第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午後76~80】

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76 臓器の移植に関する法律において脳死臓器提供が可能になるのはどれか。

1.1歳
2.6歳
3.15歳
4.20歳
5.年齢制限なし

解答5

解説

臓器の移植に関する法律

(親族への優先提供の意思表示)
第六条の二 移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思を書面により表示している者又は表示しようとする者は、その意思の表示に併せて、親族に対し当該臓器を優先的に提供する意思を書面により表示することができる。(※引用:「臓器の移植に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)

 1997年に施行された臓器移植法は15歳未満の脳死臓器提供は禁止されていたが、2010年の法改正により年齢制限はなくなった。したがって、選択肢5.年齢制限なしが正しい。

 

 

 

 

 

77 乳児の髄膜炎などを抑制するため、平成25年(2013年)に定期接種に導入されたのはどれか。

1.日本脳炎ワクチン
2.ロタウイルスワクチン
3.インフルエンザワクチン
4.麻しん風しん混合ワクチン
5.Hib(Haemophilus influenzae type b)ワクチン

解答5

解説

予防接種法とは?

予防接種法とは、公衆衛生の観点から伝染のおそれがある疾病の発生・まん延を予防するためにワクチンの予防接種を行うとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的として制定された日本の法律である。予防接種法に基づく予防接種には、①定期予防接種と②臨時予防接種があり、定期予防接種の対象疾患には、①A類疾病と②B類疾病がある。さらに同法に基づかない任意接種もある。

A類疾病:主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置き、国の積極的な勧奨があり、本人(保護者)に努力義務がある。
疾患:結核、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、ヒブ(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎

B類疾病:主に個人予防に重点を置き、国の積極的な勧奨なく、本人(保護者)に努力義務はない。
疾患:季節性インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症

(参考:「予防接種とは?」東京都医師会HPより)

1.× 日本脳炎ワクチンは、日本脳炎ウイルス感染を予防する定期接種ワクチンである。日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスにより発生する疾病で、蚊を介して感染する。以前は子どもや高齢者に多くみられた病気である。初期症状として、突然の高熱・頭痛・嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こす病気で、後遺症を残すことや死に至ることもある。
2.× ロタウイルスワクチンは、乳児に多い急性胃腸炎を予防するワクチンで、任意接種である。ロタウイルスとは、乳幼児における下痢症の主要な病原体である。レオウイルス科に属する二本鎖RNAウイルスの属である。離島国などを除き世界中でほとんどの乳幼児が5 ~6歳までに一度はロタウイルスの感染を経験する。感染のたびに免疫が誘導されるため、回を追うごとに軽症化し、大人は発症しないか、極めて軽微となる。
3.× インフルエンザワクチンは、季節性のインフルエンザを予防するワクチンで、任意接種である。インフルエンザとは、インフルエンザウイルスへの感染を原因に発症する。A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38℃以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。上気道症状が1週間程度続くのが典型的である。
4.× 麻しん風しん混合ワクチンは、麻疹・風疹ウイルスの感染予防の定期接種ワクチンである。
5.〇 正しい。Hib(Haemophilus influenzae type b)ワクチンは、乳児の髄膜炎などを抑制するため、平成25年(2013年)に定期接種に導入された。Hib感染症とは、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenza type b)という細菌によって発生する病気で、そのほとんどが5歳未満で発生し、特に乳幼児で発生に注意が必要である。主に気道の分泌物により感染を起こし、症状がないまま菌を保有(保菌)して日常生活を送っている子どもも多くいる。この菌が何らかのきっかけで進展すると、肺炎、敗血症、髄膜炎、化膿性の関節炎等の重篤な疾患を引き起こすことがある(※参考:「Hib感染症」厚生労働省HPより)。

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

 

 

 

 

 

78 生後1、2か月のDown<ダウン>症候群の乳児にみられる特徴はどれか。

1.活気があり機嫌が良い。
2.体重増加は良好である。
3.筋緊張が強く抱っこしにくい。
4.舌が小さく吸啜が困難である。
5.哺乳の途中で眠ってしまうことが多い。

解答5

解説

ダウン症候群の特徴

ダウン症候群(Down症候群)とは、染色体異常が原因で知的障害が起こる病気である。常染色体以上疾患の中で最多である。Down症候群になりうる異常核型は、3種に大別される。①標準トリソミー型:21トリソミー(93%)、②転座型(5%)、③モザイク型(2%)である。発症率は、平均1/1000人である。しかし、35歳女性で1/300人、40歳女性1/100人、45歳女性1/30人と、出産年齢が上がるにつれて確率が高くなる。症状として、①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。

