第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午後56~60】

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56 産後うつ病について正しいのはどれか。

1.一過性に涙もろくなる。
2.スクリーニング調査票がある。
3.日本における発症頻度は約40%である。
4.産後10日ころまでに発症することが多い。

解答2

解説

産後うつ病とマタニティーブルーズ

産後うつ病とは、産褥婦の約3%にみられ、産褥1か月以内(特に2週間以内)に発症することが多い。強い抑うつ症状を呈し、育児にも障害が出る。産後うつ病の患者への適切な対応が大切である。抑うつ状態の患者に対し、まずは患者の不安に寄り添い、共感的態度をとることが基本である。

マタニティーブルーズとは、分娩数日後から2週程度の間に多くの褥婦(約30%)が経験し、原因は産後のホルモンの変動である。症状は、涙もろさ、抑うつ気分、不安、緊張、集中力の低下、焦燥感などの精神症状と、頭痛、疲労感、食欲不振などの身体症状がみられる。それらの症状が2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。

1.× 一過性に涙もろくなるのは、マタニティブルーズに特徴的な症状である。産後うつ病では、抑うつ状態が2週間以上は持続する。ちなみに、一過性とは、医学で症状が短期間起こり、すぐ消える性質を意味する。また、一般に、すぐに現れて、またすぐに消えてしまうような性質を持つ。
2.〇 正しい。スクリーニング調査票がある。うつ病スクリーニングの一つに、エジンバラ産後うつ病質問票がある。エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS:Edinburgh Postnatal Depression Scale)とは、産後うつ病をスクリーニングするために使用する質問票のことである。10項目の質問で、対象者は過去7日間の気分を答える。日本におけるカットオフポイント(区分点)は9点で、EPDS9点以上で「うつの可能性が高い」と考える。ただし、9点以上がうつ病で、8点以下はうつ病ではないと判断するものではない。
3.× 日本における発症頻度は、「約40%」ではなく、約3%である。ちなみに、日本と欧米との差はほとんどない。また、マタニティブルーズの発症頻度は30%前後である。
4.× 「産後10日ころ」までに発症することが多いのは、マタニティブルーズである。通常、マタニティブルーズの治療は必要とせず2週間ほどで消失する。一方、産後うつ病は2週間以上持続する場合を疑う。

 

 

 

 

 

57 こころのバリアフリー宣言の目的で正しいのはどれか。

1.身体障害者の人格の尊重
2.高齢者の社会的な孤立の予防
3.精神疾患に対する正しい理解の促進
4.精神科に入院している患者の行動制限の最小化

解答3

解説

こころのバリアフリー宣言とは?

こころのバリアフリー宣言とは、精神疾患を正しく理解し、新しい一歩を踏み出すための指針である。こころのバリアフリー宣言は、老若男女を問わず全国民を対象として、精神疾患や精神障害者に対しての正しい理解を促すとともに、無理解や誤解なしに行動し、誰もが人格と個性を尊重して互いに支えあう共生社会を目指すことができるように、基本的な情報を8つの柱(例えば、①正しく理解する。②態度を変える、行動する)として整理したものである。(※参考:「心の健康問題の正しい理解のための普及啓発検討会報告書 」厚生労働省HPより)

1.× 「身体障害者」の人格の尊重は、こころのバリアフリー宣言の目的ではない。なぜなら、バリアフリー宣言の対象は、「身体障害者」ではなく精神疾患であるため。ちなみに、身体障害とは、先天的あるいは後天的な理由で、身体機能に何らかの障がいがある状態のことをさす。 身体障害の定義は、1949年施行の「身体障害者福祉法(第4条)」において「身体上の障害がある十八歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう」とされている。
2.× 高齢者の社会的な孤立の予防は、こころのバリアフリー宣言の目的ではない。なぜなら、バリアフリー宣言の対象は、「高齢者」ではなく精神疾患であるため。
3.〇 正しい。精神疾患に対する正しい理解の促進は、こころのバリアフリー宣言の目的である。こころのバリアフリーの目的は、老若男女問わず全国民に精神疾患に対する正しい理解を促すことである。また、こころのバリアフリー宣言の副題にも「精神疾患を正しく理解し、新しい一歩を踏み出すための指針」と明記されている。
4.× 精神科に入院している患者の行動制限の「最小化」は、こころのバリアフリー宣言の目的ではない。むしろ行動を最小限にすることは人権侵害にもつながりかねないため、精神疾患を正しく理解するこころのバリアフリー宣言が必要になったといえる。

