第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午後116~120】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

次の文を読み115、116の問いに答えよ。
 Aさん(23歳、男性)は、マラソンの途中で嘔吐し、意識混濁状態となり救急車で搬送された。来院時、体温39.5℃で、熱中症と診断された。気管挿管と人工呼吸器管理が実施された。膀胱留置カテーテルを挿入後に輸液療法を開始して、ICUに入室した。表面冷却と血管内冷却によって体温は37℃台に下降した。
 既往歴:特記すべきことはない。
 身体所見:ICU入室時、ジャパン・コーマ・スケール<JCS>Ⅱ-20。体温37.8℃、呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧94/74mmHg。暗赤色尿を1時間で20mL認めた。
 検査所見:Hb16.8g/dL、Ht48.6%、Na130mEq/L、K6.5mEq/L、Cl100mEq/L、クレアチンキナーゼ<CK>48,000IU/L、尿素窒素60mg/dL、クレアチニン2.4mg/dL、AST<GOT>70IU/L、ALT<GPT>88IU/L。尿一般検査でミオグロビン陽性。胸部エックス線写真および頭部CTで異常所見なし。心電図でSTの変化はなく、洞性頻脈を認めた。

116 Aさんは腎不全が悪化し、持続的血液透析を1週間実施した。入院後20日が経過し、Aさんは尿量100mL/時間以上、クレアチニン1.4mg/dLとなった。気管チューブと膀胱留置カテーテルは抜去され、状態は落ち着いている。ADLは拡大し、3日後に退院することとなった。
 Aさんへの退院指導で適切なのはどれか。

1.水分を制限する。
2.蛋白質を制限する。
3.積極的に運動する。
4.生野菜を積極的に摂取する。

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(23歳、男性、熱中症
・マラソン中:嘔吐、意識混濁状態。
・既往歴:特記すべきことはない。
・胸部エックス線写真および頭部CTで異常所見なし。
・心電図でSTの変化はなく、洞性頻脈を認めた。
腎不全が悪化、持続的血液透析を1週間実施。
・入院後20日経過:尿量100mL/時間以上クレアチニン1.4mg/dL
・気管チューブと膀胱留置カテーテル抜去、状態落ち着いている。
・ADL拡大、3日後に退院。
→上記の所見の基準値や正常範囲はしっかり把握しておこう。本症例は、マラソン中に発症した熱中症で、脱水、横紋筋融解症、急性腎不全を合併した症例である。急性腎不全とは、何らかの原因によって腎臓の機能が急激に(1日以内から数週間のうちに)低下し、その結果、体液の量を一定に維持できなくなった状態である。症状としては、尿量の減少あるいは無尿、血尿、褐色調の尿、吐き気、食欲不振、全身倦怠感、意欲減退、痙攣などが起こる。

1.× 水分を制限する必要はない。なぜなら、水分制限が必要な場合は、急性腎不全の乏尿期(乏尿400mL/日以下)であるため。本症例は、尿量100mL/時間以上であるため。急性腎不全は、発症期→乏尿期→利尿期→回復期という流れで経過し、その時期によって食事制限の内容が異なる。極端な水分制限は、腎血流の減少につながり、腎臓の働きが低下する。
2.〇 正しい。蛋白質を制限する。なぜなら、クレアチニン(1.4mg/dL)が基準値より高いため。血清クレアチニンの正常値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下である。急性腎不全では、蛋白質の摂取が腎臓への負担が大きくなるため、蛋白質摂取を制限する必要がある。
3.× 積極的に運動する必要はない。なぜなら、積極的な運動は、腎臓への負担が大きく、腎機能を悪化させるため。
4.× 生野菜を積極的に摂取する必要はない。なぜなら、高カリウム血症予防の観点から、カリウムが多く含まれる生野菜は控えるべきであるため。

尿とは?

