第106回(R5)助産師国家試験 解説【午前46~50】

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次の文を読み44~46の問いに答えよ。
 Aさん(37歳、初産婦)は身長155cm、非妊時体重48kgで妊娠経過は順調であった。13時に陣痛発来し、15時に夫に付き添われて入院した。入院時、内診所見は子宮口3cm開大、展退度60%、Station-3、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は中央、矢状縫合は横径に一致し、小泉門は3時の方向に触れ、未破水である。陣痛間欠5~6分、陣痛発作30秒。胎児心拍数基線は145bpmであった。

46 陣痛開始から14時間経過し、陣痛間欠は2分、陣痛発作は50秒になった。子宮収縮に伴い、最下点90~100bpmの一過性徐脈が出現し始めた。このときの内診所見は、子宮口全開大、Station+3、陰裂や肛門の哆開はない。小泉門が先進し矢状縫合は縦径に一致している。Aさんは「おしりが押される感じです」と言いながら、陣痛発作時は深呼吸で乗りきっている。
 このときの助産師の対応で適切なのはどれか。

1.急速遂娩を開始する。
2.短息呼吸に切り替える。
3.陣痛発作時は深呼吸を続けてもらう。
4.Valsalva〈バルサルバ〉法で努責を誘導する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(37歳、初産婦、身長155cm、非妊時体重48kg)
・陣痛開始から14時間経過
・陣痛間欠:2分、陣痛発作:50秒。
・子宮収縮に伴い、最下点90~100bpmの一過性徐脈が出現し始めた。
・内診所見:子宮口全開大、Station+3、陰裂や肛門の哆開はない
・小泉門:先進、矢状縫合:縦径に一致。
・Aさん「おしりが押される感じです」と。
・陣痛発作時:深呼吸で乗りきっている。
→各評価の正確な読み取りと考察が必要となる問題である。異常や正常値なども正確に覚えておこう。

1.× 急速遂娩を開始する必要はない。なぜなら、本症例は、最下点90~100bpmの一過性徐脈はみられるものの、急速遂娩が必要な高度変動一過性徐脈とはいえないため。変動一過性徐脈とは、15bpm以上の心拍数減少が急速に起こり、開始から回復まで15秒以上2分未満の波形をいう。高度の判断は、①最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上、②最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上で評価する。子宮収縮に伴って発生する場合は、一定の形を取らず、下降度、持続時間は子宮収縮ごとに変動することが多い。緊急時の対応(症状の悪化や胎児仮死のある場合)として、鉗子分娩・吸引分娩及び緊急帝王切開などのほかにも、可能な限り速やかに分娩を完了させる必要がある場合に行われる産科手術で、急速遂娩と呼ばれる。つまり、急速分娩とは、分娩中に母児に危機的状況が生じた場合に、分娩を早めるために、①帝王切開、②鉗子分娩、③吸引分娩などによって児を娩出することである。
2.× 短息呼吸に切り替える必要はない。なぜなら、本症例は、第2期であり、短息呼吸(ハッ、ハッ、ハッ)は、発露後に行うため。努責は発露まで行い、その後は短息呼吸へと切り替える。具体的な切り替えタイミングは、児娩出時の後頭結節が恥骨弓からはずれ、反屈位となって会陰部に児頭があらわれたときである。短息呼吸とは、赤ちゃんの頭が出る瞬間に会陰部を傷つけないよう、お腹の力をゆるめて自然に産道を通過させるために行う。いきみから短息呼吸への切り替えは、助産師がリードする。〈方法〉①両手を胸に置き、体中の筋肉をゆるめ、口を開けハッハッハッと息を早く吐く呼吸をする。②息が続かなくなったら、息つぎをする。
3.〇 正しい。陣痛発作時は深呼吸を続けてもらう。なぜなら、本症例は、陰裂や肛門の哆開はないため。つまり、排臨が起きておらず、自然な努責が起こるまで無理な力が入らないよう深呼吸が望ましい。ちなみに、哆開(読み:しかい)とは、離開もしくは手術後に縫合創が開いてしまった状態のことである。肛門保護は脱肛及び便による分娩野の汚染を防ぐ目的で行う。分娩第2期の排臨・発露が起こる頃に肛門が弛緩してくるため陣痛発作時には乾綿を肛門部にあてて押さえる。排臨とは、第2期に起こる陣痛発作時に陰裂間に児頭が見えて陣痛間欠期には見えなくなる現象である。
4.× Valsalva〈バルサルバ〉法で努責を誘導する必要はない。なぜなら、バルサルバ法は、分娩第2期を短縮する以外に有用ではなく、母体の酸素飽和度が低下して胎児の低酸素状態を誘発するため。バルサルバ法とは、息を止めて声門を閉じて長くいきむ呼吸法であり、その適応は第2期分娩遷延や微弱陣痛、胎児機能不全(胎児心拍異常)で急速に娩出が必要な場合など、特別の場合に限定する。

