第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午後41~45】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

41 Aさん(59歳、女性)は、半年前に下咽頭癌で放射線治療を受けた。口腔内が乾燥し、水を飲まないと話すことも不自由なことがある。
 Aさんに起こりやすいのはどれか。

1.う歯
2.顎骨壊死
3.嗅覚障害
4.甲状腺機能亢進症

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(59歳、女性)
・半年前:下咽頭癌、放射線治療を受けた。
・口腔内が乾燥し、水を飲まないと話すことも不自由なことがある。
→放射線療法とは、放射線を患部に体外および体内から照射する治療法である。治療中からおこる可能性がある症状は、気分不快、食欲不振、下痢、倦怠感、頻尿、排尿時痛、白血球減少、貧血、照射した部分の肌荒れなどがある。数か月以降に起こる可能性があるものとして放射線腸炎、過敏性腸症候群、直腸出血、放射線膀胱炎、膀胱出血などがある。

1.〇 正しい。う歯(一般的に虫歯)は、起こりやすい。なぜなら、放射線治療により、口腔内が乾燥すると口腔内の自浄作用が低下するため。両耳下腺・両顎下腺が照射野内に入ると、高度の唾液分泌障害が生じる。
2.× 顎骨壊死が起こるとは考えにくい。なぜなら、顎骨壊死は、治療後の抜歯や口腔内不衛生が原因となることが多いため。ちなみに、顎骨壊死とは、あごの骨の組織や細胞が局所的に死滅し、骨が腐った状態になることである。あごの骨が腐ると、口の中にも ともと生息する細菌による感染が起こり、あごの痛み、腫れ、 膿が出るなどの症状が出現する。
3.× 嗅覚障害が起こるとは考えにくい。なぜなら、下咽頭癌に対する放射線治療は、嗅覚の伝導系に照射しないため。におい(嗅覚)は、鼻腔の上方にある嗅上皮から嗅細胞・嗅神経を介して伝わるが、下咽頭癌の放射線照射部位を考えると嗅覚障害は考えにくい。
4.× 甲状腺機能亢進症が起こるとは考えにくい。なぜなら、下咽頭癌に対する放射線治療で、甲状腺に照射された場合の副作用は、甲状腺機能低下症であるため。甲状腺機能低下症とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。ちなみに、口内乾燥症はSjögren症候群(シューグレン症候群)の特徴である。Sjögren症候群(シューグレン症候群)は、涙腺・唾液腺などの外分泌腺炎を特徴とする自己免疫疾患である。男女比(1:9)で女性に多い(特に、40歳代の中年女性)。唾液腺・涙腺の慢性炎症が生じる膠原病で、乾性角結膜炎(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)を主症状とする。皮膚症状は環状紅斑など多彩であるが、全身の紅斑・水庖は生じない。これらの乾燥症状に対し、人工涙液点眼や水分摂取といった対症療法を行う。

嗅覚の伝導路とは?

嗅覚は鼻腔上部の嗅部の粘膜上皮(嗅上皮)の嗅細胞で受容される。嗅細胞の中枢性突起が嗅神経となり、篩骨篩板を通って嗅球に入る。嗅球から後方に向かって嗅索が走り、その線維は大部分外側嗅条を通って海馬旁回の嗅覚野に達する。

①嗅細胞→②嗅神経→③嗅球→④嗅索→⑤嗅覚野(1次感覚野)に達する。
・一次中枢:①嗅細胞→②嗅神経→③嗅球まで。
・二次中枢:④嗅索→⑤嗅覚野(1次感覚野)

 

 

 

 

 

42 Ⅰ型糖尿病と診断された人への説明で適切なのはどれか。

1.自己血糖測定の試験紙の費用は医療保険の対象外である。
2.食事が摂取できないときはインスリン注射を中止する。
3.低血糖症状には振戦などの自律神経症状がある。
4.運動は朝食前が効果的である。

解答3

解説

1型糖尿病とは?

