第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午前76~80】

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76 3か月の乳児の親に対する問診で適切でないのはどれか。

1.「寝返りをしますか」
2.「あやすとよく笑いますか」
3.「物を見て上下左右に目で追いますか」
4.「アーアー、ウーウーなど声を出しますか」
5.「腹ばいにすると腕で体を支えて頭を持ち上げますか」

解答1

解説

(※図:日本版デンバー式発達スクリーニング検査)

1.× 「寝返りをしますか」は、生後5~6か月頃である。
2.〇 正しい。「あやすとよく笑いますか」は、3か月の乳児の親に対する問診である。なぜなら、あやすと笑うようになるのは、生後2~3か月頃であるため。
3.〇 正しい。「物を見て上下左右に目で追いますか」は、3か月の乳児の親に対する問診である。追視(物を見て上下左右に目で追う)は、生後1~2か月頃にできるようになる。どの方向にも動かせるようになるのは、3か月頃である。
4.〇 正しい。「アーアー、ウーウーなど声を出しますか」は、3か月の乳児の親に対する問診である。喃語(アーアー、ウーウーなど声)は、生後2か月頃より現れるようになる。
5.〇 正しい。「腹ばいにすると腕で体を支えて頭を持ち上げますか」は、3か月の乳児の親に対する問診である。腹ばいにすると腕で体を支えて頭を持ち上げるのは、3か月頃である。

3~4か月健診とは?

3~4か月の特徴としては、 脂漏性湿疹などもでやすくなる時期である。健診では、首のすわり具合、音への反応、肌の状態、先天性の病気がないかなどのチェックする。また、「あやすと笑うか」「音に反応するか」「目でものを追うか」などが、発達具合を測る指標とされている。

 

 

 

 

 

77 萎縮性腟炎に伴う状態について正しいのはどれか。

1.性交痛
2.白色の帯下
3.腟壁の肥厚化
4.腟の自浄作用の亢進
5.エストロゲン分泌の増加

解答1

解説

萎縮性腟炎とは?

老人性腟炎とは、萎縮性腟炎ともいい、主に閉経後の女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)の分泌低下により、腟の潤いがなくなり、外陰部や腟が乾燥・萎縮して、雑菌が繁殖するために起こる炎症である。治療は、エストロゲンの補充が第1選択になる。膣の中に入れるエストロゲンの錠剤や飲み薬を使い、性交痛に対しては潤滑ゼリーの併用も効果的である。 また、細菌感染を合併している場合は抗生剤を併用する。本症例は、上記症状と超音波検査や子宮頸部の細胞診が異常がなかったため老人性膣炎が疑われる。

1.〇 正しい。性交痛が萎縮性腟炎に伴う状態である。なぜなら、膣が萎縮した結果、分泌物が減るため。不正出血なども生じる。
2.× 腟分泌物は、「白色」ではなく、黄色調でやや膿性(ときに茶褐色)である。なぜ炎症をきたし、白血球や細菌が多く混ざっているため。ちなみに、帯下とは、おりもののことで、腟あるいは外陰から体外に排出された分泌物で本人が自覚したものである。
3.× 腟壁の「肥厚化」ではなく、薄くなる。なぜなら、主に閉経後に女性ホルモンのエストロゲンの低下するため。
4.× 腟の自浄作用の「亢進」ではなく、低下する。なぜなら、に閉経後の女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)の分泌低下により、腟の潤いがなくなり、外陰部や腟が乾燥・萎縮して、雑菌が繁殖するため。
5.× エストロゲン分泌の「増加」ではなく低下する。ちなみに、エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

 

 

 

 

 

78 うつ病で入院している患者が「自分は重大な過ちで皆に迷惑をかけてしまいました。死んでおわびします」という妄想を訴えた。
 この患者にみられるのはどれか。

1.罪業妄想
2.心気妄想
3.追跡妄想
4.被毒妄想
5.貧困妄想

解答1

解説

本症例のポイント

うつ病で入院している患者。
・「自分は重大な過ちで皆に迷惑をかけてしまいました。死んでおわびします」という妄想を訴えた。
→うつ病とは、抑うつ感、希望や元気を失ったり、興味を失ったり、生産性が低下したり、睡眠障害、食欲の低下、身体症状などが2週間以上続いている状態である。原因は多岐にわたり、生物学的、環境的、社会的要因が関係していることが知られている。

