第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午前91~95】

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次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(53歳、男性、会社員)は、1週前から倦怠感が強く、尿が濃くなり、眼の黄染もみられたため、近くの医療機関を受診し黄疸と診断された。総合病院の消化器内科を紹介され受診した。時々、便が黒いことはあったが、腹痛はなかった。既往歴に特記すべきことはない。来院時のバイタルサインは、体温36.8℃、脈拍68/分、血圧134/82mmHgであった。血液検査データは、アルブミン4.2g/dL、AST<GOT>69IU/L、ALT<GPT>72IU/L、総ビリルビン14.6mg/dL、直接ビリルビン12.5mg/dL、アミラーゼ45IU/L、Fe27μg/dL、尿素窒素16.5mg/dL、クレアチニン0.78mg/dL、白血球9,200/μL、Hb11.2g/dL、血小板23万/μL、CRP2.8mg/dLであった。

91 Aさんのアセスメントで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.脱水がある。
2.閉塞性黄疸である。
3.膵炎を発症している。
4.急性腎不全を発症している。
5.鉄欠乏性貧血の可能性がある。

解答2/5

解説

本症例のポイント

・Aさん(53歳、男性、会社員、黄疸
・1週前:倦怠感が強く、尿が濃くなり、眼の黄染もみられた。
・時々、便が黒いことはあったが、腹痛なし。
・既往歴:特記すべきことはない。
・来院時のバイタルサイン:体温36.8℃、脈拍68/分、血圧134/82mmHg
・血液検査データ:アルブミン4.2g/dL、AST<GOT>69IU/L、ALT<GPT>72IU/L、総ビリルビン14.6mg/dL、直接ビリルビン12.5mg/dL、アミラーゼ45IU/L、Fe27μg/dL、尿素窒素16.5mg/dLクレアチニン0.78mg/dL、白血球9,200/μL、Hb11.2g/dL、血小板23万/μL、CRP2.8mg/dL
→黄疸とは、皮膚や粘膜が胆汁色素(ビリルビン)で黄色に染まることで、胆汁色素の血漿中濃度の上昇により生じる。原因としては、①溶血によるもの、②肝細胞の障害によるもの、③胆汁の流れの障害によるもの、④体質によるもの、などがある。胆汁は肝臓で作られ、胆管を通じて十二指腸に排出されるが、その流れが障害されたときに生じる黄疸のことを閉塞性黄疸と呼ぶ。多くは総胆管結石や腫瘍により、胆管が閉塞することが原因となる。随伴症状として、①腹痛、②発熱、③背中の痛み、④吐き気、⑤嘔吐、⑥腹部膨満、⑦皮膚の痒みなどである。

1.× 脱水があるとは言いきれない。なぜなら、血圧/アルブミン/尿素窒素/クレアチニンは正常であり、脱水を示唆する検査値ではないため。ちなみに、脱水症状とは、体内の水分が2%失われると、のどの渇きを感じ、運動能力が低下しはじめる。3%失われると、強いのどの渇き、ぼんやり、食欲不振などの症状がおこり、4~5%になると、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状が現れる。10%以上になると、死にいたることもある。
2.〇 正しい。閉塞性黄疸である。なぜなら、眼の黄染があり、総ビリルビン(14.6mg/dL)、直接ビリルビン(12.5mg/dL)が高値を示しているため。ちなみに、各基準値は、総ビリルビン:0.2~1.2 mg/dL、直接ビリルビン: 0.03 ~ 0.40 mg/dLである。ちなみに、閉塞性黄疸とは、胆汁の流れの障害によるものがあげられる。
3.× 膵炎を発症しているとは言いきれない。なぜなら、アミラーゼ(45IU/L)は正常であり腹痛もないため。ちなみに、アミラーゼの基準値は、血清アミラーゼで44~132 IU/Lである。
4.× 急性腎不全を発症しているとは言いきれない。なぜなら、尿素窒素(16.5mg/dL)、クレアチニン(0.78mg/dL)は正常であるため。尿素窒素の基準値は、8mg/dl~20mg/dlである。クレアチニンの基準値は、男性0.65~1.09mg/dl、女性0.46~0.82mg/dlである。急性腎不全とは、何らかの原因によって腎臓の機能が急激に(1日以内から数週間のうちに)低下し、その結果、体液の量を一定に維持できなくなった状態である。症状としては、尿量の減少あるいは無尿、血尿、褐色調の尿、吐き気、食欲不振、全身倦怠感、意欲減退、痙攣などが起こる。
5.〇 正しい。鉄欠乏性貧血の可能性がある。便が時々黒かったこと、鉄(27μg/dL)が低く、ヘモグロビン(11.2g/dL)も低値であるため。ちなみに、各基準値は、鉄(男性の基準値:60~200μg/dL)、ヘモグロビン(男性の基準値:14~18g/dL)である。鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

