第106回(R5)助産師国家試験 解説【午前11~15】

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11 乳児期の発達で適切なのはどれか。

1.2か月ころに定頸が完了する。
2.4か月ころに人に話しかけるような声を出す。
3.6か月ころに追視を開始する。
4.10か月ころに手に持ったものを口に持っていくようになる。

解答

解説

(※図:日本版デンバー式発達スクリーニング検査)

1.× 「2か月ころ」ではなく4か月ごろに定頸が完了する。
2.〇 正しい。4か月ころに人に話しかけるような声を出す。4か月児健康診査のポイントとして、①体重が増えているか?、②首が座っているか?、③目を合わせることができるか?、④目で物を追うことができるか?、⑤先天性股関節脱臼がないかなどがあげられる。デンバー発達判定法には、4ヶ月の項目で、①手をみつめる、②ガラガラを握る、180°追視、両手を合わす、③キャアキャア喜ぶ 90°頭を上げる、両足で体を支えるなどがあげられる。
3.× 「6か月ころ」ではなく2~3か月ごろに追視を開始する。4か月ごろになると180°の槌指が可能となることが多い。
4.× 「10か月ころ」ではなく2~3か月ごろに手に持ったものを口に持っていくようになる。これをハンドリガードという。ハンドリガードとは、生後2~3か月頃の赤ちゃんが手をじっと見つめたり、指や拳を舐めたりするしぐさのことである。ちなみに、背臥位で足を口に持っていくのは、約5か月からである。

9~10か月検診

・身体計測と精神運動発達検査(パラシュート反射)
・周囲への関心の有無、目線は合うか、後追い
・ハイハイ、つかまり立ち、指先でものをつかむ
・バイバイなどの人まね
・「ちょうだい」で渡してくれるなど、人とのやりとりができるようになる。

(※一部引用:「検診に呼ばれたけど何するの?」ワールド健康保険組合様より)

 

 

 

 

 

12 A病院では無痛分娩を希望する妊娠中期の妊婦を対象に母親学級を開催することになった。テーマは「無痛分娩の正しい理解と自分らしいお産に向けて」とした。講義、演習、質疑応答で構成し、演習内容の1つはバースプランの作成に決まっている。
 その他の演習内容で優先度が高いのはどれか。

1.妊婦体操
2.産痛緩和法
3.いきみの呼吸
4.ベッド上排泄

解答

解説

ポイント

・【対象】無痛分娩を希望する妊娠中期の妊婦。
・【方法】母親学級を開催。
・テーマ「無痛分娩の正しい理解と自分らしいお産に向けて」。
・講義、演習、質疑応答で構成し、演習内容の1つはバースプランの作成に決まっている。
→今回の場合、無痛分娩に必要な演習内容の選択が必要となる。

【用語の説明】
→無痛分娩とは、麻酔を用いて痛みを緩和しながら分娩を行うことである。お産の痛みについて悩みや不安がある症例に対し、無痛分娩の検討を促す。
→母親学級とは、医師や助産師さんから、妊婦さんに必要な妊娠・出産・育児に関する知識や情報を学んだり、沐浴や赤ちゃんの抱っこなどの体験ができたりする場のことである。
→バースプランとは、妊婦さんやご家族にとって素敵なお産・望むお産にするために、妊婦さんとご家族が妊娠中やお産についての希望や一緒に頑張ること、助産師に求めることなどを記入する用紙である。バースプランを書くことで、お産への心の準備もでき、落ち着いた状態でお産にのぞむことができる。

1.× 妊婦体操は優先度が低い。なぜなら、すでに獲得済みと考えられるであるため。妊婦体操とは、妊娠12~16週に行う安定期に入った妊娠中の女性に適した運動である。マタニティ・エクササイズとも呼ばれ、体操により、肩こりや腰痛などを解消します。 ストレスの発散、体重増加防止、産道の柔軟性向上に寄与する。
2.× 産痛緩和法より優先度が高いものが他にある。なぜなら、無痛分娩の対象に、あえて産痛緩和法を行う効果は薄いと考えられるため。産痛緩和法とは、赤ちゃんを産むときのおなかや腰などの痛み(産痛)を和らげる方法である。具体的には、おなかや腰のマッサージをしたり、温めたり、楽な姿勢を取ったり、緊張をほぐすための呼吸法を行ったりする。心と体をリラックスさせることが大切である。
3.〇 正しい。いきみの呼吸は、演習内容で優先度が高い。なぜなら、無痛分娩に限らず、分娩時において、いきみの練習は必須であるため。早いタイミングで努責(いきみ)を行うと産道に傷がついたり赤ちゃんの頭に無理がかかったりする。分娩第1期は呼吸法や肛門圧迫で努責(いきみ)を逃す。分娩第2期以降に、努責(いきみ)を促す。
4.× ベッド上排泄は優先度が低い。なぜなら、 硬膜外カテーテル留置前に浣腸を行い、排便を促すため。歩行可能であれば、トイレで排尿してもらい、歩行不能・排尿が困難な場合は尿道カテーテルを挿入する。