1.× 活気がある「ことが少なく」、機嫌が良い。なぜなら、筋肉の発達が緩やか(筋緊張の低下)であるため。
2.× 体重増加は、「良好」ではなく緩やかなことが多い。なぜなら、筋肉の発達が緩やか(筋緊張の低下)で哺乳不良のため。
3.× 筋緊張が、「強く」ではなく弱く、抱っこしにくい。なぜなら、ダウン症候群の特徴で、抱くとぐにゃっとした感覚(フロッピー・インフアント)があるため。ちなみに、フロッピーインファント(floppy infant )とは、全身の筋緊張が極度に低下し、やわらかで、だらりとしている乳幼児をさす用語である。Scarf徴候(スカーフ徴候)やfrog position(蛙様肢位)はその所見である。原因としては、脳性麻痺や染色体異常などの中枢神経障害のほか、脊髄前角細胞障害(脊髄性筋萎縮症など)、筋に原因がある場合(重症筋無力症、筋ジストロフィー)、代謝異常の場合(糖原病など)がある。
4.× 舌が「小さく」ではなく大きく(巨舌)で吸啜が困難である。舌自体が大きい(巨舌)か、大きくなくても口腔が狭いために相対的に大きいことが多い。
5.〇 正しい。哺乳の途中で眠ってしまうことが多い。なぜなら、筋緊張低下により吸畷力が弱く疲れやすいため。したがって、途中で眠ってしまい必要量の哺乳ができないことが多い。経管栄養をせざるを得ないこともある。

 

 

 

 

 

79 在胎40週日、体重3,011gで出生した男児。出生後1分、呼吸数60/分、心拍数140/分であった。四肢を屈曲させ、刺激に対して啼泣している。体幹はピンク色、四肢にはチアノーゼがみられる。
 この男児の1分後のApgar<アプガー>スコアはどれか。

1.1点
2.3点
3.5点
4.7点
5.9点

解答5

解説

(※図:アプガースコア)

本症例のポイント

・在胎40週日、体重3,011gで出生した男児。
・出生後1分:呼吸数60/分(2点)、心拍数140/分(2点)。
・四肢を屈曲させる(2点)。
・刺激に対して啼泣している(2点)。
・体幹はピンク色、四肢にはチアノーゼ(1点)。
→新生児の観察は、アプガースコアによって出生後1分と5分に行う。観察項目は、①皮膚色、②心拍数、③刺激に対する反射(反応性)、④筋緊張(活動性)、⑤呼吸の5項目で、それぞれ2~0点で点数化する。5項目の合計点数が10~7点は正常、6~4点は第1度(仮死)、3~0点は第2度(重症)新生児仮死である。

本症例は、皮膚色のみ1点(四肢にはチアノーゼがみられる)で、他は2点、計9点である。したがって、選択肢5.9点が正しい。

 

 

 

 

 

80 関節リウマチで療養している人への日常生活指導で適切なのはどれか。

1.床に座って靴下を履く。
2.2階にある部屋を寝室にする。
3.水道の蛇口をレバー式にする。
4.ボタンで着脱する衣服を選択する。
5.寝具はやわらかいマットレスにする。

解答3

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

1.× 「床」ではなく椅子に座って靴下を履く。なぜなら、床に座ると、股・膝関節に負担がかかってしまうため。したがって、必要に応じて自助具の使用を勧める。
2.× 「2階」ではなく1階にある部屋を寝室にする。なぜなら、朝にこわばりが発生したり、階段は関節の痛みや腫れを助長させる恐れがあるため。したがって、転倒のリスクを考え、1階を寝室にする。
3.〇 正しい。水道の蛇口をレバー式にする。なぜなら、水道の蛇口をレバー式にすることで、手指・手関節の動きが小さく、関節への負担を少なくできるため。
4.× 「ボタン」ではなくジッパーやマジックテープで着脱する衣服を選択する。なぜなら、ボタンより関節の動きが少なく簡便に行えるため。ちなみに、頭からかぶって着るトレーナーやパーカーなどの衣類も、肩・肘関節の可動域を強制するため、控えたほうが良い
5.× 寝具は、「やわらかい」ではなく適度な硬さのマットレスにする。なぜなら、やわらかいマットレスは身体が沈み込み、起き上がりする際に、大きな筋力や動きが要求されるため。

 

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