅での看取り。
→終末期ケアとは、その役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。患者が可能な限り前向きに生活できるような支援体制を提供するという。従来、医療・介護の現場では、終末期における治療の開始・中止・変更の問題は重要な課題のひとつである。疾病の根治を目的とせず延命のみを目的とした対症療法を一般的に延命治療と称し、人工呼吸・人工栄養(経管栄養)、人工透析などが含まれる。しかし、終末期患者では意思疎通の困難な場合も多く、患者の意思に反する治療(延命)になりかねない。治療・ケア内容に関する患者や家族の意思や希望を病状などに応じて繰り返し確認し、それを患者・家族・医療者で共有し、方針を見いだすことが非常に重要である。

1.〇 正しい。臨死期に起こる身体徴候について説明しておく。なぜなら、臨死期は、療養者の状態が刻一刻と変化するため。その際に家族があわてないように、あらかじめ出現するであろう身体徴候を、家族に十分に説明しておく必要がある。ちなみに、臨死期とは、臨終が差し迫った時期である。症状として、るい痩、ADL(日常生活活動)低下、食欲低下、水分摂取量減少、尿量減少、皮膚虚血、意識レベルの低下、死前喘鳴、下顎呼吸、末梢チアノーゼ、チェーンストークス呼吸、橈骨動脈触知不可などが見られる。
2.× 自宅で看取る意思が「揺らぐことがないよう」に支援する必要はない。なぜなら、人間の意思は、時や場合で往々にして変化するものであるため。実際、家族として患者の症状の変化を観察すると、不安や戸惑い、葛藤を生じることも考えられる。患者や家族を含め、話を傾聴し、受容・共感の態度でかかわることが重要である。
3.× 配偶者を亡くした家族の会への参加を「生前から」勧める必要はない。なぜなら、配偶者を亡くした家族の会への参加は、看取り後の家族の会となるため。家族会とは、精神障害者(例えば、アルコール依存症など)を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあう会である。支えあいを通して、地域で安心して生活できるための活動を行っている。一方的に講談するのではなく、それぞれが相互的に話し合う会である。
4.× あえて、夫が元気だったころの思い出を「話題にしない」ように勧める必要はしない。なぜなら、元気だった頃の思い出を語り合うことで、家族の絆を確かめ合うことができるため。

臨死期に起こる症状

臨死期とは、臨終が差し迫った時期である。

症状として、るい痩、ADL(日常生活活動)低下、食欲低下、水分摂取量減少、尿量減少、皮膚虚血、意識レベルの低下、死前喘鳴、下顎呼吸、末梢チアノーゼ、チェーンストークス呼吸、橈骨動脈触知不可などが見られる。

(※図引用:「異常呼吸」日本臨床検査医学会様HPより)

 

 

 

 

 

52 乳児が1日に必要とする体重1kg当たりの水分量はどれか。

1.80mL
2.100mL
3.150mL
4.180mL

解答3

解説

必要水分量

・新生児:60~160mL
・乳児:100~150mL
・幼児:60~90mL
・学童:40~60mL
・成人:30~40mL

小児の必要水分量が多い理由として、①小児の成長には体重あたり多くのエネルギーと水分が必要であること。②細胞外液の割合が多く、また汗腺からの汗の分泌も多いために水分が失われやすいことなどが挙げられる。

1.× 80mLは、幼児期(1~6歳)の1日必要水分量である。
2.△ 100mLは、乳児期(1か月~1歳)の1日必要水分量に該当する範囲である。ただし、100mLでは水分不足となることもあるため、150mLが適切といえる。
3.〇 正しい。150mLは、乳児期(1か月~1歳)の1日必要水分量である。
4.× 180mLに、該当するライフサイクルはない。

 

 

 

 

 

53 日本の平成24年(2012年)における周産期死亡率(出産千対)について正しいのはどれか。

1.2.0
2.4.0
3.6.0
4.8.0

解答2

解説

周産期死亡率とは?

周産期死亡率とは、妊娠満22週以後の死産数と早期新生児死亡数を合計したものを出生数と妊娠満22週以後の死産数を加えたもので除したものである。

【求め方】

周産期死亡率 = 年間周産期死亡数 ÷(年間出生数 + 年間の妊娠満22週以降の死産数)× 100

周産期死亡数は4133で、出産千対の周産期死亡率は4.0である(※引用データ:「平成24年人口動態統計」厚生労働省HPより)。

したがって、選択肢2.4.0が正しい。

(※図引用:「第1表人口動態総覧」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

54 性的対象とその性的指向の分類との組合せで正しいのはどれか。

1.同性:トランスセクシュアル
2.異性:ヘテロセクシュアル
3.両性:ホモセクシュアル
4.なし:バイセクシュアル

解答2

解説

セクシャリティとは?

セクシャリティ(sexuality)とは、性に関する意識や行動、性的な嗜好など、性的な全ての事象や現象を指す言葉である。生物学的性別、社会文化的性別を統合した概念であり、性的存在としての人間の全人格、生き方、性行動、性にかかわる精神活動や人間関係も含む。

1.× トランスセクシュアルとは、性同一性障害とも呼び、自認する性別と、身体の性(生物学的性別)が一致せず、外科的手術などにより、身体の性を変更したい人、または変更した人のことである。ちなみに、同性(同性愛者)は、ホモセクシュアルである。男性が男性に対して、女性が女性に対して性的指向を持っていることをいう。
2.〇 正しい。ヘテロセクシュアルとは、異性を性的対象とする異性愛者のことをいう。ちなみに、「ヘテロ」は「異なる」という意味である。
3.× ホモセクシュアルとは、同性を性的対象とする。男性が男性に対して、女性が女性に対して性的指向をもっている。両性を性的対象の場合がバイセクシュアルである。
4.× バイセクシュアルとは、男性、女性とも(両性)に性的対象にする両性愛者のことである。性的対象がないのはノンセクシュアルである。

 

 

 

 

 

55 更年期障害の女性にみられる特徴的な症状はどれか。

1.異常発汗
2.低血圧
3.妄想
4.便秘

解答1

解説

更年期障害とは?

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

1.〇 正しい。異常発汗は、更年期障害の女性にみられる特徴的な症状である。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状(異常発汗、のぼせ、顔のほてり、動悸、めまいなど)、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。
2.× 「低血圧」ではなく、高血圧が起こりやすい。なぜなら、エストロゲンが低下するため。相対的に男性ホルモンが多くなり、自律神経の1つである交感神経の働きが活発化、血圧上昇を促すレニンというホルモンの産生が上昇する。
3.× 「妄想」ではなく、精神神経症状:情緒不安やイライラ、抑うつ、不安、不眠などが起こる。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状(情緒不安やイライラ、抑うつ、不安、不眠など)、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。
4.× 便秘は特徴的な症状とはいえない。消化管症状としては、腰痛、食欲不振などや排尿障害、性交障害などがある。エストロゲン低下に伴うホルモンバランスの乱れから、消化器症状をきたすことがある。

更年期障害

~更年期障害とは~
「閉経」とは、卵巣の活動性が次第に消失し、ついに月経が永久に停止した状態をいいます。月経が来ない状態が12か月以上続いた時に、1年前を振り返って閉経としています。日本人の平均閉経年齢は約50歳ですが、個人差が大きく、早い人では40歳台前半、遅い人では50歳台後半に閉経を迎えます。
閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間を「更年期」といいます。更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います(※引用:「更年期障害」日本産婦人科学会様HPより)。

 

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