妊娠週数

妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)
妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)
妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

 

 

 

 

 

13 Bowlby〈ボウルビィ〉が提唱したアタッチメント〈愛着〉の説明で正しいのはどれか。

1.出生直後に確立する。
2.周産期に限定した概念である。
3.子どもが養育者に対して抱く情緒的なきずなである。
4.女性が母親として心理的に適応していく過程である。

解答

解説

MEMO

J. Bowlby(ジョン・ボウルビー)は、愛着理論である。乳幼児期において療育者に受け入れられ十分な愛情を受ける経験をすることが、その後の人格形成に重要である、と提唱した。「子どもが不安な時に親や身近にいる信頼できる人にくっつき安心しようとする行動」のことである。

愛着(アタッチメント)とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことである。ネグレクトによって反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)が起こる。反応性愛着障害とは、5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものである(例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全)。こどもの対人関係の障害である。

1.× 「出生直後」ではなく乳幼児期(0~5歳)に確立する。愛着(アタッチメント)とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことである。
2.× 「周産期」ではなく乳幼児期(0~5歳)に限定した概念である。反応性愛着障害とは、5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものである(例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全)。こどもの対人関係の障害である。ちなみに、周産期とは、妊娠22週から出生後7日未満までの期間をいい、合併症妊娠や分娩時の新生児仮死など、母体・胎児や新生児の生命に関わる事態が発生する可能性が高くなる期間である。
3.〇 正しい。子どもが養育者に対して抱く情緒的なきずなである。J. Bowlby(ジョン・ボウルビー)は、愛着理論である。乳幼児期において療育者に受け入れられ十分な愛情を受ける経験をすることが、その後の人格形成に重要である、と提唱した。「子どもが不安な時に親や身近にいる信頼できる人にくっつき安心しようとする行動」のことである。
4.× 女性が母親として心理的に適応していく過程は、Rubin<ルービン>の母性論である。ルービン,R.による母親役割獲得過程とは、①模倣、②ロールプレイ、③空想、④取り込みー投影ー拒絶、⑤悲嘆作業の5つの認識的操作を行いながら児との心理的絆形成が進むプロセスである。

Rubinの母親役割

ルービン,R.による母親役割獲得過程とは、①模倣、②ロールプレイ、③空想、④取り込みー投影ー拒絶、⑤悲嘆作業の5つの認識的操作を行いながら児との心理的絆形成が進むプロセスである。

①模倣:先輩母親や専門家の行動を母親役割のモデルとし、真似をすること。
②ロールプレイ:自分のお腹にいる子どもや他者の子どもを通して、母親たちが一般的に体験していることを自分も同じように体験すること。
③空想:自分の子どもや自分自身の状況を思い描くこと。
④取り込みー投影ー拒絶:空想した行動や態度などを母親役割のモデルとして自分に投影し、それを受け入れるか拒絶するかを吟味すること。
⑤悲嘆作業:母親としての自分とは立場が異なる過去の自分について思い起こし、妊娠によってできなくなったことや今度変化すると思われることについて考え、嫌だと思ったりあきらめたりすること。

母親として適応するための褥婦の心理的過程を3つの時期に分ける。
①受容期(自分自身の基本的欲求に意識が向けられる時期):産褥1~2日目(赤ちゃんを指先で触れたり、抱っこしたりすることで自分の子供だと認識する)
②保持期(自分の体のセルフケアができ、赤ちゃんの欲求に関心がうつり、子供との関係づくりが始まる時期):産褥3~10日間(喜びと同時に、母親としての能力があるかどうか不安を抱いたり、些細な周囲の言葉が傷つく)
③解放期(ママとしての課題を果たす時期):産褥10日~1か月(子供と母親がお互い理解し合っていきますが、子供の要求が多すぎてママは応えきれずに罪悪感を抱き、自らの存在に対し否定的になることもある)
これらの3つの段階を通して、母親役割を獲得する。

 

 

 

 

 

14 妊婦に対するアスピリンとヘパリンの併用療法が適応となる疾患はどれか。

1.糖尿病
2.関節リウマチ
3.甲状腺機能亢進症
4.抗リン脂質抗体症候群

解答

解説

MEMO

アスピリンとは、酸性非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)である。 プロスタグランジン生合成の律速酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、プロスタグランジンの産生を抑制することにより、血小板凝集抑制作用・抗炎症作用・解熱作用・鎮痛作用を現す。

