第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午後111~115】

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次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aちゃん(6歳、女児)は、重症の新生児仮死で出生した。誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しているため、今回の入院で経鼻経管栄養法を導入し、退院後は週1回の訪問看護を利用することになった。現在は四肢と体幹の著しい運動障害があり、姿勢保持が困難で、移動および移乗は全介助である。声かけに笑顔はみられるが、指示に応じることはできない。

111 母親は「Aは来年の4月には小学校に入学する年齢だけど、入学に向けてどうすればよいのか分からない」と訪問看護師に相談した。
 訪問看護師が行う援助として適切なのはどれか。

1.自宅に教員を派遣できる小学校に連絡する。
2.Aちゃんが入学できる特別支援学校を紹介する。
3.父親に仕事を調整してAちゃんの送迎をするよう勧める。
4.教育委員会に小学校入学に関する相談をするよう勧める。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(6歳、女児、重症の新生児仮死
・誤嚥性肺炎で入退院を繰り返している。
・退院後:週1回の訪問看護を利用する。
・現在:四肢と体幹の著しい運動障害、姿勢保持が困難、移動および移乗は全介助
・声かけに笑顔はみられるが、指示に応じることはできない
・母親「Aは来年の4月には小学校に入学する年齢だけど、入学に向けてどうすればよいのか分からない」と。
→訪問看護師は、小学校入学の支援など専門的な対応まで行うことができない(専門性を持たない)。したがって、母親の「入学に向けてどうすればよいのか分からない」という悩みに対し、専門機関に案内するのが望ましい。余計なことをいったり、違ったことをいうと信用問題やもめごとに発展しかねないため注意が必要である。

1.× 自宅に教員を派遣できる小学校に連絡する優先度は低い。なぜなら、母親は、一言も「自宅に教員を派遣して小学校に通わせたい」と言っていないため。勝手に家族の思いや発言を推測することは、信用問題やもめごとに発展しかねないため注意が必要である。
2.× Aちゃんが入学できる特別支援学校を紹介する優先度は低い。なぜなら、母親は、一言も「特別支援学校に通わせたい」と言っていないため。勝手に家族の思いや発言を推測することは、信用問題やもめごとに発展しかねないため注意が必要である。ちなみに、特別支援学校とは、障害者等が「幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準じた教育を受けること」と「学習上または生活上の困難を克服し自立が図られること」を目的とした日本の学校である。
3.× 父親に仕事を調整してAちゃんの送迎をするよう勧める優先度は低い。なぜなら、小学校への通学だけが問題ではないため。本症例は、重症の新生児仮死で、誤嚥性肺炎で入退院を繰り返している。また、特別支援学校では専用のスクールバスを用意していることが多い。
4.〇 正しい。教育委員会に小学校入学に関する相談をするよう勧める
4.〇 正しい。教育委員会に、小学校入学に関する相談をするよう勧める。なぜなら、教育委員会で教育相談が行えるため。教育相談では、①学校生活に関わる問題就学や進路、②子どもの発達、③学習に対する不安、④子どもの教育や養育上の問題など行える。本症例にあった専門的なアドバイスをもらえるため、成長発達を促せるよう教育委員会の相談窓口を紹介する。

訪問看護とは?

訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(78歳、男性)は、尿路感染症による敗血症で入院し、5日が経過した。中心静脈ラインから輸液ポンプを使用して乳酸加リンゲル液が投与され、その側管からシリンジポンプを使用してノルアドレナリンが投与されている。

112 朝9時、日勤の看護師が訪室したとき、シリンジポンプの閉塞と輸液ポンプの気泡混入の、2つのアラームが作動した。ノルアドレナリンの入ったシリンジは残量があり、乳酸加リンゲル液のボトルが空になっていた。各ポンプおよび各輸液ラインの状況を図に示す。
 看護師がアラームを停止した後に行うこととして最も優先度が高いのはどれか。

1.乳酸加リンゲル液を準備する。
2.ノルアドレナリンを準備する。
3.輸液ポンプ内のラインの気泡を除く。
4.輸液ラインの閉塞や屈曲がないか確認する。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(78歳、男性、尿路感染症による敗血症
・5日:中心静脈ラインから輸液ポンプを使用して乳酸加リンゲル液が投与され、その側管からシリンジポンプを使用してノルアドレナリンが投与。
・朝9時:シリンジポンプの閉塞輸液ポンプの気泡混入の、2つのアラームが作動した。
・ノルアドレナリンの入ったシリンジは残量あり、乳酸加リンゲル液のボトルがになっていた。
→まずは、現時点で2つのアラームが作動した原因を探ることが第一優先となる。シリンジポンプの閉塞は、チューブが折れ曲がったり、逆血した血液が凝固した場合に起きやすい。また、輸液ポンプの気泡混入は、乳酸加リンゲル液のボトルが空になり、気泡が発生したと考えられる。