高度変動一過性徐脈の対応

【優先順位が高い対応】
①子宮収縮薬使用中:減量あるいは投与中止とする。
②分娩中:増大した子宮による大動脈、下大静脈圧迫による心拍出量低下、それに伴う胎盤循環不全防止のために母体の体位変換、とくに側臥位を試みる。
③母体への酸素投与:非再呼吸式マスク(一方向弁付きリザーバーマスク)を用い、10L/分かそれ以上の酸素流量下で80~100%の酸素濃度を確保する。
④その他:ニトログリセリンや塩酸リトドリン等の緊急子宮弛緩、急速輸液投与等がある。
⑤高度徐脈から胎児心拍数が回復しない場合:急速遂娩(読み:すいべん)を行う。遂娩とは、可能な限り速やかに分娩を完了させる必要がある場合に行われる産科手術である。

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

 

 

 

 

 

次の文を読み47~49の問いに答えよ。
 Aさん(38歳、1回経産婦)は妊娠経過中、特に異常の指摘はなかった。妊娠37週2日、妊婦健康診査時の胎児心拍数陣痛図で胎児の遷延性徐脈を認めたため緊急帝王切開術でBちゃん(女児)を出産した。帝王切開の手術中、羊水混濁は認めなかった。Bちゃんは出生時、自発呼吸がなく筋緊張も低下していた。すぐに蘇生の初期処置を行ったが自発呼吸は出現せず、聴診で心拍数40/分のため出生後1分からバッグマスク換気にて人工呼吸を開始した。その後、有効な換気ができていることを確認しつつバッグマスク換気を継続したが児の心拍数上昇が認められず、胸骨圧迫を行うことにした。

47 胸骨圧迫の手技で正しいのはどれか。

1.一本指法
2.両母指法
3.片手法
4.両手法

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(38歳、1回経産婦、妊娠経過中異常なし)
・妊娠37週2日:胎児心拍数陣痛図にて遷延性徐脈あり。
・緊急帝王切開術:Bちゃん(女児)出産。
・聴診で心拍数40/分のため出生後1分からバッグマスク換気にて人工呼吸を開始。
・有効な換気ができていることを確認しつつ、バッグマスク換気を継続した。
・児の心拍数上昇が認められず、胸骨圧迫を行うことにした。
→胸骨圧迫とは、心停止した傷病者の心臓付近を圧迫することにより脳や心臓に血液の循環を促す心肺蘇生を目的とした一次救命処置である。成人と幼児で適する力の入れ具合や胸骨の沈み具合が異なる。成人では胸骨が、5cmほど沈むように胸骨圧迫をする。一方で、幼児では年齢に応じた体格の差があるため、成人のような絶対値を当てはめることができない。そのため、幼児においては個別の体格を判断したうえで、胸の厚さの1/3程度が沈む強さで胸骨圧迫を行うことが推奨されている。年齢にかかわらず100~120回を目安に行う。

(※図引用:「乳児・小児の一次救命処置 」学建書院様HPより)