 

 

 

 

 

 

58 向精神薬と副作用(有害事象)の組合せで正しいのはどれか。

1.抗精神病薬:多毛
2.抗認知症薬:依存性
3.抗てんかん薬:急性ジストニア
4.抗うつ薬:セロトニン症候群

解答4

解説

1.× 抗精神病薬は、「多毛」ではなく口渇・めまい・眠気・起立性低血圧・不整脈・便秘・排尿障害・耐糖能異常・性機能低下などである。ちなみに、多毛は、副腎皮質ステロイド薬などにみられる副作用である。
2.× 抗認知症薬は、「依存性」ではなく様々な消化器症状や、不安焦燥の悪化、不整脈、めまいなどである。依存性は、抗不安薬や睡眠薬で生じる。
3.× 抗てんかん薬は、「急性ジストニア」ではなく眠気・頭痛・めまい・ふらつきなどである。ちなみに、急性ジストニアとは、錐体外路症状の一種である。抗神病薬の投与初期に起こりやすい。筋緊張の異常亢進による体幹・頚部捻転、胸郭の傾斜、肘関節過伸展、手指の過屈曲などを呈する異常姿勢がみられ、これが、眼筋に起こると眼球上転となる。
4.× 抗うつ薬は、セロトニン症候群が副作用として挙げられる。セロトニン症候群とは、抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を服薬中に出現する副作用のことをいう。症状として、不安・混乱などの精神症状に加えて錐体外路症状や、発熱、発汗などの自律神経症状を生じる。ちなみに、同じ分類の抗精神病薬でも、①古いタイプの薬剤と②新しいタイプの薬剤では副作用が異なる場合がある。①古いタイプの抗精神病薬の副作用は、錐体外路症状(アカシジア、ジストニア、ジスキネジアなど)や高プロラクチン血症である。さらに、抗コリン作用による便秘や口渇が問題となる副作用であった。これに対して、②新しいタイプの抗精神病薬では、これらの副作用が少ない代わりに、体重増加や耐糖能異常が問題となるものがある。また、新しいタイプの抗うつ薬であるSSRIでは、これらの副作用が少ない代わりにセロトニン症候群が起きることがある。

副腎皮質ホルモン剤の副作用

副腎には、①副腎皮質と②副腎髄質からホルモンが分泌される。①副腎皮質ホルモンとは、副腎皮質より産生されるホルモンの総称で、①アルドステロン、②コルチゾール、③アンドロゲンがある。炎症の制御、炭水化物の代謝、タンパク質の異化、血液の電解質のレベル、免疫反応など広範囲の生理学系に関わっている。②副腎髄質からはアドレナリンとノルアドレナリンが分泌される。

副腎皮質ステロイドの副作用は、易感染、中心性肥満、満月様顔貌、高血糖、筋萎縮、赤色皮膚線条、多毛症、精神症状などがみられる。

 

 

 

 

 

59 Aさん(40歳、男性)は、5年前に勤めていた会社が倒産し再就職ができず、うつ病になった。その後、治療を受けて回復してきたため、一般企業への再就職を希望している。
 Aさんが就労を目指して利用できる社会資源はどれか。

1.就労移行支援
2.就労継続支援A型
3.就労継続支援B型
4.自立訓練<生活訓練>

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(40歳、男性、うつ病
・5年前に勤めていた会社が倒産
・再就職ができず、うつ病になった。
・その後:治療を受けて回復。
・希望:一般企業への再就職。
→本症例は、①40歳、②希望は一般企業へ再就職である。この2つの条件に当てはまるのを選択できるようになろう。