ヘパリンとは、血液凝固阻止剤で、抗凝固といって、血液を固まりにくくする作用がある。人の肝臓でも生成される。したがって、医療現場では、血栓塞栓症の防止や治療、カテーテル挿入時の血液凝固防止などにも用いられる。

1.× (妊娠)糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。治療は、血糖コントロールである。
2.× 関節リウマチとは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。
3.× 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。
4.〇 正しい。抗リン脂質抗体症候群は、妊婦に対するアスピリンとヘパリンの併用療法が適応となる疾患である。「抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の女性では過去の静脈血栓塞栓症の既往がある場合には、とくに静脈血栓塞栓症を含めた動静脈血栓症のハイリスクである。抗リン脂質抗体症候群合併の妊娠では未分画ヘパリンの投与に加えて低用量アスピリンの服用を行うことを推奨する」と記載されている(※引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020」より)。ちなみに、抗リン脂質抗体症候群とは、抗リン脂質抗体症候群(APS)は自己免疫疾患であり、リン脂質(またはリン脂質と結合した蛋白)に対する自己抗体により引き起こされる様々な病態の総称である。抗リン脂質抗体症候群(APS)には、基礎疾患を伴わないもの(原発性APS)と伴うもの(続発性APS)があり、続発性APS は全身性エリテマトーデス(SLE)を基礎疾患とする場合が多い。主症状は動静脈の血栓症妊娠合併症である。

 

 

 

 

 

15 Aさん(25歳、初産婦)は妊娠13週で妊婦健康診査を受診し、子宮頸管のクラミジア検査を受け、結果は陽性だった。
 Aさんへの助産師の説明で適切なのはどれか。

1.「治療は抗菌薬の点滴になります」
2.「治療効果は採血検査で分かります」
3.「治療効果の判定を1週間後に行います」
4.「治療効果の判定まで性交時にコンドームをつけてください」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、初産婦)
・妊娠13週:妊婦健康診査受診。
・子宮頸管のクラミジア検査:陽性
→クラミジアとは、細菌とウイルスの中間に属する病原体で、子宮頸管の中にひそんでいると、お産のときに赤ちゃんに感染し、 赤ちゃんに結膜炎、肺炎などを引き起こす恐れがある。このため、妊娠中にクラミジア検査を行い、陽性の場合は治療を要し、お腹の中の癒着や、卵管の通過障害の存在が疑われる。

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020」より)

1.× 治療は、「抗菌薬」ではなくマクロライド系抗生物質製剤の点滴になる。「日本性感染症学会は「性感染症診断・治療ガイドライン 2016」の中で、現在わが国で用いられているアジスロマイシン(ジスロマックⓇ錠等)、クラリスロマイシン(クラリスⓇ錠等)、ミノサイクリン(ミノマイシンⓇ錠等)、ドキシサイクリン(ビブラマイシンⓇ錠等)、レボフロキサシン(クラビットⓇ錠等)、トスフロキサシン(オゼックスⓇ錠等)、シタフロキサシン(グレースビットⓇ錠等)の中から、胎児に対する安全性を考慮しアジスロマイシン、クラリスロマイシン(いずれもわが国の添付文書では有益性投与)が投与可能としている」と記載されている(※引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020」より)。
2.× 治療効果は、「採血検査」ではなく核酸増幅を用いる。「クラミジア感染の診断には子宮頸管の分泌物や擦過検体からクラミジア・トラコマティスを検出する。このための検査として分離同定法、核酸増幅法、核酸検出法、EIA法があるが、なかでも核酸増幅法(TMA法、PCR法、SDA法など)が高感度である。感度は劣るが、EIA 法や核酸検出法も用いられている。血清抗体検査は間接的検査であり、クラミジアの有無を直接証明するものではない。したがって、妊婦スクリーニング法として血清抗体検査は適切でない」と記載されている(※引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020」より)。
3.× 治療効果の判定は、「1週間後」ではなく3週間後に行う。「治療後早期に治癒判定が行われると偽陽性になることがあるため、投薬終了後 3 週間以上あけて治癒判定を行うことが望ましい」と記載されている(※引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020」より)。
4.〇 正しい。「治療効果の判定まで性交時にコンドームをつけてください」と説明する。「クラミジア陽性妊婦では,パートナーにも検査・治療を受けることを勧める。パートナーからの再感染を防止するためである。米国においても再感染予防のためパートナーの治療を強く推奨している」と記載されている(※引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020」より)。

 

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