1.× 一本指法ではなく二本指法である。一本指法は存在しない手技である。二本指法とは、手のひら全体で後頭部を抱えたまま、片方の腕に乳児の背中を乗せてあおむけに、もう一方の手の2本の指(示指・中指もしくは中指・薬指)で胸の真ん中を力強く数回連続して圧迫する。
2.〇 正しい。両母指法が乳児に対する胸骨圧迫の手技である。両母指法とは、胸骨圧迫をする者が児の足側に立ち、両手で胸郭をつつみこみ、両母指を用いて胸骨を圧迫する手技である。救助者が2人いる場合には、両方の親指で胸骨を圧迫することにより血流をもたらす胸郭を包み込み、両母指圧迫法で行う。この方法は、2本の指での胸骨圧迫と比べて血流がより良好となり、安定して圧迫の深さや力が得られ、血圧を高める可能性がある。
3~4.× 片手法/両手法は、健常の小児から大人に対する胸骨圧迫の手技である。繊細な力の入れ具合が難しいのが特徴である。

 

 

 

 

 

次の文を読み47~49の問いに答えよ。
 Aさん(38歳、1回経産婦)は妊娠経過中、特に異常の指摘はなかった。妊娠37週2日、妊婦健康診査時の胎児心拍数陣痛図で胎児の遷延性徐脈を認めたため緊急帝王切開術でBちゃん(女児)を出産した。帝王切開の手術中、羊水混濁は認めなかった。Bちゃんは出生時、自発呼吸がなく筋緊張も低下していた。すぐに蘇生の初期処置を行ったが自発呼吸は出現せず、聴診で心拍数40/分のため出生後1分からバッグマスク換気にて人工呼吸を開始した。その後、有効な換気ができていることを確認しつつバッグマスク換気を継続したが児の心拍数上昇が認められず、胸骨圧迫を行うことにした。

48 Bちゃんは新生児蘇生によって心拍数は上昇したが、自発呼吸が弱いため気管挿管後にNICUへ入院した。生後2時間、Bちゃんに対して低体温療法の適応を検討することにした。
 適応の検討に必要な情報はどれか。

1.体温
2.頭囲
3.吸啜反射
4.Apgar〈アプガー〉スコアの5分値

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(38歳、1回経産婦、妊娠経過中異常なし)
・妊娠37週2日:胎児心拍数陣痛図にて遷延性徐脈あり。
・緊急帝王切開術:Bちゃん(女児)出産。
・帝王切開の手術中:羊水混濁なし。
・出生時:自発呼吸なく、筋緊張低下。
・児の心拍数上昇が認められず、胸骨圧迫。

・新生児蘇生:心拍数上昇、自発呼吸が弱いため気管挿管後にNICUへ入院。
・生後2時間:低体温療法の適応を検討。
→低体温療法とは、頭または全身の体温を下げることによって、脳保護作用を期待する治療法である。治療には、体温管理をする機器、人工呼吸器など高度な機器を必要とし、厳格な監視を必要とする。新生児低酸素性虚血性脳症では、生後6時間以内、中等度から重度においてのみ効果が報告されている。低体温療法の適応基準として、フローチャートが存在するが、最も大切なのは、新生児が低酸素脳症(HIE)の徴候を示しているかどうかである。低酸素脳症とは、脳に酸素が足りなくなってしまい、脳が酸素不足の状態になることをさす。脳に酸素が足りなくなると、重症の場合は意識がなくなったり、脳死状態になり死に直結したりする場合もある。

(※図引用:「エントリー基準 フローチャート」東京医学社様より)

1.× 体温より低体温療法の適応を検討する項目が他にある。低体温療法とは、頭または全身の体温を下げることによって、脳保護作用を期待する治療法である。
2.× 頭囲より低体温療法の適応を検討する項目が他にある。頭囲が大きい場合、ソトス症候群が疑われる。ソトス症候群とは、NSD1遺伝子の機能異常による大頭、過成長、骨年齢促進、発達の遅れ、痙攣、心疾患、尿路異常、側彎などを呈する先天異常症候群である。
3.〇 正しい。吸啜反射が、低体温療法の適応の検討に必要な情報である。低体温療法の適応基準において、①筋緊張低下、②“人形の目”反射もしくは瞳孔反射異常を含む異常反射、③吸啜の低下もしくは消失、④臨床的けいれんがあげられる。ちなみに、吸啜反射とは、原始反射のひとつであり、口腔内に指を入れると、舌を動かして吸啜する(吸う)反射のことである。出生時からみられ、生後4~6か月頃には消失する。
4.× Apgar〈アプガー〉スコアの「5分値」ではなく10分値が、低体温療法の適応の検討に必要な情報である。低体温療法の適応基準において、生後10分のアブガースコアが5以下のほかにも、①10分以上の持続的な新生児蘇生(気管挿管,陽圧換気など)が必要、②生後60分以内の血液ガス(臍帯血,動脈,静脈,末梢毛細管)でpHが7未満、③生後60分以内の血液ガス(臍帯血,動脈,静脈,末梢毛細管)でbase deficitが16 mmol/L以上があげられる。