1.〇 正しい。Aさんが就労を目指して利用できる社会資源は、就労移行支援である。なぜなら、就労移行支援は、一般就労等を目指す65歳未満の障害者を対象とするものであるため。ちなみに、期間は2年間である。障害者総合支援法5条13項で就労移行支援は「就労を希望する障害者につき、厚生労働省令で定める期間にわたり、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう」と定められている。
2.× 就労継続支援A型の対象者は、就労移行支援事業を利用したが就職に結び付かない者など、通常の事業所に雇用されることが困難な65歳未満の障害者に対して、雇用契約による就労機会を提供するものである。障害者総合支援法5条14項で就労継続支援は「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう」と定められている。
3.× 就労継続支援B型の対象者は、就労移行支援事業や就労継続支援事業A型では雇用に結び付かない障害者を対象に、雇用契約を結ばず、生産活動の機会の提供等をするものである。一種の福祉的就労である。障害者総合支援法5条14項で就労継続支援は「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう」と定められている。
4.× 自立訓練<生活訓練>とは、知的障害者又は精神障害者に対し、自立した日常生活を営むために必要な訓練等の便宜を供与するものである。障害者総合支援法5条14項で就労継続支援は「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう」と定められている。

 

 

 

 

 

60 精神保健指定医を指定するのはどれか。

1.保健所長
2.都道府県知事
3.厚生労働大臣
4.精神保健福祉センター長

解答3

解説

1.× 保健所長とは、保健所内の組織管理を主な業務とし、医師たる職員であって、3年以上の公衆衛生の実務経験等を経た者を充てることが原則である。ただし、医師と同等以上の知識を持ち公衆衛生実務の経験が5年以上あり、国立保健医療科学院の養成訓練課程(原則1年)を終了した者であれば、医師でなくても保健所長になることを認められている。
2.× 都道府県知事とは、日本の地方公共団体である都道府県の首長である。単に知事ともいう。都道府県知事のもとに置かれる部局を知事部局という。知事の主な仕事として、予算案をまとめて議会に提出したり、条例案を策定して議会に提出するというものがある。
3.〇 正しい。厚生労働大臣は、精神保健指定医を指定する。精神保健指定医とは、「精神保健福祉法」に基づいて、精神障害者の措置入院・医療保護入院・行動制限の要否判断などの職務を行う精神科医のことである。原則として、精神科病院では,常勤の指定医を置かなければならない。臨床経験・研修などの要件を満たす医師の申請に基づいて厚生労働大臣が指定する。厚生労働大臣は、一定の医師のうち措置入院の判断等を行う知識及び技能を有すると認められる者を、精神保健指定医に指定する。
4.× 精神保健福祉センターとは、精神障害者の福祉の増進を図るために設置された機関である。保健所を中心とする地域精神保健業務を技術面から指導・援助する機関である。

精神保健福祉センターとは?

①根拠法令:精神保健福祉法(6条)
②目的:地域住民の精神的健康の保持増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進、自立と社会経済活動の促進のための援助等。
③設置基準:都道府県、指定都市
④配置職員:精神科医、精神保健福祉士(精神保健福祉相談員)、臨床心理技術者、保健師等

【業務内容】
①企画立案。
②保健所と精神保健関係諸機関に対する技術指導と技術援助。
③精神保健関係諸機関の職員に対する教育研修。
④精神保健に関する普及啓発。
⑤調査研究。
⑥精神保健福祉相談(複雑または困難なもの)
⑦協力組織の育成。
⑧精神医療審査会に関する事務。
⑨自立支援医療(精神通院医療)の支給認定、精神障害者保健福祉手帳の判定。

(参考:「精神保健福祉センターと保健所」厚生労働省HPより)

 

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