1.〇 正しい。罪業妄想がこの患者にみられる。罪業妄想とは、うつ病に特徴的な考え方で、実際にそうではないのに自分は重い罪を負っていると思い込んでいるものをいう。微小妄想の一種である。う微小妄想として、
①貧困妄想:お金がない、自分は貧乏だと思い込む妄想。
②心気妄想:自分が病気にかかっているのではないかと強く思い込む妄想。
③罪業妄想:自分が取り返しのつかない罪を犯してしまった、自分は罪深い存在であると思い込む妄想。
2.× 心気妄想とは、自分が病気にかかっているのではないかと強く思い込む妄想である。主にうつ病(他にも、統合失調症や気分障害)にみられる。
3.× 追跡妄想とは、被害妄想の一種で、他人に追跡、監視されるという妄想である。統合失調症にみられる。ちなみに、被害妄想とは、他人から被害を受けているという妄想である。自分が誰かに危害や悪意を持たれていたり、危害を与えられるのではないかと考えるものである。
4.× 被毒妄想とは、被害妄想の一種で、食べ物に毒が入れられているという妄想である。統合失調症にみられる。
5.× 貧困妄想とは、微小妄想の一種で、お金がない、自分は貧乏だと思い込む妄想である。うつ病にみられることが多い。

うつ病の対応

かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。

うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)

【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。

 

 

 

 

 

79 訪問看護師が人工肛門を造設して退院した在宅療養者を訪問すると「便が漏れるため外出ができない」と相談を受けた。観察すると、ストーマパウチの面板が皮膚に密着していない。
 看護師の対応で適切なのはどれか。

1.無菌操作で交換する。
2.頻回に交換するよう説明する。
3.面板を温めて皮膚に貼付する。
4.面板を人工肛門より小さめに切る。
5.腹壁の皮膚を寄せて面板を貼付する。

解答3

解説

本症例のポイント

・訪問看護師が人工肛門を造設して退院した在宅療養者を訪問。
・「便が漏れるため外出ができない」と相談を受けた。
・観察すると、ストーマパウチの面板が皮膚に密着していない
→本症例の「便が漏れている」状態は、改善すべき項目である。原因として、ストーマパウチの面板が皮膚に密着していないことが書かれている。したがって、板が皮膚に密着するように手段を講じる。

1.× 「無菌操作」ではなく清潔操作で交換する。なぜなら、ストーマパウチの面板は、無菌操作ではないため。したがって、非滅菌手袋で実施する。ちなみに、ストーマとは、腸や尿管をお腹の外に出して作った人工肛門・人工膀胱のことである。ストーマパウチとは、パウチ呼ばれる袋のことで、排泄物を溜めるなどして、日常生活をほとんど制限なくおくることができるものである。
2.× 頻回に交換するよう説明する必要はない。なぜなら、本症例の「便が漏れている」状態は、面板が密着していないことが原因であるため。頻回に交換する必要がある場合は、排泄物の量が多く便が漏れる場合である。
3.〇 正しい。面板(フランジ)を温めて皮膚に貼付する。なぜなら、温めることで、より皮膚表面の溝に入り込み皮膚と密着するため。逆に、面板が冷たいと、密着するまでに時間がかかる。ちなみに、面板とは、ストーマ周囲の皮膚に粘着する皮膚保護剤の着いた部分をいう。
4.× 面板を人工肛門より、「小さめ」ではなく大きめ(実際のストーマよりも面板を2~3mm大きく)に切る。なぜなら、面板の穴(ストーマ孔)が小さすぎると面板がストーマに接触してしまい、装具が密着しないだけでなく、ストーマ粘膜損傷の原因にもなるため。
5.× あえて、腹壁の皮膚を寄せて面板を貼付する必要はない。むしろ、腹壁の皮膚を寄せるとしわができ、そのしわを伝って排泄物が漏れてしまう原因となる。したがって、自然にしわが伸びた状態で面板を貼るように指導する。

 

 

 

 

 

80 トリアージタグを装着する部位の優先順位で適切なのはどれか。

1.頸部→右手→左手→右足→左足
2.頸部→左手→左足→右手→右足
3.右手→右足→左手→左足→頸部
4.右手→左手→右足→左足→頸部
5.左手→右手→左足→右足→頸部

解答4

解説

トリアージとは

トリアージとは、災害時などの制約があるなかで、治療・搬送の優先順位を決めることである。災害時においては医療スタッフや医薬品などの医療資源が限られるため、より効果的に傷病者の治療を行うために、治療や搬送の優先順位を決定するものである。

トリアージタッグは、装着に支障がある部位を避け「右手→左手→右足→左足→頚部」の順に装着する。トリアージタッグとは、患者名・重症度・傷病名を記入して、トリアージの区分を示すものである。したがって、選択肢4.右手→左手→右足→左足→頸部が正しい。

(※引用:医師会の災害時医療救護体制「トリアージの区分」)

 

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