 

 

 

 

 

次の文を読み47~49の問いに答えよ。
 Aさん(38歳、1回経産婦)は妊娠経過中、特に異常の指摘はなかった。妊娠37週2日、妊婦健康診査時の胎児心拍数陣痛図で胎児の遷延性徐脈を認めたため緊急帝王切開術でBちゃん(女児)を出産した。帝王切開の手術中、羊水混濁は認めなかった。Bちゃんは出生時、自発呼吸がなく筋緊張も低下していた。すぐに蘇生の初期処置を行ったが自発呼吸は出現せず、聴診で心拍数40/分のため出生後1分からバッグマスク換気にて人工呼吸を開始した。その後、有効な換気ができていることを確認しつつバッグマスク換気を継続したが児の心拍数上昇が認められず、胸骨圧迫を行うことにした。

49 Bちゃんには低体温療法の適応があると判断され、治療の準備を始めた。生後3時間、低体温療法の準備中に急な心拍数の上昇と眼球運動の停止、両肘を律動的に屈曲させる動きが認められた。一連の症状は約30秒間持続し、その間、他動的に上肢の動きを制限しても律動的な筋収縮は続いていた。
 Bちゃんの症状の原因で可能性が高いのはどれか。

1.逃避反射
2.落陽現象
3.新生児発作
4.ストレス行動
5.迷走神経反射

解答

解説

本症例のポイント

・低体温療法の適応があると判断:治療の準備開始。
・生後3時間(低体温療法の準備中):急な心拍数の上昇と眼球運動の停止、両肘を律動的に屈曲させる動き。
・一連の症状:約30秒間持続、その間、他動的に上肢の動きを制限しても律動的な筋収縮は続いていた。
→本症例は、低酸素脳症による痙攣発作が疑われる。低酸素脳症とは、脳に酸素が足りなくなってしまい、脳が酸素不足の状態になることをさす。症状としては、意識障害、運動麻痺、認知機能の低下、安静時の骨格筋の緊張が低下する四肢筋トーマス、痙攣発作、不随意運動などがある。脳に酸素が足りなくなると、重症の場合は意識がなくなったり、脳死状態になり死に直結したりする場合もある。

1.× 逃避反射は考えにくい。なぜなら、本症例の急な心拍数の上昇眼球運動の停止など説明つかないため。逃避反射とは、屈曲反射ともいい、四肢の皮膚に強い刺激(痛み刺激)を加えると、その肢が屈曲する反射である。背臥位の新生児の足底を刺激すると下肢を屈曲させて足をひっこめる。胎児期後期から、生後1、2ヵ月までに消失する。
2.× 落陽現象は考えにくい。なぜなら、本症例の急な心拍数の上昇両肘を律動的に屈曲させる動きなど説明つかないため。落陽現象とは、眼球上転運動障害のことである。新生児・乳児期(0~2歳ごろ)に水頭症が発症した場合、頭蓋骨縫合が完全に癒合していないため、脳室の拡大に伴って頭蓋が拡張し、頭囲の拡大や大泉門の膨隆が起こる。さらに脳室拡大が高度になると、頭皮静脈の怒張や落陽現象などが出現する。
3.〇 正しい。新生児発作が症状の原因で可能性が高い。低酸素脳症とは、脳に酸素が足りなくなってしまい、脳が酸素不足の状態になることをさす。症状としては、意識障害、運動麻痺、認知機能の低下、安静時の骨格筋の緊張が低下する四肢筋トーマス、痙攣発作、不随意運動などがある。脳に酸素が足りなくなると、重症の場合は意識がなくなったり、脳死状態になり死に直結したりする場合もある。
4.× ストレス行動は考えにくい。なぜなら、本症例の急な心拍数の上昇眼球運動の停止など説明つかないため。ストレス行動とは、新生児がストレスにさらされた時に見せる一連の行動である。例えば、ミルクを飲まなくなる、飲んでも吐いてしまうなどの食事に関するものや、寝なくなった、夜泣きをするなどの睡眠に関するものが多い。
5.× 迷走神経反射は考えにくい。なぜなら、急な心拍数の上昇と眼球運動の停止、両肘を律動的に屈曲させる動きなど説明つかないため。迷走神経反射は、副交感神経が優位になる反射のことである。例えば、血管迷走神経反射は、様々な刺激により副交感神経の亢進と交感神経の抑制が起きることをいう。症状は血圧低下、徐脈が中心で、重度の場合は失神に至る。