健常者の尿は、1日に8回程度で、1,000~1,500mL程度である。尿は、生体内代謝産物を排泄するため、腎臓で血液が濾過され作られる。健康人では体重1kgあたり、1時間に約1mLの尿が排泄されるとされている。膀胱は通常100~150mLで最初の尿意(初発尿意)を感じる。

・希尿:日中に3回以下。尿量は関係ない。
・頻尿:日中に8回以上。尿量は関係ない。
・無尿:100mL/日以下
・乏尿:400mL/日以下
・多尿:3,000mL/日以上
・正常な1日の尿量:1.000~1500mL/日

 

 

 

 

 

次の文を読み117、118の問いに答えよ。
 Aさん(60歳、男性)は、自宅近くを散歩中に突然の胸痛が出現し、救急車を要請した。救急隊到着時のバイタルサインは、呼吸数28/分、脈拍100/分、血圧80/40mmHgであった。冷汗が著明で、前胸部から左肩にかけての激痛を訴えていた。問診で狭心症の既往歴があることが分かった。入院時の検査で急性心筋梗塞と診断された。

117 このときの検査所見として適切なのはどれか。

1.心電図のST上昇
2.左肺呼吸音の減弱
3.クレアチンキナーゼ<CK>の下降
4.胸部エックス線写真での心陰影の縮小

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(60歳、男性、急性心筋梗塞
・散歩中:突然の胸痛が出現。
・バイタルサイン:呼吸数28/分、脈拍100/分、血圧80/40mmHg。
・冷汗が著明、前胸部から左肩にかけての激痛。
・既往歴:狭心症
→本症例は、狭心症から急性心筋梗塞へ移行したと考えられる。急性心筋梗塞とは、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することである。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。ちなみに、労作性狭心症とは、心臓に栄養を送る血管である冠動脈の一部が動脈硬化によって75%以上狭窄し、血流の流れが悪くなってしまう状態である。症状として、胸痛発作の頻度(数回/周以下)、持続時間(数分以内)、強度などが一定であることや、一定以上の運動や動作によって発作が出現する。その4大危険因子は、「①喫煙、②脂質異常症、③糖尿病、④高血圧」である。そのほかにも、加齢・肥満・家族歴・メタボリックシンドロームなどがある。

1.〇 正しい。心電図のST上昇は、急性心筋梗塞の典型的な検査所見である。心筋梗塞の時間経過とともにみられる特徴として、①T波の増高、②ST上昇異常、③Q波、④陰性T波の順番でみられるようになる。ちなみに、ST低下は狭心症に見られる。
2.× 左肺呼吸音の減弱は、主に無気肺、胸水、気胸などで認められる。一般的に、急性心筋梗塞では呼吸音の左右差は認めない。
3.× クレアチンキナーゼ<CK>は、「下降」ではなく上昇する。クレアチンキナーゼとは、心筋逸脱酵素であり、壊死した心筋から漏出する。ちなみに、心筋トロポニンTなどの上昇も認められる。
4.× 胸部エックス線写真での心陰影の「縮小」ではなく拡大する。心陰影拡大とは、心臓の陰影の横幅が胸の横幅の50%よりも大きくなっている状態である。他にも、肥満、心不全、心臓弁膜症などの場合でみられる。ちなみに、慢性閉塞性肺疾患では、肺の過膨張により、心陰影が縮小する。

 

 

 

 

 

次の文を読み117、118の問いに答えよ。
 Aさん(60歳、男性)は、自宅近くを散歩中に突然の胸痛が出現し、救急車を要請した。救急隊到着時のバイタルサインは、呼吸数28/分、脈拍100/分、血圧80/40mmHgであった。冷汗が著明で、前胸部から左肩にかけての激痛を訴えていた。問診で狭心症の既往歴があることが分かった。入院時の検査で急性心筋梗塞と診断された。

118 緊急心臓カテーテル検査で左冠動脈起始部に90%の閉塞を認め、緊急冠動脈バイパス術が行われた。術後5日、集中治療室から一般病棟に転棟した。Aさんは「手術も無事終わって命が助かった。リハビリテーションが大切と聞いたので、頑張って廊下を歩きますよ」と看護師に話した。術後のADL拡大は順調に進み、Aさんは病棟内での200mの歩行が許可されている。胸部症状の出現や心電図の変化は認めない。
 Aさんへの心臓リハビリテーションについて適切なのはどれか。