1型糖尿病とは、原因が自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる糖尿病である。小児~思春期の発症が多く、肥満とは関係ないのが特徴である。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。

1.× 自己血糖測定の試験紙の費用は、医療保険の「対象外」ではなく適応の対象である。1型糖尿病もインスリン療法が必要である。インスリン療法をしている場合、血糖値測定に必要な機器や物品(簡易血糖測定機器、試験紙(センサー)、穿刺用器具、穿刺針、消毒用アルコール綿など)は医療保険が適用される。ちなみに、医療保険とは、私たちやその家族が、病気やケガをしたときに医療費の一部を公的な機関が負担する制度のことである。日本では「国民皆保険」といって、すべての人が何らかの公的医療保険に加入している。
2.× 食事が摂取できないときも、インスリン注射を中止してはならない。なぜなら、自己判断でインスリン注射を中止すると、高血糖やケトアシドーシスが起こる可能性があるため。特に、インスリン療法中、体調が悪い日などが発生した場合、主治医に連絡するように指導する。
3.〇 正しい。低血糖症状には、振戦などの自律神経症状がある。低血糖症状とは、血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現した症状をさす。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。
4.× 運動は、「朝食前」ではなく食後1〜2時間後が効果的である。なぜなら、食事前の運動は低血糖となる可能性が高くなるため。
【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

シックデイとは?

シックデイとは、糖尿病患者さんが治療中、 発熱、下痢、嘔吐をきたしたり、食欲不振のため、 食事ができなくなるなどの体調不良の状態のことをいう。シックデイは、血糖値が上がりやすくなるため、注意が必要である。

 

 

 

 

 

43 アレルギー性鼻炎について正しいのはどれか。

1.食後に症状が増悪する。
2.Ⅳ型アレルギーである。
3.スクラッチテストで原因を検索する。
4.アレルゲンの除去は症状の抑制に有効である。

解答4

解説

アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎とは、アレルゲンが鼻粘膜から侵入し免疫反応が起こることによって、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状が引き起こされる病気である。通年性アレルギー性鼻炎(一年を通して症状が出るタイプ)と、季節性アレルギー性鼻炎(特定の季節に症状が出るタイプ、いわゆる花粉症)とがあり、両者を合併しているタイプもみられる。

1.× 「食後」ではなく、朝方に症状が増悪する。食後に症状が増悪するのは食物アレルギーである。ちなみに、アレルギー性鼻炎では、朝起きたときに鼻づまりやくしゃみ、鼻水などの症状が悪化することがあり、「モーニングアタック」と呼ぶ。
2.× 「Ⅳ型アレルギー」ではなく、Ⅰ型(即時型)アレルギーである。Ⅰ型アレルギーとは、肥満細胞や好塩基球からの化学伝達物質の放出によって起こる即時型アレルギーで、アレルゲンに接触した数分後に、皮膚・粘膜症状が出現する。まれにアナフィラキシーショックとなり重篤化(血圧低下、呼吸困難、意識障害を伴う)することがある。ちなみに、Ⅳ型アレルギーとは、遅延型細胞性免疫やツベルクリン型とも呼ばれ、感作T細胞が関与するアレルギーである。感作T細胞と抗原の反応によって産生・放出されたサイトカインが局所の細胞性免疫反応を活性化し、炎症と組織障害が生じる。ツベルクリン反応、接触性皮膚炎などに関連する。
3.△ 「スクラッチテスト」ではなく、血清特異的IgE抗体検査などで原因を検索する。※ただし、スクラッチテストは、アレルギー性鼻炎の診断に用いられることもあるため、△とした。スクラッチテストとは、皮膚に針で小さな傷をつけ抗原液を垂らし、その反応(発赤・膨疹)の強さを見て、抗原に反応するIgE抗体の有無や反応性をみる検査である。じんましんやアナフィラキシーなどの即時型アレルギーの原因を探る検査である。
4.〇 正しい。アレルゲンの除去は症状の抑制に有効である。アレルゲンとは、アレルギー疾患を持っている人の抗体と特異的に反応する抗原のことである。一般には、そのアレルギー症状を引き起こす原因となる物質をいう。たとえば、スギ花粉症では、アレルゲンの除去の方法として鼻洗浄、回避の方法として外出時のマスク着用が有効である。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

44 他動運動による関節可動域<ROM>訓練を行うときの注意点で適切なのはどれか。

1.有酸素運動を取り入れる。
2.等尺性運動を取り入れる。
3.近位の関節を支持して行う。
4.痛みがある場合は速く動かす。

解答3

解説

他動運動とは?