頸動脈洞反射とは?

頸動脈洞反射(ツェルマーク・へーリング反射)とは、頸動脈を刺激することにより生じる迷走神経反射のことである。脈拍を抑えることを目的として利用されることがある(頸動脈洞マッサージ)。つまり、副交感神経優位になる。
求心路:舌咽神経
遠心路:迷走神経

 

 

 

 

 

 

次の文を読み50~52の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、経産婦、会社員)は3,000gの男児を正常分娩で出産した。会社員の夫とBちゃん(2歳2か月、長女)の4人暮らし。助産師は保健センターから新生児訪問事業の委託を受けて、生後21日に訪問した。

50 新生児への授乳状況について助産師が確認すると、Aさんは「この子は1回の授乳に40分から1時間かかっています。長女のときは母乳でしたが、今回は無理でしょうか」と話した。現在まで人工乳の補足は行っていない。児の体重増加は30g/日である。
 Aさんの母乳栄養の状況で優先して観察する項目はどれか。

1.授乳時の姿勢
2.乳房のタイプ
3.水分摂取量
4.食事内容

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、経産婦、会社員、3,000g男児を正常分娩)
・4人暮らし:会社員の夫とBちゃん(2歳2か月、長女)。
・助産師:生後21日に訪問。
・新生児への授乳状況:Aさん「この子は1回の授乳に40分から1時間かかっています。長女のときは母乳でしたが、今回は無理でしょうか」と。
・現在まで人工乳の補足は行っていない。
・児の体重増加は30g/日である。
→1回の授乳に40分から1時間かかっていることから、その原因を探っていく必要がある。授乳時間が長くなる場合は母乳不足を疑うが、児の体重増加は30g/日(正常範囲内)であるため、授乳時の姿勢や効果的な吸着(ラッチオン)の観察が必要となる。正常乳児の一日体重増加量の目安として、0~3か月は、25~30g/日である。ちなみに、一般的に、はじめの10分間で全量の約90%を哺乳するといわれている。

1.〇 正しい。授乳時の姿勢は、母乳栄養の状況で優先して観察する項目である。なぜなら、授乳時間が長くなる場合は母乳不足を疑うが、児の体重増加は30g/日(正常範囲内)であるため。授乳時の姿勢や効果的な吸着(ラッチオン)を観察する必要がある。児の下顎が乳房に埋もれこむようにすることで効果的な吸着(ラッチオン)が行えるようになる。①口が大きく開く、②唇が外向き、③下顎が乳房に触れている、④乳房の上方に比べ下方を深く含んでいるといった深い吸い方ができると乳頭亀裂などのトラブルが少なくなる。
2.× 乳房のタイプより観察する項目が他にある。なぜなら、乳房のタイプ(型)は、観察したところで形を変更することが困難であるため。乳房のタイプより観察し、そのタイプに合わせて姿勢や効果的な吸着(ラッチオン)の指導が必要である。
3~4.× 水分摂取量/食事内容より観察する項目が他にある。なぜなら、児の体重増加は30g/日で正常範囲内であるため。また、本症例は長女を育てた経験があり、水分摂取量や食事内容が不足している場合は、脱水や便秘などほかの症状も起きているはずである。

正常乳児の一日体重増加量の目安

・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g

 

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