1.息苦しさが出現したら中止する。
2.気分の良いときに階段昇降を勧める。
3.衣服の着脱は家族に介助してもらう。
4.レジスタンストレーニングを中心に行う。

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(60歳、男性、急性心筋梗塞
・散歩中:突然の胸痛が出現。
・既往歴:狭心症
・左冠動脈起始部に90%の閉塞、緊急冠動脈バイパス術
・術後5日:集中治療室から一般病棟に転棟した。
・Aさん「手術も無事終わって命が助かった。リハビリテーションが大切と聞いたので、頑張って廊下を歩きますよ」と。
・術後:ADL拡大順調(病棟内での200mの歩行が許可)。
・胸部症状の出現や心電図の変化は認めない。
→本症例は、安全にADL拡大を図っていく必要がある。どのような症状や基準で運動やリハビリテーションを中止にすべきか中止基準を覚え、判断できるようにしよう。また、急性心筋梗塞に伴う重篤な合併症の多くは、発症後約1週間以内に発生するため、心臓リハビリテーションは安全に実施されなければならない。

1.〇 正しい。息苦しさが出現したら中止する。途中でリハを中止する場合において、[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現した場合があげられる。
2.× 気分の良いときでも、階段昇降を勧めることはできない。なぜなら、本症例は、200mの歩行が許可されている段階であるため。階段昇降は過負荷であり、看護師や患者の判断で行わない。
3.× 衣服の着脱は家族に介助してもらう必要はない。なぜなら、AさんのADL拡大は順調に進んでいるため。衣服の着脱は、歩行より負荷が軽い。
4.× レジスタンストレーニングを中心に行うことはできない。なぜなら、負荷量が大きすぎるため。レジスタンストレーニングとは、筋肉に抵抗(レジスタンス)をかけることによって、筋力向上を図る「筋力トレーニング」のことである。心疾患の患者において、低負荷のレジスタンストレーニングを行い、心臓の負担を増やすことなく筋力向上を図ることは望ましい。

リハビリテーションの中止基準

1. 積極的なリハを実施しない場合
[1] 安静時脈拍 40/分以下または 120/分以上
[2] 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
[3] 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
[4] 労作性狭心症の方
[5] 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
[6] 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
[7] 著しい不整脈がある場合
[8] 安静時胸痛がある場合
[9] リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
[10] 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
[11] 安静時体温が 38 度以上
[12] 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下

2. 途中でリハを中止する場合
[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現した場合
[2] 脈拍が 140/分を超えた場合
[3] 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
[4] 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
[5] 運動により不整脈が増加した場合
[6] 徐脈が出現した場合
[7] 意識状態の悪化

3. いったんリハを中止し,回復を待って再開
[1] 脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える
[2] 脈拍が 120/分を越えた場合
[3] 1 分間 10 回以上の期外収縮が出現した場合
[4] 軽い動悸,息切れが出現した場合

心臓リハビリテーションの効果

①体力が回復し、スムーズに動けるようになる(運動耐容能の改善)。
②筋肉や骨が鍛えられ、疲れにくくなるとともに心臓の働きを助ける(心拍数減少)。
③動脈硬化のもととなる危険因子(高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満)が軽減する(HDLコレステロール増加、中性脂肪の減少、肥満の改善)。
④血管が柔らかくなり、循環が良くなる(虚血徴候の軽減)。
⑤呼吸がゆっくりとして、息切れ感が軽減する(運動耐容能の改善)。
⑥自律神経を安定させ、動悸や不整脈が軽減する。
⑦不安やうつ状態が改善し気持ちが晴れやかになる。
⑧心筋梗塞の再発や突然死が減り、死亡率が減少する。

(参考:「心臓リハビリテーション(運動療法について)」神戸掖済会病院様HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み119、120の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、女性)は、営業で外出の多い業務を担当している。1か月前から発熱、倦怠感、関節痛および顔面の紅斑が出現し、近くの医療機関を受診したところ全身性エリテマトーデス<SLE>と診断され治療目的で入院した。入院時所見は身長160cm、体重55kg。血圧142/80mmHg。血液検査データは、白血球4,400/μL、血小板17.5万/μL、Hb12.5g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、抗核抗体は陽性であった。

119 入院時のアセスメントで正しいのはどれか。

1.貧血
2.出血傾向
3.易感染状態
4.腎機能低下

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、女性、全身性エリテマトーデス<SLE>)
・業務担当:営業で外出の多い。
・1か月前:発熱、倦怠感、関節痛および顔面の紅斑が出現。
・入院時所見:身長160cm、体重55kg。血圧142/80mmHg。
・血液検査データ:白血球4,400/μL血小板17.5万/μLHb12.5g/dLクレアチニン2.5mg/dL、抗核抗体は陽性。
→全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。