他動運動とは、身体の特定部位を第三者が用手的に、または器具などの外力によって動かすことである。 麻痺などによって随意的に筋収縮が行われない場合や筋力が著しく低下している場合、外傷後や術後などの拘縮予防、関節可動域の維持・拡大、皮膚の柔軟性の維持のために行う。

1.× 有酸素運動を取り入れる必要はない。有酸素運動とは、好気的代謝によってヘモグロビンを得るため長時間継続可能な軽度または中程度の負荷の運動をいう。 つまり、酸素を摂取しながら行う運動の総称で、ジョギングや水泳などの運動を指す。中等度の有酸素運動の運動強度の目安として、①最大酸素摂取量の50%前後、運動時心拍数が50歳未満で100~120拍/分、50歳以降で100拍/分以内とされている。一方、関節可動域訓練では、患者はベッド上に仰臥位になり、リラックスした状態で行うのが一般的である。
2.× 等尺性運動を取り入れる必要はない。なぜなら、等尺性運動は関節の動きを伴わない運動であるため。等尺性運動とは、関節を動かさない筋肉の収縮で、筋の長さは一定である特徴を持つ。ギプス固定している間の筋の廃用予防のための筋力トレーニングとして重要である。ちなみに、関節を動かすのが目的の関節可動域(ROM)訓練では、筋の長さの変化を伴う等張性運動を取り入れていることになる。等張性運動とは、①求心性等張性運動、②遠心性等張性運動がある。①求心性等張性運動とは、筋の張力は変化せずに筋の短縮が起こる状態である。②遠心性等張性運動とは、筋の張力は変化せずに筋が収縮しながら筋長は伸びる状態である。
3.〇 正しい。近位の関節を支持して行う。なぜなら、近位(体幹に近い)の関節を支持することで、遠位にある目的の関節を無理なくゆっくりと正しい方向に動かすことができるため。例えば、膝関節を他動運動による関節可動域<ROM>訓練を行うときには、近位の股関節を支持することで、膝関節可動域訓練を安定して行える。
4.× 痛みがある場合は、「速く」ではなくゆっくり動かす。なぜなら、速い動きでは痛みの確認が遅くなり、損傷を伴いやすいため。また、早い動きでは、筋肉が反射的に収縮してしまい、結合組織も十分に伸長できず拘縮の予防・解消にならない。

 

 

 

 

 

45 Aさん(80歳、女性)は、要介護2となったため長男家族(長男50歳、長男の妻45歳、18歳と16歳の孫)と同居することとなった。在宅介護はこの家族にとって初めての経験である。
 Aさんの家族が新たな生活に適応していくための対処方法で最も適切なのはどれか。

1.活用できる在宅サービスをできる限り多く利用する。
2.家族が持つニーズよりもAさんのニーズを優先する。
3.介護の負担が特定の家族に集中しないように家族で話し合う。
4.10代の子どもを持つ家族の発達課題への取り組みを一時保留にする。

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(80歳、女性、要介護2
・長男家族(長男50歳、長男の妻45歳、18歳と16歳の孫)と同居。
在宅介護:この家族にとって初めての経験である。
→介護者の介護疲れは、DVやうつ病を引き起こしてしまうこともある。

1.× 活用できる在宅サービスを「できる限り多く」利用する必要はない。なぜなら、過介助となり、Aさんの自立を促すことができないため。活動性が低下し、より身体機能の低下につながる。したがって、必要なサービスを利用していくことが望ましい。
2.× 家族が持つニーズよりもAさんのニーズを優先するといった優先順位はない。なぜなら、どちらかを優先した場合、どちらかは我慢したり、ストレスがたまる可能性があるため。まずは、Aさんと家族それぞれのニーズを確認して、何が必要かアセスメントしていくことが大切である。
3.〇 正しい。介護の負担が、特定の家族に集中しないように家族で話し合う。なぜなら、長男家族(労働や家事、学生)の家族の生活リズムをなるべく崩さないようにするため。介護者の介護疲れは、DVやうつ病を引き起こしてしまうこともある。また、家族にとって初めての在宅介護であるため、本人を含めて家族でしっかり話し合い、家族間の役割分担やサービスの調整などを考える必要がある。
4.× 10代の子どもを持つ家族の発達課題への取り組みを一時保留にする必要はない。むしろ、家族の生活が停滞しないように社会のサービスを適度に使用する必要がある。したがって、家族の発達課題を保留すべきではなく、家族で介護しながら発達課題に取り組めるよう支援する。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)