急性膵炎とは?

急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]

(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)

 

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(53歳、男性、会社員)は、1週前から倦怠感が強く、尿が濃くなり、眼の黄染もみられたため、近くの医療機関を受診し黄疸と診断された。総合病院の消化器内科を紹介され受診した。時々、便が黒いことはあったが、腹痛はなかった。既往歴に特記すべきことはない。来院時のバイタルサインは、体温36.8℃、脈拍68/分、血圧134/82mmHgであった。血液検査データは、アルブミン4.2g/dL、AST<GOT>69IU/L、ALT<GPT>72IU/L、総ビリルビン14.6mg/dL、直接ビリルビン12.5mg/dL、アミラーゼ45IU/L、Fe27μg/dL、尿素窒素16.5mg/dL、クレアチニン0.78mg/dL、白血球9,200/μL、Hb11.2g/dL、血小板23万/μL、CRP2.8mg/dLであった。

92 腹部造影CTにて膵頭部癌が疑われ、内視鏡的逆行性胆管膵管造影<ERCP>が行われ、膵液細胞診と膵管擦過細胞診とが行われた。また、内視鏡的経鼻胆道ドレナージ<ENBD>が行われ、ドレナージチューブが留置された。処置後18時間、チューブからの排液は良好で、腹痛はなく、Aさんはチューブが固定されている鼻翼の違和感を訴えている。バイタルサインは、体温37.1℃、脈拍76/分、血圧128/80mmHgであった。血液検査データは、総ビリルビン11.2mg/dL、直接ビリルビン8.2mg/dL、アミラーゼ96IU/L、白血球9,800/μL、CRP3.5mg/dLであった。
 このときのAさんへの看護で正しいのはどれか。

1.禁食が続くことを伝える。
2.ベッド上安静が必要であることを伝える。
3.鼻翼にドレナージチューブが接触していないか確認する。
4.ドレナージチューブを持続吸引器に接続する準備をする。

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(53歳、男性、会社員、黄疸)
・1週前:倦怠感が強く、尿が濃くなり、眼の黄染もみられた。
・時々、便が黒いことはあったが、腹痛なし。
・既往歴:特記すべきことはない。

・腹部造影CT:膵頭部癌が疑われた。
・内視鏡的逆行性胆管膵管造影<ERCP>、膵液細胞診と膵管擦過細胞診とが行われた。
・内視鏡的経鼻胆道ドレナージ<ENBD>が行われ、ドレナージチューブが留置された。
・処置後18時間:チューブからの排液は良好、腹痛はない。
・Aさんはチューブが固定されている鼻翼の違和感を訴えている。
・バイタルサイン:体温37.1℃、脈拍76/分、血圧128/80mmHg。
・血液検査データ:総ビリルビン11.2mg/dL、直接ビリルビン8.2mg/dL、アミラーゼ96IU/L、白血球9,800/μL、CRP3.5mg/dL。

→内視鏡的胆道ドレナージ術には、チューブステントを留置して十二指腸に胆汁を流す方法「胆管チューブステント留置」と、ドレナージチューブで胆汁を鼻から体外に出す方法「内視鏡的経鼻胆管ドレナージ」がある。本症例の場合、バイタルサインは良好で、「チューブが固定されている鼻翼の違和感」を訴えている。したがって、違和感に対し対応が必要となる。