1.× 貧血は不適切である。なぜなら、Hb12.5g/dLは正常範囲であるため。ちなみに、血液中のヘモグロビンの正常な値は、成人男性の場合は血液1dl中に13.0~16.6g、成人女性の場合は11.4~14.6gである。
2.× 出血傾向は不適切である。なぜなら、血小板17.5万/βLと正常範囲であるため。ちなみに、血小板の正常値は、15~45万/μLである。
3.× 易感染状態は不適切である。なぜなら、白血球4,400/μLと正常範囲であるため。ちなみに、白血球4000~9000/μLである。
4.〇 正しい。腎機能低下は正しい。なぜなら、クレアチニン2.5mg/dLと高値であるため。また、SLEでは糸球体腎炎を合併することが多い。ちなみに、クレアチニンの正常値は、男性1.2mg/dL以下、女性1.0mg/dL以下である。

 

 

 

 

 

次の文を読み119、120の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、女性)は、営業で外出の多い業務を担当している。1か月前から発熱、怠感、関節痛および顔面の紅斑が出現し、近くの医療機関を受診したところ全身性エリテマトーデス<SLE>と診断され治療目的で入院した。入院時所見は身長160cm、体重55kg。血圧142/80mmHg。血液検査データは、白血球4,400/μL、小板17.5万/μL、Hb12.5g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、抗核抗体は陽性であった。

120 Aさんはプレドニゾロン60mg/日のステロイド治療が開始となった。
 Aさんへの説明で適切なのはどれか。

1.「食事の制限はありません」
2.「倦怠感が強いときは薬の中止を検討します」
3.「薬の影響で気分が大きく変動するかもしれません」
4.「職場復帰に備えて天気の良い日は散歩しましょう」
5.「治療で病状が改善すると抗核抗体が陰性になります」

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、女性、全身性エリテマトーデス<SLE>)
・業務担当:営業で外出の多い。
・1か月前:発熱、倦怠感、関節痛および顔面の紅斑が出現。
・入院時所見:身長160cm、体重55kg。血圧142/80mmHg。
・血液検査データ:白血球4,400/μL、血小板17.5万/μL、Hb12.5g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、抗核抗体は陽性。
ステロイド治療が開始:プレドニゾロン60mg/日。
→全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。

1.× 「食事の制限はありません」と伝えるのは不適切である。むしろ、食事制限が必要である。なぜなら、本症例は腎機能が低下しているため。腎臓に負担がかからないよう蛋白制限、塩分制限、カリウム制限などの食事制限を指導する必要がある。
2.× 「倦怠感が強いときは薬の中止を検討します」と伝えるのは不適切である。むしろ、看護師や患者自身の判断で内服の中止が行われないよう対応する。特に、副腎皮質ステロイド薬の中断は、急性副腎不全をきたし、生命に影響する可能性がある。
3.〇 正しい。「薬の影響で気分が大きく変動するかもしれません」と説明する。なぜなら、ステロイドの副作用に精神症状(うつ病)があげられるため。副腎皮質ステロイド薬の副作用は、①易感染性、②骨粗鬆症、③糖尿病、④消化性潰瘍、⑤血栓症、⑥精神症状(うつ病)、⑦満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満などである。
4.× 「職場復帰に備えて天気の良い日は散歩しましょう」と伝えるのは不適切である。むしろ、強い紫外線を受ける散歩や外出などは控えたほうが良い。なぜなら、紫外線は全身性エリテマトーデス<SLE>の増悪因子であるため。また、副腎皮質ステロイド薬の副作用に易感染性があげられるため。
5.× 「治療で病状が改善すると抗核抗体が陰性になります」と伝えるのは不適切である。むしろ、治療で病状が改善しても、陽性のままである。抗核抗体とは、主に膠原病など自己免疫疾患のスクリーニング検査として利用される。抗核抗体の陽性率は、全身性エリテマトーデスでは100%近く、シェーグレン症候群では70〜90%である。なお、抗核抗体の数値と病状・病態は一致しないことが多く、病状が軽くなっても陽性のままの症例も複数である。

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合すする。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

 

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

問題引用:第103回保健師国家試験、第100回助産師国家試験、第106回看護師国家試験の問題および正答について

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)