敗血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは、組織灌流が危機的に減少する。肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。

1.× 乳酸加リンゲル液を準備する優先度は低い。なぜなら、乳酸加リンゲル液のボトルが空になっていることから、投与できていると考えられるため。今回の場合、ノルアドレナリンの入ったシリンジは残量があることから、投与が中断されているノルアドレナリンの投与再開が優先であるされるべきである。また、主に感染症が原因で起こる敗血症では、全身への血流量が減少し組織から乳酸が過剰に放出され予後に大きく関わる。そのため、乳酸加リンゲル液が必要となるが、まずはショックに対する昇圧のためのノルアドレナリンの閉塞を解決すべきである。
2.× ノルアドレナリンを準備する優先度は低い。なぜなら、ノルアドレナリンの入ったシリンジには残量があるため。さらに準備する必要はない。医師の指示の投与量を守る必要がある。
3.× 輸液ポンプ内のラインの気泡を除く優先度は低い。なぜなら、まずは、空になった乳酸加リンゲル液のボトルを新しいのに交換しないと、また気泡が入りやすくなってしまうため。
4.〇 正しい。輸液ラインの閉塞や屈曲がないか確認する。まずは、現時点で2つのアラームが作動した原因を探ることが第一優先となる。シリンジポンプの閉塞は、チューブが折れ曲がったり、逆血した血液が凝固した場合に起きやすい。ちなみに、敗血症性ショックに対して、ノルアドレナリンの投与は重要である。ノルアドレナリンは、血圧上昇剤であり、持続的に微量投与する。本薬剤の作用は、注入中止1~2分後で消失するため、効果を保持するためには、できるだけ早く再開する必要がある。

乳酸リンゲル液とは?

乳酸リンゲル液(略称:RL、別称:乳酸リンゲル液、ハルトマン液)は、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムを水に溶解した混合液である。 循環血液量減少や低血圧の患者の体液や電解質の補給に使用される。 また、化学熱傷後の眼の洗浄にも使用できる。 静脈内注入または、または患部に直接投与される。

 

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(78歳、男性)は、尿路感染症による敗血症で入院し、5日が経過した。中心静脈ラインから輸液ポンプを使用して乳酸加リンゲル液が投与され、その側管からシリンジポンプを使用してノルアドレナリンが投与されている。

113 その直後、看護師はノルアドレナリンの投与量を医師の指示書で確認した。指示書には、午前6時に2mL/時間から1mL/時間へ投与量の減量の指示が記載されていたが、午前9時の投与量は2mL/時間のままであったことに気が付いた。
 このときのAさんに対し看護師がアセスメントする項目で優先度が高いのはどれか。

1.血圧
2.尿量
3.血糖値
4.呼吸数

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(78歳、男性、尿路感染症による敗血症
・5日:中心静脈ラインから輸液ポンプを使用して乳酸加リンゲル液が投与され、その側管からシリンジポンプを使用してノルアドレナリンが投与。
・その直後:ノルアドレナリンの投与量を医師の指示書で確認。
・指示書:午前6時に2mL/時間から1mL/時間へ投与量の減量の指示。
午前9時の投与量:2mL/時間のままであったことに気が付いた。
→敗血症性ショックに対して、ノルアドレナリンの投与は重要である。ノルアドレナリンは、血圧上昇剤であり、持続的に微量投与する。敗血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは、組織灌流が危機的に減少する。肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。

1.〇 正しい。血圧は、アセスメントする項目で優先度が高い。なぜなら、ノルアドレナリンは、血圧上昇剤であるため。まずは、投与量が変更できなかったこと、血圧を中心に主治医に連絡し指示を仰ぐことが望ましい。
2.× 尿量の優先度は低い。なぜなら、ノルアドレナリンの直接的な作用は血圧上昇で、敗血症性ショックの症状が懸念されるため。ただし、ノルアドレナリンの作用(血圧上昇)により、腎血流量が減少するため尿量が減少する可能性がある。ちなみに、ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下(血圧低下)、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。
3.× 血糖値の優先度は低い。なぜなら、ノルアドレナリンの直接的な作用は血圧上昇で、敗血症性ショックの症状が懸念されるため。ただし、ノルアドレナリンの作用により、血糖値の上昇がみられる。
4.× 呼吸数の優先度は低い。なぜなら、ノルアドレナリンの直接的な作用は血圧上昇で、敗血症性ショックの症状が懸念されるため。ただし、ノルアドレナリンの作用により、呼吸数の増加がみられる。

ノルアドレナリンとは?

ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす。

 

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(78歳、男性)は、尿路感染症による敗血症で入院し、5日が経過した。中心静脈ラインから輸液ポンプを使用して乳酸加リンゲル液が投与され、その側管からシリンジポンプを使用してノルアドレナリンが投与されている。

114 Aさんには有害事象はみられなかったが、医師の指示量の2倍のノルアドレナリンが3時間投与されていた。これは、医師がノルアドレナリンの減量を指示書に記載し、夜勤の担当看護師にそれを伝えたが、担当看護師が実際に減量することを忘れたことが原因だった。病棟では、リスクマネジメントとしてこの出来事の再発防止策を考えることとなった。
 再発防止策で適切なのはどれか。

1.薬剤に関する研修会を企画する。
2.医療機器の操作方法を再教育する。
3.インシデントを起こした看護師は反省文を書くこととする。
4.医師の指示内容の変更時は、複数の看護師で情報共有をする。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(78歳、男性、尿路感染症による敗血症
・医師の指示量の2倍のノルアドレナリンが3時間投与。
・Aさんには有害事象はみられなかった。
・原因:医師がノルアドレナリンの減量を指示書に記載し、夜勤の担当看護師にそれを伝えたが、担当看護師が実際に減量することを忘れたこと。
・病棟では、リスクマネジメントとしてこの出来事の再発防止策を考えることとなった。
→インシデントレポートとは、医療現場で事故に繋がりかねないような、ヒヤリとしたり、はっとした出来事に関する報告書のことをいう。作成の目的は、事例を分析して類似するインシデントの再発や医療事故・医療過誤の発生を未然に防止することである。インシデントを直訳すると「出来事・事件・異変」である。一方、その行為によって患者に傷害や不利益を与えてしまった事象を、アクシデントという。なお、インシデントの本来の意味は、偶発的や付随的と解釈される。【目的】①事実の確認、②原因の究明、③組織全体で事例を共有・分析し、問題点を抽出する。④将来の医療事故(アクシデント)の予防、再発の防止。

1.× 薬剤に関する研修会を企画する必要はない。なぜなら、今回の件は、「担当看護師が実際に減量することを忘れた」ことが原因であるため。つまり、薬剤の知識不足が原因ではない。
2.× 医療機器の操作方法を再教育する必要はない。なぜなら、今回の件は、「担当看護師が実際に減量することを忘れた」ことが原因であるため。つまり、操作方法の知識不足が原因ではない。
3.× インシデントを起こした看護師は、反省文を書くこととする必要はない。なぜなら、「担当看護師が実際に減量することを忘れた」ことの原因が、この看護師一人だけの問題とはならないため。インシデントレポートは、その人の反省を促すものや責任を追及するものではなく、組織全体で事例を共有・分析し、問題点を抽出する目的が含まれる。
4.〇 正しい。医師の指示内容の変更時は、複数の看護師で情報共有をする。なぜなら、複数の看護師で情報共有をすることで、指示を受けた内容が実施されない事態となる確率が下がると考えられるため。

Heinrichの法則とは?

1930年代、アメリカのハインリッヒ(Heinrich)氏が労災事故の発生確率を調査したもので、「1:29:300の法則」ともいわれる。これは、1件の重症事故の背景には、29件の軽傷の事故と、300件の傷害にいたらない事故(ニアミス)があるという経験則である。また、さらにその背景には、数千、数万の危険な行為が潜んでいたともいう。 つまり、事故の背景には必ず数多くの前触れがあるということである。

 

 

 

 

 

次の文を読み115、116の問いに答えよ。
 Aさん(23歳、男性)は、マラソンの途中で嘔吐し、意識混濁状態となり救急車で搬送された。来院時、体温39.5℃で、熱中症と診断された。気管挿管と人工呼吸器管理が実施された。膀胱留置カテーテルを挿入後に輸液療法を開始して、ICUに入室した。表面冷却と血管内冷却によって体温は37℃台に下降した。
 既往歴:特記すべきことはない。
 身体所見:ICU入室時、ジャパン・コーマ・スケール<JCS>Ⅱ-20。体温37.8℃、呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧94/74mmHg。暗赤色尿を1時間で20mL認めた。
 検査所見:Hb16.8g/dL、Ht48.6%、Na130mEq/L、K6.5mEq/L、Cl100mEq/L、クレアチンキナーゼ<CK>48,000IU/L、尿素窒素60mg/dL、クレアチニン2.4mg/dL、AST<GOT>70IU/L、ALT<GPT>88IU/L。尿一般検査でミオグロビン陽性。胸部エックス線写真および頭部CTで異常所見なし。心電図でSTの変化はなく、洞性頻脈を認めた。

