第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午前71~75】

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71 膀胱留置カテーテルの写真を下に示す。
 成人女性に膀胱留置カテーテルが挿入されている場合、体内に留置されている長さで最も適切なのはどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

解答3

解説

女性の尿道の長さは3~4cmであり、導尿を行う際はカテーテルを外尿道口から5~7cm挿入する。膀胱にカテーテルを留置する場合は、導尿のカテーテルの長さ(5~7cm) + 2~3cmの挿入が必要である。したがって、選択肢3.③(9cm)が正しい。

膀胱留置カテーテルの挿入方法

膀胱留置カテーテルとは、尿道に留置する方法である。長期の留置により、膀胱が膨らみにくくなるため、他の方法が選択できるのであれば、長期留置は避けるべきである。
・女性の尿道の長さは3~4cmであり、導尿を行う際はカテーテルを外尿道口から5~7cm挿入する。
・男性の尿道の長さは18~20cmであり、導尿を行う際はカテーテルを外尿道口から20~22cm挿入する。
膀胱にカテーテルを留置する場合は、導尿のカテーテルの長さ(5~7cm) + 2~3cmの挿入が必要である。

【挿入方法】
カテーテルを無菌的に挿入後、カテーテル内の尿の流出を確認したら、さらに2~3cmカテーテルを進めることで、確実に膀胱内に留置することができる。この長さ以上に挿入すると、膀胱内壁を損傷するおそれがあるため、禁忌である。

 

 

 

 

 

72 Aさん(60歳、男性)は、胃癌の手術目的で入院した。大動脈弁置換術を受けた既往があり、内服していたワルファリンをヘパリンに変更することになった。
 確認すべきAさんの検査データはどれか。

1.PT-INR
2.赤血球数
3.白血球数
4.出血時間
5.ヘモグロビン値

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(60歳、男性、胃癌)
・入院:胃癌の手術目的
・既往:大動脈弁置換術
・ワルファリンをヘパリンに変更。
→ヘパリンとは、血液凝固阻止剤で、抗凝固といって、血液を固まりにくくする作用がある。ヘパリン製剤はそのほかの抗血栓薬と比較すると作用半減期が3〜6時間ととても短く、また拮抗薬もあるので、術直前まで投与が可能という理由からヘパリンが選択されている。したがって、医療現場では、血栓塞栓症の防止や治療、カテーテル挿入時の血液凝固防止などにも用いられる。

1.〇 正しい。PT-INRを確認すべきである。なぜなら、PT-INRとは、PT(プロトロンビン時間)の成績表記のひとつで、血液凝固系の検査で、出血傾向のスクリーニング検査、血液凝固障害の検査、の指標として使われるため。被験者から採取した血液が凝固するまでにどれほどの時間がかかったのかを測定する。正常値は 0.85~1.15(約1)で、血液凝固阻止剤を飲むと上昇し、内服をやめると下がる。
2.× 赤血球数は、確認すべき検査データとはいえない。赤血球とは、その内部にヘモグロビンを有しており、全身の組織へ酸素を運搬する機能を持つ。へモグロビン(Hb)の基準値として、男性14~18g/dL、女性12~16g/dLである。減少すると「貧血」を起こす。
3.× 白血球数は、確認すべき検査データとはいえない。白血球とは、血液中の細胞で、身体への異物の侵入から身体を守る働きがあり、病原菌や異物を取り込んで消化する免疫細胞である。好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球がある。
4.× 出血時間は、確認すべき検査データとはいえない。出血時間は、血小板数や血小板機能を反映している。ちなみに、人間が微細な怪我によって出血した場合に、その出血が自然に止まるまでの標準的な時間(出血時間)は『3分以内』とされている。
5.× ヘモグロビン値は、確認すべき検査データとはいえない。血中ヘモグロビンとは、血液中に含まれるヘモグロビンの量のことで、血色素量とも呼ばれる。貧血の指標として用いられる。

 

 

 

 

 

73 膀胱癌のため尿路ストーマを造設する予定の患者への説明で適切なのはどれか。

1.「尿道の一部を体外に出して排泄口を造ります」
2.「尿意を感じたらトイレで尿を捨てます」
3.「ストーマの装具は毎日貼り替えます」
4.「ストーマに装具を付けて入浴します」
5.「水分の摂りすぎに注意が必要です」

解答4

解説

ストーマとは?

