第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午前31~35】

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31 腹部CTを下に示す。
 矢印で示す部位について正しいのはどれか。

1.肥満細胞で構成される。
2.厚さはBMIの算出に用いられる。
3.厚い場合は洋梨型の体型の肥満が特徴的である。
4.厚い場合はメタボリックシンドロームと診断される。

解答3

解説

1.× 矢印が指すのは、「肥満細胞」ではなく、皮下の脂肪組織である。肥満細胞とは、マスト細胞ともいい、骨髄系細胞由来の細胞であり、末梢血の顆粒球の一種である好塩基球に類似した性質を持つ、免疫細胞の一種である。 肥満細胞の顆粒内には、ヒスタミン、ロイコトリエン、血症板活性化因子、セロトニン、ヘパリンなどのケミカルメディエーターと呼ばれる物質が含まれている。IgE抗体を結合し、Ⅰ型(即時型)アレルギー反応を引き起こす。
2.× 皮下の脂肪組織の厚さは、BMIの算出に用いられない。BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。
3.〇 正しい。厚い場合は、洋梨型の体型の肥満が特徴的である。皮下脂肪型肥満は洋梨型の体型、内臓脂肪型肥満はリンゴ型の体型が特徴である。
4.× メタボリックシンドロームは、皮下の脂肪組織が厚い場合ほかに、加えた条件(中性脂肪や血圧、血糖値)があげられる。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積を基盤とし、動脈硬化の危険因子を複数合併した状態のことである。
【メタボリックシンドロームの診断基準】
①腹部肥満(ウエストサイズ 男性85cm以上 女性90cm以上) 
②中性脂肪値(HDLコレステロール値 中性脂肪値 150mg/dl以上、HDLコレステロール値 40mg/dl未満のいずれか、または両方)
③血圧(収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上のいずれか、または両方)
④血糖値(空腹時血糖値110mg/dl以上)

 

 

 

 

 

32 放射線療法について正しいのはどれか。

1.Gyは吸収線量を表す。
2.主に非電離放射線を用いる。
3.電子線は生体の深部まで到達する。
4.多門照射によって正常組織への線量が増加する。

解答1

解説

用語の説明

Gy(グレイ)は、吸収線量を表す。
Bq(ベクレル)は、放射線量の単位で放射能の強さを表す。
Sv(シーベルト)は、線量当量の単位で人体への影響の程度を表す単位である。

1.〇 正しい。Gy(グレイ)は、吸収線量を表す。物体が単位質量当たりに放射線から受けるエネルギー量を示す単位であり、吸収線量と呼ばれる。吸収線量の単位でどれだけ物質に吸収されたかを表す。
2.× 放射線療法は、主に「非電離放射線」ではなく電離放射線を用いる。非電離放射線とは、可視光(目に見える光)や赤外線(リモコンなどに用いられる)などの低エネルギーの放射線である。一方、電離放射線とは、物質を通過するときに直接的または間接的にイオンをつくることができる能力(電離能力)を有する放射線の総称で、エックス線をはじめとする高エネルギーの放射線である。したがって、放射線療法には、エックス線など高エネルギーの電離放射線が用いられる。
3.× 電子線は、生体の「深部まで到達する」のではなく表面近くで吸収される。そのため、電子線は、表面近くのがん治療に適している。電子線は、体の深部まで届かず、浅いところで止まる性質から、周りの正常組織を傷つけずに治療ができるため、主に皮膚がんのような表在性のがんの治療に用いられる。一方、エックス線やガンマ線は高エネルギーの電離放射線で深部まで到達するため、深部のがん治療に適している。
4.× 多門照射によって、正常組織への線量は「増加」ではなく減少する。多門照射とは、深部のがん病変に対して2方向以上から放射線ビームを集中して照射する方法である。複数の方向から照射することで、放射線が集中する中心部以外の線量を抑えることができる。守らなくてはならない臓器への影響を抑えつつ照射する方法として、腹部、骨盤、食道など、多くの部位の治療で用いられている。

 

 

 

 

 

33 Alzheimer<アルツハイマー>病で正しいのはどれか。

1.基礎疾患として高血圧症が多い。
2.初期には記銘力障害はみられない。
3.アミロイドβタンパクが蓄積する。
4.MRI所見では前頭葉の萎縮が特徴的である。

解答3

解説

Alzheimer型認知症とは?