1.× 「禁食」ではなく、内視鏡的逆行性胆管膵管造影<ERCP>検査の翌日から食事が開始できる。ちなみに、内視鏡的逆行性胆道膵管造影とは、内視鏡(カメラ)を使って胆道(胆嚢や胆管)・膵管(膵臓の管)に造影剤を注入し、これらの管の状態をレントゲンで見る検査である。
2.× ベッド上安静(右側臥位)が必要であるのは、内視鏡的逆行性胆管膵管造影<ERCP>検査後2時間である。現在、バイタルは安定しており、腹痛もないため、現時点でベッド上安静は不要である。
3.〇 正しい。鼻翼にドレナージチューブが接触していないか確認する。なぜなら、本症例は、内視鏡的経鼻胆道ドレナージチューブが固定されている鼻翼の違和感を訴えているため。したがって、チューブが鼻翼に接触していることが考えられ、長時間放置しておくと皮膚トラブル(潰瘍)になる場合もある。
4.× ドレナージチューブを持続吸引器に接続する準備をする必要はない。なぜなら、胆汁の排液は良好であるため。持続吸引と間欠吸引があり、持続吸引は主に胸腔ドレナージで使用される低圧持続吸引器、手術創にドレーンを留置し接続した排液バックに陰圧をかける。

 

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(53歳、男性、会社員)は、1週前から倦怠感が強く、尿が濃くなり、眼の黄染もみられたため、近くの医療機関を受診し黄疸と診断された。総合病院の消化器内科を紹介され受診した。時々、便が黒いことはあったが、腹痛はなかった。既往歴に特記すべきことはない。来院時のバイタルサインは、体温36.8℃、脈拍68/分、血圧134/82mmHgであった。血液検査データは、アルブミン4.2g/dL、AST<GOT>69IU/L、ALT<GPT>72IU/L、総ビリルビン14.6mg/dL、直接ビリルビン12.5mg/dL、アミラーゼ45IU/L、Fe27μg/dL、尿素窒素16.5mg/dL、クレアチニン0.78mg/dL、白血球9,200/μL、Hb11.2g/dL、血小板23万/μL、CRP2.8mg/dLであった。

93 細胞診の結果、クラスⅤで膵頭部癌と診断された。上部消化管内視鏡検査で十二指腸に出血を伴う膵癌の浸潤を認め、胃切除を伴う膵頭十二指腸切除術が行われた。術後、中心静脈栄養法<IVH>を行ったがインスリンの投与は必要ないと判断された。経過は良好であり、食事が開始された。
 このときのAさんに対する説明で適切なのはどれか。

1.便秘が起こりやすい。
2.脂質の制限は不要である。
3.カロリー制限が必要となる。
4.ダンピング症状が起こりやすい。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(53歳、男性、会社員、黄疸)
・細胞診の結果:クラスⅤで膵頭部癌
・上部消化管内視鏡検査:十二指腸に出血を伴う膵癌の浸潤を認めた。
胃切除を伴う膵頭十二指腸切除術が行われた。
・術後:中心静脈栄養法<IVH>を行ったが、インスリンの投与は必要ないと判断された。
・経過は良好であり、食事が開始された。

→本症例は、胃切除を伴う膵頭十二指腸切除術が行われた。胃や膵臓の機能をしっかり把握し、切除した場合の副作用を考えていこう。特に、胃の切除ではダンピング症候群が起きやすい。ダンピング症候群とは、胃切除後、摂取した食物が急速に小腸に流入するために起こる。 食事中や直後(30分程度)にみられる早期と、食後2~3時間たってみられる後期(晩期)に分けられる。早期ダンピング症候群食物が腸に急速に流れ込むことで起こる。主な症状は、動悸、めまい、冷汗、顔面紅潮、全身倦怠感などである。