ストーマとは、自然の排泄経路以外に設けた排泄口である。ストーマには大きく分けて、①消化管ストーマ(人工肛門)と②尿路ストーマ(人工膀胱)があり、人工肛門や人工膀胱保有者を「オストメイト」という。

1.× 尿路ストーマでは、「尿道」ではなく、尿管の一部を体外に出して排泄口を造る。尿道とは、排尿において膀胱から外尿道口までの排泄路である。ちなみに、尿管とは、腎臓(腎盂)から膀胱まで蠕動運動により尿を輸送する器官である。
2.× 尿路ストーマでは、「尿意を感じたら」ではなく、排泄物を受け止める袋に排泄物が貯まったつどトイレに尿を捨てる。なぜなら、ストーマは膀胱の神経支配とは断絶されるため、尿意を感じることはない。ちなみに、ストーマ袋の交換は、臭いを抑えるため、毎日又は 2 日に 1 回の頻度で行う。
3.× ストーマの装具は、「毎日」貼り替える必要はない。一般的に、ストーマ装具の交換時期は、季節や皮膚の状態などによって異なるが、通常は2~5日の間隔で交換を行う。一般的なタイプの面板は、4日に1回交換である。面板とは、ストーマ周囲の皮膚に粘着する皮膚保護剤の着いた部分をいう。パウチとは、面板に接着し、ストーマからの排泄を受ける袋である。
4.〇 正しい。ストーマに装具を付けて入浴する。入浴する際は、袋に貯まった尿を捨ててから装具を装着したまま入浴する。装具には耐水効果があるため湯船につかっても漏れない。また、皮膚の清潔を保ち、血液循環や新陳代謝を促す観点から入浴は推奨される。
5.× 特に、水分の制限や摂りすぎに対する注意は必要ない。むしろ、適度な水分摂取を促し、尿量の減少を防ぐように指導する。なぜなら、尿路ストーマの造設を行った場合、尿路感染のリスクが上がるため。

 

 

 

 

 

74 認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)で正しいのはどれか。

1.光熱費は自己負担である。
2.12人を1つのユニットとしている。
3.看護師の配置が義務付けられている。
4.介護保険制度の施設サービスである。
5.臨死期は提携している病院に入院する。

解答1

解説

認知症高齢者グループホームとは?

認知症対応型共同生活介護とは、認知症高齢者グループホームともいい、認知症である者について、共同生活を営むべき住居において、入浴・排泄・食事などの介護、その他日常生活上の世話および機能訓練を行うことをいう。共同生活のなかで利用者の認知症の改善を図る施設である。

1.〇 正しい。光熱費は自己負担である。なぜなら、認知症対応型共同生活介護は、介護保険適応で、共同生活の場であるため。ちなみに、介護保険では光熱費のほか、食費・居住費なども原則として自己負担である。施設によって異なるが、1割負担の場合、家賃、食事代などを合わせると、月10万~20万円程度かかる。
2.× 12人ではなく、5~9人以下を1つのユニットとしている(※引用:「認知症対応型共同生活介護」厚生労働省様)。
3.× 看護師の配置は、義務付けられていない。職員は、管理者(1人)、計画作成担当者(コーニットごとに1人)、介護職員(利用者3人に1人の割合、夜間は1人以上)である。
4.× 介護保険制度の施設サービスではなく、地域密着型サービスである。地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れた地域でサービスを受けられるようにするものである。原則として、その市町村の被保険者しか利用できない。今後増加が見込まれる認知症高齢者や中重度の要介護高齢者等が、出来る限り住み慣れた地域で生活が継続できるように、市町村指定の事業者が地域住民に提供するサービスである。
5.× 臨死期でも、提携している病院に入院する規定はない。ただし、看取り加算が設定されており、看取りも可能である。病院との提携はグループホームの要件ではなく、提携していないこともある。ちなみに、臨死期とは、臨終が差し迫った時期である。症状として、るい痩、ADL(日常生活活動)低下、食欲低下、水分摂取量減少、尿量減少、皮膚虚血、意識レベルの低下、死前喘鳴、下顎呼吸、末梢チアノーゼ、チェーンストークス呼吸、橈骨動脈触知不可などが見られる。

(※引用:「認知症対応型共同生活介護」厚生労働省様)

地域密着型サービスとは?