アルツハイマー病とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。アルツハイマー病の危険因子としては、高齢・頭部外傷の既往・アルツハイマー病の家族歴などがある。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

1.× 基礎疾患として高血圧症が多いのは、脳血管性認知症である。脳血管性認知症とは、脳血管が詰まったり破れたりすることで突然発症する。その後、脳血管が詰まったり破れたりするたびに、症状が悪化する特徴を持つ。その部位や範囲によって症状は様々である。他の症状として、巣症状(失語、失行、失認など脳の局所性病変によって起こる機能障害)や階段状に認知障害が進行することが特徴である。
2.× 初期から記銘力障害はみられる。記銘力障害とは、新しいことが覚えられなくなることをいう。
3.〇 正しい。アミロイドβタンパクが蓄積する。アルツハイマー病とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。
4.× MRI所見で、前頭葉の萎縮が特徴的であるのは前頭側頭型認知症である。前頭側頭型認知症とは、前頭葉・側頭葉に限局した萎縮性病変を認める症候群をいう。代表的な疾患にPick病がある。発症は初老期(40~60歳代)にみられる。初期は、自発性の低下、自発語の減少、偏食・過食、脱抑制などの人格変化・行動異常で潜行性に発症する。

 

 

 

 

 

 

34 ペースメーカー装着患者における右心室ペーシング波形の心電図を下に示す。心電図の記録速度は通常の25mm/秒であり、矢印で示した小さなノッチがペースメーカーからの電気刺激が入るタイミングを示している。
 心電図波形によって計測した心拍数で正しいのはどれか。


1.30/分以上、50/分未満
2.50/分以上、70/分未満
3.70/分以上、90/分未満
4.90/分以上、99/分以下

解答3

解説

(図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

MEMO

・心電図の記録速度は、25mm/秒である。
・記録用紙の大きいマス目5つ分で1秒を示す。
・心拍数は、「心拍数(回/分)= 60(秒) ÷ RR間隔(秒)」で求められる。

問題のこの心電図では、心室ペーンングによって、ほぼ4マスに1個で、QRS波が発生している。矢印の間隔(QRS波)はおおよそ18マスである。心拍間は0.04(秒)×18=0.72秒である。そこから心拍数を算出すると、60(秒)÷0.72=83.33・・/分となる。
したがって、心拍数は70/分以上、90/分未満である。

心拍数は75/分に近い値と考えられる。したがって、選択肢3.70/分以上、90/分未満が正しい。

 

 

 

 

 

35 労働者災害補償保険法に規定されているのはどれか。

1.失業時の教育訓練給付金
2.災害発生時の超過勤務手当
3.有害業務従事者の健康診断
4.業務上の事故による介護補償給付

解答4

解説

労働者災害補償保険法とは?

労働者災害補償保険法とは、労働者災害補償保険により、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするために制定された法律である。必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、適正な労働条件の確保等を図り、労働者の福祉の増進に寄与する。

第三節 通勤災害に関する保険給付
第二十一条 第七条第一項第三号の通勤災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 療養給付
二 休業給付
三 障害給付
四 遺族給付
五 葬祭給付
六 傷病年金
七 介護給付

(※参考:「労働者災害補償保険法」e-GOV法令検索様HPより)

1.× 失業時の教育訓練給付金は、『雇用保険法』に規定されている。雇用保険法とは、「労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ること」(第1条)を目的として制定された、日本の法律である。つまり、失業・雇用継続等に関する保険の制度である。保険者は日本政府(国:厚生労働省)。財源は雇用者と雇用主が社会保険として負担するほか、国費投入もされている。つまり雇用保険は、労働保険のひとつで、いわゆる失業保険を中心とするものである。
2.× 災害発生時の超過勤務手当は、『労働基準法』に規定されている。労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。
3.× 有害業務従事者の健康診断(特殊健康診断)は、『労働安全衛生法』に規定されている。事業者は有害な業務に常時従事する労働者に対し、医師による特別の項目についての健康診断を行わなければならない。

4.〇 正しい。業務上の事故による介護補償給付は、『労働者災害補償保険法』に規定されている。労働者災害補償保険法とは、労働者災害補償保険により、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするために制定された法律である。必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、適正な労働条件の確保等を図り、労働者の福祉の増進に寄与する。

労働安全衛生法とは?

「労働安全衛生法」とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた日本の法律である。事業者は安全衛生管理体制を整備することが義務づけられており、それぞれの事業規模に応じた①衛生管理者、②総括安全衛生管理者などを選任しなければならない。

①衛生管理者
職場の衛生にかかわる技術的事項の管理を行う。少なくとも毎週1回作業場の巡視を行い、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに健康障害防止措置を講じなければならない。

②総括安全衛生管理者
安全管理者、衛生管理者を指揮し、安全・衛生・健康・事故防止などの統括管理を行う。その事業場で統括管理する者(工場長、支店長 等)を充てなければならない。

 

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