1.× 便秘が起こりにくい。胃切除を伴う膵頭十二指腸切除術後は、消化機能の低下から下痢が起こりやすい。
2.× 脂質の制限は必要である。なぜなら、膵液には脂質・蛋白質・糖質などの消化酵素が含まれるため。術後は、膵外分泌機能の低下により消化・吸収不良となり下痢が起こりやすくなるため、脂質を制限する必要がある。
3.× カロリー制限は、不要である。なぜなら、Aさんはインスリン分泌に問題はなく経過も良好であるため。
4.〇 正しい。ダンピング症状が起こりやすい。なぜなら、本症例では胃切除を行っているため。本症例は、胃切除を伴う膵頭十二指腸切除術が行われた。胃や膵臓の機能をしっかり把握し、切除した場合の副作用を考えていこう。ダンピング症候群とは、胃切除後、摂取した食物が急速に小腸に流入するために起こる。 食事中や直後(30分程度)にみられる早期と、食後2~3時間たってみられる後期(晩期)に分けられる。早期ダンピング症候群食物が腸に急速に流れ込むことで起こる。主な症状は、動悸、めまい、冷汗、顔面紅潮、全身倦怠感などである。

膵液とは?

膵液とは、膵臓から十二指腸に分泌される消化液である。糖質を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどの消化酵素、核酸の分解酵素を含んでいる。

 

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、男性)は、オートバイの単独事故による交通外傷で救急病院に入院した。外傷部位は左上下肢で、左脛骨骨折に対しては長下肢ギプス固定をした。左前腕部は不全切断で、再接着術が行われた。

94 入院後3日、左足趾のしびれと足背の疼痛を訴えた。
 看護師の観察で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.膝窩動脈を触知する。
2.足背の皮膚色を観察する。
3.足趾の屈伸運動が可能か確認する。
4.Volkmann<フォルクマン>拘縮の有無を確認する。
5.ギプスを数cmカットして浮腫の有無を確認する。

解答2/3

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、男性)
・オートバイの単独事故による交通外傷で救急病院に入院。
・外傷部位:左上下肢、左脛骨骨折に対しては長下肢ギプス固定
・左前腕部、不全切断で、再接着術。
・入院後3日:左足趾のしびれと足背の疼痛を訴えた。
→本症例は、循環機能障害(コンパートメント症候群)が疑われる。左脛骨骨折に対しては長下肢ギプス固定が、圧迫している可能性がある。コンパートメント症候群とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた「隔室」の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の循環障害を呈したものをいう。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。

1.× 膝窩動脈を触知できない。なぜなら、本症例は、長下肢ギプス固定下で膝部も巻かれているため。膝窩動脈とは、膝の後ろのくぼんだ部分である「膝窩」を走っている動脈である。
2.〇 正しい。足背の皮膚色を観察する。なぜなら、コンパートメント症候群が疑われるため。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。
3.〇 正しい。足趾の屈伸運動が可能か確認する。なぜなら、コンパートメント症候群が疑われるため。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。
4.× Volkmann<フォルクマン>拘縮の有無を確認する優先度は低い。なぜなら、Volkmann<フォルクマン>拘縮は、上肢のギプス固定による血流障害などで生じるものであるため。本症例の左前腕部は、不全切断で、再接着術が行われ、ギプス固定の有無は言及されていないため。ちなみに、フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。
5.× ギプスを数cmカットして「浮腫」ではなく腫脹の有無を確認する。浮腫と腫脹は違うため注意する。腫脹とは、炎症によって毛細血管の透過性が亢進することである。炎症などが原因で、からだの組織や器官の一部に血液成分が溜まってはれ上がる。

浮腫とは?

浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

 

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、男性)は、オートバイの単独事故による交通外傷で救急病院に入院した。外傷部位は左上下肢で、左脛骨骨折に対しては長下肢ギプス固定をした。左前腕部は不全切断で、再接着術が行われた。

95 入院後6日、左前腕部の接着部から末側が壊死し、前腕切断術が行われた。術後4日、Aさんは幻肢痛を訴えた。
 看護師の対応で適切なのはどれか。

1.切断端に弾力包帯を巻く。
2.切断端のマッサージを行う。
3.肘関節を屈曲したままにする。
4.鎮痛薬では幻肢痛を軽減できないことを説明する。

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、男性)
・オートバイの単独事故による交通外傷で救急病院に入院。
・左前腕部、不全切断で、再接着術。
・入院後6日:左前腕部の接着部から末側が壊死し、前腕切断術が行われた。
・術後4日:Aさんは幻肢痛を訴えた。
→幻肢・幻肢痛とは、腕や足の切断後、失ったはずの感覚があり、かつそこに痛みを感じる状態である。幻視痛は、心因性の要素が関係するため薬物療法以外の治療法 (バイオフィードバック、リラクセーション訓練、認知行動療法、経皮的電気神経刺激法【TENS】 など)も用いられる。

1.〇 正しい。切断端に弾力包帯を巻く。なぜなら、断端部に弾力包帯を巻くことは、断端部の浮腫や血腫を抑えて形を整えるのに有用であるため。また、断端の浮腫をコントロールし、創治癒を促進させ断端管理のために使用される。
2.× 切断端のマッサージを行う必要はない。なぜなら、術後4日では、抜糸も済んでおらず炎症を起こしている時期であるため。マッサージは時期尚早と考えられ、創部の痛みを増強しかねない。
3.× 肘関節を屈曲したままにする必要はない。なぜなら、肘関節を屈曲したままにすると、肘関節が屈曲拘縮をきたしてしまう可能性が高いため。屈曲拘縮により、日常生活の制限や痛みが増強するおそれがある。したがって、手術翌日から肘関節の良肢位を保ち、拘縮をきたさないよう可動域訓練を徐々に開始する必要がある。
4.× あえて鎮痛薬は、幻肢痛を軽減できないことを説明する必要はない。なぜなら、切断によって不安を抱える患者に対して、さらに不安をあおるような説明の仕方は適切とはいえないため。鎮痛薬は、幻肢痛に効きにくいが、時間経過や抗うつ薬、義肢の早期着用などで改善していくことを丁寧に説明する必要がある。

幻肢・幻肢痛とは?

幻肢・幻肢痛とは、腕や足の切断後、失ったはずの感覚があり、かつそこに痛みを感じる状態である。切断をした人の約7割で生じるが、強い痛みは5~10%とまれである。幻肢痛のメカニズム(発生の機序)は解明されていない。下肢より上肢、近位部より遠位部に多く、電撃痛や、捻られるような痛み、ズキズキするような痛みなど様々である。一般的に、切断の手術後1週間以内に発症し、6か月~2年で消失することが多いが、それ以上長引くこともある。幻肢の大きさは健肢とほぼ同様で、幻肢痛が発生するのは、失った手や指、足などが多い。一方、肘や膝に感じることはまれで、4~6歳以下の小児切断例では出現しないことが多い。幻肢痛への一般的な治療方法として、薬物療法と非薬物療法に分けられる。幻肢痛は天候や精神的ストレスに左右されるため、薬物療法は、鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン)、三環系抗うつ薬抗痙攣薬、プレガバリン(リリカ)などの抗てんかん薬が、神経痛の治療に使われる。非薬物療法としては、ミラーセラピーである。幻肢は断端の運動につれて移動し、断場の状態(神経や癒着など)に関連を持つ場合がある。

※幻視痛は、心因性の要素が関係するため薬物療法以外の治療法 (バイオフィードバック、リラクセーション訓練、認知行動療法、経皮的電気神経刺激法【TENS】 など)も用いられる。ちなみに、ミラーセラピー(mirror therapy)とは、鏡を使用して運動の視覚フィードバックを与える治療法である。矢状面で両肢間に鏡を設置し、鏡に映された一側肢が鏡に隠れた反対側肢の位置と重なるようにする。切断や麻痺などの患側肢の遠位部に健側肢の映った鏡像がつながって見えることで、患側肢が健常な実像であるかのように感じさせながら運動を行う。

(※参考:「幻肢痛」慢性通治療の専門医による痛みと身体のQ&A様HPより)

 

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