115 このときのAさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。2つ選べ。

1.貧血である。
2.筋肉が傷害されている。
3.致死性不整脈が出現しやすい。
4.心原性ショックを起こしている。
5.利尿薬の使用が必要な状態である。

解答2/3

解説

本症例のポイント

・Aさん(23歳、男性、熱中症
・マラソン中:嘔吐、意識混濁状態。
・来院時:体温39.5℃
・気管挿管と人工呼吸器管理が実施。
・膀胱留置カテーテルを挿入後:輸液療法を開始。
・表面冷却と血管内冷却:体温37℃台に下降。
・既往歴:特記すべきことはない。
・身体所見:ICU入室時、<JCS>Ⅱ-20。体温37.8℃、呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧94/74mmHg。
・暗赤色尿:1時間で20mL。
・検査所見:Hb16.8g/dLHt48.6%、Na130mEq/L、K6.5mEq/L、Cl100mEq/L、CK48,000IU/L、尿素窒素60mg/dL、クレアチニン2.4mg/dL、AST<GOT>70IU/L、ALT<GPT>88IU/L。
・尿一般検査:ミオグロビン陽性
・胸部エックス線写真および頭部CTで異常所見なし。
・心電図でSTの変化はなく、洞性頻脈を認めた。
→上記の所見の基準値や正常範囲はしっかり把握しておこう。本症例は、マラソン中に発症した熱中症で、脱水、横紋筋融解症、急性腎不全を合併した症例である。ちなみに、熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指す。屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、 救急搬送されたり、場合によっては死亡することもある。主な初期症状として、めまい(目眩、眩暈)や立ちくらみ、一時的な失神などがあげられる。

1.× 貧血とは考えにくい。なぜなら、Hb(ヘモグロビン)やHt (ヘマトクリット) の値は基準範囲内であるため。血液中のヘモグロビンの正常な値は、成人男性の場合は血液1dl中に13.0~16.6g、成人女性の場合は11.4~14.6gである。Ht (ヘマトクリット) の基準値は、成人男性で40~50%、成人女性で34~45%である。
2.〇 正しい。筋肉が傷害されている。なぜなら、血中クレアチニンキナーゼの上昇ミオグロビン尿を認めるため、横紋筋の傷害が考えられる。ちなみに、クレアチニンキナーゼとは、骨格筋や心筋、平滑筋などの筋肉や脳に多量に存在する酵素である。筋肉に障害があると、血液中にクレアチニンキナーゼが出現して高値となる。クレアチニンキナーゼの正常値は、男性で59~248、女性で41~153(U/L)である。一方、ミオグロビンとは、筋肉中にあって酸素分子を代謝に必要な時まで貯蔵する色素タンパク質である。
3.〇 正しい。致死性不整脈が出現しやすい。なぜなら、高カリウム血症が疑われるため。高カリウム血症とは、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることである。通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。原因としては、①カリウム摂取の増加、②腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤、③急性腎障害または慢性腎臓病などで起こりえる。症状として、悪心、嘔吐などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などが現れる。
4.× 心原性ショックを起こしているとは考えにくい。なぜなら、脱水に伴うショックは、循環血液量減少性ショックであるため。循環血液量減少性ショックとは、血管内容量の危機的な減少で起こるショックのことである。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)で、通常、外傷、外科手術、消化性潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤破裂によって起こる。一方、心原性ショックとは、心ポンプ機能の低下により、全身諸組織における循環不全(安静時における組織代謝需要を満たす血流が供給されない状態)が生じ、低酸素、アシドーシス、毛細血管透過性亢進をきたす重篤な病態を指す。全身および心筋組織の循環不全、低酸素化が生じ、アシドーシス、フリーラジカルの発生、サイトカインの増加、白血球凝集、血管内皮障害、微小循環障害などが生じる。心原性ショックの原因として最も多いのは急性心筋梗塞である。他にも、心臓ポンプ機能の異常による心筋収縮力低下のほか、心筋変性や心タンポナーデによる心室拡張不全、頻脈や徐脈などの不整脈で心拍出量が低下するなど、さまざまな病態が原因になる。
5.× 利尿薬の使用が必要な状態であるとは考えにくい。なぜなら、本症例は、マラソン中に発症した熱中症で、脱水、横紋筋融解症、急性腎不全を合併していると考えられるため。したがって、まずは水分摂取(十分な輸液)が必要である。

急性心筋梗塞後に上昇する血液検査所見

【血液検査】
・WBC:2~3時間上昇(7日に正常化)
・CK:2~4時間上昇(3~7日に正常化)
・トロポニンT:3~4時間上昇(14~21日に正常化)
・AST:6~12時間上昇(3~7日に正常化)
・LD(LDH):12~24時間上昇(8~14日に正常化)
・CRP:1~3日上昇(21日に正常化)
・ESR:2~3日上昇(5~6週)

 ※急性心筋梗塞を来した場合、血液検査にて心筋壊死所見を示すデータがみられるのは、通常、発症2時間以降である。WBC、CKの異常が最も早く出現する。

 

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