地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れた地域でサービスを受けられるようにするものである。原則として、その市町村の被保険者しか利用できない。今後増加が見込まれる認知症高齢者や中重度の要介護高齢者等が、出来る限り住み慣れた地域で生活が継続できるように、市町村指定の事業者が地域住民に提供するサービスである。

【地域密着型サービス9種類】
①定期巡回・随時対応型訪問介護看護
②夜間対応型訪問介護
③認知症対応型通所介護
④小規模多機能居宅介護
⑤看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
⑥認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
⑦地域密着型特定施設入居者生活介護
⑧地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
⑨地域密着型通所介護

 

 

 

 

 

75 Aちゃん(3歳、女児)は、病室で朝食を食べていた。そこに、医師が訪室して採血を行いたいと話したところ、Aちゃんは何も答えず下を向いて泣き始めた。その様子を見ていた看護師は、Aちゃんは朝食を中断して採血されるのは嫌だと思っているようなので、朝食後に採血して欲しいと医師に話した。
 この看護師の対応の根拠となる概念はどれか。

1.アセント
2.コンセント
3.アドボカシー
4.ノーマライゼーション
5.ノンコンプライアンス

解答3

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(3歳、女児)
・病室で朝食を食べていた。
・医師「訪室して採血を行いたい」と、Aちゃんは何も答えず下を向いて泣き始めた。
・その様子を見ていた看護師は、Aちゃんは「朝食を中断して採血されるのは嫌だ」と思っているようなので、「朝食後に採血して欲しい」と医師に話した。
→インフォームド・コンセントは、各国の法律や規則の規制を受けるため義務として実施しているが、それに対してインフォームド・アセントは、法規制上の義務が無いにも関わらず、自発的に医師及び治験スタッフが患者に対して治療に関する説明及び同意取得を行うことをいう。

1.× アセント(インフォームド・アセント)とは、小児を対象とした治験を行う際、子どもの理解度に応じてわかりやすく説明し、その内容について被験者である小児自身が納得すること、そして試験に関する同意を得ることをいう。
2.× コンセント(インフォームド・コンセント)とは、患者・家族が病状や治療について十分に理解し、また、医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するか、患者・家族、医療職、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し、皆で合意するプロセスである。
3.〇 正しい。アドボカシー(権利擁護)が、この看護師の対応の根拠となる概念である。権利擁護(アドボカシー)とは、自己の権利を十分に表明することができない者の人権を尊重し、当事者の権利を代弁者として擁護し、当事者の自己決定を支え、その人らしく生活すること(自己実現)を支援することである。アドボカシーは、「擁護」、「支持」、「唱道」などの意味をもつ言葉で、保鍵師の役割において、「代弁者」として用いられることが多い。患者や家族が自身の権利や利益を守るための自己決定ができるように、看護師は、患者や家族を保護し、情報を伝え、支えることでエンパワーメント(患者・家族を強引に説得したりするのではなく、自己決定できるように働きかけること)すること、さらに医療従事者との仲裁を行い、医療者間の調整をすることであると定義づけられている。
4.× ノーマライゼーションとは、「障害者が一般市民と同じ環境で、同じ条件で家庭や地域で共に生活すること」を目指す概念である。障害を持つ人が健常者と共存して「普通の社会生活」営めるように、当該社会から物心両面において改善しようという社会的志向である。
5.× ノンコンプライアンスとは、医師の指示に患者が従わないことを指す。一方、コンプライアンス(遵守行動)とは、医療者からの指示を患者が遵守することを指す。専門職が健康のために必要であると勧めた指示を患者が遵守する行動のことである。

 

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